司法・犯罪分野に関する法律、制度
もはや私がとやかく言うまでもなく、大いに話題になった、公認心理師法における主治医の問題は、今年も何らかの形で問われる可能性が極めて高いと言えます。実はブループリントには直接キーワードにはなっていないものの、最初の「公認心理師試験出題基準の利用法」に
「同法 第 42 条第1項では「公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、 保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを 提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。」とあり、同条第2項では 「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係 る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」とされている。 」
とあり、そのあと、
「このような公認心理師として業務を行うために必要な基本的知識及び技能を具体的な項 目で示したものが、公認心理師試験出題基準である」
としているところからも、「基本」の事例としてあげられています。基本中の基本と考えているということでしょうか。そのためか、この主治医が関わる問題はたくさん出ています。医師の指示については、公認心理師法42条2項に関する運用基準があります。
こちらをしっかり読んでおくことが必要です。しかし、実際には事例問題にこの主治医が出てくることが多く、複合的な知識が必要です。
まず北海道試験問54
心の健康問題により休業した労働者が職場復帰を行う際に、職場の公認心理師が主治医と連携する場合の留意点として、正しいものを2つ選べ。
① 主治医と連携する際は、事前に当該労働者から同意を得ておく。
② 主治医の復職診断書は労働者の業務遂行能力の回復を保証するものと解釈する。
③ 主治医に情報提供を依頼する場合の費用負担については、事前に主治医と取り決めておく。
④ 主治医から意見を求める際には、事例性よりも疾病性に基づく情報の提供を求めるようにする。
⑤ 当該労働者の業務内容については、プライバシー保護の観点から主治医に提供すべきではない。
正答は①と③です。公認心理師過去問詳解 2018年12月16日試験完全解説版によれば、正答率は66.0%です。やはり2問完解は難しくなるのでしょう。私は③と④の違いがわかりませんでした。この問題は「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が必要です。
問59
27 歳の女性 A、会社員。年前から大きなプロジェクトの一員となり、連日深夜までの勤務が続いていた。気分が沈むため少し休みたいと上司に申し出たところ、認められなかった。徐々に不眠と食欲不振が出現し、出勤できなくなった。週間自宅にいたが改善しないため、精神科を受診した。自責感、卑小感及び抑うつ気分を認め、A に対して薬物療法が開始され、主治医は院内の公認心理師に面接を依頼した。
A への公認心理師の言葉として、最も適切なものを1つ選べ。
① 趣味で気晴らしをしてみましょう。
② 労働災害の認定を申請してはどうですか。
③ 自分のことを責める必要はないと思います。
④ 他の部署への異動を願い出てはどうですか。
⑤ 私が代わりに労働基準監督署に連絡しましょう。
③が正答です。これは正答率80.6%でした。簡単だったようです。私は消去法で正解でしたが、積極的にはわかりませんでした。やはり医師がポイントで自責感、卑小感、抑うつ、これらを医師が認めたところが重要です。
問76
72 歳の男性 A。76 歳の妻 Bと二人暮らしである。Bは年前にAlzheimer 型認知症の診断を受け、現在は要介護の状態である。Aはもともと家事が得意であり、介護保険サービスを利用することなく在宅で介護していた。A には、B に苦労をかけたことが認知症の原因だという思いがあり、限界が来るまで自分で介護したいと強く望んでいる。最近 Bが汚れた下着を隠すようになり、それを指摘しても B は認めようとしない。A は時々かっとなって手が出てしまいそうになるが、何とか自分を抑えてきた。
Bの主治医から依頼を受けた公認心理師の行うべき支援として、適切なものを2つ選べ。
① 介護負担軽減のために B の施設入所を勧める。
② A と定期的に面接を行い、心理的負担を軽減する。
③ 虐待の可能性があるため、B と分離する手続を進める。
④ B の主治医と相談し、A の精神的安定のため投薬を依頼する。
⑤ A の許可を得て、地域包括の介護支援専門員とともに負担軽減のためのケアプランを検討する。
②はすぐに確定かと思います。③はすぐに違うとわかります。④はまた別の医師にかかるならばともかく、Bの医師に依頼するというのはちょっと考えにくいでしょう。精神が不安定だとも書いてありません。⑤は間違いないかと思います。
比較的簡単だったのか、正答率は91.7%でした。
問152
20 歳の男性 A、大学生。「誰かが自分の中に入ってくるから気持ちが悪い」と言い、半年前から大学を欠席するようになった。最近は「町中の人々が自分の命を狙っている。もう死ぬしかない」と言っていた。
Aは包丁で自分を刺そうとしているところを発見され、家族に連れられて来院し、即日、医療保護入院となった。1か月後、病識はないものの、症状が改善したため退院することとなった。主治医は退院後の方針について A の家族に説明した後、公認心理師に面接を依頼した。
公認心理師が行う A の家族への説明として、適切なものを2つ選べ。
① 精神症状は再発することがあります。
② 大学に休学の手続をとってください。
③ 服薬の管理は本人に任せてください。
④ 外来通院を続けるように支援してください。
⑤入 院前に思っていたことは妄想なので、もう考えないように説得してください。
なかなか重たい事例問題ですが、統合失調症かなとの想定はいるのだと思います。⑤は論外でしょう。④は確定でしょう。②はおそらく違うでしょう。少なくとも公認心理師が単独で決めることではありません。①か③かですが、服薬の管理を本人に任せる根拠がないのと、それは医師が言うことでしょう。したがって①と④で私も正解でした。正答率は95.8%。
問153
50 歳の男性 A。うつ病の診断で通院中である。通院している病院に勤務する公認心理師が A と面接を行っていたところ、A から自殺を計画していると打ち明けられた。A は「あなたを信頼しているから話しました。他の人には絶対に話さないでください。僕の辛さをあなたに分かってもらえれば十分です」と話した。このときの公認心理師の対応として、優先されるものを2つ選べ。
① 自殺を断念するように説得する。
② 自殺予防のための電話相談を勧める。
③ 主治医に面接内容を伝え、相談する。
④ 秘密にするという約束には応じられないことを A に伝える。
⑤ A の 妻に「話さないでほしい」と言われていることを含めて自殺の計画について伝える。
まず③は必要なのだと思います。④は論外。⑤は妻が問題に出ていませんから論外です。②は公認心理師がリファーする先としては不適切です。医師がいるわけですから。残るは①ということで、正答は①と③と、私は思ったのですが、④はわざわざそんなことを言う必要がないと考えるのは素人考えのようで、このような秘密を誰かに言うときにはクライエントの了解を得るのだそうです。説得をするのと、約束はできないと伝えることの選択になったのですが、私にはこれは難しかったです。説得をすると、わかってもらえないと感じるからよくないということでしょうが、信頼している人から約束をできない、と言われることも、かなりつらいことかと思うのですが、結局主治医には相談するわけなので、④が矛盾しないということと理解できます。正答率は68.8%でした。
9月9日試験の主治医に関連する問題です。
問3
14 歳の女子 A、中学生。摂食障害があり、精神科に通院中である。最近、急激にやせが進み、中学校を休みがちになった。A の母親と担任教師から相談を受けた公認心理師であるスクールカウンセラーが、Aの学校生活や心身の健康を支援するにあたり、指示を受けるべき者として、最も適切なものを1つ選べ。
① 栄養士
②学校長
③ 主治医
④ 養護教諭
⑤ 教育委員会
これはサービス問題の類になるかと思いますので、解説不要かと思います。③が正答です。
問60
33 歳の女性 A。A は、3年前にうつ病と診断されて自殺未遂歴がある。1か月前からうつ状態となり、入水しようとしているところを両親が発見し、嫌がる A を精神科外来に連れてきた。両親は入院治療を希望しており、A も同意したため任意入院となった。入院当日に病棟で公認心理師が面接を開始したところ、「すぐに退院したい」と A から言われた。このときの A への対応として、最も適切なものを1つ選べ。
① 主治医との面接が必要であることを伝える。
② 退院には家族の許可が必要であることを伝える。
③ 意に 反する入院は有益ではないため面接を中断する。
④Aが 希望すれば直ちに退院が可能であることを伝える。
⑤ 外来に通院することを条件に、退院が可能であると伝える。
これは任意入院というところがポイントです。
任意入院であるAの退院の可否についての判断は、精神保健指定医の診察が必要であるため、正答は①となります。
問64
55 歳の男性 A、自営業。A は糖尿病の治療を受けていたが、その状態は増悪していた。生活習慣の改善を見直すことを目的に、主治医から公認心理師に紹介された。A は小売店を経営しており、取引先の仲間と集まってお酒を飲むのが長年の日課となっていた。糖尿病が増悪してから、主治医には暴飲暴食をやめるように言われていたが、「付き合いは仕事の一部、これだけが生きる楽しみ」と冗談交じりに話した。Aは「やめようと思えばいつでもやめられる」と言っている。しかし、翌週に面接した際、生活習慣の改善は見られなかった。まず行うべき対応として、最も適切なものを1つ選べ。
① 家族や仲間の協力を得る。
② 飲酒に関する心理教育を行う。
③ 断酒を目的としたグループを紹介する。
④Aが自分の問題を認識するための面接を行う。
⑤ Aと一 緒に生活を改善するための計画を立てる。
これは結果として、あまり主治医に関係しませんが、当塾の解説に沿うと、
「Aは、多理論統合モデルにおいて、前熟考期(問題を知らないか、問題と生活習慣の関連を理解しない段階)の段階であると考えられるため」
④になります。
問77
30 歳の女性 A、事務職。A はまじめで仕事熱心であったが、半年前から業務が過重になり、社内の相談室の公認心理師 B に相談した。その後、うつ病の診断を受け、3か月前に休業した。休業してからも時折、B には近況を伝える連絡があった。本日、A から B に「主治医から復職可能との診断書をもらった。早く職場に戻りたい。手続を進めてほしい」と連絡があった。このときの対応として、適切なものを2つ選べ。
① A と B で復職に向けた準備を進める。
② B が主治医宛に情報提供依頼書を作成する。
③ A は 職場復帰の段階となったため相談を打ち切る。
④ A が 自分で人事課に連絡を取り、復職に向けた手続を進めるように伝える。
⑤ A の 同意を得て、B が産業医にこれまでの経緯を話し、必要な対応を協議する。
これは難問です。まず③④は論外でしょう。②は有力です。①か⑤が難しいのですが、⑤はつい主治医がいるので必要がないかと、安直に考えると失敗します。当塾の解説に沿うと、
「主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判 断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判 断とは限りません。」
とされているようです。
したがって②と⑤です。
問130
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の各段階で事業者が行うことについて、適切なものを2つ選べ。
① 休業の開始時には、傷病手当金など経済的保障について説明する。
② 職場復帰の可否については、産業医の判断があれば、主治医の判断は不要である。
③ 職場復帰の可否を判断するために、職場復帰支援プランを本人に提示し、本人の意思を確認する。
④ 最終的な職場復帰は事業者が決定する。
⑤ 職場復帰後は、あらかじめ決めた職場復帰支援プランに沿うようフォローアップする。
まず②は問77からすると、正答にはなりません。①は否定しようがありませんので、確定かと思います。⑤はおそらく「あらかじめ決めた」が論外です。③か④となりますが、対極です。私は③にしてしまいましたが、間違いでした。職場復帰支援の<第4ステップ>は事業所が決めるのだそうです。
第2回試験の
問6231歳の女性A。身体疾患により一時危篤状態となったが、その後回復した。主治医は、再発の危険性はないと説明したが、Aはまた同じ状態になって死ぬのではないかという不安を訴え、ベッドから離れない。病棟スタッフからはリハビリテーションを始めるよう勧められたが、かえって不安が強くなり、ふさぎ込む様子がみえたため、主治医が院内の公認心理師に面接を依頼した。公認心理師がまず行う対応として、最も適切なものを1つ選べ。
①心理教育として死生学について情報提供を行う。
②不安を緩和するためのリラクゼーションを行う。
③再発や危篤の可能性が少ないことを引き続き説得する。
④面接の最初に「あなたの不安はよく理解できる」と言う。
⑤死の恐怖とそれを共有されない孤独感を話してもらい、聞く姿勢に徹する。
キーワードは一時危篤状態からの回復、再発の不安、公認心理師がまず行う対応です。
①は論外です。②は微妙です。③も論外です。公認心理師がそんなことを言えませんし、説得する事柄ではありません。④微妙です。共感でしょうか。でも「面接の最初」が引っかかります。インテークということでしょうか?それとも単に初回面接という意味でしょうか?インテークは一回、初回だけとは限っていません。この問題は「まず」とあるので、違うのかなという印象です。⑤は死の恐怖は事例にありますから、否定しようがありません。それを共有されないことっもその通りです。事例の「ふさぎ込む様子」から「孤独」を持っているかどうかが論点でしょう。聞く姿勢に徹するを否定する余地はありません。おそらく②か④なのでしょうが、不安を緩和するためのリラクゼーションて、具体的に何か?と考えると、アロマ?という疑問がでてしまいます。「まず」アロマかと言われると、まずは聞いた方がいいだろう、ということで⑤を支持します。
以上からもわかるように主治医に関する問題はとてもたくさんあります。事例問題に多いように思いますが、様々な観点から出題されると言えます。第3回試験も必須です。
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