リスクアセスメント
ブループリント大項目13、障害者(児)の心理学、中項目(2)障害者(児)の心理社会的課題と必要な支援の小項目に「合理的配慮」というワードがあります。このワードが出た場合、障害者(児)に関する問題と想定する必要があります。第2回試験では、
問97大学における合理的配慮について、最も適切なものを1つ選べ。
①合理的配慮の妥当性の検討には、医師の診断書が必須である。
②合理的配慮の内容は、授業担当者の個人の判断に任されている。
③合理的配慮は学生の保護者又は保証人の申出によって検討される。
④合理的配慮の決定手続きは学内規程に沿って組織的に行うべきである。
⑤意思決定が困難な学生への合理的配慮は、意思確認を行わず配慮する側の責任で行う。
これは、消去法の方がわかりやすいかもしれません。①は「必須」かどうかがポイントです。文科省の「障害のある学生の就学支援に関する検討会報告」では、「原則」診断書や標準化された心理検査などの根拠資料が必要であるが、障害の内容によって、資料の有無に関わらず合理的配慮の提供について検討すること、と留保が記されています。だから「必須」とは言えないということになります。国語の問題のようですが、「必須」のような明確な言い方や極端な言い方、断定的な言い方が出た場合は、慎重に他の選択肢も見ておく必要があります。国語の場合はたいていは正解ではありません。
②授業担当者個人に任されることはありません。私は大学側から依頼が来ることはありますが、私が任されることはありません。正確には大学は窓口が設けられています。
③は引っかかりそうですが、原則、本人の申し出です。
④これが正答ですが、大学は「障害者差別解消法」第9条に基づき、国立大学は要領を作成、公表が義務付けられています。公立大学、私立大学も準じていると言えます。そのため、大学ごとに学内規定があると考えるのが妥当ということになります。
⑤意外に難しいのですが、「意思確認を行わず」は明らかに違います。
もう一つ、
北海道試験では問12です。こちらは大学生ではありません。
障害のある児童生徒への合理的配慮に該当する例として、最も適切なものをつ選べ。
① 特別支援学校視覚障害の授業で点字を用いる。
② 特別支援教室において個別の取り出し指導を行う。
③肢体不自由の児童生徒のために学校にエレベーターを設置する。
④ 特別支援学校聴覚障害の授業で音声言語とともに手話も使う。
⑤ 試験の際、書字障害の児童生徒にパーソナルコンピューターでの答案作成を許可する。
とりあえず、文科省のページを見ましょう。「合理的配慮」について、
(1)障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」においては、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」を位置付けている。
(2)同条約「第二条 定義」においては、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。
とまず法律上の定義を出します。(2)は良いことが書いてあるとは思いますが、具体的なものではありません。となると、この問題は、法律の話ではなく、応用の方を答えなければならないとなります。そこで見るべきは、具体例ということになります。
正解は⑤です。これは心理学的な問題というよりも、法律に関係する問題と捉えた方が良い問題です。障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」の箇所が重視すべき箇所ということになります。
合理的配慮についての具体例は
1.共通
バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備
障害の状態に応じた身体活動スペースや遊具・運動器具等の確保
障害の状態に応じた専門性を有する教員等の配置
移動や日常生活の介助及び学習面を支援する人材の配置
障害の状態を踏まえた指導の方法等について指導・助言する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理学の専門家等の確保
点字、手話、デジタル教材等のコミュニケーション手段を確保
一人一人の状態に応じた教材等の確保(デジタル教材、ICT機器等の利用)
障害の状態に応じた教科における配慮(例えば、視覚障害の図工・美術、聴覚障害の音楽、肢体不自由の体育等)
2.視覚障害
教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整(弱視)
音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設(学校内・通学路とも)
障害物を取り除いた安全な環境の整備(例えば、廊下に物を置かないなど)
教科書、教材、図書等の拡大版及び点字版の確保
3.聴覚障害
FM式補聴器などの補聴環境の整備
教材用ビデオ等への字幕挿入
4.知的障害
生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
漢字の読みなどに対する補完的な対応
5.肢体不自由
医療的ケアが必要な児童生徒がいる場合の部屋や設備の確保
医療的支援体制(医療機関との連携、指導医、看護師の配置等)の整備
車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
障害の状態に応じた給食の提供
6.病弱・身体虚弱
個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
入院、定期受診等により授業に参加できなかった期間の学習内容の補完
学校で医療的ケアを必要とする子どものための看護師の配置
障害の状態に応じた給食の提供
7.言語障害
スピーチについての配慮(構音障害等により発音が不明瞭な場合)
8.情緒障害
個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
対人関係の状態に対する配慮(選択性かん黙や自信喪失などにより人前では話せない場合など)
9.LD、ADHD、自閉症等の発達障害
個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保
クールダウンするための小部屋等の確保
口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示
以上になります。これをすべて覚えるのは大変ですが、教育と障害の分野の両方に関わることですので、知っておいた方がいいものであることは間違いありません。これを参考に選択肢を見ると、
① 特別支援学校視覚障害の授業で点字を用いる。
特別支援学校は学校教育法にありますが、ここでは点字が合理的配慮と記されているわけではありません。
② 特別支援教室において個別の取り出し指導を行う。
特別支援教室の場合、入り込みと取り出し指導の両方が重要ですので、取り出しだけが(だけとはいっていないかもしれませんが)合理的配慮とは言いにくいかと思います。
③肢体不自由の児童生徒のために学校にエレベーターを設置する。
これは上記にありますが、「車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保」とあります。エレベーターまでは想定されていないようです。
④ 特別支援学校聴覚障害の授業で音声言語とともに手話も使う。
これは迷いましたが、上の記述では手話は含まれていません。
⑤ 試験の際、書字障害の児童生徒にパーソナルコンピューターでの答案作成を許可する。
書字障害は、上記ににLD、ADHD、自閉症等の発達障害とあり、「個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保」となっています。以上から考えると、やはり⑤となります。これを瞬時に正解に導くには、学校教育法、特別支援学校、特別支援教室、障害者の権利に関する条約などの知識が不可欠です。
かなり精密な問題ですので、比較的難しいと思います。正答率は63.2%でした。より正確な解説は、当塾の過去問詳解にありますので是非ご覧頂きたく思います。
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