公認心理師試験重要キーワード 児童相談所
公認心理師試験のブループリントには「社会構成主義」というワードが心理学、臨床心理学の全体像のところの小項目に出ています。あまりこのワードが出題されている印象はなかったのですが、第2回試験の問141事例問題で出ています。
19歳の男性A、大学1年生。Aは将来に希望が持てないと学生相談室に来室した。「目指していた大学は全て不合格だったので、一浪で不本意ながらこの大学に入学した。この大学を卒業しても、名の知れた企業には入れないし、就職できてもずっと平社員で結婚もできない。自分の将来に絶望している」と述べた。Aに対する社会構成主義的立場からのアプローチとして、最も適切なものを1つ選べ。
①不本意な入学と挫折の心理について心理教育を行う。
②Aの将来への絶望について無知の姿勢で教えてもらう。
③Aの劣等感がどのように作り出されたのかを探索させる。
④学歴社会の弊害とエリート主義の社会的背景について説明する。
⑤Aの思考のパターンがどのように悲観的な感情を作り出すのかを指摘する。
私個人なら迷わず⑤ですが、社会構成主義という以上、そうはいかないでしょうから逆に⑤は消えそうです。正解は②ですが、選択肢の内容からどこが違うのかはあまりはっきりしません。やはり社会構成主義を正確に知って置く必要があります。私の曖昧な知識では「言語が現実を作っている」くらいで、現実はその人ごとに違っても良いということだろうと思います。仏教の唯識学と少し似ているので、私の中では印象に残りやすい言葉です。しかし、この程度ではこの問題は手も足も出ませんので、もう少し詳しく知識を入れる必要があります。少なくとも公認心理師試験において社会構成主義は、ナラティブアプローチとセットで考えておく必要がありそうです。
REBTは現実的な思考を重視します。仏教も同様です。一方で、その現実とは何かという話になりますが、社会があって現実があります。よく言われる「現実的であるか否か」は「我々が住む社会において」という前提に立脚します。「もっと現実を見なさい」とか「もっと現実に即して考えなさい」などという言説は、社会がなければあり得ないということになります。その社会は言語でできているということですが、言語と言っても、世界には7000ほどあります。それだけの文化と歴史があって、この文化や歴史も言語でできています。そして文化や歴史は言語で物語(ストーリー)として形成されています。このストーリーは極論、言語の数だけあるので、悪く言えば、隣の国々とうまくいくことはありません。でも、人工的にできているわけですから、人工的に都合よく紡ぎ合わせることもできますから、隣の国々と仲の良かったストーリーを組み立てることもいくらでもできます。ストーリーとは一見、修正不能のように思えるかもしれませんが、そのように凝り固まったものでもなく、もっと柔軟なものです。歴史を都合良く改竄するということは、いくらでもある話ですが、そもそも歴史は書き手の都合のいいように書かれているものです。とは言え、全く事実を無視していると、今度は現実からかけ離れたフィクションになってしまいます。これはこれで違います。その意味で、いわゆるドミナントストーリーと言われるある程度固定された、支配的なストーリーも対立軸として、必要ということになります。それがあって、オルタナティブストーリーが成り立つということも重要です。
もう一つ重要なことは、社会構成において言語が重要な役割を果たすと言っても、独り言ではなく、会話の中で構成されていくものだということです。仏教経典は仏教史を語る上では言うまでもなく不可欠ですが、ほとんどがブッダと弟子の誰かとの会話から成り立っています。「如是我聞」からたいていの経典は始まりますが、「このように私は聞いています」ということですから、当然会話で成立していることになります。
この時、質問する側は無知の姿勢で聞かねばなりませんが、この問題もそういうことと理解できます。
より正確な解説は、当塾の過去問詳解にありますので是非ご覧頂きたく思います。
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