言論の自由、発言の自由、解釈の自由
ものすごく私的雑感を書きます。
今年は半分も見ることができませんでしたので、駅伝観戦三昧とは程遠い状態でしたが、最近はスマホで速報がすぐにみることができるので、本当に便利です。箱根駅伝は、言わずと知れた学生駅伝の最高峰の試合です。といっても本来は関東学連の試合なので、全日本級の試合ではありません。秋の全日本大学駅伝が、大学駅伝日本一を決める大会ですが、実質箱根が本番と考えている選手や関係者の方が多いと思います。しかし、かなり特殊なコースと、4区以外は20キロ以上を走らねばならないため、過酷さは他の追随を許しません。多分世界を見渡してもこんな特殊な大会はないと思います。そもそも駅伝は日本の競技です。海外ではマラソンリレーのイメージだそうです。だから国際大会があってもEKIDENの名称がそのまま使われています。
日本人はマラソンという個人競技よりも、どちらかと言うと駅伝を好む傾向にあるようです。高校の陸上部で長距離をすると必然的に駅伝がメインだと考える学校も多くあります。わざわざ「駅伝部」という部名にしているところも少なくありません。「心の襷リレー」なんて言葉もあるくらいです。「襷に部員全員の魂を込める」というTHE精神論も、選手だけでなく観る人にも比較的腑に落ちやすい、そういった競技です。長距離という個人競技でありながらも、中継所で待つ次の走者やチームのために一本の襷をつなぐところに日本人好みの精神性があるのかもしれません。また襷を渡すと力尽きて倒れ込んでしまうなんてシーンも心をうつのだと思います。若い学生が、ある意味人生をかけて全力を尽くし切る姿に美しさを感じる人も多いと思います。箱根を陸上人生の集大成にする選手もたくさんいます。「家族のために」というフレーズもよく飛び交います。テレビもそのあたりをやたらと押しまくって、無理矢理にでもドラマに仕立て上げる傾向が強くあります。また、テレビはすぐにスターを作りたがりますので、「山の神」といったわかりやすいフレーズでスターを創出します。(された方は迷惑かもしれません)
私は研究と駅伝に共通点が多いと考えています。(私たちが手掛ける受験はフィギュアスケートですが)駅伝も研究も一見孤独です。私も高校時代、なんでそんなにしんどいことしてるの?とよく聞かれました。長距離選手に対してこんな疑問を持つ人は多いのではないかと思います。私もその「なんで?」に対する明確な答えを持ってはいません。身体を痛めつけることが好きなわけでもありません。高校の終わりの方は、強くなるために練習しているのに、すればするほど、身体が壊れていっている感じしかしませんでした。朝起きて、足が曲がるかどうか確認しなくてもいい、と認識したのは30歳を超えてからです。常に不安を抱えていました。ただ、結果から言えば「その程度の選手」だったということです。研究もよく「何でそんなことしているの?」と聞かれる点ではやはり共通点があると思います。
箱根の選手たちは戦士とも譬えられますが、常に自分やケガとも闘っていると思います。ただ、他人との勝負も大事なのですが、自分を少しでも高めることに重きをおいていたとは思います。常に自己記録との戦いではありました。それが駅伝となると「他者のため」という目的が加算され、日頃磨いた自分を限界を超えて発揮することができる場合が多いのです。研究も同じ要素が多分にあると思います。私たちの分野には「他者のため」という要素少ないのですが(私から見るとたくさんありますが)、医学などはその要素ががかなりあると思います。また医学の発展の原動力でもあります。研究はこのように求める他者がいてくれることが重要なのです。そのために研究者は日々自己研鑽をして、その成果を披露していると言えるのです。
またコーチングの面でも共通点は多いと思います。駒澤大学の監督は、名監督に数えられますが、選手はいつの時代も「本気の言葉をくれる」と口を揃えます。この本気の言葉が重要なのだと思います。箱根駅伝は、選手に寄り添う形で、監督車が伴走することが多少認められていますが、優勝した青山学院も駒澤も監督の言葉に選手が勇気づけられることが重要です。これは一朝一夕にできることではなく、日々のかかわりの中から築き上げられた関係から生まれるものです。監督は毎日のように本気の言葉をレギュラーだけではなく、補欠や、あるいは試合に出ることのできない選手、マネージャーなどの裏方にも、投げかけ続けなければなりません。これは本当に大変なことですし、余程の情熱がないとできないことです。素晴らしいチームは、素晴らしい選手と素晴らしい監督と、素晴らしい裏方が全部そろってはじめてできます。速い、強いだけでは勝てない面が多々あります。すべてがそろって、さらにそれを監督がうまく循環させられたチームが箱根に出場し、さらに優勝争いをしていくのだと思います。
箱根駅伝は、その意味で学ぶところが大きく、私も監督として、そんな塾づくりを常に目指しています。
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