小論文を書く時に意識しておくべきこと

井上博文

井上博文

テーマ:小論文対策

小論文は看護大編入や看護学校で問われることがよくあります。看護大編入では神戸市看護大が小論文を課しています。私自身、よくレポートと小論文の違いがわからないといった質問を受けます。当然ですが、小論文はレポートでもなければ感想文でもありません。レポートは報告書です。小論文といっても論文ですので、論理的思考に基づいて書かなければなりません。論理的に考えられなければ、小論文は書けないということですので、まずは論理的に考える習慣を身につける
必要があるということになります。
例えば、「相関がある」ということと、「因果関係がある」ということは全く別問題ということも踏まえておく必要があります。例えば○○大学法学部が日本で最も犯罪者を出しているという数字が出たとします。その数字はその大学が他の大学と比べて、犯罪者を輩出した数字が多かったという事実を示しているということのみがわかるのであって、何らかの関係があるとは言えますが、だからといって、その大学に行くという原因でもって犯罪者になるという因果関係が証明されるわけではないということです。犯罪者ならわかりやすいですが、これは就職でも同じことです。

ただし、論理的にものを考えると言っても、実は明確な定義はありません。極論を言えば、小論文の場合、論理的でないと思われなければ良いという言い方もできます。論理的思考を見せるためのコツらしきものを言えば、まずは筋道をたてて、それにそった証明をすることです。「筋」を通すのは簡単ではありません。筋を通せばいわゆる「言いたいこと」を言うことができます。「筋」は最初から人為的に設定をしていないとすぐにずれてしまいます。油断していると違う話になっていたなどということは、よくある話です。この設定された筋を、フローチャートのように先に作っておき、それにそって書いたり、考えたりする訓練を積むと、「構造」をイメージすることができるようになります。私が必修の授業の中で提示する構造は「問い→回答→証拠→方向性」の4点セットです。例えば、鳥が飛ぶ理由を問いたい場合、「なぜ鳥は飛ぶのか」→「なぜなら羽があるから」→「羽の証拠写真」→「羽以外の飛べる可能性の提示」と筋を作ることはできます。もちろん鳥が飛べる理由は羽があるからだけではありませんので、これですべてが正しいわけではありませんが、「この論文では鳥が飛ぶ要素の一つである羽について問い、検証したい」となると、絞り込みと構造と言いたいことが盛り込まれます。そうすると、この論文で作者が何をしたいのかということが読み手に伝わることになります。まず論文を意識するにはこのように筋道をたてることができれば、論文を書くまでの下ごしらえの下ごしらえができます。

筋道をたてられるようになったら、次は情報収集です。情報がないと論理的には考えられません。論文は主張に対する根拠を出さなければなりません。根拠を出すためには、やはり情報が豊富になければうまく出せません。よく小論文教材を読むと、小論文を書くには、新聞を読むと良いと書いてありますが、私はあまり信用していません。新聞情報がすべて悪いわけではありませんが、不適切な情報も多く、偏った情報もたくさんあります。ましてやテレビは論外です。やはり、学術雑誌など論文を読んで、最新の動向を入手する方がむしろ早道だと思います。また、論文にない情報としては、自分で取材するというものもあります。当塾では、研究計画を作る際に自分で調査をしてもらうことがよくあります。先行研究の少ない分野だと、どうしても情報が少ないのでそれなら自分で調べてしまおうということです。生情報の獲得は、様々な面で役に立ちます。こういった取材をして、生情報の獲得を自分でできる人は、あまり文章の書き方など細かい点を習わなくとも、それなりに良い小論文を書くようになっていきます。

論文は、いろいろな定義があるにせよ、要は情報提供をすることですので、論文が書けないと思う人は、書き方の問題よりも情報収集についての意識を作ると、かなり早く上達するはずです。コミュニケーションとは、情報伝達と訳されますが、要するに情報を情報としてそのまま渡すことです。不特定多数の人に、自分の作り得た情報を渡すことをマスコミュニケーションと言います。論文を書くというのは、このマスコミュニケーションの類に入ると言えます。マスコミュニケーションにおいて重要なルールは、読む人によって、異なった情報であってはならないということです。マンガの雑誌を買うと、京都と大阪で違う内容になっていたら大変なことです。これが単なるミスでなく、人為的に行われたならば、おそらく日本中を揺るがす事件になるでしょう。それだけコミュニケーションは重要と言えます。小論文の場合においても基本的なことは変わりません。論文は、メディアになった自分が作った情報を提供する場だという意識を常にもっておく必要があります。本を書くことを思えば、わかりやすいかと思います。本は何かしら読み手に伝えたいことを決めて、題目とし、自分がまとめた情報を読み手に提供し、対価をもらうわけです。新聞も同様です。情報は基本的に金銭で買うものですので、情報提供者はそれなりの質を保った情報をわたさねばならないということです。その意識があれば、小論文は非常に書きやすくなりますし、少なくとも「何が言いたいのかわからない論文」と評価されることはなくなるでしょう。

小論文の授業というのは、ある部分では予備校特有の授業ではないかと思います。意外とその授業を受けたことがある人が多く、そしてもっとも面白くない授業だったという人が多いことも事実です。小論文の授業で、ダメな教員及び予備校はひたすら書かせることをします。しかし、これは大間違いと断言できます。論理的に考える土台ができずして、書ける道理がないからです。よって、論文を書くことは、ある程度論理的思考ができるようになってからということになります。いざ、書くと決めたら枠を設定するのが妥当です。教材を買う時に、模範解答を見て、模範解答の横にどのようなことを書くかをメモ書きしてくれているものがあります。この種の本は良書といえます。例えばこの本はその類に入ると思います。


この本の模範解答の作り方は参考になります。大学院入試や看護学校入試といった入試分野を定めてしまうと、その分野の参考書だけを買おうとするものですが、良書は、その分野だけにあるわけではありません。幅広い着眼点から探すのが妥当です。このような教材から論文の構造を学び、最近の話題や情報の使い方も記されていますのでそれも学ぶと、おのずと書き方が見えて来ます。


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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

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