顧客ニーズとウォンツについて―顕在化した需要と潜在的需要について考える―Ⅲ
今日の目次
・大学で教える、という経験
・つかみはOK?
・恋愛とマーケティングの相関性について
大学で教える、という経験
だいぶ昔のことになりますが、鹿児島大学工学部の大学院生を相手にマーケティングの講義をしたことがありました。鹿児島大学では「稲盛特別講座」という期間限定のイベント的講座ウイーク(今は少し形を変えているようですが)があり、その中で2年間特別講師を務めたのです。
当時、国立大である鹿児島大学にも、マーケティングを専門に教える先生はいませんでした。たまたま縁あって、私がかつて実務として携わっていたマーケティングについて講義をすることになったのです。
私のマーケティング理論はあくまでも実務ベースであって、何か学問的体系的に勉強したということありません。それに私自身、もともとマーケティングを学問として捉えていたわけでもなかったので、主として東京でのマーケティングビジネスの経験をもとに授業を組み立てました。
「つかみ」はOK?
さて、引き受けてはみたものの、生まれて初めての大学(しかも大学院)での講義であります。講義当日、冒頭まず「つかみ」をどうしようかと考えました。学生たちは、おそらく冒頭の「つかみ」が面白くなければ、その後の話にもついてこないだろうと思ったからにほかなりません。
準備段階で私は、「まだ実務経験のない彼らにも理解できるテーマは何だろう?」と考えました。そこで思いついたのが「恋愛」というテーマでした。
当日冒頭で私は「マーケティングを君たちにも身近な事象に例えれば、実に「恋愛」とよく似ているのである。」と切り出すことにしたのです。その瞬間、「これで学生たちは完全に食いついてきた・・・」と、思ったのですがどうだったでしょうか。いや、たぶん食いついてきたはずです。
恋愛とマーケティングの相関性について
そのとき私がどんな話をしたかといえば、次のようになります。
― 君たちは恋愛をするとき、相手に対していったいどんなアプローチをするだろうか?(受講生の中には女子学生も少しはいましたが、工学部ということで大半は男子学生でした。で、私は男子を主に想定して語ったのです。)仮に気になる子がいたとしたら、まずその子の背景について知ろうとするのではないか。名前、年齢(この場合学年)、所属学部、出身地等々、まず相手のことを知らなければアプローチも何もできはしない。
しかし、こちらは、すでに恋愛感情を抱いている身だ。その程度のリサーチでは、彼女に深く食い込むことは叶わない。おそらく、もう少し突っ込んで調べるはずである。普段どんなパターンの生活をしているのか。何が好みなのか。趣味はあるのか。さらに調べて、彼女の友達を通じてアプローチするといった方法も考えられる。つまり、ターゲットの特性を掴んで、それにふさわしいアプローチの仕方を考えるのではないだろうか。
このとき、ターゲットに対して売り込むこちら側の「商材」は「自分自身」ということになる。だから、その自分をできるだけ彼女に受けがいいように、好みに合うように、見栄えを良くするにはどうしたらいいか、などいろいろ工夫するだろう。つまり、自分という「商品力」のレベルアップを図るはずである。
そういった一連の、恋愛を成就させようとする思考や行動のすべてがマーケティングと言っていいのだ。しかし、まあこれは、マーケティングにおける基本中の基本のパターンで、ほんの入口あたりと思っていただきたい。
こういったプロセスを応用したのが、ビジネスにおいてのマーケティング活動ということになる。だから、恋愛に際してそれを成就させるための一連の流れは、マーケティングを理解する上でのわかりやすい一つのパターン、入門編として頭に入れてもらいたい。
―
といったような話をしたのです。
もちろん、これはかいつまんで書いたのであり、実際はもっと言葉をいろいろと尽くして説明したことは言うまでもありません。まあ、そんな努力もあってか、学生たちの食いつきはいいように見えました。
恋愛とは・・・なんちゃって
つづく