あらゆるものが端末になる世界―競争はアプリからボットへ―Ⅲ(おしまい)
[「借方」「貸方」って一体なんだ!?]
入力作業をする私の背中を見ていたクライアントの女性社長さんから
「博士先生は、この仕事がホントに嫌いでしょう?」
と笑いながら言われたのは昔の話。
その入力作業から解放され、経営者の立場になったものの、入力作業そのものは、早くなくならないものかとずっと考えていました。
さて、それから20年近くの歳月が流れました。
世の中にクラウドコンピューティングなるものが登場し、我々の業界に関してはクラウド会計なる世界が出現してきました。
私は、会計の最も原点に当たる入口は「仕訳」だと思っています。
「仕訳」では世の中のあらゆる経済的な取引を右(貸方)と左(借方)に分けて表現することになります。
その右と左に、それぞれ「科目」と呼ばれる経済取引における様々な名称を当てはめて分類していくのです。
遠い昔を振り返ってみると、これには相当戸惑ったことを思い出します。
「借方」と「貸方」って一体なんだ!?
この「借方」と「貸方」の適正な「当てはめ方」を覚えないことには、会計の作業は始まりません。
今でもお客さんのところに監査に訪れた際には、適正な取引仕訳が行なわれているかチェックするのです。
ところがこの最も原点である「仕訳」を、クラウド会計ではコンピュータに読み込ませようというのです。
「仕訳」は様々なケースが多すぎて(種類が多すぎて)自動読み込みなど不可能だと思われていました。
しかし、AIの持つ機能を学習すれば、それがそれほど難しい世界でないことが理解できます。
むしろもっと微妙で繊細な読み取りの世界すらすでに実現しているのです。(顔認証とか表情認識とか・・)
私は「仕訳の自動読み込み」が、楽な操作で可能になったならば、経理業務というのは、あとはスルスルっと簡単な世界になっていくだろうと思っています。
それを振り分けていくのは、コンピュータにとってなんのことはない得意な分野だからです。
ということは、我々が行ない料金を頂いていた「記帳代行」という分野は消えてなくなることでしょう。
しかし、こんな事実は、当たり前のように受け入れなくてはならないのです。
「借方」と「貸方」の適正な「当てはめ方」とは・・・・
つづく