作業的な仕事からの卒業―AI(人工知能)は天使か悪魔か・・・・―Ⅲ
[人間側から見れば常に「想定外」]
コンピュータには敵わない、ということが早々に確定したチェスの世界。
将棋はチェスに比べて指し手がはるかに多いので、コンピュータが追い付くにはまだ数十年かかる、と言われていた。
しかし、コンピュータの発達がすさまじいスピードなので(追いつくのは)意外に早まるかもな、とも感じていた私。
ところが、そう思っていた私の予想をはるかに超える速さでコンピュータが追いついたのである。
テレビ番組を見ていて、怖いな、と思ったのはAIの出す解が、何故その解答を出したのかプロセスがわからないという点であった。
以前、何故将棋においてコンピュータが人間に勝てないかといえば、膨大な次の指し手の中から、人間は瞬時に使えそうもない指し手はすべて省いて、有力な候補として残る指し手だけを選択する言わば直観のような判断力があるからだ、と聞いた。
コンピュータはすべての指し手をフラットに同じ条件で検討するので、処理しなければならない情報量が多すぎて、瞬時に最短最良の指し手を選んでくる人間にかなわないのだ、と聞いていたのである。
将棋についてはさっぱり知識のない私ではあるが、この説明については
「なるほど!だから、コンピュータは人間に勝てないんだ。」
と納得していた。
ところが今回はその説明が逆になったのである。
コンピュータは、普通だったら人間が初めに捨ててしまう膨大な量の指し手の中から、最良と思われる手を選んでくるというのだ。
つまり、人間がこれまで候補として残したであろう指し手は選ばないことになる。
だから、その指し手は常に、人間側から見れば「想定外」ということになるのだ。
「将棋はいい手を指したから勝つのではなく、悪手を指さなかった結果勝つのである。」
みたいな話を聞いたことがある。
つまりいかにミスが少ないかが将棋に勝つ肝だというのである。
その点からしても『電脳戦』において佐藤名人は常に最善の指し手を指していたという。
つまり、ミスを犯したわけではないというのだ。
だから、結果的に負けてしまったとき、どうしても自分を納得させることができなくて、かなり動揺したのだと思う。
その動揺と混乱はテレビを見ている私にも伝わってきた。
番組で解説していた羽生元七冠も
「どうしてああいう指し手になるのか、その背景がさっぱりわからない。」
的なことを言っていた。
なんで負けたのだろう??
つづく