中小企業はイノベーションが起こりにくく、労働環境も悪く、女性の進出率も低い―新型コロナ禍で露呈した「日本経済の脆弱性」について考える―Ⅷ
ラジオでは経済問題を取り上げています。
[経済全体の余力は緊急時の対応力の違いで顕在化する]
「生産性の低さ」と「薄利多売体質」という構造的な問題を抱える日本経済は、政府という政治の世界にも影響を与えているようである。
その問題に関して加谷氏は
「生産性の違いは政府の財力に直結する」
というタイトルで次のように述べられている。
―生産性の違いは、政府の財力にも直結する。生産性が高い国は、賃金も高いというのは経済学的な常識であり、賃金が高ければ消費も活発になるので税収が増える。
ドイツでは消費税率が20%近くもあるが(軽減税率あり)、賃金が高いので、日本のように消費増税で消費が冷え込むようなことはない。
法人税の税収も堅調なので、政府は過去7年間赤字国債を発行していない。
ドイツは今回のコロナ危機で、従来の方針を切り換え、大規模経済対策に備えて赤字国債の再発行を決定した。
今回のコロナ危機では国内のフリーランスの就業者に、数十万円を即座に支払い諸外国を驚かせた。
これだけ財政が堅調であれば、国債の大増発や所得補償の大盤振る舞いなど、いとも簡単だろう。―
働く人の賃金が高いということは、所得税の税収が大きいということになる。
加えて消費税、法人税の税収も堅調であれば、政府の財力は強くなって当然である。
わずか10万円の給付金支給に右往左往している日本に比べれば、はるかに頼りになるように見える。
政府の財力の違いは、こういった緊急時に顕著に表れるようだ。
さらに医療体制についても、日独の違いを加谷氏は次のように述べられている。
― 税収が堅調だと医療体制にも余裕が出てくる。
ドイツは、欧州の中ではコロナウイルスによる致死率が低く推移しているが、これは充実した医療体制が大きく貢献している。
ドイツの人口あたりのICU(集中治療室)の数は日本の5倍近く、人口あたりの医師数も日本の2倍近くあり、コロナウイルスの検査を1日当たり5万件も実施している(さらに拡充される見込み)。
経済全体の余力は、緊急時の対応力の違いとして顕在化してくるのだ。―
上記を裏付けるように、テレビのニュースでも、ドイツでは医療体制にまだ余力があることを紹介していた。
日本では、医師会がいち早く記者会見の場において、医療崩壊の危機を宣言し、「ダメかもしれません・・」と完全に及び腰だった様子とは大きな違いである。
つづく