どこでやるのか、は大事?―考えてみよう、立地というブランド―Ⅰ
もう、一昨年のことになるが、三菱重工業本社で異例の記者会見が開かれた。
同社の社長である宮永俊一氏が、大型客船造船事業から撤退を表明し、自社組織の問題点などにも触れたのである。
大会社の社長がここまであからさまに自社の問題点を明らかにし、公の場で話すのは珍しい。
それから約2か月経って、読売新聞に宮永社長の独占インタビューが掲載されていた。
このインタビューについて触れてみたい。
まず、大型客船事業からの撤退について敗戦の弁を語っておられた。
その最大の理由は「求めるものが様変わりしていた」ということである。
どういうことかというと、
― デジタル化が進み、客室全てで快適にインターネットにつながらないといけない。(中略)
蛇口をひねるとワインが出てくる装置など、様々なことが求められた。
壁の塗装、タイル張りも何度もやり直した。
ファッションと同じで、欧州の人の趣味に合わないというのだ。
船というより、高層ホテルを造るような感じだった。―
社長や現場の苦悩が滲み出るような回答である。
この短い話の中だけにも様々なヒントが隠されている。
日本企業の抱えている問題点と絡めてそこを掘り下げて行ってみようと思う。
まず、ネット環境の問題である。
豪華客船であれば、設備も最新のものが求められる。
技術的にも、その時代の最新のものが準備されていなければ、富裕層である利用客は納得しないだろう。
蛇口からワインというのは、贅沢度の問題かもしれない。
日本人であれば、おそらくそこまでの装置は求めない。
欧米の人々の場合、豪華客船の上でクラス感のある贅沢を味わいと思えば、それくらいの遊び心のある設備を求めてくるのだろう。
こういう設備が必要だったのかも知れません。
つづく