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コラム
伝統の破壊と再生―日本酒の挑戦―Ⅴ
2018年2月13日
[職人達との確執]
先述しましたように、桜井氏の父上は急逝されたために、よくあるほかのケースのように、先代との確執が長く続いた訳ではありませんでした。
私が見てきた経験では、ここの確執が長引くと、 そのうちに後継者が萎えてしまい、或いは嫌気がさしてしまって、事業の承継がうまく機能しなくなるケースが多かったのです。
そういう意味では、桜井氏はある程度やりやすい環境だったかも知れません。
しかし、旧い体質は、父上だけではありませんでした。
酒造りには欠かせないといわれている杜氏達もまた、当然といえば当然のことですが、職人気質の人が多く、そのほとんどが昔ながらの意識の持ち主だったのです。
この言わば専門家集団との確執も、桜井氏を大いに悩ませることになります。
しかしながらこれが、改革への決断を促すきっかけともなったのです。
その頃のいきさつについては次のように書かれています。
― また、桜井氏と杜氏との関係はよくなかった。
氏が酒造りにいちいち口を挟んだからである。
桜井氏は「こんな酒造りはおかしい」と思っていた。
「酒蔵こそが、酒造りのすべてに責任を持つべきです。だから、現場にも顔を出して、細かく指示していました。」
杜氏からすれば、自分たちの仕事に口を出す嫌な奴、という訳である。―
若い後継者と、旧勢力の代表である番頭さんがぶつかるという話はよく聞く現象であります。
それが職人さんとなるとよりやりにくかったに違いありません。
明日は見えるのでしょうか。
つづく
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