専門領域と一般領域の境界―大事だよね、退屈させない専門性の伝え方―Ⅲ(おしまい)
確定申告ひとつをとっても、税理士が独占していた仕事について、他の筋からのルートや選択肢もかなり増えてきているということになります。
とはいえ、まあ今回言いたいのは、別に私がそのことを嘆いている訳ではない、ということなのです。
日本が労働人口の減少から人口そのものの減少に転じ、事業所もその数を急速に減らしている現在、確定申告件数が減るくらいのことはもとより覚悟していなければなりません。
にもかかわらず、相変わらず世間では「確定申告こそが税理士の仕事なんだろう。」と、思われているということなのです。
ということは、世間の人々とのやりとりの中で言われる挨拶には
「(これからは税金のお仕事で)忙しい時期に入りますね。」
というニュアンスが含まれていることになります。
これに対して私は
「それはそうなんですが、このところお客様の経営支援の仕事で忙しくしております。」
と答えることにしています。
そうすると、
「え、そうなんですか!?」
と、みなさんちょっと驚いたような表情をなさいます。
「『経営計画』或いは『経営改善計画』をお客様と一緒に作成して行くといった仕事がここのところかなり多くなってきています。」
と、具体的な内容にまで話が及ぶとさらにびっくりしたような顔をしているのです。
経営計画策定風景
「そんなことまでなさるんですか?」
と驚いているので、
「そういったもの(『経営計画』)を顧客と一緒に作成して金融機関の協力を仰ぐ機会が多くなってきました。私の事務所では、顧客、銀行、税理士の3者が集まって協議をする機会がとても多くなってきましたよ。」
と、答えると
「そんな事実は全く初耳だ!」
というような顔をしているのです。
こんな現象はしばらく前から当り前のように続いていることなので、こちらは「当たり前だ。」と思っていたことなのですが、そんな印象をもっていなかった人にはかなり意外な事実なのでしょう。