常識破りの功罪Ⅱ
先日、例によって若手の経営者を中心にマーケティングの勉強会を開催したときのことです。
このときは、マーケティングによる成功事例を何点かあげてお話をしました。
具体的に自分の事業に応用できるかイメージしてもらおうと思ったのです。
持ち時間はあっという間に過ぎて、みんな熱心に聞いてくれたようであした。
講義のあと名刺交換などしていると、ひとりの若い経営者が挨拶に来ました。
今日初めて参加したようです。
彼は名刺を持っていませんでした。
開口一番、
「今日のお話は少し期待外れでした。」
と言われました。
「そうですか。どういう点が?」と私。
「マーケティングってどうせ大企業向けで結局金がかかる話でしょう? 私みたいに金も地位もない者にはあまりピンときませんね。」
ふーん、こいつ何を聞いていたんだろう?と思いながら、
「では、どういう話だったら、聞きたかったですか?」
と更に聞き返すと、
「例えば、金も何も無いどん底だった経営者が、どうやったらそこから這い上がれたのか、みたいな元気の出るような話を期待していた。」
私の中で何かがプチ切れました。
「そうですか。申し訳ないが、私はそういう話はきっと未来永劫することはないと思いますので、その手の話を聞きたかったら違う場所を選ぶことですね。」
少し冷たい言いかたかな、とも思ったが気がつくとそう答えていたのです。
これまでもこういったことは何度かありました。
マーケティングはビジネス上の具体的な戦略論です。
精神的な抽象論とは全く無縁の世界なのです。
偽りの看板を掲げたつもりはないのですが、どうも勝手に違う線を期待していたらしいのです。
「イタリア料理の夕べですよ」とお知らせし、実際イタリア料理を出したのに「何で中華料理じゃなかったんだ!」と文句をつけられているようなものです。
この手の勘違いは講演者としてはどっと疲れます。
腹立ちまぎれという訳ではないが、この件はいくつかの問題点があると思うので、説明をしておきたいと思います。
つづく