スタイリスト、「服育」の勧めⅡ
東京から地元鹿児島に帰り、税理士として働き始めて20有余年、地方の衰退が叫ばれる中、経済面での専門家としてその状況をつぶさに見てきました。不振にあえぐ地元企業が、業績を伸ばしもっと儲かるための処方箋を考えてみたいと思います。
地方における業績不振の要因はたった2つです。それは、「商品力不足」か「販売力不足」そのどちらかなのです。或いはこの両方ということもあり得ます。
まず、「商品力」から考えてみましょう。
私の住む大隅地方は農畜産業が盛んです。農畜産物は、通常生産したすべてが捌けます。育てた牛や豚が売れないで手元にいつまでも残ることはありません。農産物にしてもそうです。
このように農畜産の際立った特徴の一つに「在庫が残らない」という点があげられます。このほかの商売から見れば、かなり有利な条件を持つ農畜産業の業績を左右する要因はたったの2点。それは「相場」と「商品力」です。
「相場」が高いとき、物は黙っていても捌けるどころか、少々難ありの商品でも高値で取引されます。どんどん出荷すればそれだけ儲けることができるのです。
逆に「相場」が低いときは悲惨です。場合によっては生産原価を割ることもあり得ます。動物相手の畜産の場合、赤字覚悟で泣く泣く市場に出荷することになります。
この「相場」という奴を超える打ち手はないか、という点を考えてみたいと思います。
「相場」に左右されない打ち手とは何か? それが「商品力」なのです。
「相場」が下がった時にもほとんど影響されずに高値で取引されるのが、付加価値が高く希少なために、市場で引っ張りだこになっている商品です。
農産物でいえば、夕張メロンや山形のサクランボ、宮崎のマンゴーなどでしょうか。畜産物では松坂牛、鹿児島黒豚、名古屋コーチンなどが思い浮かびます。
これらは地域を代表するブランド品であり、日本はおろか海外でも高値で取引されています。ここまで上り詰めれば「相場」に左右されることはありません。
商品が「高い商品力」として市場に評価されるためには、これまで述べてきたように「他にはない付加価値」が必要です。まずは、平均的な品質を絶対に下回らないこと。平均の品質に達していなければ、そもそも普通に評価されることすらあり得ません。
「商品力」において大事な点は、事業者が常に「商品開発力」や「商品開拓力」を意識し続ける、ということです。市場における他の商品やこれまで作ってきたものよりもより良い商品。これを常に心がけるか否かで結果は大きく違ってきます。ただ漫然とそれまで通り作っていたのでは成長は覚束ないのです。