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育児をする女性だけが擁護される時代はおかしい?

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最近よく耳にするワーキングママの主張

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「最近、インターネットやニュースで、ワーママ(ワーキングママ)の記事をよくみかけるよね」
先日、ある女性が私にこんなことを言いました。彼女は続けます。

「確かに子育てをしながら働くのは大変だっていうことはわかるよ。でもさ、なんで子育てをしている女性の話ばかりになるんだろ?産んで、働きながら育てるんだと決めたのは自分だよね」と。
さて、みなさんはこの発言についてどう感じられるでしょうか。

ワーママはどれだけ大変なのか?

「ワーママの時短術」「子育てしながらも働きやすい会社ベスト5」
確かに、そんな記事を見かけることがよくあります。私自身、社会保険労務士として日々働き方と向き合っていること、また一児の母として働き方を考えない日はありません。

ですから、人と比べてよく目につくということもあるでしょう。
しかし、そんな「ひいき目」を除いたとしても、今は「少子化」が叫ばれている時代。テーマとして取り上げられることが多いのは必然的とも言えます。

例えば、「ワーママの時短術」。冒頭にご紹介した女性の理屈から言えば、ワーキングマザーでなくても、多くのビジネスパーソンにとって「時間を上手に使いたい」というのは共通の課題。
なぜ「子育てをしている女性ばかり」が取り上げられ、時に優遇あるいは擁護されるのかという点です。

この「働く女性ばかりが擁護される」という内容は結構根深い問題で、ある企業では、「(子どもを)産んだ女性社員」と「産まない女性社員」の間で対立が起こっているという現実もあります。

産んだ女性VS産まない女性?

子どもを産み育てている女性社員は勤務時間も短く、必然的に仕事量も減る(減らさず頑張っています、という方もいらっしゃると思いますが)。
それを周囲(子どもがいない、あるいは子育てが終わった世代)がカバーをしているため、負担が増えている。
にもかかわらず、「子育てする女性が擁護される」という状況に、子どもがいない女性が釈然としない気持ちで働いているというのです。

私自身、子どもを産み育てながら働いてみて感じたことがあります。
それは「結局のところ自分がその立場に置かれてみないと分からない」ということ。

私自身に子どもがいない時、当社の女性社員に子どもができ、まさに「育てながら働く状況」になりました。当然理解しようとしましたし、ある程度柔軟に働けるように配慮をしたつもりです。
しかし、自分自身がその立場に置かれてみて気づくこと、見える景色がありました。

やはり自分自身が経験したことでしか、人は物事を判断できないということです。
それはそうですよね。例えばスカイダイビングにはまっている友人がいたとして、どれだけ「とっても楽しいし、達成感も味わえる。
何てったって爽快だから一緒にやってみようよ!」と言われても、本当の楽しさは「自分がやってみないと」分からないものです。
さらに言えば、スカイダイビングの楽しさをいくら高所恐怖症で抵抗がある人に強調しても、お互いに意固地になるだけです。

権利の裏には義務しかない。

少し話は飛びますが、働いている皆さんに質問です。
「残業」をしたら「残業代をもらう権利」はありますか?答えはYesですね。
それでは、残業代をもらうには何をしなければならないでしょう?そう、「ただいるだけ」ではなく「その時間にやるべき仕事をする義務」があります。

「権利」を主張すると、必ず「義務」がくっついてきます。
私は、この状況は先ほどのスカイダイビングと同じだと感じます。つまり、いくら権利や義務を主張しても、相手と真の意味で理解しているわけではないので「幸せな気持ち」にはならないし、お互い意固地になるケースが多くなるということ。

もちろん、残業代が払われなくていいという話ではありません。
そうではなく、権利や義務といった対立的な関係から、一歩先を考えてみてはどうだろうかということなのです。

「幸せ」は一人で作ることができるのか

子育てをする女性も、「私は子どもを育てているのだから」と権利を主張すれば、その裏には「義務」がついてきます。反対もそう。
「私はあの人の代わりにこれだけ仕事をしているのだから評価されて当たり前だ」と権利を主張すれば、その裏にはやはり「義務」が発生します。

権利を主張すると、結局周囲は対立関係になって「心の豊かさ」「幸せな気持ち」がなくなってしまいます。
そうではなく、お互いがもっと思いやること。相手の「真の気持ち」を理解はできなくとも、自分が好きな相手であれば「知りたい」「助けたい」と思うものではないでしょうか。

孟子は人には「仁義礼智」があると言いました。
犯罪を犯したようなどんな悪党でも、小さいよちよち歩きの子供が誤って道路に出てしまって車に轢かれそうになれば、手を差し伸べると言います。そこには「ほめられたい」「認められたい」という欲求はありません。単純に「人の心」(本能)がその行動を促すのだと。
人はみんな幸せになりたいと思っています。「自分だけ」が幸せになろうとしたら…。それは本当に幸せなのでしょうか。

お互いが思いやりを持てる環境づくりを

「権利主張」の先は対立しかありません。
もう一歩進めて「みんなが幸せに暮らせるように」とお互いがお互いを思いやる気持ち、これが必要ではないでしょうか。
そのためには「男だから」「女だから」「子育てをしているから」「していないから」という区別をはっきりさせるのではなく、「お互いを思いやる気持ち」が持てる環境づくりが必要だと思います。

つまり、「お互いのことを理解しよう」とするのではなく、お互いの顔、もっと言えばお互いの大切な人の顔が感じられる職場づくり。
家族が職場にやってくる会社、お互いの「家」に行ったことがある関係性、家族が参加する大忘年会や運動会、従業員数に関わらずそんな取り組みをしている会社は、自然とお互いを思いやることができているように思います。
そんな職場を作っていくことが「産んだ女性」と「産まない女性」の対立をなくしていくのではないでしょうか。

そしてこれからは、「子育て」だけではなく「家族の介護で働くことが出来ない人」も増えてくるでしょう。
ますます「お互いがお互いのことを思いやることができる環境」が求められるのではないでしょうか。そんな風に私は思います。

神野沙樹

「活き生き組織」をともに作る社会保険労務士

社会保険労務士

神野沙樹さん(株式会社Niesul(ニースル社労士事務所併設))

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