【風俗トラブル】避妊具をめぐる主張を理由とする請求で使う根拠資料を求める回答書の骨子|入れておきたい条項と注意点

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年11月時点の民法・刑法・弁護士法などの規定をもとにしています。刑法の性犯罪規定は2023年7月施行の改正後の内容(不同意性交等罪・不同意わいせつ罪)で記載しています。個別の事情によって結論が変わることがあるため、具体的な対応は専門家にご相談ください。


「避妊具を外したと言われ、検査費や慰謝料として高額を求められた。外したつもりはないが、何をどう返せばよいか分からない」という相談は、風俗トラブルの中でも一定数寄せられます。反対に、キャストや店の側からも「体調や妊娠への不安が大きいのに、客から誠意のある返事がない」という声を聞くことがあります。

 インターネット上では「請求されても証拠がなければ払う必要はない」「すぐに示談したほうが早い」といった説明が見られます。いずれも一面では誤りではありませんが、実際の交渉では、相手の主張をどこまで認め、どの資料を見せてもらってから金額を検討するのかを、書面でどう伝えるかによって、その後の流れが大きく変わります。

 この記事では、避妊具をめぐる主張を理由に請求を受けた方が、相手に根拠資料の提示を求める「回答書」を作る場面に絞って、入れておきたい項目と書くときの注意点を整理します。請求を受けた直後の初動や、示談書そのものの条項については別の記事で解説しているため、必要に応じてそちらもご覧ください。

避妊具をめぐる請求で回答書が果たす役割

請求の中身は「主張」と「損害」に分けて考える

避妊具をめぐる請求は、多くの場合「避妊具を外した・付けなかった」という行為の主張と、「検査費・治療費・休業損害・慰謝料・店の罰金」といった損害の主張がひとまとめに示されます。民法上、損害賠償を求める側は、相手の故意や過失、権利の侵害、損害の発生とその額、両者のつながりを示す必要があるとされています(民法709条・710条)。

 そのため、請求を受けた側がまず確認したいのは「何が起きたと言われているのか」と「その結果としてどの費用がいくらかかったと言われているのか」です。回答書は、この二つを相手に具体的に示してもらうための書面と位置づけると、書くべき内容が見えやすくなります。避妊の有無が争点になる場面の全体像は、避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求で解説しています。

「外した」「付けなかった」「外れた」で評価は変わる

一口に避妊具をめぐる主張といっても、意図的に外したと言われているのか、最初から付けていなかったと言われているのか、行為の途中で外れた・破れたという事故の話なのかによって、法的な評価は大きく異なります。事故であれば、故意はもちろん過失の有無も争点になりえます。

 また、意図的に外したという主張がある場合には、刑事上の問題として扱われる可能性を指摘されることもあります。避妊具の使用を前提とした同意が、刑法上どのように評価されるかについては議論があり、事案ごとの事情によって判断が分かれるところです。回答書では、相手がどの類型の主張をしているのかを特定してもらうことが、最初の目的になります。

根拠資料を求めることは相手を疑う行為ではない

根拠資料の提示を求めると、相手を嘘つき扱いしているように感じて、ためらう方もいます。しかし、検査費や治療費は領収書や診療明細があって初めて金額を確かめられますし、慰謝料も算定の考え方が示されなければ検討のしようがありません。

 資料を確認したうえで支払いを検討するという姿勢は、相手にとっても話を前に進める材料になります。店から届いた請求の名目ごとの読み方は、店からの請求書面の読み方|名目別に法的根拠を突き合わせるで整理しています。

回答書の骨子|入れておきたい項目

避妊具をめぐる請求に対して根拠資料を求める回答書は、おおむね次の順序で組み立てると、読み手に意図が伝わりやすくなります。

  1. 表題・日付・宛先・差出人と、どの請求に対する回答かの特定。
  2. 回答の趣旨(現時点では支払いの可否を判断できないこと)。
  3. 事実関係についての認否。
  4. 提示を求める根拠資料と説明の項目。
  5. 資料を受け取った後の検討の予定。
  6. 今後の連絡方法の指定。
  7. 本書面の位置づけについての留保。


どの請求への回答かを特定する

冒頭では「〇年〇月〇日付でご連絡いただいた請求について、以下のとおり回答します」のように、相手の連絡の日付と手段(書面・メール・SMSなど)を示して、どの請求に対する回答かを明確にします。請求が何度かに分けて届いている場合は、それぞれの日付を挙げておくと、後から「その件は別の話だ」と言われにくくなります。

 宛先は、請求してきた相手に合わせます。キャスト本人なのか、店なのか、代理人を名乗る人物なのかによって、後で求める資料(代理権の確認など)も変わります。

回答の趣旨と事実関係の認否

回答の趣旨では、「ご主張の事実関係と損害の内容を確認できないため、現時点では支払いの可否を判断できません」といった形で、拒絶でも承諾でもない立場を示すのが一般的です。

 事実関係の認否は、相手の主張を「認める部分」「認めない部分」「記憶がはっきりしない部分」に分けて書きます。たとえば、利用した日時や店名に争いがなければその点は認め、避妊具を外したという点に心当たりがなければ、その旨を簡潔に記載します。事情を詳しく書きすぎると、意図しない言い回しが後で不利に引用されることがあるため、認否は短い文で区切るのが無難です。

根拠資料の提示を求める項目と留保

根拠資料の項目は、相手の請求項目と一対一で対応させると漏れが少なくなります(具体的な項目は次の章の表を参照してください)。あわせて、「資料をご提示いただいた後、内容を確認のうえ、〇週間程度を目安に改めてご回答します」と、受け取った後の見通しを示しておくと、相手が回答を待ちやすくなります。

 最後に、「本書面は、ご主張の事実を認めるものではなく、当方の主張・権利を留保したうえでお送りするものです」という留保の一文を入れておきます。示談書を結ぶ段階で入れたい条項については、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないをご覧ください。

請求項目ごとに求めたい根拠資料

請求項目と資料の対応表

避妊具をめぐる請求で示されやすい項目と、提示を求めたい資料・説明の例は次のとおりです。

相手の主張・請求項目提示を求めたい資料・説明の例
避妊具を外した・付けなかったそう判断した根拠となる事実(いつ・どの場面で気づいたか)、店へ報告した時刻と内容
性感染症の検査費・治療費医療機関の領収書・診療明細、検査日と結果の分かる書面
妊娠に関する検査・処方の費用検査や処方を受けた日付と領収書
休業損害休業した日数とその理由、収入額の算定方法
慰謝料金額を算定した考え方
店の罰金・違約金規約の該当条項、利用時に示された書面と同意の方法
請求の主体請求者がキャスト本人か店か、代理の場合はその権限を示す書面


 検査費・治療費・休業損害がどの範囲で認められやすいかは、治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で項目別に検討しています。妊娠や中絶費用が請求に含まれている場合は、本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説もあわせてご覧ください。

検査結果は配慮した求め方を書き添える

性感染症の検査結果や妊娠に関する情報は、相手にとって非常に慎重に扱いたい情報です。病歴などは個人情報保護法上も特に配慮が必要な情報とされています。回答書では、「氏名など個人を特定する部分は伏せた形でも差し支えありません」「確認後は本件の検討以外に使用しません」と添えておくと、相手が資料を出しやすくなります。

 求めるのは、金額を確かめるのに必要な範囲の資料であることを明示しておくのが、配慮と交渉の両面で有効です。検査結果の扱い方は、【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方でも解説しています。

店が交渉の窓口になっている場合

キャスト本人ではなく、店の担当者が「本人に代わって」金額を示してくることがあります。弁護士でない者が報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うことは弁護士法で制限されており(弁護士法72条)、店の請求が店自身の損害についてのものか、キャストの損害についてのものかを区別して確認する意味があります。

 回答書では、「ご請求が貴店ご自身の損害に関するものか、キャストの方の損害に関するものかをお示しください」と一文入れておくと整理しやすくなります。この論点は、店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点で詳しく扱っています。

書くときの注意点と避けたい記載

謝罪や推測の言葉が事実の承認と受け取られることがある

相手の気持ちを思って「ご迷惑をおかけし申し訳ありません」「外れていたかもしれません」と書きたくなる場面もあります。気遣いそのものは大切ですが、こうした表現は、後で「避妊具を外したことを認めた」という材料として引用されることがあります。

 次のような記載は、回答書では避けるか、表現を慎重に選ぶのが無難です。

  • 自分が覚えていない事実について「そうだったかもしれない」と推測で書くこと。
  • 金額を検討する前に「お支払いします」「誠意を示します」と約束すること。
  • 相手の職業や人格を非難する表現や、感情的な言い回し。
  • 相手が求めていない勤務先・家族構成・住所などの情報を書き加えること。


期限や連絡方法は自分の側からも示しておく

「今日中に払わなければ警察に行く」「家族に知らせる」といった言葉とともに請求されている場合でも、回答書では落ち着いて、資料の確認が先であることを伝えます。そのうえで、今後の連絡は書面またはメールで行うこと、家族や勤務先への連絡は控えてほしいことを記載しておきます。

 支払いを迫る言葉の内容によっては、脅迫や恐喝の問題になりうることもあります(刑法222条・249条)。期限を切られたときの伝え方は、【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で解説しています。

送る前に自分側の記録を整えておく

回答書を送る前に、利用した日時・店名・キャストの源氏名、当日のやり取り、店から届いた連絡の内容を時系列でまとめておくと、認否を書く際の誤りを防げます。送った回答書は、控えを必ず手元に残しておいてください。

 記録の作り方は、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料が参考になります。刑事上の問題として扱われる可能性が示されている場合は、回答書を送る前に弁護士に相談することをおすすめします。不同意性交等罪などの罪名を示された場面の整理は、【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理をご覧ください。

よくあるご質問


根拠資料を求めたら、相手が怒って警察に行くことはありませんか?

その可能性を完全に否定することはできません。ただ、資料の確認を求めること自体は、請求を受けた側として通常の対応です。相手の感情に配慮した言葉を選び、支払いを拒んでいるのではなく検討の前提として確認したいという趣旨を明確に書くことで、受け止められ方は変わります。刑事手続の可能性が具体的に示されている場合は、書面を送る前に弁護士に相談してください。

すでにその場で書面に署名してしまった場合も、回答書で資料を求められますか?

署名した書面があっても、その内容や署名に至った経緯によっては、効力を争える場合があります。回答書では、署名した書面の写しの交付を求めたうえで、金額の根拠を確認したい旨を伝えることが考えられます。詳しくは脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。

相手が「個人情報なので検査結果は出せない」と言ってきたら?

個人を特定する部分を伏せた形や、検査日と結果の有無だけが分かる形など、提示の方法を相談する余地があります。それでも一切の資料が示されない場合、金額の妥当性を確かめられないことを理由に、支払いの判断を保留する対応が考えられます。妊娠や病気を理由とする請求の見極め方は、「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方もご参照ください。

まとめ


  1. 避妊具をめぐる請求は、行為の主張と損害の主張に分けて考え、請求する側がその根拠を示すのが基本です(民法709条・710条)。
  2. 「外した」「付けなかった」「外れた」のどれを主張されているかで評価が変わるため、回答書でまず特定を求めます。
  3. 回答書は、請求の特定、回答の趣旨、事実の認否、資料の提示要求、検討の予定、連絡方法、留保の順で組み立てます。
  4. 求める資料は請求項目と一対一で対応させ、検査結果などは配慮した求め方を書き添えます。
  5. 店が窓口の場合は、店自身の損害かキャストの損害かを区別して確認します(弁護士法72条)。
  6. 謝罪や推測の言葉、検討前の支払いの約束は、事実の承認と受け取られることがあるため慎重に扱います。
  7. 店の規約に基づく罰金・違約金も、金額や経緯によっては効力が争われることがあります(民法90条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。避妊具をめぐる主張を理由に請求を受け、回答書の書き方や資料の求め方に迷っている方は、送付前の段階でもご相談いただけます。

請求を受けた側の方はもちろん、請求する側として、どのような資料をそろえて示せばよいか整理したい方からのご相談にも対応しています。お一人で判断せず、まずは状況をお聞かせください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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