【風俗トラブル】避妊具を外したと主張されて請求を受けた人から多い質問10問|実務の観点から回答

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

避妊具(コンドーム)を途中で外した、あるいは着けずに行為をしたと店やキャストから主張され、検査費用や慰謝料などを請求されるご相談は、風俗トラブルのなかでも一定の割合を占めています。ご本人としては「外れたことに気づかなかった」「破れていたとは知らなかった」と感じている場合も多く、何が問題とされ、どこまで応じる必要があるのかが見えにくい類型です。
 この記事では、当事務所に寄せられるご相談のなかで多い質問を10問取り上げ、実務の観点から回答します。結論は個別の事情によって変わるため、一般的な考え方の整理としてお読みください。

この記事は、2023年の刑法改正(不同意性交等罪の新設)後の規定を前提に、2026年11月時点の情報で作成しています。避妊具の着用をめぐる刑事上の評価は裁判例の蓄積が少なく、確立した解釈があるわけではありません。


避妊具をめぐる主張にはいくつかの型がある

 質問に入る前に、相手の主張がどの型にあたるのかを確認しておくと、その後の整理が進めやすくなります。同じ「ゴムを外した」という言い方でも、争点になる点は型ごとに異なります。

主張の型典型的な言われ方争点になりやすい点
途中で外した勝手に外された外したのか、外れたのか
最初から着けなかった着ける約束だったのに着けなかった着用について何を合意していたか
破れた・外れた破れていたのに続けた気づいた時点とその後の行動
本番禁止の店での性交本番をされ、しかも着けていなかった性交そのものへの同意の有無


刑事上の扱いに関する質問


避妊具を外したと言われたら、それだけで犯罪になりますか

 不同意性交等罪(刑法177条)は、1項で同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態での性交等を、2項でわいせつな行為ではないと誤信させた場合や人違いをさせた場合の性交等を処罰対象としています。性交そのものには同意があり、避妊具の着用だけが約束と違ったという場面は、これらの類型にただちには当てはまりにくいとする見解が、弁護士による解説などで示されています。
 もっとも、「犯罪にならない」と言い切れるわけではありません。避妊具の着用が性交に応じる条件だった点を重く見る考え方もありえ、実際の扱いは事実関係に左右されます。また、行為の結果として性感染症に感染させた場合には傷害罪(刑法204条)が問題になる余地があり、刑事責任とは別に、精神的苦痛を理由とする損害賠償(民法709条・710条)を求められる可能性は残ります。

本番が禁止されている店だった場合はどうなりますか

 店の規約で本番行為が禁止されている店舗型ヘルスやデリヘルなどでは、避妊具の有無よりも先に、性交そのものに相手の同意があったのかが問われます。相手が本番に同意していないと主張すれば、不同意性交等罪の成否が正面から問題となり、避妊具の件はその判断材料のひとつとして扱われることになります。
 同意の有無は、行為の前後のやり取り、相手の言動、店に連絡が入った経緯などから判断されます。罪名を告げられたときの考え方は【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理で整理しています。

外すつもりはなく、外れたことに気づかなかっただけです

 意図的に外したのか、行為中に外れたり破れたりしたのかは、刑事上も民事上も評価を分ける大きな事情です。もっとも、外れたことに過失があったと見られれば、民事上の責任が問われる可能性はあります。気づいた時点ですぐ相手に伝えたか、行為を止めたかといったその後の行動も、評価に影響しやすい点です。
 実際と異なる「わざと外した」という説明を求められても、その場で応じる必要はありません。何がいつ起きたのかを、記憶が新しいうちに時系列で書き留めておくことをおすすめします。すでに認める発言をしてしまった場合は、本番を認める発言をしてしまった後にできること|自認の撤回と限界も参考にしてください。

請求の中身に関する質問


検査費用やアフターピル代、休業補償まで請求されています。全部払う必要がありますか

 請求は一括の金額で示されることが多いものの、項目ごとに分けて考えるのが基本です。性感染症の検査費用や緊急避妊薬の費用は実費として話し合いの対象になりやすい一方、休業補償や慰謝料は、根拠となる事情や資料によって認められる範囲が大きく変わります。

請求の項目確認したい資料
性感染症の検査費用医療機関の領収書、検査を受けた日
緊急避妊薬の費用処方や購入の領収書
休業補償休んだ期間、普段の出勤状況や収入の裏付け
慰謝料請求の根拠として主張されている具体的な事情


 内訳を示さずに総額だけを求められた場合は、まず内訳と根拠を尋ねるところから始めます。項目ごとの考え方は治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で詳しく解説しています。

「今日中に払えば終わりにする」と言われました

 その日のうちに支払わなければならない法的な義務は、通常ありません。一度支払うと、後から金額の妥当性を争ったり返還を求めたりすることは簡単ではなく、支払ったことが事実を認めた証拠のように扱われるおそれもあります。
 身分証の写しを取られた、何らかの書面に署名したといった事情があっても、即日の支払いに応じるかどうかは別に判断できます。判断の考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断をご覧ください。

性病をうつした、あるいは今後うつっていたら請求すると言われました

 感染を理由とする請求では、相手が実際に感染したのか、感染の時期が利用日と合うのか、ほかの経路が考えられないのかが確認の中心になります。検査結果の書面を求めるとともに、ご自身も検査を受けて結果を手元に残しておくと、話し合いの土台になります。
 「今後うつっていたら」という将来の請求をどう扱うかは、示談書でどこまでを清算するかに関わります。詳しくは【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方で解説しています。

後日「妊娠した」と連絡が来ました

 まずは医療機関での確認の有無、妊娠週数と利用日の整合性を確かめることが出発点です。中絶費用の分担や慰謝料の話が出ることもあれば、出産を前提に認知や養育費の話へ進むこともあり、どちらに向かうかで必要な検討が変わります。
 事実関係を確かめないまま金額の話に入ることは避けたいところです。一方で、相手の話を最初から虚偽と決めつける対応も、後の交渉をこじらせる原因になります。本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説や「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方もあわせてご覧ください。

交渉と書面に関する質問


キャスト本人ではなく、店長やスタッフが交渉してきます

 避妊具をめぐって精神的・身体的な損害を受けたと主張できるのは、原則としてキャスト本人です。店が規約違反を理由に独自の請求をしてくることもありますが、それとキャスト本人の損害とは別の問題です。
 弁護士ではない者が報酬を得る目的で他人の示談交渉を行うことは、弁護士法72条に抵触するおそれがあり、風俗店の店長らが客との示談交渉をめぐって同法違反の疑いで逮捕されたと報じられた例もあります。示談をする場合は、合意の当事者が誰か、キャスト本人の意思が確認されているかを確かめる必要があります。店とだけ合意しても、後日本人から改めて請求されるおそれがあるためです。

その場で「外した」と認める紙に署名してしまいました

 署名した書面があっても、それだけで内容どおりの事実や支払い義務が確定するわけではありません。書面の効力は、記載の内容と作成されたときの状況をあわせて判断され、強い圧力の下で書かされた事情があれば、効力を争える場合もあります。
 まずは書面の写しや写真が手元にあるかを確認し、ない場合は書かされた内容をできる限り思い出して書き留めておきます。追加の書面への署名は控えてください。考え方は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。

弁護士に依頼すると、どのように進みますか

 ご依頼後は、弁護士が相手方との連絡窓口となり、ご本人が店やキャストと直接やり取りする必要はなくなります。そのうえで、請求の内訳と根拠資料を求め、事実関係を整理しながら、応じる範囲と金額を話し合います。
 合意に至る場合は、清算条項(これ以上請求しないこと)、被害届を出さないことや宥恕に関する条項、口外禁止、個人情報の削除などを示談書に盛り込むことを検討します。警察に行くと告げられている場面では、刑事手続の見通しも踏まえて進め方を組み立てます。条項の考え方は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない、ご自身で対応するか迷う場合は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情をご覧ください。

質問に共通するポイント


  • 相手の主張がどの型にあたるかを確かめることで、争点が見えやすくなります。
  • 本番が禁止された店では、避妊具よりも性交そのものへの同意が問われます。
  • 請求は項目ごとに分け、内訳と根拠資料を確認します。
  • その場での即日払いや、追加の書面への署名には慎重に対応します。
  • 交渉の相手と、合意の当事者がキャスト本人なのかを確かめます。


ご相談について

 避妊具をめぐる請求は、刑事上の評価がはっきりしない部分を含むうえ、妊娠や感染の不安が重なり、冷静に判断しにくい状況で金額を求められることが少なくありません。支払うか、どこまで応じるかを決める前に、事実関係と請求の中身を一度整理しておくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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