【ストーカートラブル】警察への「援助の申出」とは?何をしてもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

ストーカー被害を警察に相談すると、「警告」や「禁止命令」と並んで「援助の申出」という手続の説明を受けることがあります。警告や禁止命令は相手に向けた措置ですが、援助は被害を受けている本人を支えるための仕組みです。名前は聞いたものの、何をしてもらえるのか、警告とどう違うのかが分かりにくいという声も少なくありません。この記事では、ストーカー規制法に基づく援助の申出について、受けられる内容、申し出る方法、ほかの手続との組み合わせ方を整理します。

本記事は、令和7年のストーカー規制法改正(紛失防止タグの規制や、援助の担い手への勤務先・学校の追加などは令和7年12月30日施行)を踏まえ、2026年11月時点で確認できる法令と警察の運用通達をもとに解説しています。施行規則の条番号は改正により変わることがあり、実際の運用は都道府県警察や事案によって異なる場合があります。


「援助の申出」とはどのような手続か

 ストーカー規制法7条1項は、ストーカー行為等の相手方から援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、警察本部長や警察署長が、被害を自ら防止するための措置の教示その他の援助を行うと定めています。警察の通達では、この規定の趣旨を「被害者が自ら被害を防止しようとする努力を支援するもの」と説明しています。

 つまり援助は、警察が相手に「やめなさい」と伝える手続ではなく、被害を受けている方が身を守ったり、問題を解決したりするための後押しをする手続です。警告や禁止命令とは向きが異なるため、並行して使うこともできます。

手続誰に向けた措置か主な内容違反したとき
警告つきまといをしている相手更に繰り返してはならない旨を伝える警告違反そのものに罰則はない
禁止命令等つきまといをしている相手公安委員会が行為の禁止を命じる罰則の対象になる
援助被害を受けている本人自衛策の教示、交渉の支援、書面の交付など相手への命令ではない


 警告が出なかった場合の進め方は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で、禁止命令については【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間で解説しています。

援助として受けられる内容

 援助の中身は、法律と国家公安委員会規則(ストーカー行為等の規制等に関する法律施行規則)で定められています。2026年3月時点の警察の運用通達では、次の9つが挙げられています。

  1. 被害を自ら防止するための措置の教示(法7条1項)。
  2. 被害防止のための交渉を円滑に進めるために必要な事項の、相手方への連絡(規則16条1号)。
  3. 相手方の氏名や住所その他の連絡先の教示(同条2号)。
  4. 交渉を行う際の心構えや交渉方法についての助言(同条3号)。
  5. 被害の防止に取り組む民間団体などの紹介(同条4号)。
  6. 交渉を行う場所としての警察施設の利用(同条5号)。
  7. 防犯ブザーなど、被害の防止に役立つ物品の教示や貸出し(同条6号)。
  8. 警告・禁止命令等・禁止命令等の有効期間延長を実施したことを明らかにする書面の交付(同条7号)。
  9. その他、被害を自ら防止するために適当と認められる援助(同条8号)。


自衛策の教示と物品の貸出し

 最も利用しやすいのが、被害の状況に合わせた自衛策の教示と、防犯ブザーなどの物品の教示・貸出しです。通勤経路の変え方、記録の残し方、自宅の防犯の見直しなど、具体的な助言を受けられることがあります。記録の方法については【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点も参考にしてください。

相手との話し合いに関わる援助

 規則16条1号から3号と5号は、被害を受けている方が相手と被害防止のための交渉をする場面を想定した援助です。相手への連絡、相手の連絡先の教示、交渉の心構えについての助言、警察施設を話し合いの場として使うことなどが含まれます。通達では、警察施設を使う場合は第三者を立ち会わせ、緊急時に備えて警察職員を待機させるといった配慮を求めています。

 ただし、つきまといをしている相手と直接話し合うことには、相手の感情を刺激したり、新たな接触のきっかけを与えたりするおそれもあります。交渉が必要な場面では、ご自身が前に出る形がよいのか、代理人を立てる形がよいのかを、事前に検討しておくことをおすすめします。

警告などを実施したことを示す書面の交付

 規則16条7号の書面は、通達上「行政措置実施証明書」と呼ばれています。ストーカー被害を受けていることを関係機関や事業者に伝え、協力を得やすくするためのもので、特段の必要がない限り、相手の氏名や住所は記載しない運用とされています。

 たとえば、住民票の写しなどを相手に取得されないようにする市区町村の支援措置を申し出る際には、警告等の実施書面を添えて申し出る方法が設けられています。転居を考えている場合は、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序もあわせてご覧ください。

その他の援助

 規則16条8号の「その他」として、弁護士や医師の紹介など、その場で対応できるものが行われることがあります。警察庁の資料では、110番緊急通報登録システムへの登録や、住民基本台帳の閲覧制限に関する支援なども、援助の一例として挙げられています。

申出の方法と、受け付けてもらえる条件

 援助の申出は、規則で定められた援助申出書を警察に提出して行います。口頭で申し出た場合でも、申出書への記入を求められるか、警察職員が代わりに書く運用です。申出書は簡素化されているため、被害の具体的な状況は、別途事情を聴かれる中で伝えることになります。

どの警察署に申し出ればよいか

 通達では、援助は申出人の住所に関係なく、申出を受けた警察署で受理して行うのが原則とされています。ただし、相手の氏名や連絡先の教示は、その事案で警告の申出や被害の届出を受けている警察署が、警告等を実施したことを示す書面の交付は、その警告等を行った警察署が担当する扱いです。

「相当と認めるとき」とはどういう意味か

 援助は、申出を相当と認めるときに行われます。通達では、申出の対象となる行為がストーカー行為等でないことが明らかな場合や、相手に仕返しをするなど援助の仕組みを悪用しようとする場合は、相当と認められないとしています。

 一方で、自衛策の教示、交渉についての助言、民間団体の紹介、物品の教示・貸出し、その場で対応できる紹介などは、対象の行為が明らかにストーカー行為等に当たらない場合を除き、援助を行うよう求められています。また、援助の対象となる「ストーカー行為等」には、つきまといを繰り返す「ストーカー行為」だけでなく、つきまとい等によって不安を覚えさせる行為も含まれます。この違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで解説しています。

援助の申出を検討しやすい場面

 援助は、警告や禁止命令と比べて相手への働きかけが小さい分、次のような場面で検討しやすい手続です。

  • 相手を刺激することが心配で、警告まではまだ求めたくない場合。
  • 警告や禁止命令の申出と並行して、日常の身の守り方の助言を受けたい場合。
  • 転居や住民票の手続にあたり、被害を受けていることを書面で示したい場合。
  • 勤務先や学校に事情を伝え、協力を求めたい場合。


 令和7年の改正では、被害者を援助するよう努める主体として、地域の住民に加え、被害者の勤務先と学校が明記されました。勤務先への伝え方は【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更で整理しています。なお、同じ改正で警告は職権でも行えるようになりましたが、通達では被害者の意向を踏まえて活用するよう求めています。

申し出る前に準備しておきたいこと

 援助を有効に使うためには、何を求めたいのかと、これまでの経過を伝えられる状態にしておくことが大切です。

  • つきまといの日時、場所、内容を時系列で書き出したメモ。
  • メッセージの画面、着信履歴、写真、動画などの記録。
  • 自衛策の助言、物品の貸出し、書面の交付など、求めたい援助の内容。
  • 相手に知られたくない住所や勤務先などの情報。
  • これまでに警察へ相談した日と、対応した警察署・担当者の名前。


 相談しても手続が進みにくいと感じる場合には、求める内容を書面にまとめて持参すると、話が整理しやすくなります。過去の相談記録を確認したい場合は、【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方をご覧ください。

弁護士に相談することで加わる選択肢

 援助は警察が行う支援ですが、相手との話し合いや、金銭・物品の清算、接触をやめる約束を書面で交わすことなどは、警察の手続だけでは進めにくい場面もあります。弁護士が代理人になれば、ご本人が相手と直接やり取りせずに交渉を進めることができ、援助の「被害防止交渉」の部分を代理人が担う形にもできます。

 また、警察の手続と並行して、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。両者の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで、相談の順序は【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で解説しています。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味もあわせてご覧ください。

よくあるご質問


警告を申し出ていなくても、援助だけを受けることはできますか

 できます。援助は警告や禁止命令とは別の手続として定められており、警告の申出を前提とはしていません。ただし、相手の連絡先の教示や、警告等を実施したことを示す書面の交付のように、他の手続の状況と結びついた援助もあります。

援助を申し出たことは、相手に伝わりますか

 自衛策の教示や物品の貸出しは、被害を受けている方に向けた援助であり、相手に向けて行う措置ではありません。一方、交渉のために必要な事項を相手に連絡する援助は、その性質上、相手への連絡を伴います。どの援助を求めるかを決める際に、相手に伝わる範囲を警察に確認しておくと安心です。

危険を感じたときも、援助の申出から始めるべきですか

 身の危険が差し迫っている場合は、援助の申出を待たずに110番通報を優先してください。援助は、日常の安全を整えたり、問題を解決に向けて進めたりするための手続であり、緊急時の通報に代わるものではありません。

まとめ

 援助の申出は、警察が相手に命令する手続ではなく、被害を受けている方が自ら身を守り、問題を解決していくための支援を受ける手続です。自衛策の助言や物品の貸出しから、交渉の支援、警告等を実施したことを示す書面の交付まで、内容は幅広く、警告や禁止命令とも組み合わせられます。どの援助を求めるか、警察の手続と弁護士による対応をどう組み合わせるかは、被害の状況によって変わります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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