【ストーカートラブル】被害の日時を覚えていない、あいまいな記録でも相談できる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

本記事は、2026年11月時点のストーカー規制法(2025年の改正を含む)を前提に記載しています。個別の事案での扱いは、事実関係によって異なります。


つきまといや待ち伏せが続いているのに、「最初にあったのがいつだったか思い出せない」「何回あったのか数えていない」という理由で、警察や弁護士への相談をためらう方は少なくありません。被害を受けている最中に、出来事を一つずつ書き留めておける方のほうがむしろ少数です。

 結論からお伝えすると、日時を正確に覚えていない段階でも、ご相談はできます。あいまいな部分は、残っている別の記録から確かめられることがありますし、確かめられない部分は「あいまいである」と分かる形で整理すれば足ります。この記事では、記憶があいまいなときに相談の準備として何ができるのか、どのような書き方なら後の手続で生かしやすいのかを解説します。

日時を覚えていなくても、相談はできます

 警察も弁護士も、相談の時点で完全な記録がそろっていることを前提にはしていません。相談を受ける側が最初に知りたいのは、相手が誰なのか(見当がついているか)、どのような行為がどのくらいの期間続いているのか、今どの程度の危険を感じているのか、といった全体像です。日付の一つひとつは、その後に確かめていくことができます。

 警察の案内でも、つきまといや見張りのように物として証拠が残りにくい行為については、第三者の目撃や110番通報をした事実、被害状況を書いたメモが大切になるとされています。メモはその場で書いたものに限られているわけではなく、思い出せる範囲で書き出したものも、整理の出発点として意味を持ちます。

 また、相手から危害を加えられるおそれを感じているときは、記録を整えることより安全の確保が先です。その場で身の危険を感じたら110番通報をためらう必要はなく、通報したこと自体が後で日時を確かめる手がかりにもなります。警察と弁護士のどちらに先に相談するか迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序もあわせてご覧ください。

なぜ記録があいまいになりやすいのか

 ストーカー被害では、日時の記憶がぼやけやすい事情がいくつも重なります。ご自身の記憶力の問題と考える必要はありません。

  • 最初のうちは「気のせいかもしれない」と思い、記録を取る理由がなかった。
  • 相手が元交際相手や知人で、当初は普通のやり取りの延長に見えた。
  • 同じような出来事が何度も続き、一回ごとの区別がつかなくなった。
  • 怖さや疲れから、出来事を思い出すこと自体を避けていた。
  • メッセージを見たくなくて、ブロックや削除をしてしまった。


 こうした事情は、被害を受けた方の多くに共通するものです。相談の場では、「なぜ記録がないのか」を責められることはなく、むしろ記録が途切れている理由そのものが、当時の状況を伝える材料になることもあります。

あいまいな記憶を、確かめられる記録で補う

 自分の記憶だけでは日付が分からなくても、スマートフォンや身の回りには、当時の行動の跡が残っていることがあります。思い出せる出来事を一つ書き出したら、その前後に何をしていたかを手がかりに、次のような記録を確かめてみてください。

確かめる記録分かることの例
LINE・メール・SNSのやり取り相手からの連絡の日時、友人に「今日また来た」と送った日
着信履歴・留守番電話着信の日時と回数
スマートフォンの写真・動画撮影日時(撮った覚えのない日でも、その日の行動の手がかりになる)
手帳・カレンダーアプリ・勤務表その日の予定や出勤時刻、帰宅のおおよその時間
交通系ICカード・決済の利用履歴駅や店舗を利用した日時
スマートフォンの位置情報の履歴その日にいた場所と時間帯(設定によって残っていない場合もある)
警察への相談・110番通報相談や通報をした日(後から照会できることがある)
家族・友人・管理人など第三者の記憶一緒にいた日、話を聞いてもらった日


 たとえば「帰り道でつけられたのは、友人と食事をした日だった」と思い出せれば、友人とのやり取りや決済の履歴から日付が絞り込めることがあります。一つの出来事の日付が確かめられると、その前後の出来事の順番も整理しやすくなります。

 なお、相手から届いたメッセージを削除してしまった場合でも、相手とのやり取りを家族や友人に転送していたり、画面を撮影していたりすれば、そちらが残っていることがあります。以前に警察へ相談したことがある方は、【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方で、相談記録を確かめる方法を紹介しています。

あいまいな部分は、あいまいなまま書く

 記録を補う作業で大切なのは、確かめられたことと、確かめられなかったことを分けておくことです。思い出せない部分を推測で埋めてしまうと、後で別の記録と食い違ったときに、記録全体が信用されにくくなるおそれがあります。

日付が分からないときの書き方

 正確な日付が分からない出来事は、分かっている範囲で書けば十分です。「5月上旬ごろ」「ゴールデンウィークの前後」「引っ越しの2週間ほど前」のように、幅を持たせた書き方で構いません。回数も、「10回」と言い切れなければ「少なくとも3回、おそらくそれ以上」のように書きます。

日時場所出来事確かめた記録・確かさ
5月上旬ごろ(夜)最寄り駅の改札前相手が立っていて、目が合うと近づいてきた日付は不明。記憶による
5月18日 21時ごろ自宅マンション前植え込みの横に相手がいた友人へのLINE(21時12分)で確認
6月ごろ、少なくとも3回自宅周辺相手の車と同じ色の車を見かけた日付・回数とも不明。記憶による


後から書いたことを添えておく

 過去の出来事をまとめて書き出した場合は、その旨と書いた日を記録の冒頭などに添えておきます。「この一覧は11月4日に、記憶とスマートフォンの記録をもとに作成した」と書いておけば、当日に書いたメモと区別がつき、読む側も記録の性質を理解したうえで受け止めることができます。今後の出来事については、できるだけその日のうちに書き足していくと、記録の正確さを保ちやすくなります。

元の記録には手を加えない

 スクリーンショットや写真、もともと書いていたメモは、見やすく整えようとして書き換えたり、一部を切り取ったりせず、元の状態のまま保存しておきます。整理用の一覧表は別に作り、元の記録はそのつど参照する形にしておくと、後で確かめる際にも説明がしやすくなります。表の作り方そのものについては、【ストーカートラブル】ストーカー被害の記録は、どんな書き方をすればいい?で詳しく解説しています。

記録の濃さで、取れる手段の見通しは変わる

 あいまいな記録でも相談はできますが、どの手段を選べるかの見通しには、記録の内容が影響します。ストーカー規制法では、つきまとい等の行為が繰り返されているかどうかが一つの分かれ目になるため、出来事が複数回あったこと、その時期や順番がある程度分かることが、手続を検討するうえでの手がかりになります。

手段記録との関係の目安
警察による警告・禁止命令行為が繰り返されている状況を、警察が把握できることが前提になる。記録があいまいでも、相談の中で事情聴取を受けながら整理していくことが多い
被害届・告訴による刑事手続個々の行為の日時や内容をある程度特定することが求められやすい。確かめられた出来事を中心に組み立てる
接近禁止の仮処分など民事の手続裁判所に事実を示す資料が必要になる。陳述書と客観的な記録を組み合わせて準備する
弁護士からの通知・交渉厳密な立証より、行為をやめるよう求める根拠として経緯を整理できれば着手できることが多い


 この表はあくまで目安で、実際には相手との関係や行為の内容、危険の程度によって判断が変わります。あいまいな記録しかないから何もできない、ということにはならず、「今ある記録で取れる手段から始め、記録を補いながら次の手段を検討する」という進め方が考えられます。行為が1回だけだった場合の扱いについては、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで整理しています。

相談の前にしておきたいこと・しなくてよいこと

 相談の準備は、完璧を目指す必要はありません。次のことができていれば、相談の場で十分に話を進められます。

  • 相手について分かっていること(名前、関係、連絡先、住んでいる地域など)を書き出す。
  • 最初に違和感を覚えた時期を、おおよそで書く。
  • 思い出せる出来事を、順番が前後してもよいので書き出す。
  • 相手からのメッセージや着信履歴を消さずに残しておく。
  • 今いちばん不安に感じていることを一言でまとめておく。


 反対に、次のようなことは無理にしなくて構いません。

  • すべての出来事の日付を確定させるまで相談を先延ばしにすること。
  • 記憶にない出来事を、推測で書き足すこと。
  • 証拠を集めるために、相手に連絡を取ったり近づいたりすること。
  • 相手の自宅や勤務先を確かめに行くこと。


 特に、証拠を得ようとして相手と接触することは、身の危険につながるおそれがあるうえ、相手に連絡のきっかけを与えることにもなりかねません。記録が足りないと感じたときほど、ご自身で動く前に相談していただくほうが安全です。電話が続いている場合の記録の残し方は、【ストーカートラブル】無言電話・非通知の着信が続く|記録と止め方も参考になります。

弁護士に相談した場合の進め方

 当事務所にご相談いただいた場合は、お手元のメモやスマートフォンの記録を一緒に確認しながら、聞き取りをもとに時系列の一覧を作ることから始めます。「この日はこの記録で確かめられる」「この出来事は時期だけ分かる」というように、確かさの程度を区別して整理していきます。

 あわせて、どの出来事がストーカー規制法上のつきまとい等にあたりうるか、警察への相談や申出にどの資料を持っていくとよいかを検討します。警察に相談したのに思うような対応が得られなかった方については、記録を補ったうえで改めて相談に同行するなど、次の手立てを一緒に考えます。相手に対して弁護士から連絡をやめるよう求める通知を送ることも、事案によっては選択肢になります。代理人を立てることで何が変わるのかは、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。

よくあるご質問


メモを何も残していません。それでも相談してよいですか

 ご相談いただけます。メモがない方からのご相談も珍しくありません。相談の場で思い出せることをお話しいただき、その内容をもとに、スマートフォンなどに残っている記録で確かめられる部分を一緒に探していきます。

記憶違いがあった場合、不利になりますか

 記憶は時間とともに変わるものであり、細部に食い違いがあること自体は珍しくありません。気をつけたいのは、分からない部分を断定的に話してしまうことです。確かでない部分は「はっきりしない」と伝えておけば、後で記録と照らし合わせて整理することができます。

警察で事情を聞かれたとき、日付を答えられなくても大丈夫ですか

 分からない日付は、無理に答える必要はありません。「何月ごろ」「何の出来事の前後」といった形で、分かる範囲をお伝えすれば足ります。事情聴取の流れについては、【ストーカートラブル】被害届を出した後の事情聴取|何を聞かれるのかで紹介しています。

何年も前の出来事も、記録に含めたほうがよいですか

 相手との関係の経緯や、以前にも同じような行為があったことは、現在の状況を理解してもらううえで役に立つことがあります。古い出来事ほど記憶はあいまいになりやすいため、時期だけでも書いておき、「記憶による」と添えておきます。以前のつきまといが再開した場合の整理は、【ストーカートラブル】数年ぶりにつきまといが再開した|以前の記録を生かすをご覧ください。

まとめ

 被害の日時を覚えていないことは、相談をあきらめる理由にはなりません。あいまいな記憶は、スマートフォンの履歴や第三者の記憶などで補えることがあり、補えない部分は「あいまいである」と分かる形で残しておけば、整理の材料として生かすことができます。

  • 日時を正確に覚えていなくても、相談はできます。
  • メッセージ・写真・決済履歴などから、日付を確かめられることがあります。
  • 確かめられない部分は、推測で埋めず、幅を持たせて書きます。
  • 後からまとめた記録には、書いた日とその旨を添えます。
  • 証拠を集めるために、相手と接触することは避けます。


 記録が不完全なまま一人で抱えていると、相談に踏み出す時期がどんどん遅れてしまいがちです。手元にある記録がどの程度のものであっても、それを出発点に、取れる手段を一緒に整理することができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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