【親子問題】子が配偶者から暴力を受けていると気づいた|親にできること
この記事は、2026年11月時点の民法の規定をもとに、成人した子がいる親の再婚を想定して書いています。財産の内容や家族構成によって結論が変わるため、具体的な対応は個別にご確認ください。
配偶者を亡くしたり離婚したりして長く一人で暮らしてきた親が、新しいパートナーとの再婚を考えたとき、成人した子から反対されることは珍しくありません。反対の理由をたどっていくと、「再婚相手に財産を持っていかれるのではないか」「実家に住めなくなるのではないか」といった財産への不安に行き着く場合が少なくないようです。
この記事では、再婚を考えている親の立場から、子の同意がなくても再婚できるのか、再婚によって相続の形がどう変わるのか、子の不安に応えるために親の側で準備できることは何か、そして反対が圧力や金銭の要求に変わったときにどう向き合うかを整理します。
成人した子の同意がなくても、再婚はできる
婚姻は、当事者である二人の合意にもとづいて成立するものとされています(憲法24条1項)。民法上も、婚姻届を提出して受理されれば婚姻の効力が生じ(民法739条)、親の再婚について子の同意を求める規定はありません。2022年4月の改正で未成年者の婚姻に父母の同意を求める規定も削除されており、現在は、婚姻の成立に家族の同意が必要となる場面はありません。
法律の面だけを見れば、子が反対していても再婚の手続を進めることはできます。ただ、親子の関係はその後も続きますし、親が亡くなったときには子と再婚相手が共同相続人として遺産の分け方を話し合う立場になります。反対を押し切るか、再婚をあきらめるかの二択で考えるのではなく、子が何を心配しているのかを具体的に分けて、手当てできるところを先に手当てしておくことが、後のもめごとを減らすことにつながります。
再婚によって相続の形はどう変わるのか
配偶者は常に相続人になり(民法890条)、子がいる場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子が全体で2分の1です(民法900条1号)。親が再婚すると、親が亡くなったときに再婚相手がこの配偶者の立場に立つため、子の取り分は再婚しない場合と比べて小さくなります。婚姻期間の長さによって配偶者の相続分が変わることはありません。
子が2人いる場合を例にすると、次のようになります。
| 立場 | 再婚しない場合の法定相続分 | 再婚した場合の法定相続分 | 再婚した場合の遺留分 |
|---|---|---|---|
| 再婚相手 | なし | 2分の1 | 4分の1 |
| 子A | 2分の1 | 4分の1 | 8分の1 |
| 子B | 2分の1 | 4分の1 | 8分の1 |
遺留分とは、遺言によっても奪うことのできない最低限の取り分のことで、配偶者と子が相続人となる場合は遺産全体の2分の1を法定相続分の割合で分け合います(民法1042条)。なお、再婚相手に前の結婚でもうけた子(連れ子)がいても、親とその連れ子が養子縁組をしない限り、連れ子が親の相続人になることはありません。
子が気にしている「財産」の中身を分けてみる
子の「財産が心配だ」という言葉には、いくつかの異なる不安が含まれていることが多いものです。話し合いの前に、どれが当てはまるのかを分けておくと、親の側で打てる手が見えやすくなります。
- 親が亡くなったとき、再婚相手が相続人に加わり、自分の取り分が減ること。
- 実家に再婚相手が住み続け、自分が実家を使えなくなること。
- 親から再婚相手が相続した財産が、再婚相手の死後に再婚相手の親族へ渡っていくこと。
- 親が再婚相手の連れ子と養子縁組をして、相続人がさらに増えること。
- 親の預貯金が、再婚後の生活費や再婚相手のために使われていくこと。
このうち最後の点については、親が生きている間の財産は親自身のものであり、その使い道を決めるのは親です。子には、親の生前の財産について使い方を指図する権利はありません。一方、相続に関わる前の4つの点は、親が生前に準備しておくことで、子の不安をある程度和らげることができます。
子の不安に応えるために、親の側で準備できること
ここでは、再婚する親の側でとれる主な方法を整理します。どれを選ぶかは、財産の内容や再婚相手の生活状況によって変わります。
遺言で財産の行き先を決めておく
最も基本となるのが遺言です。たとえば「自宅は子に、預貯金の一部は再婚相手に」というように、財産ごとに受け取る人を決めておけば、遺産分割の話し合いで子と再婚相手が対立する場面を減らすことができます。形式の不備で無効になることを避けるには、公証役場で作成する公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。
ただし、遺言の内容が遺留分を下回る場合、再婚相手や子は、多く受け取った人に対して遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます(民法1046条)。遺言を作る際は、遺留分にも目を配っておくことが大切です。遺言の内容を子に伝えるかどうかは親が決めることですが、方針だけでも伝えることで子が落ち着く場合もあります。
再婚相手の住まいと子の取り分を両立させる
自宅をめぐる不安には、配偶者居住権という制度が使える場合があります。遺言などで再婚相手に配偶者居住権を与え、建物の所有権は子に相続させれば、再婚相手は住み続けることができ、自宅そのものは子に残ります(民法1028条)。第三者に対抗するには登記が必要になる点など、手続面の確認が欠かせません。
入籍前であれば夫婦財産契約という方法もある
夫婦財産契約は、婚姻中の財産の帰属や管理について夫婦であらかじめ取り決める契約です。婚姻届を出す前に結ぶ必要があり(民法755条)、婚姻後は原則として変更できず(民法758条1項)、登記をしなければ夫婦の承継人や第三者に対抗できません(民法756条)。婚姻前からの財産の扱いをはっきりさせる手段にはなりますが、相続分そのものを変える制度ではないため、遺言と組み合わせて考えることになります。
再婚相手が遺留分を放棄するという選択
親の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条1項)。家庭裁判所は、本人の自由な意思によるものか、放棄に合理的な理由があるかなどを見て判断します。これは再婚相手が自らの意思で申し立てるものであり、親や子が求めて強いるものではありません。また、相続開始前に相続そのものを放棄することはできず、「相続を放棄する」という約束を書面にしても、その効力は認められません。
連れ子との養子縁組をどうするか
親が再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、その連れ子は親の相続人となり、実子と同じ相続分を持ちます。成人の連れ子との縁組に実子の同意は必要ありませんが、配偶者のある人が縁組をするには配偶者の同意が必要です(民法796条)。子の相続分に直接関わることなので、縁組を考えている場合は、早めにその予定を伝えておくほうが後の摩擦は少なくなります。継親と子の関係が緊張している場合の対応は、【親子問題】再婚相手(継親)に子が暴力をふるう|養子縁組の有無で変わる法的な関係と対応で解説しています。
入籍しない(事実婚)という選択肢
婚姻届を出さない事実婚であれば、パートナーは法律上の配偶者ではないため、相続人にはなりません。パートナーに財産を遺したい場合は、遺言で遺贈することになります。その一方で、配偶者居住権や相続税の配偶者の税額軽減など、法律上の配偶者を前提とした制度は使えません。子の不安だけでなく、パートナーの将来の生活も含めて比べてみる必要があります。
子との話し合いを進めるときのポイント
話し合いでは、再婚そのものへの気持ちと財産の話を分けて扱うことが役に立ちます。財産の話については、「相続の形がどう変わるのか」「どの財産を誰に遺すつもりか」といった方針を示すだけでも、子の受け止め方が変わることがあります。財産の全容をすべて開示する義務があるわけではないため、どこまで伝えるかは親が決めてかまいません。
話し合いで決めたことを書面に残すことも考えられますが、書面にできることとできないことがあります。詳しくは【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界をご覧ください。親戚が子の側に立って口を出してくる場合は、【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方も参考になります。
反対が圧力や金銭の要求に変わったとき
反対が話し合いの範囲を超え、次のような行動に変わることもあります。
- 再婚相手に直接連絡し、別れるよう迫る。
- 「再婚するなら先に財産を渡せ」と生前贈与を求める。
- 通帳や実印、権利証を持ち出す。
- 大声を出す、物を壊す、手を上げる。
こうした要求に応じる義務はありません。言われたことや起きたことを日時とともに記録し、一人で抱え込まずに第三者に相談することが大切です。生前贈与を求められている場合は【親子問題】生前贈与を迫られている|断り方と記録の残し方、実印や権利証を持ち出された場合は【親子問題】子が親の実印や権利証を持ち出した|悪用を止める手続の順序と、使われていた場合の対応、金銭の要求が続いている場合は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで、それぞれの対応を解説しています。
なお、再婚に反対していることだけを理由に、子を相続人から外すことはできません。相続人から外す相続廃除は、被相続人への虐待や重大な侮辱などがある場合に家庭裁判所が認めるもので、要件は限られています。詳しくは【親子問題】暴力を続ける子に財産を渡したくない|相続廃除の要件をご覧ください。
また、子から「判断能力が落ちているのではないか」と言われ、成年後見の申立てを示されることもあります。申立ては4親等内の親族もできますが(民法7条)、後見を開始するかどうかは家庭裁判所が判断します。将来に備えて、自分で選んだ人に財産管理を託す任意後見契約を結んでおくという方法もあります。
当事務所がお手伝いできること
当事務所では、親子の問題について親の側の代理人として対応しています。子との直接のやり取りが難しくなっている場合には、弁護士が窓口となって連絡を受け、要求の中身を整理したうえでお答えすることができます。窓口を弁護士に代えることの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で、サービスの全体像は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
子が経済的に親に頼って暮らしている家庭では、再婚への反対の背景に、自分の生活が続けられなくなることへの不安がある場合もあります。そのような場合は、自立支援カウンセラーと組んで、子の生活の立て直しを含めて対応を考えることもできます。
親の再婚は、親自身の人生の選択です。そのうえで、子の不安のうち手当てできる部分を先に整えておくことが、再婚相手と子の双方にとって後の負担を小さくすることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


