【親子問題】ホスト・推し活・ギャンブルへの支出が原因の場合
本記事は、2026年9月時点の法令・制度に基づいて作成しています。行方不明者届の受理や住民票・戸籍の附票の交付の運用は、警察署や市区町村によって異なる場合がありますので、実際の手続は各窓口でご確認ください。
「家を出てから半年、こちらから電話をしても出ない。元気でいるのかどうかだけでも知りたい」「住所は分かっているが、訪ねていけばまた関係がこじれそうで動けない」。お子さんが実家を離れて暮らし始めた後、親子の問題のご相談ではこうしたお話を伺うことがあります。長く同じ家で過ごしてきた親子ほど、急に連絡が途絶えたときの不安は大きいものです。
一般には「便りのないのはよい便り」として、しばらく見守るよう勧められることが多く、それ自体は誤りではありません。一方で、捜索を扱う事業者のサイトなどでは、早く居場所を確かめるべきだという説明も見かけます。どちらも一理ありますが、どのような場合に待ち、どのような場合に動くのか、そして動くとすれば何ができて何ができないのかという線引きは、あまり整理されていないように思います。
この記事では、成人したお子さんが独立した後に連絡が来なくなった場面について、状況の見分け方、安否を確かめる手段とその限界、そして独立の前に「報告の枠組み」を決めておく意味を整理します。独立に向けた手順そのものは【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順で、親子が離れて暮らすことの意味は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点で扱っていますので、ここでは独立した「後」の連絡に絞ってお話しします。
連絡が来ないことを、まず二つに分けて考える
成人した子に、親へ連絡する法的な義務はない
成年年齢は18歳であり(民法4条)、成人したお子さんがどこに住み、誰と連絡を取るかは、本人が決めることです。直系血族は互いに扶け合わなければならないという定めはありますが(民法730条)、これは倫理的な性格の強い規定と一般に理解されており、親が子に連絡を求める権利を定めたものではありません。
親の側から見ると寂しく感じられるかもしれませんが、この前提を押さえておくことには意味があります。連絡がないこと自体を「約束違反」のように受け止めると、問い詰める言葉が先に出てしまい、かえって本人が連絡しにくくなることがあるためです。親が法的に関与できる範囲の全体像は、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。
「距離が働いている沈黙」と「安否が分からない沈黙」
連絡が来ない状態には、性質の異なる二つがあります。一つは、住まいが分かっていて、支援者など本人とつながっている人がおり、暮らしがそれなりに回っていると確認できる沈黙です。もう一つは、住まいも暮らしぶりも分からず、誰も本人の様子を把握していない沈黙です。
前者は、親子の距離が意図したとおりに働いている結果であることが多く、急いで何かをする必要は必ずしもありません。心配すべきなのは主に後者です。まずは、今の状況がどちらに近いのかを落ち着いて確かめることが、次の一手を考える出発点になります。
独立の直後に連絡が減るのは珍しいことではない
新しい暮らしを始めた直後は、住まいや仕事、手続に追われ、実家に連絡する余裕がないことも少なくありません。また、長く親に頼ってきた人にとって、しばらく親と距離を置くことは、自分の判断で生活を組み立てていく練習の一部でもあります。支援のゴールをどこに置くかという視点は、【親子問題】「自立」と「自律」|支援のゴールをどこに置くかでご紹介しています。
心配が強まったときに確かめる順序
まず、本人とつながっている人から様子を聞く
住まい探しや就労、生活保護の申請などで本人を支えている人がいる場合は、最初にその人に様子を尋ねるのが現実的です。ただし、支援機関や福祉事務所の職員には守秘義務があり、本人の同意なく親に詳しい事情を伝えることはできないのが通常です。その場合でも、「親が心配していることを本人に伝えてほしい」とお願いすることは、窓口によっては受け止めてもらえることがあります。
住所が分からないときは、戸籍の附票という手段がある
お子さんの現在の住所が分からない場合、親は直系尊属として、お子さんの戸籍の附票の写しの交付を本籍地の市区町村に請求することができます(住民基本台帳法20条1項)。戸籍の附票には、住民票の住所の移り変わりが記録されています。
もっとも、本人が転入の届出をしていなければ、記録と実際の住まいは一致しません。また、配偶者からの暴力やストーカー行為、児童虐待、これらに準ずる行為の被害を申し出た人について、市区町村が支援の必要性を確認した場合には、相手方からの請求に対して住民票や戸籍の附票の写しの交付を制限する「DV等支援措置」が設けられています(総務省)。お子さんがこの措置を受けている場合、親からの請求には応じてもらえません。
住所が分かったとしても、すぐに訪ねていくかどうかは別の問題です。この点は後の章でお話しします。
命や身体の危険がうかがえるときは、行方不明者届を検討する
体調を崩していた、思い詰めた言葉を残していたなど、命や身体の危険がうかがえる事情があるときは、迷わず警察に相談してください。行方不明者届は、親を含む親族が、お子さんが行方不明になった時の住所地を管轄する警察署に出すことができます(行方不明者発見活動に関する規則6条1項2号)。遠方に住んでいる場合などは、届出人の住所地の警察署で受理されることもあります(同条2項)。
届出を受けた警察は、自殺のおそれがある、事故に遭っているおそれがあるといった事情がある人を「特異行方不明者」として判定し、探索などの活動を行います(同規則2条2項、11条、20条)。それ以外の場合は、警ら(パトロール)や巡回連絡など、日常の警察活動の中で発見に配意する、という位置づけになります(同規則12条)。警察庁の統計では、令和7年の行方不明者届の受理数は8万486人で、所在が確認された人のうち最も多いのは届出の当日に確認された人(3万3,322人)でした(警察庁「令和7年における行方不明者届受理等の状況」)。
届出の前後に警察でどのような記録が残るかについては、【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続もあわせてご覧ください。
見つかっても、居場所を教えてもらえるとは限らない
ここは誤解の多いところです。警察は行方不明者を発見した場合、本人の安全を確かめたうえで、本人と届出人の意思を尊重しながら、家族などに連絡するよう本人に促すといった措置をとります(同規則25条2項)。届出人への通知は原則として行われますが、本人の意思その他の事情を考慮して、通知をしない、または通知する事項を限ることができるとされています(同規則26条1項)。
つまり、成人したお子さんが自分の意思で親と距離を置いている場合、「無事でいる」ことは伝えられても、住所までは伝えられないことがあります。行方不明者届は、居場所を突き止めるための制度というより、本人の生命や身体を守るための制度だと理解しておくと、届出後の経過に戸惑いにくくなります。
控えたほうがよい動き方
職場や知人に次々と問い合わせる
心配のあまり、お子さんの勤務先や友人、以前の同級生などに次々と連絡を取りたくなることがあります。しかし、本人の知らないところで家族の事情が周囲に伝わると、職場での立場や人間関係に影響が出ることがあります。本人がそれを知れば、親への信頼はかえって損なわれ、連絡がいっそう遠のくことにもなりかねません。
予告なく住まいを訪ねる、合鍵で部屋に入る
住所が分かると、直接会いに行きたくなるのは自然な気持ちです。ただ、予告なく訪ねて長時間待つといった行動は、本人にとって大きな負担になることがあります。また、親が部屋の連帯保証人であっても、それを理由に本人の承諾なく部屋に入れるわけではありません。承諾のない立入りは住居侵入が問題になりうる行為です(刑法130条)。
安否の確認が必要なほど心配な状況であれば、親が一人で乗り込むのではなく、警察や支援者など第三者に間に入ってもらうことが、本人の安全と親子関係の両方を守ることにつながります。
お金を連絡の条件にする
「連絡をくれたら仕送りする」といった形で連絡を引き出そうとすると、連絡がお金の要求とセットになり、独立前の関係に戻ってしまうことがあります。援助をする場合は、金額と期間、渡し方を先に決めておくことが大切です。お金の流れの分け方は【親子問題】家計を分ける実務|口座・光熱費・保険をどう切るかで、扶養の範囲については【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。
独立の前に「報告の枠組み」を決めておく意味
何を、誰から、どのくらいの頻度で伝えるか
ここまで見てきたとおり、独立した後に親が法的にとれる手段は限られています。そのため、連絡が途絶えてから慌てて手段を探すよりも、独立の前に、本人の様子を誰がどのように親へ伝えるのかを決めておくほうが、はるかに現実的です。決めておきたい項目は、たとえば次のとおりです。
| 項目 | 決めておく内容の例 |
|---|---|
| 報告の担い手 | 親が直接連絡するのか、支援者を通すのか |
| 頻度 | 月に1回、行事の前後など、無理のない間隔 |
| 伝える事項 | 健康状態、住まいが続いているか、生活が回っているか |
| 伝えない事項 | 交友関係や仕事の細かな内容など、本人が望まない事柄 |
| 緊急時の扱い | 入院、事故、警察の対応などがあったときの連絡経路 |
| 見直しの時期 | 半年後など、枠組みそのものを話し合い直す時期 |
本人の同意を土台にする
報告の枠組みは、本人の同意があってはじめて続きます。本人が知らないところで様子が親に伝わっていると分かれば、支援者との信頼関係まで崩れかねません。反対に、「ここまでは伝えるが、ここから先は伝えない」と範囲を決めておくことは、本人にとっても安心して支援を受けられる条件になります。親の側も、報告が届いている限りは生活の細部に立ち入らない、と決めておくことで、距離を保ちやすくなります。
緊急時の連絡経路は、日常の報告と分けておく
日常の報告は間隔を空けてもかまいませんが、入院や事故のように急ぎの対応が必要な場面では、誰に連絡が入るのかをはっきりさせておく必要があります。賃貸住宅の契約で緊急連絡先を誰にするかも、この経路の一部です。親が保証人や緊急連絡先を引き受けるかどうかの判断は、【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前にで扱っています。
当事務所の関わり方
報告は、本人を支えるカウンセラーから届く形をとる
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人となって本人との窓口を担い、提携する民間の自立支援カウンセラーが本人の日常を支える体制で、親子の問題に取り組んでいます。カウンセラーは、住まい探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々の金銭管理、困りごとへの対応とあわせて、親御さんへの報告も担当します。
この体制では、親御さんと本人が直接やり取りする場面は、意図して少なくしています。近すぎる距離がお互いの負担になっていたご家庭では、直接の連絡が減ること自体が変化の一部だからです。そのかわり、本人の様子はカウンセラーを通じて定期的にお伝えし、急を要する事態があれば別の経路でお知らせする形を、独立の段階から組み立てます。
連絡が途絶えた後からでも相談できる
独立の時点で枠組みを決めていなかった場合でも、遅すぎるということはありません。現在分かっている情報を整理し、安否の確認を優先すべき状況か、見守りを続けてよい状況かを一緒に見極めたうえで、本人の支え手をどう確保するかを考えていきます。人が関わる問題ですので結果をお約束することはできませんが、第三者が間に入ることで、親子双方の状況が動き始める例もあります。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
よくあるご質問
どのくらい連絡がなければ、心配したほうがよいのでしょうか
決まった期間はありません。もともと連絡の少ないお子さんであれば数か月の沈黙が普段どおりのこともありますし、毎日のように連絡してきたお子さんが数日途絶えれば気になるのは当然です。期間の長さよりも、体調の悪化や思い詰めた様子など、命や身体の危険をうかがわせる事情があるかどうかを目安にしてください。そうした事情があれば、日数にかかわらず警察に相談することをお勧めします。
行方不明者届を出せば、子の居場所を教えてもらえますか
必ずしも教えてもらえるわけではありません。警察は発見した本人に家族へ連絡するよう促しますが、本人の意思などを考慮して、届出人への通知をしない、または通知する事項を限ることができるとされています(行方不明者発見活動に関する規則25条2項、26条1項)。無事であることだけが伝えられる場合もあります。
子から「もう連絡しないでほしい」と言われました
まずは本人の意思として受け止めることが、長い目で見て関係を保つことにつながる場合が多いと思います。そのうえで、支援者や第三者を通じて、緊急時の連絡経路だけは残しておけないかを相談してみてください。なお、連絡が途絶えても法律上の親子関係は変わらず、互いの扶養義務(民法877条1項)や相続の関係もそのまま続きます。
まとめ
- 成人した子に親へ連絡する法的な義務はなく、親が連絡を求める権利もない(民法4条、730条)。
- 連絡が来ないときは、暮らしが回っていると確認できる沈黙か、安否が分からない沈黙かを分けて考える。
- 子の住所が分からないとき、親は直系尊属として戸籍の附票の写しを請求できる(住民基本台帳法20条1項)。ただしDV等支援措置がとられている場合は交付されない。
- 命や身体の危険がうかがえるときは、親族として行方不明者届を出すことができる(行方不明者発見活動に関する規則6条1項2号)。
- 発見されても、本人の意思により居場所が親に伝えられないことがある(同規則25条2項、26条1項)。
- 職場への問い合わせや予告のない訪問、承諾のない立入り(刑法130条)は、関係をこじらせるおそれがある。
- 独立の前に、報告の担い手・頻度・伝える範囲・緊急時の経路を本人の同意のもとで決めておくことが、最も現実的な備えになる。
独立したお子さんとの連絡でお悩みの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。弁護士が親御さんの代理人となり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで、お子さんの住まいや仕事、金銭管理の支えとあわせて、親御さんへの報告の仕組みまで含めて取り組みます。これまで北海道から沖縄まで、全国のご家庭の親子の問題に関わってきました。遠方にお住まいの方は【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際もご覧ください。
お子さんの独立をこれから考えている段階でも、すでに連絡が途絶えてしまった段階でも構いません。無事でいるのかどうかが気がかりな親御さんも、距離を保ちながら見守る形を整えたい親御さんも、まずは現在の状況をお聞かせください。


