【親子問題】子が家に知らない人を出入りさせる、防犯上どうすればいい?
成人して家を出た子が、毎週のように実家へ来ては、米や野菜、冷凍食品や調味料などを持ち帰っていく。最初は「少しくらいなら」と見送っていたものの、回数や量が増えるにつれて食費がかさみ、来る日が近づくと気が重くなる。親子問題のご相談のなかには、このような日常の負担から始まるものも少なくありません。
この記事は、2026年10月時点の法令をもとに一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって取るべき対応は変わりますので、具体的な判断はご相談のうえで行ってください。
本記事では、独立した子が実家から食料を持ち帰ることを断ってよいのか、法律上はどう整理されるのか、関係をこじらせずに線を引くにはどう進めればよいのかを順にご説明します。
このようなお悩みはありませんか
- 独立した子が毎週のように来て、食料をまとめて持ち帰っていく。
- 年金で暮らしているのに、食費が以前より目に見えて増えている。
- 留守の間に合鍵で入られ、冷蔵庫の中身が減っていることがある。
- 断ったら機嫌を損ねて、かえって面倒なことになりそうで言い出せない。
- 子の暮らし向きが心配で、断ってよいものか迷っている。
どの悩みも、親として子を気にかける気持ちと、自分の生活を守りたい気持ちの間で揺れているものです。まずは、法律上の位置づけを確認しておきましょう。
断ること自体は、親が自分で決めてよい
結論から言えば、独立した成人の子に食料を渡すかどうかは、親が自分の生活状況を踏まえて決めてよい事柄です。断ったこと自体で、ただちに親が法的な責任を問われることは通常は考えにくいといえます。
成人した子に対する扶養義務の程度
民法877条1項は、直系血族は互いに扶養をする義務があると定めており、親と子もこれに含まれます。ただし、成人して独立した子に対する親の扶養は、一般に「自分の生活を成り立たせたうえで、余力がある範囲で援助する」程度のものと考えられています。未成熟の子を養う場合のように、自分と同じ水準の生活を子に保障しなければならない、というものではありません。
親の扶養義務の考え方については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで詳しく解説しています。
これまで渡した食料は、返してもらえるのか
親が承知のうえで持たせてきた食料は、法律上は親から子への贈与と整理されるのが一般的です。書面によらない贈与は、まだ渡していない部分については取りやめることができますが、すでに渡し終えた部分は取り消せないとされています(民法550条)。
そのため、過去に持たせた分の返還を求めるのは難しいことが多い一方で、「これからは持たせない」と決めることには法律上の妨げはありません。過去を清算するよりも、今後の線引きに力を注ぐほうが現実的です。
子が本当に生活に困っている場合
子の収入がなく、食べるものにも事欠く状態であれば、扶養の問題として話し合いが必要になる場面もあります。扶養の程度や方法は当事者の協議で決め、まとまらなければ家庭裁判所が定める仕組みです(民法879条)。
ただし、そうした場合でも、親が食料を渡し続けることだけが解決策ではありません。公的な制度につなぐことも選択肢になります。生活保護については、【親子問題】生活保護の申請に同行するということ|扶養照会の実際もあわせてご覧ください。
親が知らない間に持ち帰っている場合
親の了承を得ずに冷蔵庫や食品庫から持ち出している場合は、整理の仕方が変わります。
刑事上は親族間の特例がある
他人の物を無断で持ち去れば窃盗罪にあたり得ますが、刑法244条1項は、配偶者・直系血族・同居の親族の間での窃盗について刑を免除すると定めています(いわゆる親族相盗例)。親と子は直系血族ですので、別々に暮らしていてもこの特例の対象になります。
このため、警察に相談しても刑事事件として扱われにくいのが実情です。また、これまで黙認してきた経緯があると、「了承を得ていた」と受け取られることもあります。持ち帰りをやめてほしいのであれば、まずはその意思をはっきり伝えることが出発点になります。
民事上は返還や弁償を求められる
刑が免除されるのは刑事上の扱いであり、民法には親族だからといって責任を免れさせる規定はありません。了承なく持ち出された物については、返還や弁償を求めること自体は可能です。もっとも、食料の金額は一件ごとに小さく、請求の手間に見合わないことも多いため、実際には再発を防ぐ手立てのほうが重要になります。
家に入ること自体が問題になる場面
親が来訪を断り、合鍵の返却を求めているにもかかわらず、親の不在中に家へ入るような場合は、住居侵入罪(刑法130条)が問題になり得ます。この罪には親族間の特例はありません。とはいえ、親子の間で刑事手続を使うかどうかは慎重に考えるべき事柄であり、まずは鍵の管理などで物理的に入れない状態をつくることが先決です。
鍵の扱いについては、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界も参考になります。
関係をこじらせずに線を引くための進め方
まず1か月ほど、持ち出された物と頻度を書き留める
いつ、何を、どのくらい持ち帰ったかを簡単に記録しておくと、負担の大きさを客観的に把握できます。子に伝えるときにも「なんとなく嫌だ」ではなく、具体的な事実として話せるようになります。
「やめてもらう」か「範囲を決める」かを先に決める
伝える前に、親としてどこに線を引くのかを決めておきます。主な選択肢は次のとおりです。
| 方針 | 内容の例 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| すべてやめてもらう | 来訪時に食料は持たせない | 親の家計に余裕がない場合、無断の持ち出しが続いている場合 |
| 範囲を決める | 親が用意した分だけを、決まった頻度で渡す | 子の生活を少しは支えたい気持ちがある場合 |
| 期限を決める | 就職が決まるまで、何月までと区切る | 一時的な事情で困っていることがはっきりしている場合 |
伝えるときに意識したいこと
- 理由は子の落ち度ではなく、親自身の生活の事情として伝えます。
- 来訪の最中ではなく、落ち着いて話せる時間を選びます。
- 口頭で伝えた後に、同じ内容をメッセージなど文字でも残しておきます。
- いったん決めた線は、例外を重ねずに続けます。
「年金で暮らしていて、食費をこれ以上増やせない」「これからは月に一度、私が用意した分だけにしたい」といったように、親の側の事情と具体的な決め事を短く伝えるほうが、子も受け止めやすくなります。
家の側の環境も整える
合鍵を渡している場合は返してもらう、来るときは事前に連絡をもらう、親が不在の時間には来ないよう頼む、といった形で、無断で持ち出せない状況をつくっておくことも大切です。言葉だけで守ろうとすると、親の側が毎回断る負担を背負い続けることになります。
持ち帰りの背景に目を向ける
毎週のように食料を持ち帰る背景には、収入が足りない、浪費や借金がある、家計の管理がうまくできていないなど、子の生活が回っていない事情が隠れていることがあります。食料を断るだけで終わらせず、子が相談できる先を示しておくと、親子が向き合う負担を減らせます。
自治体には、生活に困っている人の相談を受ける自立相談支援の窓口が設けられており、就労や家計の立て直しについての支援を受けられる場合があります。食料の持ち帰りが金銭の要求や仕送りの問題と重なっている場合は、【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方や【親子問題】家計を分ける実務|口座・光熱費・保険をどう切るかもあわせてご覧ください。
断った後に要求が強まったとき
線を引いた後、子が強く反発し、大声を出す、物に当たる、食料の代わりにお金を求めてくる、といった形で要求が強まることもあります。そのようなときは、やり取りの日時や内容を記録し、身の危険を感じる場面では迷わず警察に相談してください。
金銭の要求を断ることの法的な位置づけは、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。親が直接やり取りを続けることが難しい場合には、弁護士が親の代理人として窓口になる方法もあります。当事務所では、自立支援カウンセラーと役割を分担し、親御さんの生活を守りながら子の自立を支える取り組みを行っています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
よくあるご質問
少しだけなら持たせてもよいのでしょうか
持たせるかどうかは親が決めてよい事柄ですので、無理のない範囲で持たせること自体に問題はありません。大切なのは、量や頻度を親の側で決め、子の求めに合わせて広げていかないことです。
夫婦で考えが違う場合はどうすればよいですか
一方の親が持たせ、もう一方が断るという状態では、子はどちらに頼めばよいかを学んでしまいます。子に伝える前に、夫婦で方針をそろえておくことが先です。【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときも参考にしてください。
断ったら子が実家に来なくなりました
しばらく距離を置くことは、親子それぞれの生活を立て直すうえで意味を持つ場合もあります。安否が気になるときは、連絡の取り方を決めておくと安心につながります。【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で考え方を整理しています。
まとめ
独立した子が実家から食料を持ち帰ることを断るのは、親が自分の生活を守るための正当な判断です。過去に渡した分を取り戻すことよりも、これからの線をどこに引くかを決め、落ち着いて伝え、家の側の環境も整えることが、親子の関係を長く保つことにつながります。持ち帰りの背景に生活の行き詰まりや金銭の問題がうかがえる場合は、家族だけで抱え込まず、早めに外部の力を借りることも考えてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


