【親子問題】子の暴力で親が反撃してしまった、親が罪に問われる?
一人暮らしを始めた子が、週に何度も実家に顔を出す。連絡もなく夕食時に現れ、そのまま泊まっていくこともある。子が「一人だと寂しい」と口にするので強く言えないものの、親のほうは生活のリズムが崩れ、このままでよいのか迷っている。このようなご相談は、親子問題のなかでも決して少なくありません。
子が実家を頼りにしてくれること自体は、悪いことではありません。一方で、来訪の回数や過ごし方が親の負担になっているなら、どこかで形を整えることも必要です。この記事では、独立した子が寂しさから頻繁に帰ってくるときに、親が考えておきたいこと、法律の面から見た「親の家」の位置づけ、来訪のルールの決め方、注意したい場面を順に整理します。
独立した子が頻繁に帰ってくるのは、珍しいことではありません
進学や就職で家を出た後、しばらくのあいだ実家に通う子は少なくありません。新しい環境に慣れるまでは、慣れた家で食事をし、家族と話すことで気持ちを落ち着かせている場合もあります。
頻繁に帰ってくる背景としては、次のようなものが考えられます。
- 一人の部屋に帰ると、話し相手がいないことが寂しい。
- 職場や学校で人間関係がうまくいかず、気持ちの逃げ場を求めている。
- 家事や食事の用意に慣れておらず、実家に来ると生活が楽になる。
- 収入が少なく、食費や光熱費を抑えたい。
- 親のことが気がかりで、様子を見に来ている。
同じ「頻繁に帰ってくる」でも、背景によって親の関わり方は変わります。最初から「来すぎだ」と責めるよりも、まずは何が子を実家に向かわせているのかを見ておくことが、その後の話し合いを進めやすくします。
見ておきたいのは「回数」よりも「中身」
来訪の回数が多いことだけで、すぐに問題があるとはいえません。目安になるのは、来訪が子の生活の一部として自然に収まっているか、それとも子の生活そのものが実家に戻りつつあるかという点です。
| 子の様子 | 考えられる状態 | 親が意識したいこと |
|---|---|---|
| 週末に食事をして、その日のうちに帰る | 実家を息抜きの場として使っている | 大きく変える必要はなく、親の予定と合わせる |
| 連絡なしに来て、親の予定に関係なく過ごす | 実家を自分の家の延長と感じている | 来る前の連絡など、最低限の約束を決める |
| 泊まる日が増え、自分の部屋に戻らない日が続く | 生活の中心が実家に戻りつつある | 再び同居するのか、いったん立ち止まって考える |
| 来るたびにお金や物を求める | 経済的な行き詰まりがある可能性 | 寂しさの問題とお金の問題を分けて考える |
| 仕事や学校に行けていない様子がある | 心身の不調や職場の悩みがある可能性 | 親だけで抱えず、外部の相談先も検討する |
表の上の段に近いほど、親子で話し合って調整できる場面が多くなります。下の段に近いほど、寂しさだけでは説明しきれない事情が隠れていることがあり、早めに状況を確かめておきたいところです。
法律の面から見た「親の家」と独立した子の関係
独立した後の実家は、親の生活の場です
子が成人して別に住まいを構えた後は、実家は親の生活の場であり、子の住まいではありません。誰をいつ家に迎えるかは、そこに住む親が決めることができます。親が「今日は都合が悪い」と来訪を断ることは、親子であっても不当なことではありません。
ただ、家族のあいだでは、これまでの習慣から「いつ来てもよい」という空気ができあがっていることが多いものです。親の側からはっきり伝えない限り、子は来訪が負担になっていることに気づきにくい、という点は押さえておきたいところです。
合鍵を持たせたままにするかどうか
子が実家の合鍵を持っている場合、親の留守中にも出入りができる状態が続きます。来訪を整えたいときは、合鍵の扱いもあわせて話し合うことが考えられます。親が出入りを断っているのに無理に入ってくる、帰るよう求めても居続けるといった状態になれば、家族のあいだでも法的な問題として扱われる場面がないとはいえません。もっとも、寂しさから実家に来ている段階で、こうした手段を前提に考える必要はほとんどなく、まずは話し合いで整えるのが基本です。
鍵を替えることの考え方については、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界でも解説しています。
泊まり込みが続くと、再同居に近づいていきます
頻繁な来訪のうちに泊まる日が増え、私物が実家に置かれるようになると、親子のどちらもはっきり決めないまま、実質的に同居へ戻っていくことがあります。いったん生活の拠点が実家に戻ると、改めて「自分の部屋に戻ってほしい」と伝えるのは、来訪の段階よりも難しくなりがちです。
子から「家に戻りたい」と言われたときの考え方は、【親子問題】独立した子が家に戻りたいと言ってきた|再同居を断るときで整理しています。
寂しさに寄り添いながら、来訪のルールを決める
子の寂しさを否定せずに、親の生活も守るためには、来訪について具体的な約束を決めておくことが役立ちます。約束を決めるときは、次の順で考えると整理しやすくなります。
- 来る前に連絡をもらうこと。
- 来訪の頻度や時間帯の目安を決めること。
- 泊まるかどうか、泊まる場合の日数を決めること。
- 食事や持ち帰る物の扱いを決めること。
- 合鍵の扱いを決めること。
伝えるときは、「来ないでほしい」ではなく、「この日は来てほしい」「この時間なら一緒に食事ができる」というように、会える形を示しながら話すと、子も受け入れやすくなります。会う機会をなくすのではなく、会う形を決めるという考え方です。
また、来訪の回数を減らす代わりに、電話やメッセージで様子を聞く時間を決めておく方法もあります。子にとっては「実家とのつながりが切れるわけではない」と分かることが、安心につながります。子が独立した後の距離の取り方については、【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点もあわせてご覧ください。
決めた約束を紙に書いておくかどうかは、親子の関係によります。書面にすること自体に抵抗を感じる子もいますので、まずは口頭で確認し、守られない状態が続くときに改めて考える、という順でもよいでしょう。親子間で約束を書面にする意味については、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。
親の側の気持ちも見ておく
子が頻繁に帰ってくる状態が続く背景には、子の寂しさだけでなく、親の側の気持ちが関わっていることもあります。子が来ると食事を多めに用意し、帰り際に食料や日用品を持たせ、来ない日は様子が気になって連絡をする。こうした関わりが重なると、子にとって実家は「行けば何でも整っている場所」になり、自分の部屋で暮らす力が育ちにくくなることがあります。
親子の距離が近すぎることで、お互いが離れにくくなっている関係は、親子問題のご相談でもよく見られます。来訪のルールを決めることは、子を遠ざけるためではなく、子が自分の生活を組み立て、親も自分の生活を取り戻すための準備と考えることができます。親自身も、趣味や友人との時間など、子の来訪とは別の予定を少しずつ増やしていくと、ルールを守りやすくなります。
寂しさの奥に別の悩みがあるとき
子が「寂しい」と言っていても、実際には職場や学校での悩み、体調の変化、生活費の不足などを抱えている場合があります。来訪の回数を調整する前に、子の生活がどの程度成り立っているかを、さりげなく確かめておきたいところです。
仕事に行けていない、食事や睡眠が乱れている、表情や話し方が以前と違うといった様子が続く場合は、親が来訪の回数だけを問題にしても、根本の解決にはつながりにくいことがあります。かかりつけ医や地域の保健所、精神保健福祉センターなど、本人や家族が相談できる窓口を一緒に調べておくことも考えられます。
どこに相談すればよいか分からない段階では、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担を参考にしてください。
寂しさの問題として扱いにくい場面
次のような状況が重なってきた場合は、親子の話し合いだけで調整するのが難しくなっていることがあります。
- 来るたびにお金を求められ、断ると機嫌を損ねる。
- 親の留守中に家に入り、物を持ち出している。
- 帰ってほしいと伝えても応じず、何日も居続ける。
- 来訪を断ったことをきっかけに、暴言や物を壊すといった行動がある。
- 親自身が来訪におびえ、眠れない、体調を崩しているといった状態にある。
このような場面では、寂しさへの対応と、金銭や安全の問題を分けて考える必要があります。仕送りや金銭の要求については、【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方や【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。暴力が伴う場合は、まず親自身の安全を確保することが先になります。
当事務所がお手伝いできること
親子の問題は、近い関係だからこそ、親から伝えると感情的なやり取りになりやすい面があります。当事務所では、親の代理人として子との連絡の窓口を担い、来訪や金銭のやり取りについての親の意向を整理してお伝えすることができます。あわせて、自立支援カウンセラーと連携し、子の生活の立て直しを支える取り組みも行っています。
サービスの内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
独立した子が頻繁に帰ってくることは、それだけで深刻な問題とは限りません。寂しさを受け止めつつ、親の生活を守るための約束を決めることで、無理のない関係を続けられることも多いものです。一方で、お金の要求や居座りが重なってきたときは、早めに状況を整理しておくと、その後の対応を選びやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


