【親子問題】子が執行猶予中に問題を起こしそう、親にできることは?
成人した子が実家を出て新しい生活を始めたとき、「新しい住所は、ほかの家族には言わないでほしい」と頼まれることがあります。親としては子の気持ちを尊重したい一方で、家族から居場所を聞かれたらどう答えればよいのか、黙っていることが家族への裏切りにならないか、と迷う方も少なくありません。
この記事は、成人した子が親元を離れて暮らし始めた場面を想定しています。子が未成年の場合は、親権や監護の問題が加わるため、考え方が異なります。
ここでは、親に「伝えない」義務があるのか、親が黙っていても住所が知られる経路はどこにあるのか、家族から聞かれたときにどう対応するかを順に整理します。
子が「知らせないで」と頼む背景
子が特定の家族に住所を伏せたいと考える背景には、さまざまな事情があります。たとえば、次のような場合です。
- きょうだいや一方の親から、暴言や暴力を受けてきた場合。
- 親戚から、お金の無心や生活への口出しが続いていた場合。
- 新しい生活が落ち着くまで、家族との接点を減らしたい場合。
- 独立の支援の中で、家族との連絡の窓口を一時的に絞っている場合。
子が理由をすべて話してくれるとは限りません。理由を問い詰めるよりも、「誰に」「いつまで」伏せてほしいのかを確認しておくと、その後の対応がぶれにくくなります。
親に「伝えない」法的な義務はあるのか
家族の間で子の住所を話すことを、一般的に禁じる法律の規定はありません。個人情報保護法も、事業者による個人情報の取扱いを対象とするもので、家族の間の会話を直接規制するものではありません。
もっとも、成人した子の住所は、子自身の私生活に関わる情報です。本人がはっきり伝えないでほしいと求めているのに伝えた結果、子がつきまといや暴力を受けるといった事態になれば、プライバシーの侵害などをめぐって法的な問題に発展するおそれもあります。義務の有無にかかわらず、子の頼みは、身の安全や生活の平穏にかかわる要望として受け止めておくのが適切でしょう。
また、子が親に住所を伝えたのは、親を信頼しているからこそです。住所がほかの家族に伝われば、親子の間の連絡まで途切れてしまうことがあります。連絡が途絶えたときの考え方は、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で解説しています。
親が黙っていても、住所が知られる経路
親が口を閉ざしていても、別の経路から住所が知られることがあります。どこから伝わりうるかを知っておくと、子と一緒に備えを考えやすくなります。
住民票の写し
住民票の写しを請求できるのは、原則として本人と同じ世帯の人です。それ以外の人が請求するには、自己の権利を行使するためなど、正当な理由が必要とされています(住民基本台帳法12条の3)。別の世帯の家族が、単に居場所を知りたいというだけでは、請求は認められにくいと考えられます。
戸籍の附票の写し
注意が必要なのは戸籍の附票です。戸籍の附票には住所の移り変わりが記録されており、本人のほか、配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属は、理由を示さずに写しを請求できる扱いになっています(住民基本台帳法20条)。
そのため、子が「父には知らせないで」と頼んでいても、父が子の戸籍の附票を取り寄せれば、住所が分かってしまうことがあります。両親が離婚していても、父や母であることに変わりはないため、同じことが起こりえます。一方、きょうだいは直系の親族ではないため、請求には正当な理由が必要です。
郵便物・家族で共有しているサービス・人づての情報
役所の手続以外にも、日常の中で住所が伝わる経路があります。
- 実家に届いた子宛ての郵便物を転送するときの封筒や控え。
- 年賀状や住所録、冷蔵庫に貼ったメモなど、家族の目に触れる記録。
- スマートフォンの位置情報の共有や、家族で共有している写真アルバム・カレンダー。
- 携帯電話の家族割や保険など、家族名義の契約の書類に書かれた住所。
- 共通の知人や親戚から、人づてに伝わる情報。
探偵などによる調査
探偵業者に所在調査を依頼する方法もあります。ただ、探偵業法は、調査の結果が犯罪行為や違法な目的に使われると知ったときは業務を行ってはならないと定めています(同法9条1項)。後で触れる支援措置を受けている人の所在調査は、こうした違法・不当な調査にあたるおそれがあり、事情を把握した業者は依頼を受けないのが通常です。もっとも、依頼する側が事情を伏せる場合もあり、完全に防げるとは言い切れません。
住民票などの交付を制限する「DV等支援措置」
子がほかの家族から危害を受けるおそれがある場合には、市区町村の「DV等支援措置」を利用できることがあります。配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待、およびこれらに準ずる行為の被害者が申し出て、市区町村が支援の必要性を確認すると、申出の相手方からの住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付請求などが制限される仕組みです。
親やきょうだいからの暴力などは、事情によって「これらに準ずる行為」として扱われることがあります。ただし、家族と会いたくない、関係がこじれているというだけでは対象になりにくく、危害を受けるおそれなどの具体的な事情が求められます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申し出る人 | 被害を受けている子本人(同じ住所の人も併せて申し出ることができます) |
| 窓口 | 住民票のある市区町村(本籍地が別の場合は、その扱いもあわせて確認) |
| 必要性の確認 | 警察や相談機関への相談状況などをもとに、市区町村が確認 |
| 期間 | 原則1年で、引き続き必要な場合は延長の申出を行う |
| 生活への影響 | 証明書のコンビニ交付など、一部のサービスが使えなくなる場合がある |
申出は原則として子本人が行います。親にできるのは、これまでの経緯を一緒に整理したり、警察などへの相談に付き添ったりすることです。転居の前後でどの手続をどの順に進めるかは、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序も参考になります。
家族から居場所を聞かれたときの答え方
居場所を聞かれたとき、その場しのぎの嘘で取り繕うと、後で話の食い違いが生じ、問い詰められたときに説明がつかなくなることがあります。「本人から、住所は誰にも伝えないよう頼まれている。元気にはしている」というように、伝えられないことと伝えられることを分けて答えるほうが、長く続けやすい対応です。
| 聞いてくる家族 | よくある事情 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 子のもう一方の親(離婚した元配偶者を含む) | 心配している、関係を修復したい | 伝えられないことを伝え、伝言があれば預かって本人に渡す |
| きょうだい | お金や実家のことで話がある、自分が原因だと思っていない | 用件を聞き取り、本人に伝えるかどうかを本人に確認する |
| 祖父母・親戚 | 手紙や贈り物を送りたい | 親の家に送ってもらい、親から本人に渡す形を提案する |
伝言を預かるときは、本人の了解を得てから渡すようにします。伝言に威圧的な言葉が含まれていれば、そのまま渡すのではなく、内容を記録として残しておくことも考えられます。親戚への伝え方については【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方、元配偶者については【親子問題】離婚した元配偶者に子の問題を伝えるべきか|伝える場面・伝えない場面で詳しく扱っています。
難しいのは、同居している配偶者に伏せてほしいと頼まれた場合です。夫婦の間で隠し事を続ける負担は小さくありません。子にその負担も率直に伝え、「いつまで」「どこまで」なら守れるかを話し合っておくと、後のすれ違いを減らせます。夫婦で考えが分かれるときは、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときもあわせてご覧ください。
家族の側に正当な用件があるとき
相続の手続、親の入院や介護の連絡、共有名義の財産の処理など、家族の側で子に連絡を取る必要が出てくることもあります。この場合でも、住所を伝えることと、連絡を取り次ぐことは分けて考えられます。親が窓口になって書類を受け渡す、本人の了解を得て弁護士を窓口にする、といった方法であれば、住所を明かさずに手続を進められることがあります。
裁判所の手続でも、一定の要件のもとで、当事者の住所などを相手方に知らせない取扱いを求める仕組みが設けられています。手続が必要になりそうなときは、早めに専門家に相談しておくと安心です。
また、親自身が入院したり亡くなったりしたとき、誰が子に連絡するのかも決めておきたい点です。連絡の手段だけを信頼できる人に託しておくなど、住所を広めずに済む方法を子と話し合っておくとよいでしょう。
子の身に危険がありそうなとき
ほかの家族が子の居場所を探し回っている、子の勤務先に現れたといった事情があれば、警察への相談を考える段階です。ストーカー規制法は恋愛感情などを動機とする行為を対象としているため、家族による行為には当てはまらないことが多いものの、行為の内容によっては、都道府県の迷惑防止条例や、脅迫罪・強要罪などで扱われる場合があります。
家族の中に暴力をふるう人がいる場合は、【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合も参考にしてください。
よくあるご質問
うっかりほかの家族に話してしまったら、どうすればよいですか
隠さずに早めに子に伝えることが大切です。誰に、どこまで話したのかを具体的に伝えれば、子は転居や手続の見直しなど、次の手を考えることができます。話してしまった相手には、本人の希望を説明し、ほかに広めないよう頼んでおきます。危害のおそれがある場合は、前述の支援措置や警察への相談を検討します。
役所や会社から子の住所を聞かれたら、答えてよいですか
電話などでは相手の身元を確かめにくいため、その場で住所を答えるのは控えたほうが安全です。用件と連絡先を聞き取り、本人から連絡するよう伝える形にしておけば、本人の意思を確かめたうえで対応できます。
当事務所がお手伝いできること
当事務所は、ひきこもりや家庭内暴力、金銭の要求などに悩む親御さんの代理人として、親子の問題に介入しています。子の独立を支える過程では、自立支援カウンセラーと役割を分担し、子が家を出たあとの生活の基盤づくりもサポートしています。
独立した子の住所をほかの家族にどこまで伝えるかは、その後の親子関係や子の生活の安定に関わる問題です。家族からの問い合わせへの対応方針、取り次ぎの窓口、手続が必要になったときの進め方など、ご家庭の事情に合わせて一緒に考えます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
関連する解説記事
子から住所を伏せてほしいと頼まれたときは、伝えるか伝えないかの二択だけでなく、誰に、いつまで、どのような形で取り次ぐかを決めておくことが、子の生活と家族の関係の両方を守ることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


