【親子問題】子が仕事を始めてもすぐ辞めてしまう、親はどう関わればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子が就職しても数週間から数か月で辞めてしまい、次の仕事もまた長く続かない。こうしたことが繰り返されると、親としては「このまま生活していけるのか」と不安が募ります。叱っても励ましても状況が変わらず、どう関わればよいのか分からなくなっている方も少なくありません。この記事では、成人した子が仕事を短期間で辞めてしまう場合に、親の立場でできることとできないこと、退職後に確認しておきたい手続、相談先、経済的な支援の考え方、関わり方の見直し方を順に整理します。

この記事は2026年10月時点の制度にもとづいて記載しています。雇用保険の給付制限の期間は、2025年4月1日以降に離職した場合の取扱いです。


このようなお悩みはありませんか


  • 入社しても数か月で辞めることが何度も続いている。
  • 辞めた理由を聞いても「合わなかった」としか言わない。
  • 辞めるたびに生活費や家賃を親が補っている。
  • 次の仕事をなかなか探そうとしない。
  • 親が勤務先に事情を聞いたほうがよいのか迷っている。


「すぐ辞める」の背景はひとつではない

 仕事が続かないという結果は同じでも、その背景は子によって異なります。まずは、どのような理由が考えられるのかを分けて見ることが出発点になります。

辞める理由として考えられるもの


  • 長時間労働やハラスメントなど、職場の環境に問題がある場合。
  • 仕事の内容や求められる水準が、本人の得意不得意と合っていない場合。
  • 睡眠や食欲の乱れ、気分の落ち込みなど、心身の不調が続いている場合。
  • 人間関係の負担が大きく、職場にいること自体がつらくなっている場合。
  • 生活リズムや通勤の負担など、働く前提となる生活が整っていない場合。


 理由によって、親がとるべき対応は変わります。職場の環境に問題があったのであれば、辞めたこと自体が身を守るための判断だったともいえます。心身の不調が背景にあるときは、仕事探しより先に体調を整えることが優先される場合があります。理由が分からないまま「次はがんばって」と送り出すと、同じことが繰り返されるおそれがあります。
 なお、背景に病気や発達の特性があるかどうかを、親が判断することはできません。気になる様子が続くときは、医療機関や精神保健福祉センターへの相談を検討します。判断の考え方は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で解説しています。

親の立場でできること・できないこと

 成人した子の就職や退職は、子と勤務先との間の契約の問題です。親は雇用契約の当事者ではないため、法律上関われる範囲には限りがあります。

退職の判断と申入れは本人が行う

 雇用契約を終わらせるかどうかは本人が決めることで、退職の申入れも本人が行います。期間の定めのない雇用契約であれば、本人が申入れをしてから2週間を経過すると契約は終了するとされています(民法627条1項)。親が勤務先に「辞めさせないでほしい」「辞めさせたい」と求めても、契約の当事者でない以上、会社がそれに応じる立場にはありません。
 また、子の同意なく親が勤務先に事情を説明したり、職場の対応に意見したりすると、子と職場との関係だけでなく、親子の信頼関係にも影響することがあります。反対に勤務先から親に連絡が来た場合の対応範囲は、【親子問題】子の勤務先から親に連絡が来た|会社とのやり取りの範囲をご覧ください。

親が身元保証人になっている場合

 入社時に、親が身元保証書に署名していることがあります。身元保証は、身元保証ニ関スル法律により、期間を定めない場合は3年、定める場合も5年を超えることができないとされています。また、2020年4月1日以降に個人が結んだ身元保証は、保証の上限額(極度額)を定めなければ効力を生じないと考えられています(民法465条の2)。
 子が短期間で辞めたことだけを理由に、親が当然に責任を負うものではありません。勤務先から金銭の支払いを求められたときは、身元保証書の日付や記載内容、求められている金額の根拠を確認したうえで、応じるかどうかを判断します。

辞めた直後に確認しておきたい手続

 退職後の手続は本人が行うものですが、短期間で離職を繰り返していると、保険や年金の切替えが抜けていることがあります。親は手続を代わりに済ませるのではなく、何が残っているかを本人と一緒に確認する役割にとどめるほうが、次に自分で動く力につながりやすくなります。

手続確認すること主な窓口
健康保険勤務先の保険の任意継続、国民健康保険への加入、家族の健康保険の被扶養者になる、のいずれかを選ぶ勤務先の健康保険・市区町村・家族の加入する健康保険
年金国民年金(第1号被保険者)への切替え。収入が少ない場合は保険料の免除や納付猶予の申請市区町村・年金事務所
雇用保険離職票を受け取り、失業給付(基本手当)の受給要件を満たすかを確認ハローワーク
住民税前年の所得にもとづく住民税が、給与からの天引きから自分で納める形に変わることがある市区町村


 失業給付は、自己都合で辞めた場合、原則として離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。短期間の就職と退職を繰り返していると、この要件を満たさないことがあります。
 受給できる場合も、正当な理由のない自己都合退職では、7日間の待期期間の後に給付制限があります。2025年4月1日以降の離職では、この給付制限は原則1か月です。ただし、離職日からさかのぼって5年以内に、正当な理由のない自己都合退職による給付制限を2回以上受けている場合は、3か月となります。職場でのハラスメントや心身の不調などが退職の理由である場合には、離職理由の扱いが変わることがあるため、ハローワークで事情を伝えて確認するよう本人に勧めておくとよいでしょう。

次の仕事を探すときの相談先

 親が求人を探して応募を勧めると、本人の意思とずれた仕事を選びやすくなります。本人が自分で相談に行ける窓口を親が把握しておき、選択肢として示すほうが、続けやすい働き方を見つけるきっかけになります。

  • ハローワーク(若者向けの窓口や、障害や病気のある方のための専門援助窓口を含む)。
  • 地域若者サポートステーション(働くことに悩みを抱える15歳から49歳までの方の相談窓口)。
  • 生活困窮者自立支援制度の就労準備支援事業(市区町村の自立相談支援機関が窓口)。
  • 精神保健福祉センターや医療機関(心身の不調が背景にあると考えられる場合)。


 どの窓口が合うかは、本人の年齢や体調、これまでの職歴によって異なります。それぞれの支援の内容は【親子問題】就労支援の選択肢|サポステ・就労準備支援事業の実際で、職歴の空白や短期離職の経歴をどう考えるかは【親子問題】仕事探しの現実|職歴の空白をどう埋めるかで解説しています。

お金の支援はどこまで続けるか

 仕事を辞めるたびに家賃や生活費を親が補っていると、辞めても暮らしが変わらない状態が続きます。支援そのものが悪いわけではありませんが、範囲と期間を決めずに続けると、親の生活や老後の資金に影響が及ぶことがあります。

成人した子に対する親の扶養義務

 親子の間には互いに扶養する義務があります(民法877条1項)。ただし、成人して働ける状態にある子に対する義務は、親が自分にふさわしい生活を維持したうえで、余力がある範囲で援助すれば足りるもの(生活扶助義務)と考えられています。大学在学中など、親の監護のあり方によっては扱いが異なる場面もありますが、仕事を辞めた成人の子の生活費を、親が無制限に負担しなければならないわけではありません。詳しくは【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。

支援の範囲と期間を言葉にする

 一方で、支援を急にすべて止めると本人の生活が立ち行かなくなり、かえって状況が悪くなることもあります。「次の仕事が決まるまで、家賃を何か月分まで」「求職中は食費のみ」のように、何を、いつまで支援するのかを決めて本人に伝え、可能であればメモや書面に残しておくと、後で言った言わないになりにくくなります。
 仕送りを段階的に減らしたい場合の進め方は【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方を、支援を断ったことで金銭の要求が強まっている場合は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけをご覧ください。

関わり方を見直すときのポイント


辞めたことを責めるより、続かなかった理由を一緒に振り返る

 辞めた直後は、本人も落ち込んでいたり、自分を責めていたりすることがあります。その時期に親が叱責を重ねると、本人は理由を話さなくなり、次の仕事を探す気力も失いやすくなります。何が負担だったのか、どの場面なら続けられたのかを、時間をおいて一緒に振り返るほうが、次の仕事選びに生かしやすくなります。

本人が決めることと親が決めることを分ける

 どの仕事を選ぶか、いつ辞めるかは本人が決めることです。他方で、家の中のルールや、親がどこまで金銭的に支えるかは親が決めることです。この線引きがあいまいなまま話し合うと、親は仕事の選び方にまで口を出し、子は親の支援を当然のものと受け止めるという状態になりがちです。支援のゴールをどこに置くかについては、【親子問題】「自立」と「自律」|支援のゴールをどこに置くかもあわせてご覧ください。

親子の距離を少しずつ広げる

 同居している場合、生活の多くを親が支えていると、働かなくても暮らしが回る状態が続きます。家事の分担や生活費の一部負担から始め、ゆくゆくは一人暮らしを視野に入れるなど、親子の距離を段階的に広げていくことも一つの方法です。考え方は【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点で解説しています。

弁護士への相談を考えたい場面

 仕事が続かないこと自体は、法律の手続で解決する問題ではありません。ただし、次のような事情が加わっている場合には、弁護士が関わることで状況を整理しやすくなることがあります。

  • 仕事を辞めた後、生活費や借金の返済を強く求められるようになっている場合。
  • お金を断ると暴言や物に当たる行為が出るなど、家庭内の緊張が高まっている場合。
  • 勤務先や貸金業者などから、親に支払いを求める連絡が来ている場合。
  • 親が子と直接話すと衝突してしまい、話し合いが進まない場合。


 当事務所では、弁護士が親の代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが住まい探しや仕事探し、日々の金銭管理など生活面の支援を行う形で、親子の問題に取り組んでいます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応を、役割を分ける理由は【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由をご覧ください。

まとめ


  • 仕事が続かない背景は子によって異なるため、まず辞めた理由を分けて考えます。
  • 退職の判断や申入れは本人が行うもので、親は雇用契約の当事者ではありません。
  • 退職後の保険・年金・雇用保険の手続は、本人と一緒に確認する形が向いています。
  • 成人した子への経済的な支援は、範囲と期間を決めて伝えることが大切です。
  • 金銭の要求や家庭内の緊張が強まっている場合は、第三者に窓口を任せることも検討します。


 子が仕事を続けられないことに、親が責任を感じる必要はありません。親が担えることと担えないことを分け、続けやすい働き方を本人が見つけられるよう、関わり方を少しずつ整えていくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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