【親子問題】少年鑑別所・少年院に入った後の家族の関わり
本記事は2026年9月時点の法令および公的機関の公表情報に基づいています。各支援制度の対象や内容は、自治体や年度によって異なる場合があります。
ひきこもりの期間が続いたお子さんについて、親御さんから「そろそろ働いてほしいが、何年も空いた履歴書で雇ってくれる会社があるのか」というご相談をいただくことがあります。反対に、お子さん本人は「空白をどう説明すればよいか分からず、応募の段階で手が止まってしまう」と感じていることも少なくありません。
空白期間の書き方や面接での答え方については、就職支援サイトなどで多くの情報が発信されています。それ自体は役に立つものですが、書類の書き方を整えるだけでは、働き始めた後に続けられるかどうかという問題は残ります。また、中には空白を別の経歴で埋めるよう勧める情報もあり、これは後に法的な問題を招くおそれがあります。
この記事では、ひきこもりを経たお子さんが仕事を探す際の現実を、親の立場から整理します。空白期間を偽ることのリスク、公的な就労支援の段階、書類や面接での伝え方、そして親にできることとできないことを扱います。子を家から独立させる手順や生活保護の利用といった論点は、別の記事で扱う予定です。
職歴の空白は「書き方」より先に「中身」の問題
空白期間があること自体は、失格の理由ではない
働いていない期間があることは、法律上の欠格事由ではありません。採用の判断は企業ごとに異なり、空白期間を重視する企業がある一方で、未経験者を受け入れる体制を整えている企業もあります。
ただ、ひきこもりの期間が長い場合、課題は履歴書の空欄だけではありません。朝決まった時間に起きる、人と会話する、指示を受けて作業を続けるといった、働く前提となる生活の力が一時的に弱まっていることがあります。空白を「どう書くか」より先に、「働き続けられる状態をどう作るか」を考えることが、結果として近道になる場合が多いといえます。
親の期待と本人の現在地のずれ
親御さんとしては「まずは正社員に」と考えるのは自然なことです。しかし、長く社会と距離のあった人が最初からフルタイムの仕事に就くと、心身の負担が大きく、短期間で離職してしまうこともあります。短期の離職が重なると、本人の自信がさらに揺らぐおそれがあります。
厚生労働省が令和7年1月に公表した「ひきこもり支援ハンドブック」でも、就労だけを支援のゴールとせず、本人のペースに沿った関わりを重視する考え方が示されています。親の側でも、期待する到達点をいったん段階に分けて捉え直すことが役に立ちます。
空白を偽ることのリスク|経歴詐称という法的な問題
重要な経歴を偽ると、採用後に解雇の理由になり得る
インターネット上には、空白期間をアルバイト歴などで「見せる」方法を紹介する情報もあります。しかし、事実と異なる職歴を書くことは、経歴詐称として扱われる可能性があります。
採用の際、企業が必要かつ合理的な範囲で経歴の申告を求めた場合、応募者は真実を告げるべき立場にあると考えられています。裁判例では、学歴を偽るなどして採用された労働者について懲戒解雇を有効とした判断があり、最高裁もこれを維持しています(炭研精工事件・最判平成3年9月19日)。もっとも、あらゆる食い違いが懲戒の対象になるわけではなく、真実を知っていれば採用しなかったといえるような「重要な経歴」の詐称に限られると解されています。職歴は、その重要な経歴の典型例として挙げられることが多い項目です。
「詳しく書かない」ことと「偽る」ことは違う
一方で、働いていなかった理由を職歴欄に細かく書く義務があるわけではありません。職歴欄は、いつ、どこで働いていたかという事実を記す場所です。空白期間があることを事実として示したうえで、その理由を簡潔に伝えることと、存在しない職歴を作ることとは、法的にも実務的にも別のものです。
偽った経歴で採用されても、発覚への不安を抱えながら働くことになり、職場での人間関係にも影響しやすくなります。長く働き続けることを目指すなら、事実に沿った説明を準備するほうが本人の負担は小さくなります。
空白を「埋める」のではなく、今の実績を積み重ねる
公的な就労支援には段階がある
過去の空白は書き換えられませんが、これから先の期間に何をしたかは積み重ねることができます。職業訓練、就労体験、短時間のアルバイトなどの経験は、それ自体が面接で説明できる「直近の実績」になります。
公的な就労支援には、働く前の生活の立て直しから始めるものと、求人への応募を前提とするものがあります。主なものを整理すると次のとおりです。
| 支援の種類 | 主な内容 | 窓口・特徴 |
|---|---|---|
| 就労準備支援事業 | 生活習慣の立て直し、社会参加の練習、就労体験などを段階的に行う | 自治体の自立相談支援機関が窓口。実施の有無や内容は自治体ごとに異なる |
| 認定就労訓練事業 | すぐに一般就労が難しい人に、支援付きの就労の場を提供する(いわゆる中間的就労) | 都道府県知事などの認定を受けた事業者が実施 |
| 地域若者サポートステーション | 働くことの相談、コミュニケーション講座、職場体験、就職後の定着支援 | 対象はおおむね15歳から49歳。家族からの相談も受け付けている |
| ハローワーク | 職業相談、求人紹介、公的職業訓練の案内 | 年齢を問わず利用できる |
就労準備支援事業と認定就労訓練事業
就労準備支援事業は、生活困窮者自立支援法に基づく事業で(生活困窮者自立支援法7条1項)、日常生活の自立、社会生活の自立、就労に向けた自立という段階を意識して、期間を区切って支援が行われます。いきなり求人に応募するのではなく、生活リズムを整えるところから始められる点が特徴です。利用にあたっては、収入や資産などの要件が設けられている場合があるため、まずはお住まいの自治体の自立相談支援機関に確認するとよいでしょう。
認定就労訓練事業は、雇用契約を結ばない訓練から、配慮を受けながら雇用契約に基づいて働く形まで、段階を踏んで一般就労を目指す仕組みです。事業を行う者は、その内容について都道府県知事などの認定を受けることになっています(同法16条)。
年齢によって使える窓口が変わる
地域若者サポートステーションは、令和2年度から対象が49歳まで広げられていますが、それを超える年齢の方は対象外です。お子さんが50歳を超えている場合には、自治体の自立相談支援機関やハローワークを中心に窓口を探すことになります。心身の不調について医師の診断を受けている場合には、障害福祉サービスとしての就労支援が選択肢になることもあります。
段階の目安|いきなり正社員を目指さない
仕事探しの段階は人によって異なりますが、おおむね次のような順序で考えると、本人の負担を抑えやすくなります。
- 起床・食事・外出といった生活のリズムを整える。
- 家族以外の人と定期的に話す場を持つ(相談窓口、居場所、講座など)。
- 就労体験や短時間の作業で、決まった時間に出向いて作業する経験を積む。
- 短時間のアルバイトなど、雇用契約に基づく仕事を始める。
- 勤務時間や日数を少しずつ増やし、希望に応じて長期の雇用を目指す。
この順序は一方通行ではなく、途中で前の段階に戻ることもあります。戻ること自体を失敗と捉えず、今どの段階にいるのかを本人と支援者が共有しておくことが、次の一歩を踏み出しやすくします。
書類や面接で空白をどう伝えるか
事実を短く、今の準備を中心に
履歴書では、最後の職歴や学歴の後に、働いていない期間があったことが分かる形で事実を記載しておくのが一般的です。理由の説明は、職歴欄ではなく面接や自己PR欄で行うほうが整理しやすいでしょう。
面接で聞かれた場合は、次のように、過去の事情を短く述べたうえで、現在の準備と今後の働き方に話の重心を移すと伝わりやすくなります。
- 過去の事情は、必要な範囲で簡潔に述べる(例として「体調を崩し、しばらく自宅で療養していました」)。
- 空白期間の後に取り組んできたこと(生活の立て直し、講座の受講、就労体験など)を具体的に話す。
- 今の働ける時間や日数を、無理のない範囲で正直に伝える。
直近の実績があると説明しやすい
前の章で触れた支援を利用していれば、「サポステの講座に通っていた」「就労体験で週に数日作業をしていた」といった形で、空白の直後から現在までを具体的に話すことができます。空白期間の説明に悩む場合、言い回しを工夫するよりも、話せる直近の経験を一つ作ることのほうが効果的なことがあります。
親にできること・できないこと
応募や就職を代わりに決めることはできない
お子さんが成人している場合、どこに応募し、どのような条件で働くかを決めるのは本人です。親が本人の了解なく応募したり、就職先を決めたりしても、本人の意思に沿わない仕事は続きにくく、親子の関係がかえってこじれることもあります。成人した子の問題に親が法的にどこまで関われるのかについては、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で整理しています。
また、親がいつまで生活費を負担し続けなければならないのかという点も、仕事探しと切り離せない問題です。親の扶養義務の範囲については、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかをご覧ください。
親子の距離を取ることが、仕事探しの出発点になることもある
親が直接「働きなさい」と伝えるほど、本人が身構えてしまうことがあります。親子の距離が近すぎる状態では、仕事探しそのものが親子の対立の材料になりやすいためです。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として関わり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。カウンセラーは、お子さんの住まい探しや仕事探し、日々の金銭管理などの日常的な支援を担い、親御さんには状況を報告します。親が前面に立たず、第三者が本人の仕事探しに伴走する形を取ることで、親子の双方に変化が生まれることがあります。サービスの内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で詳しくご紹介しています。もっとも、人が関わることですので、結果を保証することはできません。
よくあるご質問
空白期間は履歴書に書かなければならないのですか。
職歴欄は事実を記す場所ですので、存在しない職歴で空白を埋めることは避けるべきです。一方で、働いていなかった理由まで職歴欄に詳しく書く必要は一般にありません。空白があったことが分かる形で事実を記し、理由は面接などで簡潔に伝える方法が考えられます。
ひきこもりだったことを面接で詳しく話す必要はありますか。
聞かれた事柄について事実と異なる回答をすることは避けるべきですが、家庭内の事情や経緯を細部まで説明する必要があるとは限りません。業務に関わる範囲で簡潔に述べ、現在の準備や働ける条件に話を移すのが一般的な伝え方です。健康状態については、業務を行ううえで配慮が必要な事項を中心に伝えるとよいでしょう。
親が支援機関に相談するだけでも意味はありますか。
地域若者サポートステーションや自治体の相談窓口の多くは、家族からの相談も受け付けています。本人がすぐに動けない場合でも、親が先に制度や地域の資源を知っておくことで、本人が動き出したときに選択肢を示しやすくなります。どこに相談すればよいか迷う場合は、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担も参考になります。
まとめ
- 働いていない期間があること自体は法律上の欠格事由ではないが、長い空白の後は働く前提となる生活の力を整えることが先になりやすい。
- 存在しない職歴で空白を埋めると、重要な経歴の詐称として懲戒解雇の理由になり得る(炭研精工事件・最判平成3年9月19日)。
- 理由を詳しく書かないことと、経歴を偽ることは別であり、事実を短く伝える準備が大切である。
- 就労準備支援事業は、生活習慣の立て直しから就労体験までを段階的に支援する(生活困窮者自立支援法7条1項)。
- 認定就労訓練事業は、支援付きの就労の場を提供する仕組みである(同法16条)。
- 地域若者サポートステーションの対象はおおむね49歳までであり、それを超える場合は自治体の自立相談支援機関やハローワークが中心になる。
- 成人した子の就職を親が代わりに決めることはできず、第三者が伴走する形が有効な場合がある。
お子さんの自立と仕事探しにお悩みの方へ
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ひきこもりや家庭内暴力など親子の問題に関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。対応の範囲については【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。
お子さんに働いてほしいが、どう切り出せばよいか分からない方、親が前面に立つことで関係がこじれてしまっている方は、一度ご相談ください。自立支援カウンセラーと連携し、親御さんとお子さんそれぞれの自立に向けた道筋を一緒に考えます。


