【親子問題】シェアハウスで暮らすことは、子の自立に向いている?
子が家を出て一人暮らしを始めるとき、住まいや仕事、お金の準備に意識が向き、「独立した後にどう連絡を取り合うか」は後回しにされがちです。ところが、ご相談の場面では、独立そのものよりも、その後の連絡の取り方をめぐって親子の関係が再びこじれるケースが少なくありません。毎日のように電話が鳴る、お金の話ばかりになる、反対にまったく連絡が来なくなる、といった形です。
この記事では、子が独立する前に連絡の取り決めをしておく意味、決めておきたい項目、第三者を間に入れる方法、取り決めの法的な位置づけについて、親の立場から整理します。
独立の前に連絡の取り決めをしておく理由
同居していた親子が離れて暮らし始めても、それまでの関係の癖はすぐには変わりません。同居中に親が子の求めに応じ続けてきた家庭では、距離が離れた分だけ、電話やメッセージでの要求が増えることもあります。反対に、親の側が心配のあまり連絡を重ね、子が負担に感じて関係を閉ざしてしまうこともあります。
連絡の頻度や中身が決まっていないと、電話が鳴るたびに「出るか出ないか」「応じるか断るか」をその場で判断することになります。その都度の判断は親にとって大きな負担になり、断ったときには子が「急に冷たくなった」と受け止めて、衝突のきっかけにもなりかねません。あらかじめ枠組みを決めておけば、一つひとつの連絡に対する判断を減らし、親子の双方にとって先の見通しが立つ関係を作りやすくなります。
取り決めがないまま独立した家庭では、次のような声が聞かれます。
- 家を出たのに、毎日何度も電話がかかってくる。
- お金の話が出るたびに断れず、結局振り込んでしまう。
- 電話に出ないと、実家まで来てしまう。
- しばらく連絡がなく、無事かどうか分からない。
連絡の取り決めは、親子の縁を切るためのものではありません。離れて暮らしながら、互いの生活を守りつつ関係を続けていくための約束事です。離れて暮らすこと自体の意味については、【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点もあわせてご覧ください。
事前に決めておきたい連絡の項目
取り決める内容は家庭ごとに異なりますが、多くの場合、次の項目が土台になります。
| 項目 | 決めておく内容の例 | 決めていないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 頻度・時間帯 | 週1回、日曜の夕方に電話する など | 昼夜を問わない連絡が続き、親の生活や仕事に支障が出る |
| 連絡の手段 | 普段はメッセージ、電話は決めた日時のみ など | 着信が重なり、出ないこと自体が衝突のきっかけになる |
| 用件の扱い | お金の相談は近況の連絡とは別に扱う など | 近況の連絡がそのまま金銭の要求の場になる |
| 緊急時の連絡 | けが・病気・事故など、何を緊急とするか | 「緊急」を理由にした連絡が日常化する |
| 連絡が途絶えたとき | 何日連絡がなければ、誰が様子を確認するか | 心配した親が突然訪ね、関係がこじれる |
| 見直しの時期 | 3か月後・半年後に一度見直す など | 取り決めが実情に合わなくなっても放置される |
頻度と手段は「守れる水準」で決める
最初から連絡を大きく減らすと、子の側が不安を強め、かえって連絡が増えることがあります。同居中のやり取りの量を踏まえ、段階的に減らしていく設計のほうが現実的です。また、親が電話に出られない時間帯(勤務中や夜間など)を最初に伝えておくと、「出なかった」ことを拒絶と受け取られにくくなります。
手段については、記録が残るメッセージを基本にしておくと、やり取りを後から振り返りやすくなります。要求や約束の経緯が残っていれば、のちに支援者や弁護士へ相談するときの材料にもなります。
お金の話は近況の連絡と切り分ける
独立後の連絡でとくに問題になりやすいのが、お金の話です。近況を尋ねる電話の途中で仕送りの増額や臨時の出費を求められると、親はその場で断りにくくなります。
そこで、仕送りの金額や支払日を独立前に決めておき、それ以外の金銭の相談は「決めた日にまとめて話す」「間に入る支援者を通す」といった形で、普段の連絡と分けておく方法があります。仕送りや家賃の負担をどこまで続けるかについては、【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方、【親子問題】独立した子の家賃を払い続けている|いつまで払うのかで詳しく扱っています。
「緊急」の中身を具体的にしておく
緊急時の連絡は、どのような取り決めの下でも受けられるようにしておく必要があります。ただ、何を緊急とするかを決めていないと、「今すぐお金が必要」「とにかく話を聞いてほしい」といった用件も緊急として扱われ、取り決めが形だけのものになりがちです。
入院や事故、警察からの連絡など、緊急の範囲をできるだけ具体的に挙げておくとよいでしょう。あわせて、賃貸住宅の緊急連絡先などに親の連絡先を記載するかどうかも話し合っておきます。記載する場合は、管理会社などから連絡が来たときに親がどこまで対応するかも、想定しておくと慌てずに済みます。
連絡が途絶えたときの手順も先に決める
取り決めをしていても、子の側から連絡が途絶えることはあります。そのときに親が慌てて自宅を訪ねたり、勤務先に問い合わせたりすると、子が干渉と受け止め、関係が悪化することがあります。
「一定の日数連絡がなければ、支援者が様子を確認する」「それでも確認がとれなければ警察に相談する」というように、確認の順序と担い手を決めておくと、親も落ち着いて対応しやすくなります。安否確認の進め方は、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」で解説しています。
親子が直接やり取りしない形も選べる
同居中に暴力や金銭の要求が続いていた家庭では、独立後も親子が直接やり取りを続けると、以前と同じ関係に戻ってしまうおそれがあります。そのような場合は、一定の期間、親子の連絡を第三者を通す形にすることも考えられます。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、民間の自立支援カウンセラーが子の日常生活を支える形で、親子の問題に対応しています。独立後は、カウンセラーが子の生活の相談に乗りながら、その様子を親に報告します。金銭の要求や親への強い働きかけについては、弁護士が窓口となって受け止めます。親が直接対応しなくても子の状況を把握でき、子の側にも相談相手がいるという状態を作ることがねらいです。
| 担い手 | 主に担うこと |
|---|---|
| 親 | 取り決めた範囲での連絡、決めた仕送りなどの支援 |
| 自立支援カウンセラー | 子の生活面の相談、仕事探しや金銭管理の支援、親への近況報告 |
| 弁護士 | 親の代理人としての窓口、金銭の要求や取り決めを超えた接触への対応 |
第三者を通す期間は、あらかじめ固定するものではありません。子の生活が安定してきた段階で、直接の連絡を少しずつ戻していくこともあります。サービスの詳しい内容は、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
連絡の取り決めに法的な拘束力はあるのか
親子の間で連絡の頻度や方法を決めても、それは基本的に当事者どうしの約束です。書面にしておけば、何を約束したかがはっきりし、のちに行き違いが起きたときに確認しやすくなります。ただ、取り決めに反して電話がかかってきたからといって、それだけで直ちに法的な効果が生じるわけではありません。連絡についての約束は、強制することより、守ってもらえる内容に工夫することが中心になります。書面にする意味と限界については、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で整理しています。
取り決めを超えた連絡や訪問が続く場合
取り決めが繰り返し破られ、深夜の着信や自宅への押しかけが続くような場合には、法的な手段を検討する場面もあります。
ただし、つきまとい行為を規制するストーカー規制法は、恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる行為を対象としているため、親子間の連絡には通常は当てはまりません。そのため親子間では、裁判所に対し、面談の強要や接近を禁じる仮処分を申し立てる方法が検討されることがあります。この手続では、平穏に生活する権利が侵害されていることや、すぐに止める必要があることを、着信の記録や訪問の日時などで具体的に示すことが求められます。
また、連絡の中に危害を加えるといった内容が含まれる場合や、暴力を伴う場合には、脅迫や暴行として警察に相談することも考えられます。いずれの場面でも、日ごろから記録を残しておくことが判断の材料になります。
取り決めを子に伝えるときに気をつけたいこと
取り決めは、親が一方的に通告するよりも、子の意見を聞きながら決めるほうが守られやすくなります。とはいえ、暴力や強い金銭の要求があった家庭では、親子だけで話し合うこと自体が難しい場合もあります。そのようなときは、支援者や弁護士が同席する、あるいは親に代わって伝えるといった方法をとることができます。
伝える際には、次の点を意識しておくとよいでしょう。
- 連絡を減らすことが「見捨てる」という意味ではないことを、言葉にして伝えます。
- 親の側も取り決めを守り、決めた範囲を超えて連絡しないようにします。
- 取り決めが守られなかったときにどうするかも、あらかじめ伝えておきます。
- 見直しの時期を決め、状況が変われば内容を変えられることを示します。
とくに、親の側から取り決めを破ってしまうと、子に「約束は守らなくてもよい」と受け取られるおそれがあります。心配な気持ちから連絡したくなったときは、支援者に様子を尋ねるなど、決めておいた経路を使うことが大切です。
独立後は取り決めを見直していく
独立直後に決めた取り決めが、そのままずっと合い続けるとは限りません。仕事が見つかって生活のリズムが整えば、連絡の頻度を緩められることもあります。反対に、生活が崩れて要求が強まり、第三者の関与を厚くする必要が出てくることもあります。
当事務所の対応では、子が家を出てから少なくとも半年程度を支援の期間として想定し、その間の様子を見ながら親子の関わり方を調整しています。見直しの際には、連絡の頻度だけでなく、仕送りの金額や支払期間、実家に来るときの約束なども一緒に確認しておくとよいでしょう。独立した子から実家に戻りたいと言われた場合の考え方は、【親子問題】独立した子が家に戻りたいと言ってきた|再同居を断るときで扱っています。
連絡の取り決めでお悩みの方へ
子の独立は、家を出た日で区切りがつくものではなく、その後の関わり方まで含めて形づくられていきます。連絡の取り決めは、親が自分の生活を取り戻し、子が自分の力で暮らしていくための土台の一つです。独立の進め方そのものについては、【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順もご参照ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


