【親子問題】子が家の中に監視カメラを付けて親を見張っている、外させられる?
子どもの様子が心配で精神科や心療内科の受診を勧めても、本人が「病院には行かない」と拒んでしまう。そのようなとき、親御さんが「まずは家族だけで専門家に話を聞いてもらいたい」と考えるのは自然なことです。本人が来院しなくても、家族だけの相談を受け付けている医療機関や公的な窓口はあります。ただし、家族だけの相談でできることには限りがあり、相談先によって費用や内容も異なります。
この記事では、家族だけで先に相談できる病院や窓口の種類、家族相談でできること・できないこと、相談の前に整理しておきたい情報、そして暴力や金銭の要求が重なっている場合の考え方を、成人した子をもつ親御さんの立場から整理します。
医療機関や公的な窓口の受付方法・費用は施設ごとに異なり、変更されることもあります。実際に利用する際は、各施設に直接ご確認ください。本記事は一般的な情報の整理であり、医学的な判断を示すものではありません。
本人が来なくても、家族だけで相談できる場所はあります
精神科の医療は、本来は本人を診察するところから始まります。とはいえ、本人が受診を拒む状態が長く続く家庭は珍しくなく、医療機関や行政の側でも、家族だけが来る相談を想定した仕組みが設けられています。主な相談先を並べると、次のようになります。
| 相談先 | 主な相談の担い手 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 病院・クリニックの家族相談 | 精神科医、精神保健福祉士、公認心理師など | 自費の相談料が設定されていることが多い | 医療機関としての見立てが得られ、その後の受診や訪問診療につなげやすい |
| 精神保健福祉センター | 精神科医、保健師、心理職など | 無料 | 都道府県単位の専門窓口。家族教室を開いているところもある |
| 保健所・保健センター | 保健師、嘱託の精神科医など | 無料 | 住まいの地域で継続して相談しやすい。医師の相談日は予約制のことが多い |
| ひきこもり地域支援センター | 相談支援の担当者 | 無料 | ひきこもり状態にある本人と家族の相談全般を受け付ける |
| 家族会 | 同じ経験をもつ家族 | 会費程度 | 気持ちの共有や、地域の医療機関の情報交換ができる |
どこが適しているかは、子の年齢や状態、家庭の中で起きていることによって変わります。医療としての見立てを早く得たいのであれば病院の家族相談、費用をかけずに継続して相談したいのであれば公的な窓口というように、目的から選ぶと整理しやすくなります。両方を並行して使うことも可能です。
病院・クリニックの家族相談でできること・できないこと
医療機関によって「家族相談」「家族面談」「ご家族のみのご相談」など呼び方はさまざまですが、本人が来院していない段階で、家族の話を聞いて助言する枠を設けているところがあります。ひきこもりの相談を受け付ける医療機関の中には、家族だけの相談に医師とソーシャルワーカーが応じ、訪問診療も含めてどのような診療がよいかを提案する形をとっているところもあります。
家族の話から、見立てや関わり方の助言を受けられる
家族相談で得られるのは、家族から聞き取った情報をもとにした見立てと、今後の関わり方についての助言です。たとえば、医療につなぐことを急いだほうがよい状態かどうか、本人への声のかけ方や避けたほうがよい言葉、受診を勧めるタイミング、家族自身が休息をとる工夫などです。家族が相談を続けるうちに家庭内の緊張がやわらぎ、本人が受診に応じるようになることもあります。
本人を診察しないまま、診断や処方はできない
医師は、自ら診察しないで治療をしたり、診断書や処方せんを交付したりすることが禁じられています(医師法20条)。そのため、家族相談で病名を確定してもらうことや、家族が薬を受け取って本人に飲ませるといったことはできません。家族相談は、あくまで本人を医療につなぐための準備と、家族の負担を軽くするための場と考えておくと、期待とのずれが生じにくくなります。
費用は自費の相談料になることが多い
健康保険による診療は、本人が患者として診療を受けることが前提です。そのため、家族だけの相談は保険の対象外とされ、医療機関が独自に定めた相談料を支払う形になることが少なくありません。金額は1回あたり数千円程度のものから数万円になるものまで幅があり、相談時間の長さや担当する職種によっても異なります。予約の段階で確認しておくと安心です。
家族相談を受け付けている病院の探し方
家族相談を受け付けているかどうかは、医療機関ごとに方針が分かれます。次のような方法で候補を探すと見つけやすくなります。
- 医療機関のホームページで「家族相談」「家族面談」「ご家族のみのご相談」といった記載があるかを確認します。
- 保健所や精神保健福祉センターに、家族だけの相談に応じている地域の医療機関がないかを尋ねます。
- ひきこもりや思春期・青年期の診療を掲げる医療機関、訪問診療を行っている医療機関も候補に入れます。
- 家族の誰かがすでに通っている医療機関があれば、そこで相談先を紹介してもらえないかを尋ねます。
候補が見つかったら、予約の前に電話で次の点を確かめておくと、当日の相談が実りのあるものになりやすくなります。
- 本人が来院しなくても相談できるかどうか。
- 相談の費用と、健康保険の対象になるかどうか。
- 1回の相談時間と、相談に応じる職種(医師か、精神保健福祉士や心理職か)。
- 相談の後に本人が受診することになった場合の流れ。
- 訪問診療や訪問看護に対応しているかどうか。
費用をかけずに相談できる公的な窓口
病院の家族相談とあわせて、公的な窓口も知っておくと選択肢が広がります。公的な窓口は無料で利用でき、同じ担当者に継続して相談しやすい点に利点があります。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、精神保健福祉法に基づいて都道府県などに置かれている専門の機関です。東京都には、都立精神保健福祉センター、都立中部総合精神保健福祉センター、都立多摩総合精神保健福祉センターの3か所があり、担当する地域を分けています。電話相談のほか、予約制の来所相談や、思春期・青年期の子をもつ家族向けの家族教室を開いているところもあります。
保健所・保健センター
保健所や保健センターでは、保健師が心の健康に関する相談を受け付けており、本人だけでなく家族からの相談も対象とされています。自治体によっては、精神科医が相談に応じる予約制の相談日が設けられています。精神科を受診したほうがよいか迷っている段階や、家族としての関わり方を相談したい段階でも利用できる窓口です。地域の医療機関の情報を得たり、状況によっては保健師の訪問につないでもらえたりすることもあります。
ひきこもり地域支援センターと家族会
本人が長く自宅から出ていない場合は、ひきこもり地域支援センターも相談先になります。窓口ごとの役割の違いは【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことで、家族同士の支え合いについては【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできることで整理しています。相談先全体の分担を知りたい方は【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご覧ください。
相談の前に家族が整理しておきたいこと
家族相談では、本人を直接診ることができない分、家族から伝えられる情報が見立ての手がかりになります。限られた相談時間を有効に使うために、次の点を事前にメモしておくと役立ちます。
- 変化に気づいた時期と、きっかけとして思い当たる出来事。
- 睡眠、食事、入浴など日常生活の様子。
- 本人が口にしている言葉や、繰り返している行動。
- 暴言・暴力、物の破壊、金銭の要求の有無とその頻度。
- 過去の受診歴や服薬歴、学校や職場での経過。
- 家族が最も困っていることと、相談で知りたいこと。
出来事は、日付とあわせて具体的に書き留めておくと伝わりやすくなります。本人が相談そのものを拒んでいる段階で家族がどこまで動けるかについては、【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で詳しく扱っています。また、ひきこもりの状態と精神疾患をどう見分けて医療につなぐかについては、【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断も参考になります。
家族が相談したことは本人に伝わるのか
医師や保健師などの専門職には守秘義務があり、家族が相談した内容が相談先から本人に伝えられることは通常ありません。相談したことを本人に伝えるかどうか、伝えるとすればいつ・どのように伝えるかは、相談先と話し合いながら決めていくことができます。
一方で、本人が受診を始めた後は注意が必要です。成人した子の診療に関する情報は本人の個人情報であり、医師が本人の同意なく家族に伝えることは原則としてできないとされています。家族が医師に情報を伝えることはできても、診療の内容を家族が聞けるとは限りません。受診につながった後の家族の関わり方は、早めに医療機関と相談しておくとよいでしょう。
受診を急ぐ場面と、無理に連れて行くことの危うさ
自分や他人を傷つけるおそれが差し迫っているときや、強い興奮が収まらないときは、家族相談の予約を待つ状況ではありません。身の安全を確保したうえで、119番や110番への連絡を検討してください。夜間や休日の相談先は、【親子問題】夜間に子が暴れたときの相談先|時間帯別の窓口で時間帯ごとに整理しています。入院が必要と判断された場合に家族が同意を求められる場面については、【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味をご覧ください。
反対に、本人の同意がないまま民間の業者に依頼して医療機関や施設へ連れて行く方法は、慎重に考える必要があります。成人した本人の意思に反する連れ出しは、親の依頼があっても正当化されるものではなく、裁判で違法と判断された例もあります。考え方は【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで解説しています。
暴力や金銭の要求が重なっているときは、法的な手当ても並行して
家族相談は、子の心身の状態を見立て、医療につなぐための入り口です。しかし、子からの暴力や繰り返される金銭の要求が続いている場合、医療の相談だけでは親御さんの生活や安全を守りきれないことがあります。受診を待っている間にも、親が疲弊し、判断する余力を失っていくおそれがあるためです。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との連絡の窓口を引き受け、暴力や金銭の要求から親御さんを守る取り組みをしています。あわせて、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、カウンセラーが住まいや仕事探し、日々の金銭管理、通院のサポートなど、子の生活面の支援を担います。医学的な判断は医療機関に委ね、弁護士とカウンセラーは家庭の状況を整えて、医療や支援を受けやすい環境をつくる役割を分担しています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で、具体的な関わり方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際で紹介しています。親御さん自身の休息については、【親子問題】子の問題で親自身が限界|親が先に休むための手配もご覧ください。
まとめ
本人が受診を拒んでいても、家族だけで先に相談できる場所はあります。病院やクリニックの家族相談は医療としての見立てを得やすい一方、診断や処方はできず、自費の相談料がかかることが多い点を理解しておく必要があります。精神保健福祉センターや保健所などの公的な窓口は無料で利用でき、地域の医療機関を探す手がかりも得られます。
子の受診は、家族が一度で実現させなければならないものではありません。相談先を持ち、記録を整え、家族自身が倒れないようにしておくことが、本人を医療につなぐ道を残すことにもつながります。暴力や金銭の要求が重なり、医療の相談だけでは家庭が立ち行かないと感じたときは、法的な手当てを並行して検討することも一つの方法です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


