【親子問題】子が孫を連れてきてお金を求める、断りにくいときは?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

子が孫を連れて実家に来て、「この子の習い事の費用が足りない」「孫のためだと思って少し助けてほしい」とお金を求めてくる。孫の顔を見ると断りにくく、気づけば何度も渡している。こうしたご相談は、親子問題の中でも珍しいものではありません。

 孫を大切に思う気持ちと、子の求めにどこまで応じるかは、本来別々に考えてよいことです。この記事では、孫の生活費を負担する立場は誰にあるのか、お金の求め方が気になるときにどう線を引くか、孫の暮らしそのものが心配なときにどこへつなぐかを、法律の考え方に沿って整理します。

この記事は、2026年4月1日に施行された改正民法(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)の内容を踏まえています。税金の扱いは個別の事情で変わるため、具体的な判断は税理士や税務署でご確認ください。


孫を連れてこられると断りにくくなる理由

 孫の前でお金の話になると、断ること自体が孫を拒むように感じられることがあります。また、子の側にそのつもりがなくても、孫が一緒にいることで落ち着いて話し合える場が整わず、その場で渡して終わらせてしまう流れができやすくなります。

 ご相談の中でよく聞かれる悩みには、次のようなものがあります。

  • 孫の前で断ったら、孫が傷つくのではないかと思う。
  • 断ったら、もう孫に会わせてもらえなくなるかもしれない。
  • 孫のためと言われても、本当に孫に使われているのか分からない。
  • 一度渡すと、次も同じように頼まれる。
  • 夫婦の間で、渡すかどうかの考えが合わない。


 まず押さえておきたいのは、孫の生活を支える責任がどこにあるのかという点です。ここが整理できると、断ることへの後ろめたさがいくらか軽くなることがあります。

孫の生活を支える責任は、まず孫の父母にある

 民法877条1項は、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定めています。祖父母と孫は直系血族にあたるため、祖父母にも孫を扶養する義務がまったくないわけではありません。ただし、同じ「扶養」でも、誰が負うかによって求められる程度が違います。

父母の扶養は「自分と同じ程度の生活」を保つもの

 2026年4月に施行された改正民法では、父母は、子が自分と同じ程度の生活を維持できるよう扶養しなければならないことが明文化されました(民法817条の12第1項)。これは一般に「生活保持義務」と呼ばれ、親が自分の生活を切り詰めてでも子の生活を支えるべき強い義務と理解されています。孫の衣食住や教育にかかる費用は、まず孫の父母、つまりご相談者のお子さんとその配偶者(離婚している場合は元配偶者を含みます)が負担するのが原則です。

祖父母の扶養は余力の範囲で考えられている

 これに対して、祖父母が孫に対して負う扶養は、一般に「生活扶助義務」と呼ばれます。自分の生活を成り立たせたうえで、余力がある範囲で援助するという程度のものと考えられており、父母が扶養できる状態にあるなら、祖父母が負担する場面は基本的に後になります。

立場扶養の程度考え方の目安
孫の父母(ご相談者のお子さんとその配偶者)生活保持義務自分と同じ程度の生活を孫に保たせる
祖父母(ご相談者)生活扶助義務自分の生活を維持したうえで、余力の範囲で援助する


 法律相談サイトにも、祖父母が孫の養育費を求められたという質問が寄せられていますが、回答では、まず父母の負担が先にあり、祖父母が負うとしても限られた範囲にとどまるという考え方が示されることが多いようです。扶養の程度や方法について当事者の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所が一切の事情を考慮して定めることになっています(民法879条)。

 つまり、「孫のため」という言葉があっても、それだけで祖父母が求められた金額を払う法的な義務が生じるわけではありません。子が働ける状況にあるのか、配偶者の収入はどうか、公的な支援を使っているかといった事情によって、考え方は大きく変わります。

「孫のため」と言われたお金の使い道を確かめる

 援助するかどうかを決める前に、何に使うお金なのかを具体的に聞くことが出発点になります。学費、保育料、医療費のように使い道がはっきりしているものと、「生活が苦しいから」という漠然とした求めとでは、対応の仕方が変わります。

渡し方を変えるという方法

 孫のための費用を援助したいけれど、子に現金を渡すと別のことに使われてしまうのではないかと心配な場合は、支払い先に直接払う方法があります。たとえば、学校や塾の費用を請求書に基づいて支払う、必要な物を一緒に買いに行く、といったやり方です。お金の流れが見えるので、援助した内容を後から確かめやすくなります。

 税金の面では、扶養義務者からの生活費や教育費のうち、通常必要と認められるものをその都度直接充てる場合には、贈与税がかからない扱いがあります(相続税法21条の3第1項2号)。一方、名目が生活費や教育費でも、預金に回したり、まとまった額を一度に渡したりすると扱いが変わることがあります。金額が大きくなるときは、事前に税理士や税務署に確認しておくと安心です。

貸すのか、あげるのかを決めておく

 子から「必ず返すから」と言われて渡したお金でも、後になって「もらったものだ」と言われ、話がこじれることがあります。貸すのであれば、金額、返す時期、返し方を書面に残しておくことが大切です。あげるのであれば、それ以上の援助はしないという線をあわせて伝えておくと、繰り返しの求めを抑えやすくなります。

 貸したお金をめぐる整理は【親子問題】子に貸したお金を返してもらいたい|「もらった」と言われたときの整理と請求の進め方で、親子間の約束を書面にする方法は【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。

断るときの伝え方

 孫を大切に思う気持ちと、お金の求めに応じるかどうかは、分けて伝えることができます。次のような順序で考えておくと、その場の空気に流されにくくなります。

  1. お金の話は孫のいない場で、日をあらためて聞くと伝えること。
  2. その場では返事をせず、一緒に暮らす家族と相談してから答えること。
  3. 援助する場合は、金額・回数・使い道の範囲を先に決めておくこと。
  4. 断るときは、孫のことは変わらず大切に思っていると言葉にしたうえで、お金には応じられないと伝えること。
  5. 求められた日時、金額、名目、渡したかどうかを記録しておくこと。


 「孫を連れて来てくれるのはうれしい。ただ、お金のことは別に話したい」のように、訪ねてきたこと自体は受け止めつつ、話題を切り分ける言い方もあります。親の側が自分の生活や老後の資金を守ることは、わがままではありません。親の生活が立ち行かなくなれば、結果として孫を含む家族全体の負担が大きくなるおそれもあります。

 夫婦の考えが割れている場合は、子と話す前に夫婦で方針をそろえておくことが先決です。【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときも参考にしてください。定期的に渡しているお金をやめたい場合は、【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方で止め方の手順を紹介しています。

「孫に会わせない」と言われたとき

 断ったことで「それならもう孫には会わせない」と言われるのではないか、という不安を抱く方は少なくありません。孫と会うかどうかは、基本的に孫の親権者である父母が決めることであり、祖父母が会うことを法的に求められる場面は限られています。

 2026年4月に施行された改正民法では、父母が離婚する場合などに、子の利益のため特に必要があると認められるときは、家庭裁判所が父母以外の親族と子との交流を定めることができるようになりました(民法766条の2)。ただ、これは父母の離婚などに伴って子の監護について定める場面の制度で、祖父母から申し立てられるのも、ほかに適当な方法がないときに限られています。お子さん夫婦が一緒に暮らしているあいだに、祖父母がこの制度で孫との面会を求めることは想定されていません。

 そのため、会えなくなることへの不安から、お金と引き換えに孫との時間を確保する関係を続けるかどうかは、慎重に考えたいところです。一度その形ができると、求められる金額や回数が増えていくことがあります。孫との関係を長く保つためにも、お金の話とは切り離した関わり方を探っていくことが大切です。

孫の暮らしそのものが心配なとき

 お金の求めの背景に、子の世帯の生活が本当に行き詰まっている事情があることもあります。その場合、祖父母がすべてを肩代わりするより、公的な支援につなぐほうが、孫の生活を続けて支えられることがあります。

  • 生活に困っている場合は、市区町村の生活困窮者向けの相談窓口や福祉事務所。
  • ひとり親家庭の場合は、市区町村のひとり親家庭向けの相談窓口。
  • 孫が十分な食事や世話を受けていないおそれがある場合は、市区町村の子ども家庭相談の窓口や児童相談所(全国共通ダイヤル189)。


 孫が適切な養育を受けていないと感じるときは、援助するかどうかとは別の問題として、早めに専門の窓口に相談することが大切です。生活保護の申請に親が関わる場面については【親子問題】生活保護の申請に同行するということ|扶養照会の実際、市区町村の総合的な相談の仕組みについては【親子問題】重層的支援体制整備事業とは|市町村窓口の使い方で解説しています。

求めが強まってきたときに考えること

 断った後に大声を出される、家に居座られる、物に当たられるといった状況になってきた場合は、お金の話を家族の中だけで続けるのは難しくなります。暴力や脅しがあるときは、ためらわずに警察に相談してください。

 なお、親子の間では、窃盗や詐欺、恐喝など財産をめぐる一部の罪について刑が免除される特例があります(刑法244条1項、251条)。そのため、お金の求めだけでは警察が動きにくい場面もありますが、暴行や傷害、脅迫にあたる行為はこの特例の対象外です。

 これまでの求めの経緯は、後で第三者に入ってもらうときの重要な資料になります。求めに応じ続けてきた記録の意味については【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つか、断ることの法的な位置づけについては【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけをご覧ください。

弁護士が窓口になるという選択

 親子の間で直接やり取りを続けると、どうしても感情が先に立ち、孫の存在もあって線を引きにくくなります。弁護士が親の代理人として子との連絡の窓口になると、お金の求めが親に直接向きにくくなり、親が落ち着いて今後の方針を考える時間を確保しやすくなります。

 当事務所では、親の代理人として子との間に入る弁護士と、子の生活の立て直しを支える自立支援カウンセラーがチームを組み、親子それぞれの自立を目指す取り組みをしています。子の世帯が経済的に立ち行かない背景に、仕事や住まい、お金の管理の問題があるときは、援助の求めを止めることと、子の生活の基盤を整えることを並行して進めることができます。ご相談の流れや費用は【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問で、窓口を代えることの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で紹介しています。

 孫を思う気持ちがあるからこそ、お金の求めにどう向き合うかで悩まれるのだと思います。孫との関係を大切にしながら、親の生活を守る線をどこに引くかを、ご家庭の事情に合わせて一緒に考えていくことができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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