【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際
本記事は、2026年10月時点の刑事訴訟法・少年法・刑法などに基づいて記載しています。18歳・19歳の「特定少年」に関する扱いは、2022年4月施行の改正少年法を反映しています。個別の事件での見通しは、事件の内容や手続の段階によって異なります。
子が逮捕されたというご相談では、「家の前にパトカーが止まっていたので、近所の人に何か聞かれたらどう答えればいいのか」という声をよく伺います。また、「来月の法事で親戚が集まる。黙っていてよいのか、話すなら誰にどこまで話すのか」と迷われる親御さんや、親に代わって親戚への連絡を引き受けたきょうだいの方からのご相談もあります。
世間では、「正直に話したほうが後で楽になる」「余計なことは言わないほうがよい」といった助言がよく見られます。どちらもそれ自体は誤りではありませんが、逮捕の直後は処分がまだ何も決まっていない段階であること、家族が話した内容が本人の手続や被害者との示談に影響することがある点は、あまり触れられていません。
この記事では、子が逮捕されたことを近所や親戚にどう伝えるかに絞って、伝える相手・範囲・時期の考え方を整理します。逮捕直後に親が最初にすべきことは【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきことで、報道への備えは【親子問題】子の逮捕が報道されそう|家族の生活を守るためにで解説しています。
伝える前に、逮捕の後に何が決まっていくかを押さえる
逮捕の段階では、まだ処分は決まっていない
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します(刑事訴訟法203条、205条)。勾留が認められると原則10日間、延長されるとさらに最長10日間、身柄の拘束が続きます(同法208条)。
その後、検察官が起訴するか不起訴にするかを決めます。示談が成立して不起訴となる事件も少なくありません。逮捕は「疑いがかけられて手続が始まった」という段階にすぎず、罪が確定したわけではありません。周囲に伝える場合も、「罪を犯した」ではなく「警察の手続が進んでいる」という事実の範囲にとどめておくほうが、後で処分の結果が変わったときにも説明を修正しやすくなります。
成人か少年かで、手続も報道の扱いも変わる
子が20歳未満であれば少年事件となり、捜査の後、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送られます(少年法41条、42条)。少年事件では、氏名や住居、顔写真など本人と推知できる報道が禁じられています(同法61条)。ただし、18歳・19歳の「特定少年」については、起訴された後はこの制限が外れます(同法68条)。
つまり、少年事件では報道によって近所や親戚に知られる可能性が成人の事件より低いことが多く、家族から積極的に知らせる必要性も相対的に小さくなります。手続の流れは【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までをご覧ください。
家族が話した内容が、手続に影響することもある
家族が参考人として警察から事情を聞かれることがあります。また、親戚や近所に推測を交えて話した内容が人づてに広がり、被害者や事件の関係者の耳に入ると、示談の話し合いがこじれる原因になることもあります。
本人が事実関係を争っている事件や、裁判所から接見禁止(家族も含めて面会や手紙のやり取りが制限される措置。刑事訴訟法81条)が付いている事件では、特に慎重さが求められます。接見禁止については接見禁止がついて家族が会えない|解除に向けた動きで解説しています。
伝える相手ごとの範囲と時期の目安
誰に伝えるかを決めるときは、「手続のために協力を頼む必要がある人か」「いずれ確実に知ることになる人か」という二つの視点で整理すると考えやすくなります。おおよその目安は次のとおりです。
| 相手 | 伝える範囲の目安 | 伝える時期の目安 |
|---|---|---|
| 同居の家族・きょうだい | 逮捕の事実、弁護人から聞いた見通し、家族として頼みたいこと | 弁護人から見通しを聞いた後、早めに |
| 身元引受や示談金の援助を頼む親族 | 逮捕の事実、頼みたい役割、弁護人の連絡先 | 協力を頼む必要が生じた時点 |
| 祖父母など高齢の親族 | 必要な範囲に絞る。体調や受け止め方を見て判断 | 報道や噂で知る前に検討 |
| そのほかの親戚 | 原則として自分から伝える必要はない。聞かれたら短く | 聞かれたとき |
| 近所の人 | 原則として自分から伝える必要はない。聞かれたら短く | 聞かれたとき |
近所や親戚に逮捕の事実を伝える法律上の義務はありません。伝えるかどうか、どこまで伝えるかは家族が決めてよいことです。そのうえで、伝える範囲を家族の間であらかじめ揃えておくと、人によって話が食い違うことを避けられます。
近所の人には、どこまで伝えるか
自分から知らせる必要は、通常はない
近所の人に対しては、こちらから事情を説明して回る必要は通常ありません。逮捕の場面を見られた、家宅捜索で人の出入りがあったといった事情があっても、詳しく説明しなければならないわけではありません。
かえって、説明をしたことで話が広まり、本人が釈放されて戻ってきたときの生活に影響することもあります。近所の人に対しては、聞かれたときにどう答えるかを決めておけば足りることがほとんどです。
聞かれたときは、短く、事実の範囲で答える
近所の人に聞かれたときは、次のように短くお答えになる方が多いです。
「家族のことで警察の手続が進んでいて、いまは弁護士さんにお任せしています。詳しいことはお話しできないのですが、ご心配をおかけしてすみません」
事件の中身や見通しには触れず、「手続中であること」「専門家に任せていること」だけを伝えるのが基本です。「何もなかった」と事実と異なる説明をすると、後で報道などで知られたときに信頼を損ねることがあります。反対に、相手の興味に合わせて詳しく話す必要もありません。聞かれたときの答え方は【刑事事件】家族の逮捕を近所に知られた|聞かれたときの答え方でも整理しています。
被害者が近所の人である場合
近所の人とのトラブルが事件になった場合は、親が直接謝りに行くことを考える方もいらっしゃいます。お気持ちは自然なものですが、逮捕直後に被害者の自宅を訪ねると、相手に恐怖や負担を与えてしまうことがあります。
また、事件の関係者に面会を強く求めたり、威圧的な言動をとったりすると、証人等威迫罪(刑法105条の2)に問われるおそれもあります。被害者への謝罪や示談の申入れは、弁護人を通じて行うのが一般的です。近所で顔を合わせたときも、事件の話は避け、必要があれば「弁護士からご連絡させていただきます」とお伝えする程度にとどめておくとよいでしょう。
親戚には、誰に、どの順番で伝えるか
手続に協力してもらう人から先に伝える
親戚の中でも、本人の釈放後の身元引受人を頼みたい人、示談金の援助を頼みたい人、裁判で情状証人として話してもらいたい人には、早めに事情を伝える必要があります。こうした協力は、勾留を避けたり処分を軽くしたりするための材料になることがあるからです。
伝えるときは、弁護人から聞いた手続の見通しをもとに、「何を頼みたいのか」を具体的にお伝えすると、相手も判断しやすくなります。身元引受人の役割は【親子問題】身元引受人になることの意味と責任で、示談金の負担については【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で解説しています。
祖父母など高齢の親族への伝え方
高齢の親族に伝えるかどうかは、多くのご家族が悩まれる点です。体調への影響を心配して伏せておく選択もありますが、報道や他の親戚からの噂で突然知ることになると、かえって動揺が大きくなることもあります。
伝える場合は、「警察の手続が進んでいること」「弁護士がついていること」「家族で対応していること」の三点に絞り、事件の詳細には触れない方法が考えられます。子の兄弟姉妹にまだ幼い子どもがいる場合など、家族の中の子どもへの伝え方は【刑事事件】家族が逮捕されたことを子どもにどう伝えるか|伝える前に決めておくことと年齢別の目安をご覧ください。
法事や親戚の集まりで聞かれたとき
親戚の集まりでは、事情を知っている人から「どうなっているのか」と聞かれたり、「甘やかしたからだ」「縁を切ったほうがいい」と意見されたりすることがあります。その場で反論したり詳しく説明したりする必要はありません。
「いまは弁護士と相談しながら手続を進めているところなので、落ち着いたら改めてお話しします」と伝え、話題を切り上げても失礼にはあたりません。親戚からの口出しへの対応は【親子問題】親戚から子の問題に口出しされる|家族の方針を守る伝え方でも解説しています。
伝えるときに避けたいこと
近所や親戚に伝える際、次のような対応は後で問題になりやすいため、避けておくことをおすすめします。
- 事件の中身や処分の見通しを、推測で話すこと。
- 「相手にも原因がある」「冤罪だ」と被害者を責める言い方をすること。
- 親戚のグループLINEやSNSで経緯を共有すること。
- 親戚が被害者に直接連絡を取ったり、謝罪に行ったりすること。
- 本人の勤務先や学校への連絡を、事情を詳しく知らない親戚に任せること。
被害者を責める発言は、それが人づてに広まると、示談の話し合いに影響するだけでなく、内容によっては名誉毀損(刑法230条)の問題が生じることもあります。グループLINEやSNSでの共有は、意図しない範囲に転送されやすく、一度広がると取り消すことが難しくなります。
勤務先や学校への連絡は、本人の処遇に直接関わるため、弁護人と相談しながら家族が行うのが望ましいです。勤務先への伝え方は【刑事事件】逮捕された家族の勤務先へ何と伝えるか|段階ごとの連絡内容と避けたい説明で解説しています。
報道されそうなとき、報道された後の伝え方
報道より先に伝えるかどうか
成人の事件や、特定少年が起訴された事件では、実名で報道されることがあります。報道される可能性が高い場合は、身元引受人を頼む親族や高齢の親族など、報道で突然知ると影響が大きい人に限って、先に伝えておくことも選択肢の一つです。
弁護人が警察や報道機関に実名報道を控えるよう申し入れることもあります。報道の判断と弁護人の対応については実名報道は避けられるのか|報道の判断と弁護人ができることをご覧ください。
報道の後に問い合わせや取材が来たとき
報道の後は、近所や親戚からの問い合わせが増えるほか、報道機関から取材の申入れを受けることもあります。取材に応じる義務はなく、「弁護士に任せているのでお答えできません」とお伝えすれば足ります。
近所や親戚に対しても、報道された内容以上のことを話す必要はありません。報道の内容が事実と異なると感じる場合も、家族が個別に訂正して回るのではなく、弁護人にご相談ください。
弁護士に依頼することで、家族の伝え方も決めやすくなる
逮捕された本人だけでなく、その親やきょうだいも弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条2項)。弁護人は本人と立会人なしで接見できるため(同法39条1項)、事件の内容や本人の意向を確認し、家族に手続の見通しを伝えることができます。
「誰に、どこまで知らせてよいか」を本人に確認できるのは、逮捕直後の段階では主に弁護人です。本人が「親戚には知らせないでほしい」と希望していても、身元引受人の確保が必要な場面では、弁護人が本人と家族の間に入って調整することもあります。弁護士には守秘義務があるため(弁護士法23条)、ご相談の内容が近所や親戚に伝わることはありません。
また、事件が一段落した後も、釈放後に家での同居を続けるのか、子が家を出て自立する道を探るのかといった課題が残ることがあります。当事務所では、弁護士と自立支援カウンセラーがチームを組み、親子の問題に継続して関わる取り組みを行っています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
よくあるご質問
近所の人に何も説明しないと、かえって不審に思われませんか?
詳しく説明しないことで不審に思われるのではないかと心配される方は多いですが、事件について話さないこと自体が責められるものではありません。聞かれたときに「手続中で、弁護士に任せている」と落ち着いて答えておけば、多くの場合はそれ以上詮索されることは少ないものです。
親戚から「縁を切ったほうがいい」と言われました。従うべきですか?
親子の関係をどうするかは、親御さんご自身が決めることです。親戚の意見はあくまで一つの考え方として受け止め、その場で結論を出す必要はありません。なお、親が身元引受人になることや、本人の生活環境が整っていることは、処分の判断で考慮される事情になり得ます。関係の整理は、処分の見通しが立ってから改めて考えても遅くはありません。
子が「誰にも言わないで」と言っています。親戚に身元引受人を頼んでもよいですか?
本人の気持ちは尊重したいところですが、身元引受人の確保は早期の釈放に関わることがあります。まずは弁護人に事情を伝え、接見の際に本人の意向を改めて確認してもらうとよいでしょう。そのうえで、頼む相手を最小限に絞り、伝える範囲も役割に必要なことに限ると、本人の納得も得やすくなります。
まとめ
- 逮捕は手続の始まりであり、処分はまだ決まっていない。周囲に伝えるときは「手続が進んでいる」という事実の範囲にとどめる(刑事訴訟法203条、205条、208条)。
- 少年事件では推知報道が禁じられているが、特定少年は起訴後にこの制限が外れる(少年法61条、68条)。
- 近所や親戚に逮捕を知らせる法律上の義務はなく、聞かれたときに短く答えれば足りることが多い。
- 身元引受や示談金の援助など、手続に協力を頼む親族には早めに具体的な役割を伝える。
- 被害者が近所の人であっても直接の訪問は避け、謝罪や示談の申入れは弁護人を通じて行う(刑法105条の2)。
- 被害者を責める発言やSNSでの共有は、示談への影響や名誉毀損の問題につながることがある(刑法230条)。
- 家族も弁護人を選任でき、本人の意向を確かめたうえで伝える範囲を決めることができる(刑事訴訟法30条2項、39条1項)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、親子の問題に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。子の逮捕直後の弁護人の選任から、身元引受や示談への対応、釈放後の生活の立て直しまで、ご家族の状況に合わせて対応いたします。
近所や親戚にどう伝えればよいか迷っている親御さんも、親に代わって対応しているごきょうだいの方も、一人で抱え込まずにまずはご相談ください。


