【刑事事件】家族が警察に呼ばれて帰ってこない|任意の聴取が長引くとき

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

この記事は、2026年10月時点の刑事訴訟法、警察官職務執行法、刑法、犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則にもとづいて記載しています。個別の事件でどのように扱われるかは、事案の内容や捜査の状況によって異なります。


「朝、警察の人が来て夫が一緒に出て行ったまま、夜になっても戻らない」「息子が『話を聞かれるだけ』と言って警察署に行ったきり、電話がつながらない」。ご家族からこうしたご相談を受けることがあります。一方で、聴取を受けたご本人からは「帰りたいと言い出せる雰囲気ではなかった」「家族が心配しているのは分かっていたが、連絡の手段がなかった」という声をお聞きすることもあります。

 「家族が帰ってこない」と検索すると、行方不明者届(捜索願)の出し方を説明するページが多く見つかります。行方が分からない場合には、その説明は大切です。ただ、警察に行ったこと自体は分かっていて、聴取が長引いているだけなのか、すでに逮捕されているのかが分からないという場面では、ご家族が知りたいことは少し違ってきます。

 この記事では、ご家族が警察署に呼ばれた、または任意同行に応じたまま戻らないときに、任意の聴取がどこまで続きうるのか、ご家族がその日のうちにできることは何かを整理します。逮捕が確認できた後の動き方については、家族が逮捕されたと連絡が来た|最初の24時間にやることで詳しく取り上げています。

「帰ってこない」ときにまず切り分けること

行方が分からないのか、警察にいると分かっているのか

 最初に確認したいのは、ご家族が警察と一緒にいると分かっているかどうかです。警察官が自宅や職場に来て同行を求めた、本人から「警察署に行く」と連絡があった、といった事情があれば、行方不明ではなく、警察での聴取が続いている可能性が高いと考えられます。反対に、警察と接点があったかどうかも分からず連絡が途絶えている場合には、事故や体調の急変なども含めて、行方不明者届の相談を早めに検討することになります。

任意の聴取と逮捕は、家族の側からは見分けにくい

 警察が話を聞く場面には、本人の同意を前提とする任意の聴取と、逮捕による身体拘束の下での取調べがあります。警察は逮捕状を得ていても、まず任意同行を求め、警察署で逮捕状を示すことがあります。そのため、朝は任意で出かけたのに、夕方には逮捕に切り替わっていたということも起こりえます。家族の側からは「まだ任意なのか、もう逮捕されたのか」が見えにくいことが、不安を大きくする一番の理由です。

本人が参考人として呼ばれていることもある

 警察に呼ばれたからといって、本人が疑われているとは限りません。知人や同僚の事件について事情を知る人、いわゆる参考人として話を聞かれている場合もあります(刑事訴訟法223条1項)。参考人であっても、聴取が長時間に及ぶことはあります。もっとも、聴取の途中で立場が変わることもあるため、その分かれ目については『参考人』として呼ばれた|被疑者に切り替わる瞬間もあわせてご覧ください。

任意の聴取はどこまで続けられるのか

任意の聴取では、本人はいつでも退去を申し出られる

 逮捕や勾留をされていない人は、警察からの出頭の求めを断ることができ、出頭した後もいつでも退去できると定められています(刑事訴訟法198条1項ただし書)。参考人についても同じ規定が準用されています(同法223条2項)。また、法律の規定によらない限り、意思に反して警察署に連行されたり、答弁を強要されたりすることはないとされています(警察官職務執行法2条3項)。

 ただし、退去すればそれで終わるとは限りません。疑いの程度によっては、警察が逮捕状を請求することも考えられます。「帰る権利があること」と「帰ったときにどうなる見通しか」は分けて考える必要があり、その見通しは事件の内容によって大きく異なります。任意同行を断った場合の流れについては、「任意同行」は断れるのか|断った場合に起きることで整理しています。

深夜や長時間の取調べは、原則として避けるべきとされている

 任意の聴取について、法律で何時間までという上限が決められているわけではありません。一方で、警察の内部規範では、取調べはやむを得ない理由がある場合のほか、深夜や長時間にわたって行うことを避けなければならないとされています。午後10時から翌日午前5時までの間、または1日8時間を超えて被疑者の取調べを行うときは、警察本部長または警察署長の承認が必要です(犯罪捜査規範168条3項)。承認を受けずにこれらの取調べを行うことは、取調べの監督の対象とされています(被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則3条2項)。

 これらは警察内部のルールであり、時間を過ぎれば自動的に聴取が終わるという意味ではありません。それでも、夜遅くまで本人が戻らないときには、どのような理由で聴取が続いているのかを確認するひとつの手がかりになります。

長時間の任意の聴取が許されるかは、事案ごとに判断される

 任意の取調べがどこまで許されるかについて、最高裁判所は、事案の性質、嫌疑の程度、本人の態度などの事情を考慮し、社会通念上相当と認められる方法・態様・限度で許されるという考え方を示しています(最高裁判所昭和59年2月29日決定)。夜を徹した取調べが問題となった事案でも、本人が取調べに応じていたことなどを踏まえて適法とした判断があります(最高裁判所平成元年7月4日決定)。長時間であることだけで直ちに違法とされるわけではなく、本人が帰る意思を示していたか、それがどう扱われたかが重要な事情になります。

 任意の段階と逮捕後とで、ご家族の立場から見た違いをまとめると、次のとおりです。

項目任意の聴取(逮捕前)逮捕された後
本人が帰れるかいつでも退去を申し出られる(刑事訴訟法198条1項ただし書)退去はできない
時間の枠法律上の上限はないが、深夜・長時間は原則として避けるべきとされる警察は48時間以内に検察官へ送致し、全体で72時間以内に勾留請求の有無が判断される(同法203条1項・205条)
家族への連絡法律上の連絡義務はない逮捕の時点での連絡義務はないが、勾留されると弁護人に、弁護人がいなければ本人が指定した家族等に通知される(同法207条1項・79条)
家族との面会警察署内で面会する仕組みはない逮捕直後は難しく、勾留後に可能になることが多い(接見禁止の場合を除く)
弁護士との面会面会の申出は本人に伝えられるべきとした裁判例がある接見交通権が保障されている(同法39条1項)


聴取が長引くときに考えられる流れ

聴取の途中で逮捕に切り替わる

 任意の聴取で話を聞いた後、裁判官に逮捕状を請求し、発付を受けて逮捕するという流れがあります。逮捕状の請求や発付には一定の時間がかかるため、その間、聴取が続いているように見えることもあります。逮捕に切り替わった後は、本人が自由に連絡することはできなくなります。

家宅捜索やスマートフォンの提出と並行して進んでいる

 聴取と同じ日に自宅の捜索が行われたり、本人のスマートフォンの任意提出を求められたりすることがあります。スマートフォンを警察に預けていると、本人から家族に連絡しようにも手段がない状態になります。電話がつながらないことだけで、逮捕されたと決めつけることはできません。同居のご家族が捜索に立ち会う場面については捜索で家族に知られる場面|同居家族がいる場合の現実、スマートフォンの提出については【刑事事件】警察に「スマホを任意で出してほしい」と言われた|応じる前に確認することで取り上げています。

夜遅くに帰宅し、後日あらためて呼ばれる

 長い聴取の末にその日は帰宅でき、日を改めて呼ばれるという流れも少なくありません。逮捕されずに捜査が続く、いわゆる在宅事件として進む場合です。この場合、呼び出しが何度か続くこともあるため、仕事との調整が課題になります。帰宅できたことは終わりではなく、次の聴取に向けて準備できる時間ができたと捉えることが大切です。日程の調整については【刑事事件】取調べの日程を仕事に合わせられるか|当日にかかる時間と、複数回に及ぶ場合の組み立てをご覧ください。

家族がその日のうちにできること

警察署に問い合わせる|答えてもらえる範囲には限りがある

 ご家族が行き先の警察署を知っている場合は、電話で問い合わせることができます。逮捕されている場合には、その事実を教えてもらえることが多いようです。一方で、任意の聴取中かどうかや事件の内容については、捜査への影響を理由に詳しく答えてもらえないこともあります。問い合わせの際は、本人の氏名・生年月日、出かけた時刻と経緯、ご自身との関係を伝えられるようにしておくと話が進みやすくなります。本人に持病があり服薬が必要な場合には、そのことを伝えておくことも検討に値します。

弁護士に依頼して、警察署へ向かってもらう

 本人の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、本人とは別に、独立して弁護人を選任することができます(刑事訴訟法30条2項)。この規定は逮捕されている人に限られていません。任意の聴取の段階でも、ご家族が弁護士に依頼し、弁護士が警察署に赴いて本人との面会を申し出ることができます。任意の取調べ中であっても、弁護士からの面会の申出は本人に伝えられるべきだとした裁判例があります(福岡高等裁判所平成5年11月16日判決)。

 弁護士が本人と話せれば、聴取の状況を把握し、退去するか、続けて応じるかを本人と一緒に考えることができます。また、調書への署名の前に確認すべきこと(調書に署名・押印を求められた|訂正を求める権利)を伝えることもできます。なお、取調べの部屋に弁護士が同席することは、現在の運用では一般に認められていません。この点は取調べに弁護人は立ち会えるのかで取り上げています。

本人が戻ったとき、または逮捕に切り替わったときに備えておく

 待っている間にできる準備もあります。次のような点を整理しておくと、その後の動きが早くなります。

  • 本人が出かけた時刻、警察官の人数や所属、言われた内容を時系列でメモしておくこと。
  • 本人の勤務先に翌日どう連絡するかを、伝える範囲も含めて考えておくこと。
  • 身元引受人を誰が引き受けるか、家族の間で話し合っておくこと。
  • 本人の健康状態や服薬の情報をまとめておくこと。


 身元引受や生活環境の整え方は、逮捕後に勾留を避けるための材料にもなります。詳しくは勾留を避けるための材料|身元引受と生活環境の整え方をご覧ください。

家族として控えておきたい対応

家の中の物を片付けたり処分したりしない

 不安な気持ちから、本人の部屋を片付けたり、事件に関係しそうな物を捨てたりしたくなることがあるかもしれません。しかし、他人の刑事事件の証拠を隠したり処分したりすることは、証拠隠滅罪にあたる可能性があります(刑法104条)。犯人の親族が犯人の利益のために行った場合には、刑が免除されることがあるとされていますが(同法105条)、これは免除することが「できる」という規定であり、必ず処罰されないわけではありません。また、こうした行為が明らかになると、本人について証拠を隠すおそれがあると見られ、身体拘束の判断に影響することも考えられます。家の中の物には手を付けず、そのままにしておくことが、結果的に本人を守ることにつながります。親族の特例については家族をかくまった|犯人蔵匿罪と親族の特例でも触れています。

事件の関係者に連絡したり、SNSに書き込んだりしない

 本人の事情を確かめようとして、被害者とみられる人や一緒にいた知人に連絡することは控えたほうがよいでしょう。口裏合わせを疑われるおそれがあるためです。また、警察の対応への不満をSNSに書き込むことも、思わぬ形で事件が周囲に知られるきっかけになりえます。関係者とのやり取りが必要な場面では、弁護士を通じて行うことを検討してください。

逮捕されていたと分かったときに切り替わること

時間の枠がはっきりする

 逮捕されていた場合、警察は48時間以内に本人を検察官に送致し、検察官は送致を受けてから24時間以内、逮捕から72時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します(刑事訴訟法203条1項・205条1項・2項)。この72時間は、ご家族と本人が原則として面会できない一方、勾留を避けるための働きかけができる大切な時間です。逮捕されている人には弁護人と立会人なしで面会する権利が保障されており(同法39条1項)、弁護士は時間帯を問わず面会を申し出ることができます。接見の流れは「接見」で弁護士は何をするのか|依頼から面会までの流れで詳しく説明しています。

勤務先や学校への対応を考える

 逮捕されると、少なくとも数日は本人が仕事や学校に行けなくなる可能性があります。警察から勤務先へ連絡がいくかどうか、身分にどう影響するかについては、逮捕されたら会社・学校に連絡はいく?勾留と身分への影響をご覧ください。勤務先に何をどこまで伝えるかは、本人の意向や事件の見通しを踏まえて決めることになるため、弁護士が本人と面会した後に相談しながら考えるのが望ましいといえます。

よくあるご質問

Q. 警察署まで迎えに行ってもよいのでしょうか。

 警察署に行くこと自体は問題ありません。ただ、任意の聴取中であっても、家族が取調べの部屋に入ったり、その場で本人と話したりすることは通常できず、待合スペースで待つことになるのが一般的です。窓口で家族が来ていることを本人に伝えてもらうよう頼むことはできますが、伝えてもらえるかどうかは状況によります。本人の状況を確かめたい場合には、弁護士に面会を申し出てもらうほうが確実です。

Q. 何時間たったら、逮捕されたと考えるべきですか。

 時間だけで判断する基準はありません。朝から深夜まで任意の聴取が続くこともあれば、数時間で逮捕に切り替わることもあります。午後10時を過ぎても戻らないときは、警察署への問い合わせや弁護士への相談を検討するひとつの目安になりますが、それより早い段階で相談していただいても差し支えありません。

Q. 本人が未成年の場合も同じですか。

 本人が退去できるという刑事訴訟法の考え方は、未成年者でも変わりません。実務上は、未成年者の場合には警察から保護者に連絡が入ることが一般的です。成人している場合には、本人の意向もあって家族に連絡が来ないことがあるため、ご家族のほうから動く必要が生じやすいといえます。

まとめ


  1. 警察に行ったことが分かっている場合は、行方不明ではなく、任意の聴取が長引いているか、逮捕に切り替わっている可能性があります。
  2. 任意の聴取では、本人はいつでも退去を申し出ることができます(刑事訴訟法198条1項ただし書・223条2項、警察官職務執行法2条3項)。
  3. 午後10時から翌日午前5時までの間や、1日8時間を超える被疑者の取調べには、警察本部長または警察署長の承認が必要とされています(犯罪捜査規範168条3項)。
  4. 長時間の任意の聴取が許されるかは、社会通念上相当かどうかという観点から事案ごとに判断されます(最高裁判所昭和59年2月29日決定)。
  5. 配偶者や親、兄弟姉妹は、任意の段階でも独立して弁護人を選任でき、弁護士が警察署で本人との面会を申し出ることができます(刑事訴訟法30条2項)。
  6. 家の中の物を処分したり、事件の関係者に連絡したりすることは控え、そのままにしておくことが大切です(刑法104条・105条)。
  7. 逮捕されていた場合は、72時間以内に勾留の判断がされるため、その間の弁護活動が重要になります(刑事訴訟法203条1項・205条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ご本人からのご相談だけでなく、「家族が警察に行ったまま戻らない」「逮捕されたのかどうかも分からない」というご家族からのご相談もお受けしています。

警察から呼び出しを受けて今後の聴取が不安な方も、帰りを待ちながら何をすればよいか迷っているご家族の方も、状況が分からない段階でご相談ください。今どの段階にあるのかを一緒に整理し、その日のうちに取れる手立てを考えます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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