【不貞慰謝料・請求する側】内容証明の書き方と、送るタイミング
この記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて書いています。刑法は2023年7月13日施行の性犯罪規定の改正(不同意性交等罪など)と2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を、配偶者暴力防止法は2024年4月1日施行の改正を、ストーカー規制法は2021年の改正(位置情報の無承諾取得の規制など)を反映しています。
「別れ話の最中に『あなたのしていたことはデートDVだ』と言われた。手を上げたことはないが、思い返すと強く言いすぎた場面はあった」「交際相手のスマートフォンを確認するのは、お互いさまだと思っていた」。男女トラブルのご相談では、交際相手から加害者だと指摘され、自分の何が問題だったのかを整理したいという方のお話を伺うことがあります。その一方で、相手の言動に長く苦しみ、ようやくそれを言葉にできた側の方がいることも、私たちは知っています。
デートDVについての一般的な説明は、身体的・精神的・経済的・性的な暴力という分類を示し、「こうした行為は暴力です」と伝えるものが中心です。その説明自体は大切なものですが、指摘を受けた側から見ると、どの行為がどの法律の問題になり得るのか、どの行為は法的な責任とは別の次元で関係を見直すべきものなのか、という区別までは見えにくいところがあります。
この記事では、交際相手・元交際相手からデートDVの加害者だと言われ、自分の言動を振り返りたいと考えている方に向けて、言動の領域ごとに関係しうる法律と、見直すときの物差し、指摘を受けた後の行動を整理します。指摘された出来事に身に覚えがない場合は【男女トラブル】「交際中に暴力を受けた」と言われたが身に覚えがないを、暴力を受けた側の方は交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご覧ください。
「デートDV」は法律の名前ではない|言われた言葉と法的な責任を分ける
デートDVは、交際している、または交際していた相手との間で起きる暴力を広く指す言葉です。自治体の啓発資料などでも、殴る・蹴るといった身体への暴力に限らず、束縛や行動の監視、お金の要求、性的な行為の強要まで含めて説明されています。ただ、「デートDV」という名前の犯罪や、それ自体を要件とする法律があるわけではありません。
配偶者暴力防止法が直接及ぶのは同棲している場合
配偶者暴力防止法は、身体に対する暴力だけでなく、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も「暴力」に含めています(配偶者暴力防止法1条1項)。もっとも、同法の保護命令などが交際相手に及ぶのは、生活の本拠を共にする交際関係、いわゆる同棲をしていた場合に限られます(同法28条の2)。同棲していない交際関係では、刑法やストーカー規制法、民法の不法行為といった個別の法律で評価されることになります。
法的な責任は「行為ごと」に判断される
このため、「デートDVをした」と言われたことが、そのまま何らかの法的な責任を意味するわけではありません。責任が生じるかどうかは、どの行為を、どの状況で、どの程度したかを一つずつ取り出し、それぞれの法律の要件に当てはめて判断されます。
反対に、法的な責任にまで至らない言動であっても、相手が苦痛を感じ、関係を続けられないと考えたこと自体は、事実として受け止める必要があります。この二つを分けて考えることが、見直しの出発点になります。
自分の言動を5つの領域に分けて見直す
自治体の啓発資料などで示されている分類をもとに、交際中の言動を領域ごとに分け、関係しうる法律を並べると次のようになります。実際に当てはまるかどうかは、具体的な事情によって変わります。
| 領域 | 言動の例 | 関係しうる法律 |
|---|---|---|
| 身体に向けた行為 | 叩く、押す、腕をつかむ、相手のすぐそばで物を投げる | 暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条)、民法の不法行為 |
| 言葉と態度 | 「別れるなら〜する」と告げる、怒鳴って謝らせる、人前で侮辱する | 脅迫罪・強要罪(刑法222条・223条)、侮辱罪・名誉毀損罪(刑法231条・230条) |
| 行動の把握と制限 | 無断でスマートフォンを見る、無断でログインする、位置情報を取得する、部屋から出さない | 不正アクセス禁止法、ストーカー規制法、監禁罪(刑法220条)、プライバシー侵害 |
| お金と生活 | お金を出させる、借りたお金を返さない、仕事や交友関係をやめさせる | 恐喝罪(刑法249条)、貸金の返還(民法587条)、民法の不法行為 |
| 性的な行為と画像 | 嫌がる性的な行為を求める、避妊に応じない、同意なく撮影する | 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪(刑法177条・176条)、性的姿態撮影等処罰法、民法の不法行為 |
身体に向けた行為と言葉
暴行罪の「暴行」は、人の身体に向けた有形力の行使を広く含みます。腕をつかむ、肩を押すといった行為も対象になり得るほか、体に当たらなくても、相手のすぐそばで物を投げつけるような行為が暴行と評価されることがあります。行為の範囲については押した・つかんだだけで暴行罪になるのか|「有形力の行使」の範囲で詳しく扱っています。
言葉については、相手やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えることを告げれば脅迫罪が、それによって義務のないことをさせれば強要罪が問題になります(刑法222条・223条)。「別れるなら会社に言う」「謝るまで帰さない」といった言い方は、これに近づく場面です。一方、二人きりの場での暴言は、侮辱罪や名誉毀損罪の要件である「公然と」に当たらないことが多く、刑事ではなく民事の不法行為として、内容や頻度が問われることになります。罪名の違いは恐喝・強要・脅迫はどう違うのか|言い方で罪名が変わるをご参照ください。
行動の把握と制限
交際中に相手のスマートフォンを確認していた、というお話はご相談でもよく伺います。相手が見せてくれた範囲で見ることと、相手のいない間に操作することとでは評価が異なり、後者はプライバシーの侵害として不法行為の問題になり得ます。さらに、相手のSNSやメールのIDとパスワードを、相手の承諾なく入力してログインすると、不正アクセス禁止法の不正アクセス行為に当たる可能性があります(不正アクセス禁止法2条4項1号・3条)。交際中に教えてもらったパスワードであっても、別れた後など、相手が承諾していない場面で使えば問題になり得ます。
位置情報については、相手の承諾なくGPS機器を取り付けたり、位置情報を取得したりする行為が、恋愛感情などを充足する目的で行われれば、ストーカー規制法の規制の対象になります。詳しくはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で説明しています。また、部屋から出さない、鍵をかけて閉じ込めるといった行為は、監禁罪(刑法220条)が問題になることがあります。
お金と性的な行為
交際中のお金のやり取りは、贈与なのか貸付なのかで返す必要の有無が変わります。借りたものであれば返す義務があり(民法587条)、相手の不安や恐れにつけ込んで金銭を出させた場合には、内容によって恐喝罪(刑法249条)が問題になります。相手の仕事や交友関係をやめさせることそのものを罰する規定はありませんが、継続的に相手の生活を支配していたといえる場合には、ほかの言動とあわせて不法行為の評価の材料になります。
性的な行為については、2023年の刑法改正により、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態で行われた性交等は、婚姻関係の有無にかかわらず不同意性交等罪の対象になることが明記されました(刑法177条)。交際していることは、それだけで性的な行為への同意を意味しません。交際関係と同意の関係は交際中・夫婦間でも成立するのか|継続的関係と同意の推認で、交際中に撮影した画像の扱いは画像をばらまくと言ってしまった|脅迫・強要と私事性的画像の規制で扱っています。
見直すときの3つの物差し|「受け止め」と「法的評価」のあいだ
自分の言動を振り返るとき、「相手が傷ついた」という事実と、「法的に責任を負うかどうか」の間には距離があります。その距離を測るために、次の3点を手がかりにすると整理しやすくなります。
相手が嫌だと示した後も続けたか
多くの法律は、相手の意思に反しているかどうかを重視します。最初の一度は相手の気持ちに気づかなかったとしても、相手が「やめてほしい」「見ないでほしい」と伝えた後に同じことを続けた場合、評価は大きく変わります。メッセージの送信も、拒まれた後に繰り返せば、ストーカー規制法の「つきまとい等」に当たり得る形に近づきます。送信の回数や頻度の考え方はしつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なりをご覧ください。
一度きりか、繰り返しか
口論の中で一度強い言葉を口にしたことと、同じ言葉を何か月も繰り返したことでは、相手に与える影響も、民事で慰謝料を検討する際の評価も異なります。いつ頃から、どのくらいの頻度で、何回くらいあったのかを、思い出せる範囲で書き出しておくと、自分の言動を客観的に捉えやすくなります。
相手が自由に選べる状態だったか
対等なけんかと、デートDVと呼ばれる関係との違いとしてよく挙げられるのは、相手が言いたいことを言えたか、恐れや遠慮から行動を変えていなかったか、という点です。自分では話し合いのつもりでも、相手が反論できずに従っていたのであれば、関係の持ち方そのものを見直す必要があります。この点は、それ自体が法律の要件として問われるものではありませんが、脅迫や強要、不法行為を評価する際の背景として考慮される事情でもあります。
指摘を受けた後の行動で、その後の展開は変わる
デートDVだと言われた直後は、反論したい気持ちや、関係を修復したい気持ちが強くなりがちです。しかし、この段階での行動が、後の評価を左右することがあります。
距離を求められたら、まず応じる
相手が連絡を控えてほしい、会いたくないと伝えてきた場合は、理由に納得できなくても、まずそれに応じることが大切です。誤解を解きたい、謝りたいという動機であっても、拒まれた後に連絡を重ねたり、自宅や職場を訪ねたりすれば、それ自体が新たな問題として扱われるおそれがあります。荷物や貸したお金の清算など、正当な用件がある場合の連絡の仕方は【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で整理しています。
謝るなら、何について謝るのかを具体的にする
自分の言動に問題があったと感じたとき、それを認めて謝ることは、関係を誠実に終えるうえでも、相手の負担を軽くするうえでも意味があります。ただし、求められるままに「すべて自分が悪かった」「どのような請求にも応じる」といった包括的な内容の謝罪文や誓約書に署名すると、実際にはしていない行為まで認めたものとして扱われたり、後の請求の根拠として使われたりすることがあります。
謝罪は、どの行為について、何を反省しているのかを具体的に示す形にとどめ、書面への署名を求められた場合は、内容を確認してから判断することをおすすめします。書面の効力については【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で扱っています。
手元の記録は消さずに残す
自分に不利に見えるやり取りを消したくなることがありますが、前後の流れが分からなくなると、かえって自分の言動を説明することが難しくなります。交際中のやり取りは、相手からのものも含めて消さずに残しておくことが、自分の言動を正確に振り返るためにも役立ちます。
民事・刑事ではどのように扱われるのか
相手が法的な手段をとる場合、その経路は大きく分けて、慰謝料などの民事の請求、警察への相談や被害届、同棲していた場合の保護命令の申立てがあります。
慰謝料などを請求された場合
交際相手への暴力や、継続的に精神的な苦痛を与える言動は、民法の不法行為として慰謝料の対象になり得ます(民法709条・710条)。金額は、行為の内容、期間、頻度、けがや心身への影響などによって個別に判断されます。指摘を認めたからといって、相手が示した金額をそのまま支払わなければならないわけではなく、認める部分と争う部分を分けて検討することになります。治療を要するけがについて後から診断書が示された場合は、あとから診断書が出てきた|暴行が傷害に切り替わる場面と対応をご参照ください。
警察への相談や保護命令の申立てがあった場合
警察から連絡が来た場合や、保護命令の申立書が届いた場合は、手続ごとに対応が異なり、準備できる期間が限られていることもあります。暴行や脅迫が問題になる事案では、相手との示談が成立しているかどうかが、捜査機関の判断において考慮される事情の一つになります。場面ごとの対応は【男女トラブル】「交際中に暴力を受けた」と言われたが身に覚えがないで整理していますので、身に覚えのある部分とない部分が混在している場合も、あわせてご覧ください。
言動を変えるための相談先
法的な問題への対応とは別に、同じことを繰り返さないための取組みも考えられます。
加害者プログラムという選択肢
内閣府は、配偶者からの暴力について、加害者に自らの暴力の責任を自覚させ、暴力の再発を防ぐための「加害者プログラム」の実施を推進しており、2023年5月には地方公共団体向けに「配偶者暴力加害者プログラム 実施のための留意事項」を取りまとめています。プログラムは自治体や民間団体が実施しており、交際相手との関係を対象に含めるかどうかは、実施する団体によって異なります。
このプログラムは被害者支援の一環として位置づけられているものです。受講の目的は、法的な手続を有利に進めることではなく、自分の行動とその背景にある考え方を見直すことにある、という点を踏まえて検討することが大切です。
弁護士に相談する意味
弁護士は、指摘されている言動を一つずつ取り出し、どの法律の問題になり得るのか、どこまでを認め、どこを争うのかを整理するお手伝いができます。相手と直接やり取りを続けることが難しい場合には、弁護士が窓口となって、謝罪や金銭の清算、今後の接触についての取り決めを、合意書の形にまとめることも考えられます。
よくあるご質問
相手も自分に強い言葉を向けてきました。それでも自分だけが加害者になるのですか。
相手にも問題のある言動があった場合、その事情は全体の評価の中で考慮されます。ただし、相手の言動があったことで自分の言動の責任がなくなるわけではなく、それぞれの行為が別々に評価されるのが基本です。双方に手が出た場面については相手も殴ってきた(相互暴行)|被害者でも加害者でもある場合で扱っています。
交際中はお互いのスマートフォンのパスワードを共有していました。それでも問題になりますか。
お互いの了解のもとで見せ合っていた範囲であれば、直ちに問題になるとは限りません。ただ、了解があったのはどの範囲か(端末のロックの解除だけか、SNSへのログインまでか)、相手が「もう見ないでほしい」と伝えた後も続けたか、といった点で評価が変わります。別れた後に、以前に教えてもらったパスワードでログインすることは控えるべきです。SNSの閲覧そのものについては【男女トラブル】相手のSNSを見続けてしまう|自分の行動が問題になる場面もご覧ください。
指摘されたことを認めたら、必ず慰謝料を支払うことになりますか。
認めた行為が、直ちに慰謝料の支払義務につながるとは限りません。慰謝料が認められるかどうかや金額は、行為の内容や程度、相手への影響などによって判断されます。事実を認めることと、相手の求める金額にそのまま応じることは、別の問題として考える必要があります。
まとめ
- 「デートDV」は法律上の罪名ではなく、法的な責任は行為ごとに、それぞれの法律の要件に当てはめて判断されます。
- 配偶者暴力防止法の保護命令などが交際相手に及ぶのは、同棲していた場合です(配偶者暴力防止法28条の2)。
- 身体に向けた行為は暴行罪・傷害罪(刑法208条・204条)、害悪の告知は脅迫罪・強要罪(同法222条・223条)が問題になり得ます。
- 承諾のないログインは不正アクセス禁止法、承諾のない位置情報の取得はストーカー規制法の問題になり得ます。
- 交際していることは、それだけで性的な行為への同意を意味しません(刑法177条)。
- 見直すときは、相手が拒んだ後も続けたか、繰り返したか、相手が自由に選べる状態だったかを手がかりにします。
- 指摘を受けた後は、距離を求められたら応じ、謝罪は具体的にし、包括的な書面への署名は内容を確認してから判断します。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。交際相手・元交際相手からデートDVの加害者だと指摘され、自分の言動がどのように評価されるのか、相手との関係をどう清算すればよいのか迷っている方は、手元のやり取りや届いた書面をお持ちのうえでご相談ください。
弁護士が窓口となることで、相手との直接のやり取りを控えながら、認める部分と争う部分の整理や、合意書の作成を進めることができます。交際相手の言動に苦しみ、請求や相談を考えている方からのご相談も、同じようにお受けしています。


