【親子問題】子が特殊詐欺の被害に遭っているのに認めない|認めさせるより先に親ができること
この記事は、成人した子の暴力・ひきこもり・金銭の要求などについて、両親のうち一方が弁護士に相談する場面を想定しています。配偶者から暴力を受けている場合の対応は、この記事とは別に考える必要があります。
子の問題を誰かに相談したいと思っても、配偶者には知られたくないという方は少なくありません。「相談したと知ったら反対される」「配偶者が子に話してしまう」「これ以上心配をかけたくない」など、理由は家庭ごとに異なります。
結論から言うと、弁護士に相談したこと自体が、事務所から配偶者に伝わることは基本的にありません。ただし、相談の後に弁護士が子に連絡を入れる段階まで進むと、同居している配偶者に知られずにいることは難しくなっていきます。この記事では、知られずにいられる範囲と、知られるきっかけになりやすい場面、配偶者に伝えるかどうかを考えるための整理の仕方をまとめます。
相談したこと自体が、事務所から配偶者に伝わることは基本的にない
弁護士には、職務上知り得た秘密を守る義務があります(弁護士法23条、弁護士職務基本規程23条)。相談に来た方が誰で、どのような内容を話したかは、この秘密に含まれます。
ここで押さえておきたいのは、配偶者であっても、相談者本人とは別の人として扱われるという点です。家族だからという理由で、相談者の了解なく相談の内容を配偶者に伝えることは通常ありません。仮に配偶者から事務所に問い合わせがあったとしても、相談の有無を含めて答えないのが一般的な対応です。
また、相談だけで終わる場合、事務所から配偶者や子に連絡を入れることはありません。相談をしたからといって、そのまま家庭の中で何かが動き出すわけではないので、まずは話を聞いてもらう段階として利用することができます。子との関係で同じ不安を感じている方は、【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方もあわせてご覧ください。
知られるきっかけは、事務所の外にあることが多い
守秘義務があっても、配偶者に知られることがあるのは、多くの場合、事務所とのやり取りの痕跡が家庭の中に残るためです。法律相談サイトでも、法律事務所からの郵便物を家族が先に見てしまったという相談が見られます。主なきっかけと、事前にできることを整理すると次のとおりです。
| きっかけ | 起きやすい場面 | 事前にできること |
|---|---|---|
| 郵送物 | 書類や封筒が自宅に届き、配偶者が受け取る | 郵送が必要か、送り先をどこにするかを最初に伝える |
| 電話の着信 | 事務所からの着信や折り返しを配偶者が見聞きする | 連絡してよい時間帯と手段を決めておく |
| メール・LINE | 家族で共有している端末やアカウントで通知が見える | 自分だけが使う連絡先を伝える |
| 費用の支払い | 家計の口座から振込や引き出しをする | どの口座から支払うかを考えておく |
| 面談のための外出 | 外出の理由を説明しにくい | 電話やオンラインでの相談を検討する |
| 子からの伝達 | 弁護士が子に連絡を入れた後、子が配偶者に話す | 介入の時期と、配偶者への説明の順序を相談しておく |
表の最後の「子からの伝達」は、事務所側の配慮だけでは防ぎにくいものです。この点は、次の見出しでもう少し詳しく見ていきます。
相談の段階と依頼後とでは、隠し通せる範囲が変わる
相談や方針を検討している段階
この段階では、やり取りは相談者と事務所の間だけで完結します。連絡方法や郵送物について希望を伝えておけば、配偶者に知られずに進められる可能性は比較的高いといえます。面談は事務所に出向く方法のほか、電話やオンラインで行える場合もあるため、外出の理由を説明しにくい方は、相談の申込みの際に希望を伝えておくとよいでしょう。
弁護士から子に連絡を入れる段階
弁護士が親の代理人として子に連絡を入れると、子は「誰が弁護士を頼んだのか」を考えます。子が配偶者に話したり、配偶者に確かめたりすることで、相談していたことが伝わる場合があります。子に最初の連絡を入れるときの流れは、【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで解説しています。
自宅への訪問や子の転居が関わる段階
弁護士やカウンセラーが自宅を訪ねて子と話をする場合や、子が家を出て暮らす準備を進める場合は、同居している配偶者に知られずに進めることは現実的にはかなり難しくなります。家の名義が配偶者にある場合や夫婦の共有になっている場合は、家をどう使うかという点で、配偶者の権利にも関わってきます。
配偶者に知らせないまま進めると、支障が出やすい場面
配偶者に伝えるかどうかは相談者が決めることです。ただ、次のような事情があるときは、知らせないままでは方針どおりに進みにくくなることがあります。
- 配偶者が子に頼まれてお金を渡し続けている場合は、一方の親が断っても、もう一方から支払いが続くことがあります。
- 配偶者も子から暴力を受けている場合は、家族全体の安全を考えた備えが必要になります。
- 家の名義が配偶者にある場合や共有の場合は、子に家を出てもらうといった方針を一人では決めきれないことがあります。
- 費用を家計から出す場合は、後になって使い道を配偶者から問われることがあります。
- 配偶者が子をかばっている場合は、弁護士の動きが配偶者を通じて子に伝わることがあります。
配偶者も暴力を受けている場合については【親子問題】きょうだいや配偶者にも暴力が及んでいる場合を、夫婦の考えが分かれている場合については【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときを参考にしてください。
配偶者に伝えるかどうかを決めるための整理
知られたくない理由を言葉にしてみる
「反対されそう」「配偶者が子に情報を流してしまう」「心配をかけたくない」「夫婦の関係そのものがうまくいっていない」など、知られたくない理由によって、取るべき進め方は変わります。たとえば、心配をかけたくないという理由であれば、方針がある程度固まってから伝えるという順序が考えられます。一方、配偶者が子に情報を流してしまうおそれがある場合は、伝える内容や時期をより慎重に選ぶ必要があります。
いつ、どのように伝えるかを決めておく
伝えると決めた場合でも、すべてを一度に話す必要はありません。弁護士との面談に配偶者が同席し、弁護士から方針を説明するという方法もあります。相談者本人が了解していれば、弁護士がそれまでの経緯を配偶者に説明することもできます。
伝える時期としては、弁護士が子に連絡を入れる前が一つの目安になります。配偶者が子の口から初めて事情を聞く形になると、「なぜ自分に黙っていたのか」という受け止め方になりやすく、夫婦の話し合いがかえって難しくなることがあります。先に伝えておけば、配偶者が子から何か言われたときにどう応じるかを、あらかじめ夫婦で決めておくこともできます。
夫婦の関係そのものに問題があるとき
配偶者から暴力や強い支配を受けている場合は、子の問題とは別に、ご自身の安全を考える必要があります。各地の配偶者暴力相談支援センターや警察の相談窓口も、あわせて検討してください。
最初の相談で伝えておくとよいこと
配偶者に知られずに相談を進めたい場合は、最初の段階で次の点を弁護士に伝えておくと、連絡や書類の扱いを合わせてもらいやすくなります。
- 配偶者には相談していないこと、今は知られたくないこと。
- 連絡してよい手段と時間帯。
- 郵送物を送ってよいか、送る場合の送り先。
- 費用をどこから支払う予定か。
- 配偶者が子の問題にどのように関わっているか。
相談の前に整理しておくとよい情報については、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報でまとめています。
よくあるご質問
配偶者から事務所に問い合わせがあった場合、相談したことを認めてしまうことはある?
相談者の了解がない限り、相談の有無を含めて答えないのが一般的な対応です。不安がある場合は、配偶者から問い合わせがあったときにどう対応してほしいかを、あらかじめ伝えておくと安心です。
夫婦で一緒に相談・依頼することはできる?
夫婦がそろって相談し、一緒に依頼することもできます。ただし、同じ事件で複数の依頼者の利害が対立するおそれがあるときは、弁護士はその点を依頼者に説明することになっています(弁護士職務基本規程32条)。夫婦の考えが大きく分かれている場合は、誰が依頼者になるかを最初に確認しておくことが大切です。
子に相談を知られた場合、配偶者にも伝わる?
事務所から配偶者に伝えることはありませんが、子が配偶者に話す可能性はあります。子に知られた後の接し方については、【親子問題】相談を始めたことを子に知られた|その後の接し方で解説しています。
まとめ
- 弁護士に相談したこと自体が、事務所から配偶者に伝わることは基本的にありません。
- 知られるきっかけは、郵送物や着信、費用の支払いなど、家庭の中に残る痕跡であることが多いです。
- 弁護士が子に連絡を入れる段階や、自宅訪問・子の転居が関わる段階になると、同居の配偶者に知られずに進めることは難しくなります。
- 配偶者がお金を渡している場合や家の名義が配偶者にある場合などは、伝える時期を含めて弁護士と相談しておくことをおすすめします。
配偶者に知られたくないという気持ちがあるために、相談そのものをためらってしまう方もいらっしゃいます。まずは相談の段階で、連絡の取り方や配偶者への伝え方も含めて、進め方を一緒に考えることができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


