被害届を出された|示談で何を取り決めるのか
この記事は、令和7年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(警察の職権による警告の創設など)を反映しています。個別の事案での扱いは、経緯や残っている記録によって異なります。
好きなキャストやスタッフに喜んでほしいと思い、お店あてにプレゼントを送り続けていたところ、店から「今後のご来店はお断りします」と告げられ、さらに警察から「警告」を受けた。このようなご相談は、送る側と受け取る側の受け止め方の差が、ある時点で表に出たときに寄せられることが多いものです。送った側としては好意のつもりでも、受け取る側やお店が負担や不安を感じていれば、法律上の扱いは送った側の意図だけでは決まりません。
この記事では、プレゼントを送り続けた結果として出禁と警告を受けた方に向けて、それぞれの措置が何を意味するのか、どのような行為が罪に問われうるのか、この先に控えたい行動は何かを整理します。
「出禁」と「警告」は、出どころも効果も異なる
「出禁」と「警告」は同じ時期に届くことがあるため、一つの処分のように感じられるかもしれません。しかし、誰が出しているのか、従わなかったときに何が起きるのかは、それぞれ異なります。
| 措置 | 出す主体 | 法的な性質 | 従わなかった場合 |
|---|---|---|---|
| 出禁(出入り禁止) | 店舗 | 施設管理権や、誰と契約するかを決める自由にもとづく通告 | 店に立ち入ると建造物侵入罪などが問題になりうる |
| 店や代理人弁護士からの警告書面 | 店舗・キャスト本人・その代理人 | 今後の接触をやめるよう求める意思表示 | それ自体に罰則はないが、「拒まれていた」ことを示す記録になる |
| 警察の警告 | 警察本部長等 | ストーカー規制法4条にもとづく行政指導 | 警告に従わないこと自体に罰則はないが、禁止命令や検挙に進む可能性がある |
| 禁止命令 | 都道府県公安委員会 | ストーカー規制法5条にもとづく行政処分 | 違反すると刑罰の対象になる |
表のとおり、警察の警告は刑罰ではなく、警告を受けたこと自体で前科がつくわけではありません。ただし、警告は「これ以上続ければ次の段階に進む」という線を本人に示すものであり、軽く受け止めてよいものでもありません。警告の位置づけは警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかでも詳しく解説しています。
プレゼントを送ること自体は、ストーカー規制法の対象になるのか
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、特定の人やその家族などに一定の行為をすることを「つきまとい等」として規制しています。ここでいう好意の感情は恋愛に限られず、ファンとしての強い思い入れが含まれると評価されることもあります。
一般的な品物を送ること自体は、類型として挙げられていない
法律が挙げる「つきまとい等」の類型には、待ち伏せや押しかけ、面会や交際の要求、拒まれた後に連続して電話をかけたり文書を送ったりする行為などがあります。品物の送付としては、汚物や動物の死体など著しく不快な物を送る行為が挙げられているものの、一般的なプレゼントを送ることそのものは、そのままの形では類型に含まれていません。そのため、プレゼントを一度送っただけで直ちに規制の対象になるとは考えにくいところです。
評価が変わりやすい事情
一方で、プレゼントの送付に次のような事情が加わると、評価は変わりやすくなります。
- プレゼントに手紙やメッセージカードを添え、面会や連絡を求めていたこと。
- 店やキャストから受け取りを断られた後も、送付を続けていたこと。
- 送付と並行して、店の前や最寄り駅で出勤や退勤を待っていたこと。
- キャスト個人のSNSや連絡先にもメッセージを送っていたこと。
- キャストの自宅など、店以外の場所にも送っていたこと。
手紙で会いたいと伝えることは面会や交際の要求に、断られた後に手紙を送り続けることは拒まれた後の連続した文書の送付に、それぞれあたるとされる余地があります。また、店はキャストにとっての勤務先であり、法律が待ち伏せや押しかけ、見張りを規制する場所に含まれます。プレゼントの送付が単独では問題になりにくくても、こうした事情と組み合わさることで、全体として「つきまとい等」と評価されるおそれがあります。
「つきまとい等」が同じ相手に繰り返されると「ストーカー行為」となり、刑罰の対象になります。一度の行為と繰り返しの違いは、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで解説しています。
警察から警告を受けたときに起きていること
警察が警告を出すのは、つきまとい等が行われ、さらに繰り返されるおそれがあると判断した場合です。以前は被害を受けた側からの申出が必要でしたが、令和7年12月30日に施行された改正法により、申出がなくても警察が職権で警告を出せるようになりました。キャスト本人が申し出ていなくても、店からの相談をきっかけに警告に至ることは考えられます。
警告は行政指導であり、受けたこと自体で刑罰が科されたり、前科がついたりすることはありません。一方で、警告を受けた事実は警察に記録として残り、その後に同じような行為があったときの判断材料になります。警告後の流れは、おおむね次のように整理できます。
- 警告を受けた後に行為が止まれば、手続はそこで終わるのが一般的です。
- 警告後も行為が続くと、公安委員会が禁止命令を出す可能性があり、その前には原則として聴聞が行われます。
- 禁止命令に違反すると、刑罰の対象になります。
- 警告や禁止命令を経ずに、繰り返された行為が「ストーカー行為」として捜査の対象になる場合もあります。
| 場面 | 法定刑 |
|---|---|
| ストーカー行為をした場合 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令に違反してストーカー行為をした場合 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 上記以外で禁止命令に違反した場合 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
ストーカー行為の罪は、被害を受けた方の告訴がなくても起訴できる罪です。警告から検挙・起訴へ進むかどうかの分かれ目は【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合で、禁止命令の聴聞については【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べることで、禁止命令の期間や違反した場合の扱いは禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新で、それぞれ解説しています。
出禁を告げられた後に問題になりうる行為
店が来店を断ること自体は、施設管理権や契約の自由から認められる範囲が広く、客の側から出禁の解除を求めても、応じてもらうのは難しいのが一般的です。また、出禁を告げられた後の行動によっては、ストーカー規制法とは別の罪が問題になることもあります。
店に立ち入る・店内に居座る
立ち入りを拒まれている店にあえて入ると、管理者の意思に反する立ち入りとして、建造物侵入罪(3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が問題になりえます。店内で退去を求められても応じない場合は、不退去罪が問題になることもあります。客として料金を払うつもりであっても、出禁を告げられた後であれば、正当な目的での来店とは評価されにくくなります。
受け取りを断られた後も送り続ける
受け取りを断ると伝えられた後も品物を送り続け、店が返送や確認の対応に追われて営業に支障が出るような場合には、業務妨害罪が検討される余地もあります。どの程度で業務妨害にあたるかは、送付の量や頻度、店が受けた影響によって異なります。詳しくは業務妨害で立件される言動|威力と偽計の違いで解説しています。
すでに送ったプレゼントは返してもらえるのか
出禁や警告を受けると、これまでに送った品物を返してほしいと考える方もいます。弁護士ドットコムにも、警告のきっかけになったプレゼントが、その後どう扱われるのか、返してもらえるのかを尋ねる相談が寄せられています。
ただ、相手に渡し終えたプレゼントは贈与として扱われるのが通常です。書面によらない贈与であっても、すでに引き渡した部分は解除できないとされています(民法550条)。返還を求められるのは、お金を貸していた場合や、将来の約束を条件にした高額な支払いだった場合など、限られた事情があるときに絞られます。キャストに渡した金品が贈与か対価かの切り分けは、【風俗トラブル】キャストに贈った金品|贈与と対価の切り分けが争点になる理由で整理しています。
また、返還を求める目的であっても、本人や店へ直接連絡すれば、それが新たな接触として受け止められるおそれがあります。返還を求めたい事情がある場合は、まず弁護士に相談し、連絡するかどうか、誰を通じて伝えるかを決めてから動くことをおすすめします。
警告や出禁の後に控えたい行動
警告を受けた後は、「直接会わなければよい」「店に行かなければよい」と考えがちです。しかし、接触の手段を変えただけでは、同じ行為の続きとみられることがあります。次のような行動は控えるようにしてください。
- 店やキャスト個人へのメッセージ、電話、手紙の送付。
- SNSでのダイレクトメッセージや投稿へのコメント。
- 別の名前や知人の名義を使ったプレゼントの送付。
- 共通の知人や他の客を通じた伝言。
- 系列店や移籍先と思われる店への来店。
- 店の周辺や最寄り駅での待機。
- 謝罪や事情説明のための連絡。
謝りたい気持ちから連絡したくなることもあるかもしれません。ただ、相手が接触を望んでいない状況では、謝罪の連絡もつきまといの一つと受け止められることがあります。この点は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由でも取り上げています。店から直接注意を受けた段階での向き合い方については、【風俗トラブル】ガールズバーでキャストに私的な連絡を続けた|店から警告されたときも参考になります。
警告の内容に納得できないとき
「好意を伝えたかっただけで、つきまとうつもりはなかった」「店から受け取れないとは言われていなかった」など、警告の内容に納得できない方もいます。警告は行政指導であるため、裁判で取り消しを求めることは一般に難しいとされています。一方、禁止命令の前には聴聞の機会があり、そこで事実関係や自分の言い分を述べることができます。
納得できない点があっても、警告後に本人や店へ反論や説明の連絡をすると、警告後も接触が続いたとみられかねません。言い分がある場合は、送付の日時や品物、店から受けた連絡の内容を記録にまとめ、弁護士を通じて伝える方法を検討するのが安全です。店やキャストの代理人から書面が届いた場合の対応は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方で解説しています。
今の段階でできること
出禁と警告を受けた段階であれば、ここで行為を止めることで、手続がそれ以上進まないことも多くあります。そのうえで、次の点を確認しておくと落ち着いて対応しやすくなります。
- 警告書や店からの通知を保管し、何を禁止されているのかを確認します。
- これまでの送付の日時、品物、添えた手紙の内容、店とのやり取りを時系列でまとめます。
- 店やキャストのSNSのフォローなど、接触につながりうる経路を自分の側から整理します。
- 警察から呼び出しの連絡があったときや、聴聞の通知が届いたときは、応じる前に弁護士に相談します。
プレゼントを送ることは、本来、相手に喜んでほしいという気持ちから始まるものです。ただ、店が出禁を伝え、警察が警告を出した段階では、送る側の気持ちとは別に、これ以上の接触を控えることが求められています。今後の行動に迷いがあるときや、警察から連絡が来て不安なときは、早めに弁護士へご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


