自分の物を実力で取り返した|自救行為はどこまで許されるか
好きな配信者に応援の気持ちや個人的な思いをDMで送り続けていたところ、「ストーカーです」「警察に相談します」と返された、ブロックされた、所属事務所から注意の連絡が来た。こうした状況で、自分の行為がどこまで問題になるのか、この先何が起きるのかが分からず、不安を抱えている方は少なくありません。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(警察による職権での警告の創設など)と、2025年6月から懲役・禁錮に代わって導入された拘禁刑を反映しています。
この記事では、配信者へのDMがストーカー規制法の問題になる条件、「ストーカー」と言われた後に考えられる流れ、今の段階で控えたい行動と整理しておきたいことを解説します。
配信者へのDMがストーカー規制法の対象になる条件
ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる一定の行為を指します。
ここでいう「好意の感情」について、警察庁の通達は、恋愛感情のほか、女優などに対する憧れの感情も含まれると解しています。そのため、面識がなく、配信を見て一方的に好意を持っただけの関係であっても、規制の対象から外れるとは限りません。
DMとの関係で中心になるのは、拒まれたにもかかわらず、連続して電話をかけ、文書を送り、電子メールやSNSのメッセージを送信する行為です。このほか、DMの内容によっては次の類型にもかかわり得ます。
| DMの内容の例 | かかわり得る類型 |
|---|---|
| 「会いたい」「付き合ってほしい」と繰り返し求める | 面会・交際その他義務のないことを行うことの要求 |
| 「いつも見ている」「今日は〇〇にいたね」と書く | 監視していると思わせる事項を告げること |
| 返信がないことを責める、強い言葉で非難する | 著しく粗野または乱暴な言動 |
| 容姿や私生活を貶める、性的な内容を送る | 名誉を害する事項・性的羞恥心を害する事項を告げること |
これらの行為を同じ相手に反復して行うと「ストーカー行為」となり、刑事罰の対象になります。なお、メッセージの送信や面会の要求などは、相手の身体の安全や住居の平穏、名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限ってストーカー行為にあたる、という限定が付いています。
「何通から」という明確な基準はない
「何通までなら大丈夫か」という質問は多いのですが、法律に回数の基準はありません。問題になるかどうかは、通数だけでなく、送った期間や頻度、内容、相手が拒んでいることを知り得たかどうかを合わせて判断されます。過去には、元交際相手に3日間で数十回のメールを送ったとして逮捕された事例が報じられたこともあります。
配信者とのやり取りで判断に影響しやすいのは、次のような事情です。
- 配信者からブロックされた、または「DMは控えてほしい」と直接伝えられた後も送り続けたこと。
- ブロック後に別のアカウントを作って連絡したこと。
- DMに加えて、配信のコメント欄やメッセージ付きの投げ銭でも同じ内容を繰り返したこと。
- 配信者の居場所や生活に触れる内容を含めたこと。
- 所属事務所の担当者や配信者の家族にまで連絡したこと。
返信がないことだけをもって、直ちに「拒まれた」と評価されるとは限りません。ただ、ブロックや事務所からの連絡など、拒絶がはっきり示された後の送信は、問題として扱われやすくなります。また、ストーカー規制法は対象者本人だけでなく、社会生活において密接な関係を有する者に対する行為も対象としているため、事務所のスタッフへの連絡が含まれる場合もあります。
ストーカー規制法以外に問題になり得るもの
好意の感情に基づかない場合でも、DMや投稿の内容によっては別の法律が問題になることがあります。危害を加えるような内容であれば脅迫罪、公開の場で配信者の評価を下げる書き込みをすれば名誉毀損罪や侮辱罪、配信や活動を妨げるほどの大量の連絡であれば業務妨害罪が検討されることがあります。また、民事上は、慰謝料などの損害賠償を求められる可能性もあります。
「ストーカー」と言われた後に考えられる流れ
相手から「ストーカー」と言われた後の展開は事案によって異なりますが、おおむね次のような段階をたどります。
- プラットフォームによる通報処理やアカウントの停止。
- 所属事務所や配信者の代理人弁護士からの書面での警告。
- 警察からの電話や、事情を聞くための呼び出し。
- 警察本部長等による警告。
- 都道府県公安委員会による禁止命令。
- ストーカー規制法違反などでの検挙。
警告は、従来は被害者の申出が必要でしたが、改正法の施行により、申出がなくても警察が職権で行えるようになりました。また、ストーカー行為罪は2017年施行の改正で告訴がなくても起訴できる罪になっています。「配信者が被害届を出さなければ何も起きない」とは言い切れない点に注意が必要です。
| 段階・行為 | 内容 | 刑事罰 |
|---|---|---|
| 警告 | つきまとい等を繰り返さないよう求める行政上の措置 | なし |
| 禁止命令 | 公安委員会が出す命令。有効期間は1年で、延長されることがある | 命令自体にはなし |
| ストーカー行為 | つきまとい等の反復 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令に違反したストーカー行為 | 命令に反してつきまとい等を反復 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| その他の禁止命令違反 | 命令に反する行為 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
今の段階で控えたい行動
「誤解を解きたい」「謝れば分かってもらえる」という気持ちから行動すると、かえって状況が悪くなることがあります。
- 謝罪や弁明のDMを送ること。
- 別のアカウントや知人を通じて連絡すること。
- 配信のコメント欄や自分のSNSで、配信者に向けた投稿をすること。
- 所属事務所や運営に、繰り返し問い合わせること。
- 送ったDMや自分のアカウントを慌てて削除すること。
謝罪の連絡であっても、拒まれている相手への連絡であることに変わりはなく、新たな「つきまとい等」と受け取られるおそれがあります。また、DMを削除しても、相手側の画面や記録には残っていることが多く、自分の側の経緯を説明する材料だけが失われることになりかねません。
手元で整理しておきたいこと
今後、警察や相手方の代理人とやり取りすることになった場合に備えて、事実関係を整理しておくことが役に立ちます。
- 最初にDMを送った時期と、最後に送った日時。
- おおよその通数と、送った内容の要旨。
- 配信者から返信や拒絶の連絡があったかどうかと、その時期。
- ブロックされた時期と、その後に送ったものの有無。
- 事務所や代理人、警察から届いた連絡の日時と内容。
記録を整理するときは、自分に都合の悪い部分も含めて、ありのまま書き出しておくことが大切です。事実と異なる説明をすると、後の手続で不利に扱われることがあります。
警察から連絡が来たとき
警察から電話があり、事情を聞きたいと言われることがあります。任意の聴取であれば応じるかどうかを選べますが、応じない場合の見通しも含めて判断する必要があります。その場で上申書や誓約書の作成を求められることもあるため、内容を理解しないまま署名することは避けたいところです。
連絡が来た段階で弁護士に相談しておくと、聴取で何を聞かれ得るか、どの点を説明すべきかを事前に確認できます。
弁護士に相談すると何ができるか
弁護士は、送ったDMの内容や経緯をもとに、どの法律の問題になり得るかを見立て、今後の見通しをお伝えします。そのうえで、事案に応じて次のような対応を検討します。
- 警察の聴取や聴聞に向けた準備と、必要に応じた同行。
- 配信者側の代理人や所属事務所との連絡窓口の引き受け。
- 今後の接触をしない約束やアカウントの扱いなどを含めた示談の交渉。
- 検挙された場合の早期の身柄解放と処分の軽減に向けた弁護活動。
配信者本人に直接連絡して話し合おうとすることは、前述のとおり事態を悪化させるおそれがあります。相手方とのやり取りは、弁護士を通じて行うほうが安全です。
よくあるご質問
配信者に返信をもらえなかっただけでも、ストーカーになりますか
返信がないことだけで、直ちにストーカー行為と判断されるわけではありません。ただし、ブロックや拒絶の連絡があった後も送り続けていた場合や、内容が相手に不安を与えるものだった場合は、問題になる可能性が高まります。
配信者が被害届を出さなければ、警察から連絡は来ませんか
必ずしもそうとは限りません。改正法により、警察は申出がなくても職権で警告できるようになっています。また、ストーカー行為罪は告訴がなくても起訴できる罪です。
投げ銭に付けたメッセージも、DMと同じように扱われますか
送信の手段がDMでなくても、内容や回数によっては同じように評価される可能性があります。投げ銭をしていたことは、それ自体で問題が軽くなる事情にはならないと考えておくのが無難です。
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まとめ
配信者へのDMは、面識がない相手への一方的な好意であっても、拒まれた後に送り続けた場合や内容が不安を与えるものだった場合には、ストーカー規制法の問題になることがあります。「ストーカー」と言われた段階で連絡をやめ、記録を整理したうえで、早めに今後の見通しを確認しておくことが、事態を大きくしないための備えになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


