児童買春・児童ポルノ事件の初犯|罰金で済むのか
「贖罪寄付を検討したほうがよい」と言われたものの、どこに、どうやって申し込むのかが分からない、という声をよくお聞きします。制度の名前は知られていても、申込書にどんな欄があるのか、寄付をした後に何という書面が手元に届くのかまでは、あまり知られていません。
贖罪寄付(しょくざいきふ)は、被害者がいない事件や、被害者との示談ができない事件で、反省の気持ちを形にする方法のひとつです。もっとも、実務で意味を持つのは寄付そのものよりも、その後に発行される書面をいつ、誰に渡すかという部分です。ここを取り違えると、お金だけが出ていって手続に反映されない、ということが起こり得ます。
この記事では、贖罪寄付の申込みの進め方と、発行される書面の扱いを、実際の申込書や証明書の様式に沿って整理します。
この記事で扱うこと、扱わないこと
この記事は、贖罪寄付をすると決めた後の手順に絞って説明します。扱う範囲は次のとおりです。
- 申込みの窓口と、寄付先ごとの違い。
- 申込書に記入する事項と、つまずきやすい欄。
- 寄付金の納め方と、身柄が拘束されている場合の進め方。
- 発行される証明書・領収証の中身と、その提出先。
一方で、贖罪寄付をすべきかどうかの判断、示談や供託との使い分け、寄付の効果そのものについては、事件の内容によって考え方が変わります。この記事では結論に必要な範囲で触れるにとどめます。
申込みはどこで受け付けているのか
贖罪寄付の代表的な受付先は、各地の弁護士会と日本弁護士連合会(日弁連)です。弁護士会・日弁連では、被害者のいない刑事事件や、被害者に対する示談ができない刑事事件などについて、刑事手続の対象となっている方の反省の気持ちを表すための贖罪寄付を受け付けています。
申込み自体は各地の弁護士会が窓口となり、制度全般に関する問い合わせは日弁連が受け付けています。寄付金は、日弁連および各地の弁護士会の法律援助事業基金に充てられ、犯罪被害者や子ども、難民などに対する弁護士費用の援助に使われます。東京弁護士会の場合は、贖罪寄付として受けた金額の2分の1を同会の人権救済基金の寄付金とし、残りを日弁連の法律援助基金への寄付として取り扱う運用とされています。
交通事故の事件では、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが「交通贖罪寄付」を受け付けています。このほか、日本司法支援センター(法テラス)や、被害者支援・人権擁護に取り組む民間団体が受付先となることもあります。どこに申し込むかによって、発行される書面と税の扱いが変わりますので、この点は後ほど整理します。
申込書に書く事項
弁護士会に申し込む場合は、所定の「贖罪寄付申込書」に必要事項を記入し、受任弁護士を通じて最寄りの弁護士会に提出します。書式は日弁連のウェブサイトから入手でき、記入例も公開されています。記入する事項は次のとおりです。
| 記載欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 申込者 | 申込みを行う方の氏名。受任弁護士や家族が本人の代理として申し込む場合は、その代理人の氏名を書きます |
| 寄付者 | 住所と氏名。本人以外が寄付者になる場合は続柄(妻、父など)も記入します |
| 被疑者・被告人等の氏名 | 事件の当事者本人の氏名を書きます |
| 係属裁判所・係属事件名 | 起訴後であれば裁判所名と刑事部の番号、事件名(例:窃盗被告事件)を書きます |
| 寄付の趣旨・金額 | 趣旨は「心よりの反省と贖罪の意を表する為」という定型文が用意されています |
| 受任弁護士 | 弁護士の氏名、所属弁護士会、登録番号を書きます |
このほか、寄付金の受付や証明書の発行のために提供する個人情報を、日弁連と弁護士会が共同で利用することについて、同意欄にチェックする必要があります。
「申込者」と「寄付者」は別の欄
申込書でつまずきやすいのが、冒頭の「申込者」と、1番の「寄付者」が別の欄になっている点です。申込者は手続を行う人であり、代理人でも構いません。これに対して寄付者は、証明書に表示を希望する名前を書く欄です。つまり、ここに書いた名義が、そのまま証明書に載ります。
ご本人が身柄を拘束されていて、実際にお金を用意したのがご家族という場合、寄付者を本人にするか家族にするかで、証明書の見え方が変わります。書式上は家族が寄付者となることも想定されており、その場合は続柄を記入することになっています。どちらにするかは、事件の内容やご家族の関わり方をふまえて決める場面です。
被疑者の段階では係属裁判所の欄は使わない
係属裁判所の欄は、起訴されて裁判所に事件が係属している場合に記入するものです。まだ起訴されていない被疑者の段階では、記入例でも斜線を引くよう案内されています。起訴前に贖罪寄付をすること自体は珍しくありませんので、この欄が埋まらないことを気にする必要はありません。
寄付金の納め方
弁護士会の窓口に直接出向いて納める方法のほか、振込や現金書留による受付にも対応している弁護士会があります。この場合、入金が確認された後に、証明書が郵送で発行されます。窓口で完結する場合と比べて日数がかかりますので、期日が近いときは注意が必要です。
ご本人が身柄を拘束されている場合、ご本人が自分で振込手続をすることはできません。実務では、弁護人が費用を預かって納付するか、ご家族が寄付者となって納付する形が多くなります。申込書には受任弁護士の氏名・所属弁護士会・登録番号を書く欄があり、弁護人が関与して進めることが前提の書式になっています。
私選の弁護人がついていない在宅の事件では、ご自身で寄付先に問い合わせて手続を進めることもあり得ます。ただ、後述するとおり書面の提出先とタイミングの判断が伴いますので、その点まで含めて弁護士に相談されることをおすすめします。
発行されるのは「領収書」ではなく「証明書」
弁護士会に贖罪寄付をすると、「贖罪寄付を受けたことの証明書」が発行されます。日常的な感覚では領収書を思い浮かべるかもしれませんが、手続の中で使うのは、金額だけを記した領収書ではなく、事件と結びついた証明書です。証明書には、おおむね次の事項が記載されます。
- 証明書の番号。
- 寄付者の住所と氏名。
- 寄付の趣旨として、被告人または被疑者の氏名と事件名。
- 寄付の金額。
- 日弁連および弁護士会が寄付の申入れを受理した年月日。
- 寄付金が法律援助事業基金に充当され、犯罪被害者や子ども、難民等のための法律援助に使用される旨。
- 発行年月日と、日弁連会長・弁護士会会長の記名。
このように、証明書は「誰が、どの事件について、いくらを、いつ納めたか」を第三者である弁護士会が証明する書面です。反省の気持ちを客観的な形で示す資料として使われるのは、この点によります。
なお、日弁連および弁護士会が贖罪寄付を受け入れ、寄付者に証明書を発行することについては、2007年3月に日弁連から最高裁判所および最高検察庁に対して、各裁判所および各検察庁の関係者への周知が依頼され、その旨の周知が図られています。裁判所や検察庁にとって見慣れない書面ではない、ということです。
寄付先によって領収証と税の扱いが変わる
「贖罪寄付をすると寄附金控除を受けられるのか」というご質問をいただくことがあります。ここは寄付先によって扱いが分かれる部分です。
| 寄付先 | 発行される書面 | 税の扱い |
|---|---|---|
| 弁護士会・日弁連 | 贖罪寄付を受けたことの証明書 | 日弁連は、贖罪寄付は税控除の対象にならないと案内しています |
| 日弁連交通事故相談センター | 領収証と、寄付を受けたことの証明書 | 内閣府から税額控除団体として認定されており、個人は確定申告で所得控除か税額控除を選択できるとされています |
整理すると、証明書は刑事手続で使う資料、領収証は経理や税務のための書面であり、役割が異なります。弁護士会への贖罪寄付では、税の優遇を前提にしない設計になっている点を押さえておいてください。
なお、他の団体に寄付する場合も、贖罪寄付を受け付けているかどうか、証明書を発行してもらえるかどうかは団体ごとに異なります。団体の趣旨に合わないことを理由に、被疑者・被告人やその弁護人からの寄付を受け付けていない団体もあります。申し込む前に、寄付先に確認しておくとよいでしょう。
証明書を誰に、いつ渡すのか
証明書は、発行されただけでは手続に反映されません。段階に応じて、次のように提出します。
- 起訴前(捜査段階)は、事件を担当する検察官に、弁護人の意見書などに添えて提出します。
- 起訴後(公判段階)は、情状に関する証拠のひとつとして裁判所に提出します。
起訴前に提出する場合、検察官が起訴・不起訴を判断する前に届いている必要があります。判断が終わった後に証明書が出来上がっても、その事件の処分には反映されません。公判段階でも、証拠調べの手続の中で提出するタイミングがありますので、弁論の直前になって書面が間に合わない、という事態は避けたいところです。
日弁連が寄付を紹介した弁護士に対して行ったアンケート(2017年度から2019年度)では、情状として考慮されたと思うとの回答が81%、考慮されたかどうか分からないとの回答が16%、考慮されなかったとの回答が3%でした。寄付をすれば処分が決まるという性質のものではありませんが、資料として受け止められている実情はうかがえます。
逆算しておきたい時間
贖罪寄付でつまずきやすいのは、金額でも書式でもなく、時間の見積もりです。次の3つの時間が重なります。
- 寄付するかどうか、金額をいくらにするかを決める時間。
- 申込書を提出してから、入金の確認を経て証明書が発行されるまでの時間。
- 証明書を検察官や裁判所に提出し、判断の材料として届くまでの時間。
窓口で直接納めれば証明書が即日発行される場合もありますが、振込や現金書留による場合は郵送の日数が加わります。日弁連交通事故相談センターのように、公判期日が迫っていても申込みと入金の確認後に直ちに証明書を発行すると案内している寄付先もありますが、いずれにしても余裕を持って動くに越したことはありません。
勾留期間は限られており、起訴・不起訴の判断は短い期間で行われます。贖罪寄付を検討するのであれば、お金の準備を早めに始めておくことが、結果として選択肢を残すことにつながります。
金額と名義の決め方
寄付の金額に決まりはありません。日弁連の案内でも、少額からでも受け付けているとされています。もっとも、あまりに少額では反省の気持ちが伝わりにくく、他方で、示談が成立した場合と同じ評価が得られるわけでもありません。罪の内容、被害の程度、想定される罰金の水準、ご自身の資力などをふまえて、弁護士と相談しながら決めるのが現実的です。
名義については、先に触れたとおり、申込書の「寄付者」欄に書いた名前が証明書に載ります。ご家族が費用を負担された場合でも、反省の主体は本人であるという整理を、書面と説明の両方でそろえておくことが大切です。ご家族名義で寄付する場合には、そのご家族が本人の更生にどう関わっているのかを、上申書などで併せて示す方法もあります。
控えたほうがよい進め方
最後に、進め方として避けたい点を挙げておきます。
- 示談ができる事案なのに、示談の可能性を検討しないまま寄付を先に済ませてしまう。
- 寄付先が贖罪寄付を受け付けているかを確認せず、一般の寄付として振り込んでしまう。
- 証明書の名義や記載事項を確認しないまま、そのまま提出してしまう。
- 処分の判断が近い時期に、郵送でしか受け付けていない方法を選んでしまう。
- 寄付をしたこと自体を、被害者や関係者に直接伝えようとする。
被害者がいる事件では、被害者への謝罪や賠償が先に検討されるべき場面が多くあります。贖罪寄付は、それが難しい事情があるときに選ぶ手段だという位置づけを外さないようにしてください。
よくある質問
寄付をした後で示談ができたら、寄付金は戻ってくるのですか
贖罪寄付は、被害者への支払いとは別に、公益的な事業に対して行う寄付です。示談が成立したからといって、寄付金を被害者への支払いに振り替えたり、返してもらったりすることは想定されていません。この点は、被害者が受け取ることを前提とする供託とは異なります。
弁護士に依頼していなくても申し込めますか
申込書には受任弁護士を記入する欄があり、受任弁護士を通じて申し込む方法が案内されています。弁護人がついていない在宅の事件でご自身で進める場合は、事前に申込先の弁護士会に取扱いを確認してください。
会社や家族に知られてしまいますか
申込書と証明書のやり取りは、寄付先と申込者・寄付者の間で行われます。ただし、証明書が郵送で届く場合には、受取先をどこにするかで同居のご家族の目に触れる可能性があります。弁護人が受任している場合は、事務所を送付先にする方法もあります。
まとめ
- 申込みの窓口は各地の弁護士会で、所定の申込書を受任弁護士を通じて提出する。
- 申込書の「申込者」と「寄付者」は別の欄で、寄付者に書いた名義が証明書に載る。
- 納付は窓口のほか振込や現金書留にも対応しているが、その場合は証明書が郵送になる。
- 発行されるのは金額のみの領収書ではなく、事件と結びついた「贖罪寄付を受けたことの証明書」である。
- 弁護士会への贖罪寄付は税控除の対象にならないと案内されており、寄付先によって領収証と税の扱いが異なる。
- 証明書は、起訴前は検察官に、起訴後は裁判所に提出し、判断がなされる前に届いている必要がある。
- 金額に決まりはなく、事件の内容と資力をふまえて決める。
贖罪寄付をご検討中の方へ
贖罪寄付は、手続そのものは複雑ではありませんが、寄付先の選び方、名義、金額、そして書面が届くまでの時間という、いくつかの判断が重なります。示談を先に試みるべき事案なのかどうかも含めて、事件の段階に応じた見極めが必要になる場面です。
当事務所は刑事事件に注力しており、初回のご相談は無料でお受けしています。24時間ご相談を受け付けておりますので、処分の判断が近いなど時間の限られた状況でも、まずはご事情をお聞かせください。


