【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べること

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点のストーカー規制法(令和7年法律第83号による改正を含み、令和7年12月30日施行分まで反映)と行政手続法の規定をもとにしています。聴聞の運用の細部は都道府県ごとに異なることがあるため、お手元の通知書の記載を優先してご確認ください。


公安委員会から「聴聞通知書」が届き、禁止命令について聴聞を行うと知らされた方に向けた記事です。聴聞は、禁止命令を出すかどうかを決める前に、命令を受ける立場の方が意見を述べるために設けられた手続です。何を準備し、当日どのように述べればよいのかを、条文に沿って整理します。

聴聞とは何か|禁止命令の前に置かれた意見を述べる機会

 禁止命令は、「更に反復してつきまとい等をしてはならない」と命じる行政処分です。違反すると刑事罰の対象となり、効力は1年間で、必要があれば延長されます。このように影響の大きい処分であるため、ストーカー規制法5条2項は、公安委員会が禁止命令をしようとするときは、聴聞を行わなければならないと定めています。
 聴聞の進め方は行政手続法に定められています。聴聞は公開しないのが原則で(行政手続法20条6項)、職場や知人に知られる形で行われるものではありません。

聴聞が開かれる場面

 聴聞などの意見を述べる機会は、次のような場面で設けられます。

場面手続の名称特徴
通常の禁止命令をする前聴聞(5条2項)命令が出る前に意見を述べる
緊急の禁止命令が出た後意見の聴取(5条3項)命令が先に出て、その後15日以内に意見を聴く
禁止命令の有効期間を延長する前聴聞(5条9項・10項)延長が必要かどうかについて意見を述べる


 緊急の禁止命令の仕組みについては、【ストーカートラブル】緊急の禁止命令とは|聴聞を経ずに出る場面で解説しています。

通知書で確かめること

 聴聞の通知は書面で行われ、行政手続法15条1項により、次の事項が記載されます。まずはこれを一つずつ確認することが準備の出発点です。

記載事項確認の視点
予定される処分の内容と根拠条文何を禁止する命令が予定されているか
処分の原因となる事実日時・場所・行為の内容が、自分の認識と合っているか
聴聞の期日と場所出頭できるか、日程の調整が必要か
担当部署の名称と所在地問い合わせや書類提出の窓口はどこか


 通知書には、期日に出頭して意見を述べ証拠書類等を提出できること、出頭に代えて陳述書を提出できること、聴聞が終わるまで資料の閲覧を求められることも示されます(同条2項)。
 また、令和7年の改正により、つきまとい等が行われた当時に相手方が住んでいた地域の公安委員会も、聴聞や禁止命令を行えるようになりました(14条)。相手方が転居した後でも元の住所地で手続が進むことがあるため、ご自身の住まいと離れた場所が指定されることもあります。

聴聞の当日の流れ

 当日の審理は、おおむね次の順で進みます(行政手続法20条)。

  1. 主宰者の指示で、警察の職員が予定される処分の内容・根拠条文・原因となる事実を説明します。
  2. 当事者が意見を述べ、証拠書類等を提出します。
  3. 主宰者の許可を得て、職員に質問をします。
  4. 主宰者から当事者に質問がされ、意見の陳述や資料の提出を促されます。
  5. 審理が終わると主宰者が調書と報告書を作成し、公安委員会がその内容を参酌して判断します。


 主宰者は公安委員会が指名する職員が務めます。審理が1回で終わらない場合は、続行の期日が指定されることもあります(同法22条)。

出頭できないとき・一人で臨むのが不安なとき

 期日に出頭する代わりに、陳述書と証拠書類等を期日までに提出することができます(行政手続法21条)。代理人を選任することもでき(同法16条)、主宰者の許可を得て補佐人と一緒に出頭することも認められています(同法20条3項)。
 一方で、正当な理由なく出頭せず、陳述書も提出しない場合、主宰者は意見を聴かないまま聴聞を終結させることができます(同法23条)。日程が合わない場合は、通知書の担当部署へ早めに相談するのが望ましいでしょう。

資料の閲覧を求める

 当事者は、通知を受けた時から聴聞が終わるまでの間、処分の原因となる事実を示す資料の閲覧を求めることができます(行政手続法18条)。ただし、第三者の利益を害するおそれがあるときなどは閲覧が制限されることがあり、相手方の住所などの情報は伏せられるのが通常です。何が問題とされているのかを正確に把握するために、閲覧を求めておく意味はあります。

聴聞で述べること

 禁止命令は、ストーカー規制法3条に違反する行為があり、「更に反復して当該行為をするおそれがある」と認められるときに出されます(5条1項)。述べる内容は、この要件に沿って整理すると伝わりやすくなります。

要件述べる内容の例
つきまとい等に当たる行為があったか通知書の事実のうち、認める部分と認識が異なる部分
恋愛感情等を満たす目的だったか連絡や訪問に別の理由があった場合はその内容と裏付け
相手方に不安を覚えさせたか行為の回数・時間帯・やり取りの経過
更に反復するおそれがあるかすでに接触をやめていること、今後の具体的な対応


事実関係|認める部分と違う部分を分ける

 通知書の「原因となる事実」を一つずつ確認し、認める部分、一部だけ違う部分、記憶にない部分に分けておきます。すべてを否定する、あるいはすべてを認めるという述べ方よりも、具体的に区別した説明のほうが、主宰者に正確に伝わります。日時や回数については、手元のメッセージ履歴や通話記録で確かめてから述べるようにしてください。

目的|連絡に別の理由があった場合

 預けた荷物の返却や金銭の清算、子どもとの面会の調整など、恋愛感情とは別の用件で連絡していた場合は、その事情を裏付けとともに説明します。ただし、正当な用件があっても、方法や回数によってはつきまとい等と評価されることがあります。この点は【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面や連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いもあわせてご覧ください。

今後|反復のおそれについて具体的な事情を示す

 公安委員会が重視するのは、今後また同じ行為が起きるかどうかです。「もうしません」という言葉だけでなく、次のような具体的な事情を示すことが考えられます。

  • 警察から連絡を受けた時点以降、相手方への連絡や訪問をしていないこと。
  • 相手方の連絡先を削除し、SNSのフォローなどを解除したこと。
  • 相手方の自宅や勤務先の近くに行く必要がない生活状況であること。
  • 荷物や金銭など残った用件は、代理人を通じて処理する方針であること。


 事実関係に争いがある場合でも、今後の対応についてはこうした事情を述べておくことができます。もっとも、聴聞で述べた内容によって命令が出ないと決まるわけではなく、最終的には公安委員会が判断します。

控えたほうがよいこと

 相手方を強く非難する、相手方の動機を推測して述べる、感情的なやり取りを続けるといった述べ方は、反復のおそれを裏付ける事情と受け取られることがあります。聴聞での発言は調書に記録されるため、事実と異なる説明や、後で説明が変わるような述べ方も避けたほうがよいでしょう。
 また、聴聞の前後に相手方へ連絡して申出の取下げを頼むことは、それ自体が新たなつきまとい等と評価されるおそれがあります。相手方に伝えたいことがある場合は、ご自身で連絡せず、弁護士にご相談ください。

刑事手続が並行している場合

 聴聞は行政手続であり、刑事事件の捜査とは別の手続です。ただし、同じ出来事についてストーカー行為罪などの捜査が進んでいることもあります。その場合、聴聞で述べる内容と取調べでの説明が食い違わないよう、全体を見通して準備する必要があります。刑事手続の見通しは【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合、取調べでの対応は黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理で解説しています。

聴聞の後|命令が出た場合と出なかった場合

 禁止命令が出た場合、その効力は1年間で、必要があると認められれば聴聞を経て1年ずつ延長されます。命令に違反すると刑事罰の対象となるため、命令書に記載された禁止事項を正確に確認しておくことが大切です。違反した場合の罰則や期間の考え方は禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新をご覧ください。
 命令に納得できない場合は、行政不服審査法に基づく審査請求(処分を知った日の翌日から原則3か月以内)や、取消訴訟(原則6か月以内)を検討することになります。命令書に記載される不服申立ての案内も確認してください。不服申立てをしている間も、命令の効力は原則として続きます。
 命令が出なかった場合でも、警察が状況を把握していることに変わりはありません。警告を受けた後の見通しについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかが参考になります。

弁護士に依頼すると何ができるのか

 弁護士は、通知書と閲覧した資料をもとに事実関係を整理し、陳述書や証拠書類を準備します。代理人として聴聞に出頭することもできます。荷物の返還や金銭の清算など、相手方との間に残った用件がある場合は、弁護士が窓口となることで、ご本人が直接連絡せずに済む形を整えられます。相手方の代理人から書面が届いている場合の考え方は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方で解説しています。
 通知から聴聞の期日までの期間は長くないことが多く、準備に使える時間は限られます。通知書が届いた段階でご相談いただければ、期日までに何を準備できるかを一緒に確認できます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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