執行猶予判決を受けた後の生活|何が制限されるのか
ストーカー行為の疑いで逮捕されたとき、本人やご家族がまず気にされるのは「いつ帰ってこられるのか」という点ではないでしょうか。逮捕後の身柄拘束には刑事訴訟法で時間の上限が決められており、起訴されるかどうかが決まるまでの期間は、逮捕から最大で23日間が一つの目安になります。ただし、ストーカー事件には被害者との接触をどう防ぐかという固有の事情があり、勾留の判断や再逮捕の有無によって、実際の拘束期間は事案ごとに大きく変わります。この記事では、逮捕から起訴・不起訴の判断までの流れ、拘束が長引く場面、早期の釈放に向けて弁護士が取り得る手段を順に整理します。
この記事は2026年10月時点の法令に基づいて書いています。2025年6月から懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されており、本文の法定刑もこの表記で記載しています。ストーカー規制法は改正が続いている分野のため、最新の運用は個別にご確認ください。
逮捕から起訴・不起訴の判断までは最大23日間が目安
逮捕された後の身柄の扱いは、警察の持ち時間、検察官の持ち時間、裁判官が認める勾留の期間という3つの段階に分かれます。ストーカー規制法違反(ストーカー行為等の規制等に関する法律18条など)で逮捕された場合も、手続の流れは他の事件と同じです。
| 段階 | 上限の時間・期間 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 警察での取調べ・検察官への送致 | 逮捕から48時間以内 | 刑事訴訟法203条 |
| 検察官による勾留請求の判断 | 送致から24時間以内(逮捕から72時間以内) | 刑事訴訟法205条 |
| 勾留 | 勾留請求の日から原則10日間 | 刑事訴訟法208条1項 |
| 勾留延長 | さらに最大10日間 | 刑事訴訟法208条2項 |
最初の72時間で勾留されるかどうかが決まる
警察は逮捕から48時間以内に、本人を釈放するか、検察官に送致するかを決めます。送致を受けた検察官は24時間以内に、裁判官に勾留を請求するか、釈放するかを判断します。この最初の72時間は、原則としてご家族であっても面会ができず、本人と会えるのは弁護士に限られます。
勾留請求を受けた裁判官は、本人から話を聞いたうえで、勾留を認めるかどうかを決めます。勾留が認められるのは、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、住居が定まっていない、証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある、逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある、のいずれかに当たり、かつ勾留の必要性がある場合です(刑事訴訟法60条1項、207条1項)。
勾留は原則10日、延長されると最大20日
勾留が認められると、まず10日間、警察署の留置施設などで生活することになります。検察官がやむを得ない事由があると判断して延長を請求し、裁判官が認めれば、さらに最大10日間延びます。逮捕からの72時間と合わせて、起訴・不起訴の判断までに最大23日間程度となるのはこのためです。
もっとも、延長が当然に認められるわけではなく、10日以内に処分が決まることもあります。逮捕から勾留、処分までの全体像は逮捕から解決までの流れ【フローチャート】|今どの段階かがわかるでも段階ごとに整理しています。
ストーカー事件で勾留が認められやすいといわれる理由
ストーカー規制法違反の事件は、他の事件と比べて勾留が認められやすい傾向があると指摘されることがあります。背景には、ストーカー事件に特有の次のような事情があります。
- 被疑者が被害者の住所・勤務先・連絡先を知っていることが多く、釈放後に接触するおそれが問題になる。
- 被害者に働きかけて供述を変えさせるおそれが、罪証隠滅のおそれとして検討される。
- 逮捕前に警告や禁止命令を受けていた場合、それでも行為が止まらなかったと受け止められやすい。
- SNSのやり取りや位置情報の記録など、削除されるおそれのある証拠が多い。
これらはあくまで判断の際に検討される要素であり、ストーカー事件だから必ず勾留されるというわけではありません。また、被害者との接触を防ぐ目的で、弁護士以外との面会や手紙のやり取りを禁じる「接見禁止」が付けられることもあります(刑事訴訟法81条)。接見禁止が付いた場合の対応は、接見禁止がついて家族が会えない|解除に向けた動きで解説しています。
23日間を超えて身柄の拘束が続く場面
「最大23日間」は、一つの事件について起訴・不起訴が決まるまでの目安です。次のような場合には、身柄の拘束がこれより長くなることがあります。
別の行為で再逮捕される場合
ストーカー事件では、つきまといが長期間にわたっていたり、ストーカー規制法違反とは別に住居侵入罪や脅迫罪などが問題になったりすることがあります。この場合、ある行為についての勾留期間が終わった後、別の期間の行為や別の罪で改めて逮捕・勾留される「再逮捕」が行われることがあり、その分だけ拘束期間が延びます。再逮捕の仕組みは再逮捕が繰り返されるのはなぜか|余罪と追起訴の見通しで詳しく扱っています。
正式な裁判を求めて起訴された場合
検察官が正式な裁判(公判)を請求すると、身柄の拘束は起訴後の勾留としてそのまま続くのが通常です。起訴後の勾留は起訴の日から2か月で、必要があれば1か月ごとに更新されます(刑事訴訟法60条2項)。
起訴後は保釈を請求できるようになります。保釈が認められる場合には、被害者との接触を禁じる条件や住居の指定などが付されることが一般的で、これに違反すると保釈が取り消され、保証金の全部または一部が没取されるおそれがあります。なお、起訴前の段階には保釈の制度がありません。起訴前に取り得る手段は起訴前に『保釈』はない|起訴前にできる身柄解放の手段で整理しています。
略式手続で罰金となる場合
事案によっては、検察官が正式な裁判ではなく、書面審理で罰金を科す略式手続を選ぶことがあります。ストーカー規制法18条の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、略式手続は100万円以下の罰金を科す場合に使える手続です。略式命令が出て罰金を納めれば身柄は解放されますが、罰金も刑罰であり、前科として扱われます。
なお、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合の法定刑は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と重くなっています(ストーカー規制法19条1項)。
逮捕されても勾留されずに釈放される場合もある
逮捕されたからといって、必ず勾留されるわけではありません。検察官が勾留を請求しない場合や、裁判官が勾留請求を却下した場合には、逮捕から数日のうちに釈放され、その後は自宅で生活しながら捜査を受ける在宅事件として進むことがあります。
また、勾留期間が満了した時点で起訴・不起訴を決めきれず、処分を保留したまま釈放されることもあります。この場合も事件そのものが終わったわけではないため、その後の連絡には引き続き注意が必要です。
身柄の拘束を短くするために弁護士が取り得る手段
身柄の拘束を短くするためには、それぞれの段階で、勾留の理由や必要性がないことを具体的な事情とともに示していくことになります。主な手段は次のとおりです。
- 勾留請求の前に、検察官や裁判官へ勾留の必要がない理由を意見書で伝える。
- 勾留決定に対して準抗告を申し立て、別の裁判官による判断を求める(刑事訴訟法429条)。
- 勾留後に事情が変わった場合、勾留の取消しを請求する(刑事訴訟法87条)。
- 勾留延長の請求に対して意見を述べ、延長決定には準抗告を申し立てる。
- 弁護士を通じて被害者に謝罪と示談を申し入れる。
- 起訴された後、保釈を請求する。
ストーカー事件で特に重視されやすいのは、「釈放されても被害者に接触しない」と言える具体的な裏付けです。たとえば、被害者の連絡先を削除する、被害者の生活圏から離れた場所で家族と同居する、ご家族が身元引受人として生活を見守る、といった事情を書面にまとめて示すことが考えられます。準抗告と勾留取消請求の違いは勾留決定に納得できない|準抗告と勾留取消請求の違いをご覧ください。
示談は、勾留の判断だけでなく起訴・不起訴の判断にも影響し得る事情ですが、被害者が加害者側との接触そのものを強く拒むことも少なくありません。本人やご家族が直接被害者に連絡をとることは、それ自体が新たな問題になりかねないため、示談の申入れは弁護士を通じて行うのが現実的です。示談が成立しても直ちに釈放されるとは限らず、被害者の意向に沿わない形で無理に進めることはできません。
ご家族がいま確認しておきたいこと
ご家族が逮捕されたと知ったときは、慌てて動く前に次の点を確認しておくと、その後の対応がしやすくなります。
- 本人がどこの警察署に留置されているか。
- 逮捕の容疑がストーカー規制法違反だけか、住居侵入罪や脅迫罪なども含まれているか。
- 逮捕前に警察から警告や禁止命令を受けていたか。
- 本人の勤務先や学校にどう連絡するか。
- 釈放後に本人が暮らす場所と、身元引受人になれる人がいるか。
ストーカー規制法違反で身内が逮捕された場合に、拘束が長引く理由やご家族が準備できる書類については、【刑事事件】身内がストーカー規制法違反で捕まった|身柄が長引く理由と、家族が用意できるものでも詳しく説明しています。勾留延長が見込まれる段階でご家族ができることは、勾留延長を止めるために家族ができることにまとめています。
よくあるご質問
ストーカーで逮捕されたら、必ず23日間拘束されるのですか
必ずではありません。23日間は起訴・不起訴が決まるまでの上限の目安であり、勾留されずに数日で釈放される場合や、10日の勾留で処分が決まる場合もあります。一方で、再逮捕や起訴後の勾留によって、これより長くなる場合もあります。
示談が成立すれば、すぐに釈放されますか
示談の成立は、勾留の必要性や処分を判断する際に考慮される重要な事情の一つですが、成立したその日に釈放されるとは限りません。ストーカー規制法違反は告訴がなくても起訴できる罪であり、示談の内容や被害者の意向、事件の態様などを踏まえて検察官が判断します。
警告や禁止命令を受けていたことは、拘束期間に影響しますか
影響することがあります。警告や禁止命令の後も行為が続いていた場合、釈放すれば再び接触するおそれがあると判断されやすくなります。禁止命令違反は法定刑も重くなるため、早い段階で弁護士に事情を伝え、見通しを確認しておくことが大切です。
関連する解説記事
- 【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合
- 処分保留で釈放された|終わったわけではない状態
- 逮捕されたら会社・学校に連絡はいく?勾留と身分への影響
- 保釈の条件(制限住居・接触禁止・渡航制限)に違反したらどうなるか
弁護士法人若井綜合法律事務所へのご相談
ストーカー事件で逮捕された後の身柄の拘束期間は、勾留の判断、再逮捕の有無、起訴の形式などによって変わり、最初の数日間の対応がその後の見通しに影響することがあります。被害者との接触を避けながら釈放に向けた材料を整えるには、早い段階から弁護士が関わることが役に立ちます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


