【刑事事件】身内がストーカー規制法違反で捕まった|身柄が長引く理由と、家族が用意できるもの

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

この記事は2026年9月時点の法令にもとづいています。ストーカー規制法は令和7年12月10日公布の改正法により、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等を規制対象に加えることなどが令和7年12月30日から、情報の提供に関する規定が令和8年3月10日から施行されています。また、2025年6月1日から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されています。


警察から電話が入った。あるいは本人が帰らないまま連絡が途絶えた。ストーカー規制法違反で身内が逮捕されたと知ったご家族が最初に知りたいのは、たいてい「何日で出てこられるのか」と「自分は何を用意すればよいのか」の2点です。

 この類型は、ご家族の動き方が身柄の判断に影響しやすい事件です。よかれと思って相手方へ連絡したことが、かえって釈放を遠ざける材料として受け止められることがあります。その一方で、ご家族にしか用意できない材料もあります。

 この記事は、逮捕されたご本人ではなく、外にいるご家族に向けたものです。示談の中身をどう組み立てるかというご本人側の話は扱わず、身柄が解けるまでの間にご家族の側でできること、控えたほうがよいことに絞って整理します。

最初に確認したい3つのこと


罪名がどれなのかで見通しが変わる

 ストーカー規制法違反といっても、問われている条文はいくつかに分かれます。警察に問い合わせる際は、罪名を正確に控えておくことをお勧めします。

問われている内容条文法定刑
ストーカー行為をした法18条1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
禁止命令等に違反してストーカー行為をした法19条2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金
上記以外の禁止命令等に違反した法20条6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金


 法19条は、公安委員会の禁止命令がすでに出ていた場合です。禁止命令が先に出ていたかどうかは、法定刑の上限だけでなく、身柄が続くかどうかの判断にも影響することがあります。禁止命令の効力や期間そのものについては禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新で整理しています。

 なお、住居侵入や脅迫、器物損壊などが同時に立件されていることもあります。罪名が複数挙がっているときは、そのすべてを控えておいてください。

留置先と、逮捕された時刻

 次に確認したいのが、どの警察署の留置施設にいるのかと、逮捕された日時です。日時は、その後の期限を数える起点になります。

 警察は逮捕から48時間以内に検察官へ事件を送り(刑事訴訟法203条1項)、検察官は本人を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から通算72時間以内に勾留を請求するか、釈放するかを決めます(同法205条1項2項)。裁判官が勾留を認めると原則10日間(同法208条1項)、延長が認められればさらに通算10日を上限として続きます(同条2項)。

弁護人をどう手配するか

 逮捕された直後の段階では、ご家族は原則として本人に会えません。この時期に本人と会えるのは弁護人だけです。

 費用の見通しが立たない段階であれば、各地の弁護士会が運用する当番弁護士の派遣を求める方法があります。勾留が決まった後は、資力が乏しい場合に国選弁護人を選任してもらえる仕組みがあり、現在は勾留されている事件であれば罪名を問わず対象とされています(刑事訴訟法37条の2)。

この類型で身柄が続きやすい理由

 勾留が認められるかどうかは、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることを前提に、次のいずれかにあたるかで判断されます(刑事訴訟法60条1項)。

  1. 決まった住居がないこと。
  2. 証拠を隠すと疑うに足りる相当な理由があること。
  3. 逃げると疑うに足りる相当な理由があること。


 ストーカー規制法違反で問題になりやすいのは、2番目です。この類型では、被害を申告している相手が誰なのかがはっきりしていて、本人がその方の住所や勤務先、生活の時間帯を知っていることが少なくありません。釈放されれば、その知識はそのまま残ります。そのため、相手方に会いに行って話を変えるよう求めるのではないか、という見方が具体的に想定されやすくなります。

 警告や禁止命令が先に出ていた場合は、そこに至る経緯が記録として残っています。令和6年版の犯罪白書では、令和5年のストーカー規制法に基づく禁止命令等は1,963件、警告は1,534件とされており、同年の同法違反の検挙件数1,081件を上回っています。刑事の検挙とは別に、行政上の措置が広く用いられていることがうかがえます。すでに一度止めるよう求められていたという経緯が残っている場合、それは繰り返しのおそれを裏づける材料として扱われることがあります。

 もう一点、ご家族が誤解しやすい点があります。ストーカー行為の罪は、平成28年の法改正(平成29年1月3日施行)により、告訴がなくても起訴できる犯罪に改められました。相手方が「もう処罰は望まない」と述べたとしても、それだけで手続が止まるとは限りません。相手方の意向は処分を決めるうえで重要な事情ではありますが、取り下げれば終わるという性質のものではない、という前提で見ていただくほうが安全です。

家族がやりがちで、かえって不利に働きうる行動

 早く出してあげたいという気持ちから動いた結果が、逆の評価につながることがあります。先に、控えたほうがよい行動を整理します。

ご家族がとりがちな行動どう受け止められうるか代わりにできること
相手方やその家族に直接謝罪・連絡する接触のおそれを裏づける事情として扱われうる弁護人を通じて申し入れる
本人に相手方の住所やSNSを伝える法6条が禁じる情報の提供にあたりうる一切伝えず、弁護人に判断を委ねる
本人の携帯やパソコンを操作・初期化する証拠を隠したと受け取られうるそのまま保管し、弁護人に渡す
関係者に事情を聞いて回る関係者への働きかけとみなされうる聞き取りは弁護人に任せる


 特に注意が必要なのが、2つ目です。ストーカー規制法6条1項は、ストーカー行為等をするおそれがある者だと知りながら、その者に相手方の所在などの情報を提供することを禁じています。さらに令和8年3月10日からは、警察本部長等が、そうした情報を持っている人に対し、提供しないよう求めることができる規定が加わりました。ご家族のもとに警察からこの趣旨の連絡が入る場合があります。

 この禁止規定そのものに罰則は置かれていません。もっとも、法律が明文で禁じている行為であり、ご家族が相手方の転居先などを調べて本人に伝えれば、再び接触が起きる前提を作ったと見られるおそれがあります。本人から尋ねられても、答えないという対応で差し支えありません。

 また、令状に相手方の氏名や住所が記載されていないことがあります。2024年2月に施行された制度により、一定の事件では被害を申告した方の氏名等を被疑者に示さない措置がとられるためです(刑事訴訟法201条の2、207条の2)。「誰の件なのか分からない」と本人が言う場合、隠しているとは限りません。ご家族が独自に突き止めようとすることは避けてください。

早期の釈放に向けて家族が用意できる材料

 この類型では、本人と相手方を物理的に引き離せる見通しを示せるかどうかが、ご家族が用意できる材料の中心になります。

身元引受書に何を書くか

 形式に決まりはありませんが、次の点が具体的に書かれているほど、資料としての意味を持ちやすくなります。

  • 引き受ける人の氏名、本人との関係、同居するかどうか。
  • 釈放後にどこで生活させるか(住所と、相手方の生活圏からどの程度離れているか)。
  • 日中どのように所在を把握するか。
  • 本人の携帯電話をどのように管理するか。
  • 違反があった場合に引受人が何をするか。


 「監督します」とだけ書かれた書面は、内容の裏づけがないため、材料としては弱くなりがちです。誰が、どこで、どうやって、を書き込んでいただくことをお勧めします。

住まいを離す

 本人の現在の住まいが相手方の生活圏に近い場合、そこへ帰すという前提のままでは、接触のおそれが残っているとみられやすくなります。実家や親族宅で受け入れられるか、転居が可能か、通勤経路が重ならないか。この検討は、ご家族でなければ進められません。

 賃貸物件を引き払う場合は、契約書や解約の申し入れ書の控えを残しておくと、計画が具体的であることを示しやすくなります。

仕事と住まいの手当て、面会と差し入れ


勤務先への連絡

 無断欠勤が続くと、事件そのものとは別に雇用上の問題が生じることがあります。伝える範囲は慎重に判断する必要がありますが、有給休暇や欠勤の扱いだけでも早めに調整しておくと、生活の基盤を残しやすくなります。何をどこまで伝えるかは、弁護人と相談してから決めることをお勧めします。

面会と差し入れ

 勾留が決まると、ご家族も面会できるようになるのが原則です。ただし回数や時間は施設の運用で定められており、平日の日中に限られることが一般的です。職員が立ち会い、やり取りの内容は記録されます。事件の話は避け、生活の手当てが進んでいることを伝えるにとどめるほうが安全です。

 逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると、弁護人以外との面会や書類のやり取りが禁じられる決定が出ることもあります。この場合でも、弁護人であれば会うことができます。

 差し入れできる物と手続は施設ごとに定められています。具体的な内容は留置場への差し入れと手紙|家族ができる支援の実務にまとめていますので、必要に応じてご確認ください。

身柄が解けた後に残るもの

 釈放されても、手続が終わったとは限りません。在宅のまま捜査が続き、後日処分が決まることがあります。

 禁止命令が出ている場合、その効力は身柄の話とは別に続きます。釈放されたから命令が消えるわけではなく、期間の更新が行われることもあります。ご家族としては、本人が命令の内容を正確に理解しているかを確認しておいていただきたいところです。

 起訴された場合は、保釈を請求できる段階に入ります。このとき、身元引受人として誰が立つのか、何を約束できるのかが改めて問われます。役割の中身は保釈の身元引受人になれる人・求められる役割で解説しています。勾留の段階で住まいと監督の体制を整えておくことは、この場面でもそのまま生きてきます。

 なお、起訴されるまでの間に保釈の制度はありません。身柄が解けるとすれば、勾留の請求が退けられるか、勾留の判断に対する不服申立てが認められるか、検察官が釈放を判断するか、といった経路になります。

 私のところにも、ご本人ではなくご家族から最初のご連絡をいただくことがあります。外にいる立場ではできることが限られているように感じられるかもしれませんが、住まいをどう手当てするか、誰が監督にあたるかは、ご家族にしか整えられない部分です。何から手をつけるかの順序だけでも早い段階で決まると、その後の動きは進めやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
 当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
 早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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