【解決事例】銭湯の仮眠室における痴漢トラブル|弁護士の即時対応と粘り強い交渉で逮捕・刑事事件化を回避した事例
「勾留が決まりました」という連絡を受けたとき、最初に頭に浮かぶのは、決定の当否よりも「これから十日間、何もできないのか」という戸惑いではないでしょうか。理由の詳細は知らされず、本人と話すこともできないまま、期間だけが先に進んでいきます。
勾留の判断に納得できないときの手続として、準抗告と勾留取消請求という二つの名前が出てきます。どちらも「身柄の拘束を解くための手続」とまとめて説明されることが多いのですが、この二つは争っている対象が違い、判断する人も、書面に書く中身も違います。この記事では、両者がどう違うのか、どの場面でどちらが問題になるのかを整理します。
まず、何を理由に勾留されたのかを確かめる
不服を申し立てるといっても、何を理由に勾留されたのかがわからないままでは、書面の書きようがありません。勾留状には、被疑事実の要旨とともに、刑事訴訟法60条1項の各号のうちどれにあたると判断されたのかが記載されます。ただし、実際には「2号、3号にあたる」といった簡潔な記載にとどまり、そう判断した具体的な事情まで書かれるわけではありません。
勾留状の内容を確認する方法
勾留状は本人に手渡される書面ではないため、内容を知るには勾留状謄本の交付を請求することになります。実務では弁護人が裁判所に請求し、裁判所によっては謄本ではなく写しの交付を受ける運用がとられています。記載された号が、その後の主張の出発点になります。罪証隠滅のおそれを理由とする決定と、逃亡のおそれを理由とする決定とでは、示すべき材料が変わってくるからです。
家族に届くのは「勾留された」という事実まで
勾留の事実は、弁護人がいないときは本人が指定した親族などに通知されます。もっとも、通知されるのは勾留された事実であって、判断の理由や、その後の見通しではありません。家族の側で情報が足りないと感じるのは、多くの場合、制度がそのように組まれているためです。
準抗告と勾留取消請求は、争っている対象が違う
二つの手続の違いは、突き詰めると「いつの時点の何を争うのか」に行き着きます。準抗告は、勾留の裁判そのものが誤っていたとして、その取消しや変更を求める手続です。これに対して勾留取消請求は、勾留の裁判があったこと自体は前提としたうえで、その後に事情が変わり、勾留を続ける理由や必要がなくなったとして取消しを求める手続です。
| 比べる点 | 準抗告 | 勾留取消請求 |
|---|---|---|
| 根拠となる条文 | 刑事訴訟法429条1項2号 | 刑事訴訟法87条1項 |
| 争う対象 | 勾留の裁判そのものの当否 | 裁判の後に事情が変わったこと |
| 判断のしかた | 三人の裁判官による合議体で決定 | 一人の裁判官が決定する |
| 検察官の関与 | 検察官も申立てをすることがある | 取消しの決定の前に検察官の意見を聴く |
| 申し立てられる人 | 不服がある者(実務上は本人と弁護人) | 本人・弁護人のほか、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹など |
| 繰り返せるか | 同じ勾留について重ねて申し立てることはできないと説明される | 回数についての定めはない |
なお、準抗告は裁判官がした裁判に対する不服申立てです。起訴されて第1回公判期日を過ぎた後は、勾留に関する判断を裁判所が行うため、不服申立ては抗告という別の名前の手続になります。逮捕から起訴までの段階で問題になるのは、ほとんどが準抗告のほうです。
準抗告は「決定そのものが誤っている」と申し立てる手続
勾留の裁判をしたのは一人の裁判官です。これに対して準抗告が申し立てられると、その裁判官を含まない三人の裁判官の合議体が、あらためて勾留の要件を満たすかどうかを判断します。同じ資料でも判断する人が変われば結論が変わり得るという点が、この手続の骨格です。
「やっていない」という理由だけでは申し立てられない
納得できない理由が「そもそも身に覚えがない」という点にある方は少なくありません。ただし条文の建て付けとして、勾留に対しては、犯罪の嫌疑がないことを理由として不服を申し立てることはできないとされています(刑事訴訟法429条2項が同法420条3項を準用しています)。嫌疑の有無は、起訴するかどうかの判断や、その後の裁判で争われる事柄と位置づけられているためです。
したがって、否認している事件であっても、準抗告の書面で正面から扱われるのは、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるのか、逃亡のおそれがあるのか、そして拘束を続ける必要が本当にあるのか、という点になります。事実を争っていること自体を伏せるという意味ではなく、不服の理由の立て方が別のところにある、ということです。
申立てに期限はないが、期間は進んでいく
勾留についての準抗告には、申立ての期限が定められていません。刑事訴訟法429条には3日以内という期間が出てきますが、これは過料や費用の賠償を命ずる裁判についてのもので、勾留の裁判には適用されません。
もっとも、期限がないことと、いつ出しても同じことは別です。勾留の期間は決定の日から進んでいきますし、判断の材料になる事情も日々動きます。期限の定めがない代わりに、実質的な締切は勾留期間そのものだと考えておく必要があります。
勾留取消請求は「その後に事情が変わった」と示す手続
刑事訴訟法87条1項は、勾留の理由または勾留の必要がなくなったときは、裁判所は請求により、または職権で勾留を取り消さなければならないと定めています。この条文が想定しているのは、勾留の裁判が誤っていた場面ではなく、裁判の後に状況が動いた場面です。
どのような事情が「変わったこと」にあたるか
実務で示されることが多いのは、次のような事情です。
- 取調べや証拠の収集が一通り終わり、働きかけの余地が小さくなったこと。
- 被害者との示談が成立し、あるいは被害弁償が済んだこと。
- 本人の体調が悪化し、拘束の継続が身体に影響していること。
- 勤務先や学業の立場が、拘束の長期化によって具体的に失われようとしていること。
- 帰る場所と、生活を見守る人が新たに整ったこと。
いずれも、勾留状に書かれた事由と結び付けて説明することになります。取調べが終わったという事情は罪証隠滅のおそれに、生活の基盤が整ったという事情は逃亡のおそれに、それぞれ対応します。書面に事情を並べるだけでなく、どの要件が動いたのかを対応させて示すことが求められます。
決定の前に検察官の意見を聴く手続がある
勾留を取り消す決定をするときは、急速を要する場合を除き、裁判所は検察官の意見を聴かなければならないとされています(刑事訴訟法92条2項)。準抗告にはこの手順がありません。
この違いは、実際にかかる時間の差として表れます。記録が検察庁にある段階では、意見を聴くやり取りに日数を要することがあり、勾留の満期が近い局面では、判断が出る前に期間そのものが終わってしまうことも起こり得ます。どちらの手続を選ぶかは、法律上の建て付けだけでなく、残っている日数の問題でもあります。
決定の後に成立した示談は、準抗告で主張できるのか
ここが実務上いちばん迷いやすいところです。準抗告は原決定の当否を争う手続なので、理屈のうえでは、決定の時点で存在しなかった事情は判断の資料にできないという考え方があり得ます。かつてはそのように説明されることもありました。
もっとも、近年の実務では、当事者から主張された原決定後の事情も、勾留の要件に関わる重要なものであれば考慮されるのが通例と説明されています。保釈に関する準抗告について、原決定の後に生じた事情を考慮して判断した裁判例もあります。そのため、勾留決定の後に示談が成立したという場合に、準抗告か取消請求かが形式だけで決まるわけではありません。両方を同時に申し立てるという選択もあります。
場面ごとに、どちらが問題になりやすいか
| 場面 | 検討されやすい手続 | 理由 |
|---|---|---|
| 決定の直後で、事情は動いていない | 準抗告 | 争点が決定そのものの当否になるため |
| 決定の後に示談が成立した | いずれも検討の余地がある | 実務では原決定後の事情も考慮されるとされ、双方を申し立てることもできるため |
| 取調べや証拠収集が一通り終わった | 勾留取消請求 | 罪証隠滅のおそれが小さくなったという事情の変化として示せるため |
| 延長の決定に納得できない | 準抗告 | 延長の裁判も、勾留に関する裁判として不服申立ての対象になるため |
| 家族自身の名前で動きたい | 勾留取消請求 | 条文が請求できる人として親族を挙げているため |
表のとおり、二つの手続は択一の関係にあるわけではありません。時間の経過とともに、争える中身のほうが移っていくと考えると整理しやすくなります。決定の直後は決定そのものを、日が経つほど事情の変化を、それぞれ材料にすることになります。
認められなかった場合に残るもの
準抗告が退けられたとしても、そこですべてが終わるわけではありません。ただし、残っている手続はそれぞれ性質が異なります。
同じ手続を重ねることはできない
準抗告についての決定に対して、さらに同じ不服申立てをすることはできません。残るのは特別抗告(刑事訴訟法433条)ですが、理由は憲法違反や判例違反などに限られ、申立ての期間も5日と短く、認められる範囲は限られています。
事情が変われば、あらためて請求できる
これに対して勾留取消請求には回数の定めがありません。取調べの進み具合や示談の状況が動いたときに、あらためて請求するという使い方ができます。また、勾留による拘禁が不当に長くなったときにも取消しの規定が置かれています(刑事訴訟法91条)。
不服申立てとは別の枠組み
葬儀や治療などの事情がある場合には、勾留の執行を一時的に止める執行停止という制度があります。これは裁判所の職権で行われるもので、請求権が定められた手続ではありません。また、勾留の理由の開示を求める手続(刑事訴訟法82条)は、決定を取り消させる手続ではなく、理由を法廷で明らかにさせる手続です。起訴前の段階に保釈の制度はなく、保釈が問題になるのは起訴された後です。
釈放までに時間が空くことがある
準抗告が認められれば勾留は効力を失いますが、その日のうちに手続が完了するとは限りません。決定の連絡から釈放までには事務的な手順があり、夜間や休日をまたぐこともあります。
逆の場面もあります。裁判官が検察官の勾留請求を却下した場合でも、検察官の側が準抗告を申し立てることがあり、その判断が出るまで釈放の手続が進まないことがあります。「却下された」という連絡が、その時点での確定を意味しないことがあるという点は、迎えに行く準備をする家族にとって知っておく価値があります。
納得できないと感じた段階でできること
勾留の期間は短く、書面をそろえる時間も限られています。準抗告と取消請求のどちらを選ぶにしても、勾留状の記載を確認し、争点に対応する材料を集めるという順序は変わりません。家族の側で用意できるのは、勤務先や学校の状況、帰る場所と生活を見守る人がいることなど、本人が拘束されたままでは示せない事実です。
当事務所は池袋と新橋に事務所を置き、刑事事件についてのご相談を初回無料でお受けしています。ご本人が勾留されている段階でも、ご家族からのご相談として状況をうかがい、接見のうえで、その事件でどの手続が現実的かをご説明します。
まとめ
- 準抗告は勾留の裁判そのものの当否を争う手続、勾留取消請求は裁判の後に事情が変わったことを示す手続で、争う対象が違う。
- 準抗告は三人の裁判官の合議体で判断され、勾留取消しの決定の前には検察官の意見を聴く手順がある。
- 勾留に対しては、犯罪の嫌疑がないことを理由として不服を申し立てることはできず、争点は罪証隠滅・逃亡のおそれと勾留の必要性に置かれる。
- 勾留についての準抗告に期限の定めはないが、勾留期間そのものが実質的な締切になる。
- 決定の後に生じた示談などの事情も、実務では準抗告で考慮されるとされ、両方の手続を申し立てることもできる。
- 準抗告が退けられた後に同じ手続は重ねられないが、勾留取消請求には回数の定めがない。
- 勾留請求が却下されても検察官の準抗告で釈放が止まることがあり、連絡と実際の釈放には時間の差が生じ得る。


