【刑事事件・ストーカー事件】ストーカーの疑いで家宅捜索されたら、何が持っていかれる?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

この記事は、2026年10月時点の刑事訴訟法とストーカー規制法(2025年12月の改正を含みます)にもとづいて書いています。


「朝早くに警察が来て、スマホとパソコン、それに部屋にあった手紙の束まで持っていかれた」。ストーカー規制法違反の疑いで家宅捜索を受けた方からは、このようなご相談をいただくことがあります。同居するご家族からも、「本人の物だけでなく、家族で使っているパソコンまで持っていかれた。返ってくるのか」と尋ねられることがあります。

 ストーカー事件の捜索については「スマホが押収される」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、実際に何が持っていかれるかは、令状の記載と、疑われている行為の中身によって変わります。メッセージの送信が中心の事案と、待ち伏せや位置情報の取得が疑われている事案とでは、捜査機関が探す物も異なってきます。

 この記事では、ストーカーの疑いで家宅捜索を受けた場合に押収されやすい物と、その理由、押収された後の扱いを整理します。捜索の現場での立ち会いや、還付請求の細かな手順は別の記事で扱っていますので、必要に応じてあわせてご覧ください。

何が持っていかれるかは令状で決まる

 家宅捜索は、裁判官が発付した令状にもとづいて行われます(刑事訴訟法218条1項)。令状には、捜索すべき場所と差し押さえるべき物が記載されます(同法219条1項)。捜査機関は、この記載の範囲で物を探し、持ち帰ることになります。

押収されるのは「証拠になる物」と「没収されうる物」

 差し押さえることができるのは、証拠物または没収すべき物と思われる物です(同法222条1項、99条1項)。ストーカー事件でいえば、相手への連絡や見張りの記録が残っている物が証拠物にあたります。位置情報を取るために使った機器などは、事件によっては没収の対象と考えられることもあります(刑法19条1項)。

令状の品目は幅をもって書かれることがある

 令状の「差し押さえるべき物」の欄には、携帯電話機、パソコン、手帳、メモといった品目が並び、最後に「その他本件に関係があると思われる物」といった趣旨の書き方がされることもあります。そのため、令状を見ただけでは、持っていかれる物を正確に予想できない場合があります。もっとも、事件と関係のない物まで制限なく持ち帰ってよいという意味ではなく、事件との関連性があることが前提です。

ストーカーの疑いで押収されやすい物

 ストーカー規制法違反の捜査では、問題とされている行為があったかどうかに加えて、その行為が恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われたかが確かめられます(ストーカー規制法2条1項)。押収される物も、行為の記録と目的の手がかりという両面から選ばれることが多いといえます。

押収されやすい物捜査機関が確かめようとすること
スマートフォン・携帯電話メッセージや通話の履歴、SNSの利用状況、撮影した写真、位置情報の記録
パソコン・タブレット・USBメモリなどSNSアカウントの管理状況、投稿や検索の履歴、保存された画像
GPS機器・紛失防止タグ・その購入や登録の記録相手の位置情報を承諾なく取得したかどうか
手紙の下書き・メモ・日記・手帳連絡や見張りの日時、相手への感情の内容
相手の写真・相手の持ち物・合鍵見張りや押しかけの有無、住居への立ち入りの可能性
車内の物・ドライブレコーダー・カーナビの記録移動の経路、相手の自宅や職場の付近にいた時間
衣類・帽子・かばん防犯カメラの映像に写った人物との照合


メモや日記が重視される理由

 ストーカー行為罪が成立するには、同じ相手に対してつきまとい等や位置情報無承諾取得等を繰り返したことと、先に述べた目的があったことが必要です(同法2条4項、18条)。メッセージの文面だけでは目的が読み取りにくい場合、本人が書いたメモや日記、手紙の下書きが、相手への感情を示す材料として扱われることがあります。紙に書いた物も、スマホと同じように捜索の対象になり得ると考えておくほうが現実的です。

位置情報に関わる機器は2025年の改正で対象が広がった

 相手の承諾なくGPS機器を取り付けたり、その位置情報を取得したりする行為は、以前から規制の対象でした(同法2条3項)。2025年12月の改正では、紛失防止タグを使って相手の位置情報を取得する行為なども加わっています。タグ本体だけでなく、位置を確認するためのアプリが入った端末や、購入・登録の記録も、捜索で探される物に含まれることがあります。

別の罪も疑われていると範囲が広がる

 ストーカー事案では、住居侵入、脅迫、器物損壊、名誉毀損などの罪があわせて疑われることもあります。その場合は令状の罪名や差し押さえるべき物も広がり、たとえば侵入に使ったと疑われる道具や、書き込みに使った端末なども対象になり得ます。

スマホやパソコンの中身はどう扱われるか

 ストーカー事件では、連絡の多くがスマホやSNSを通じて行われるため、端末の押収が捜査の中心になりやすいといえます。

端末ごと持っていかれることが多い

 実務では、その場でデータを確かめるのではなく、端末そのものを持ち帰って解析することが少なくありません。記録媒体のデータを別の媒体に複写して差し押さえる方法(刑事訴訟法110条の2)や、パソコンにつながるクラウド上のデータを複写して差し押さえる方法(同法218条2項)も法律上は用意されていますが、どの方法がとられるかは事案によって異なります。端末が手元にない期間の見通しや、中身がどこまで見られるかについては、スマホ・PCを押収された|いつ返るのか、中身はどこまで見られるのかで詳しく触れています。

パスコードを求められたとき

 捜査機関は、端末の操作その他の必要な協力を求めることができます(同法111条の2)。ただ、これは協力を「求める」ことができるという定めで、応じなかったことへの罰則は設けられていません。一方で、応じるかどうかがその後の手続にどう影響するかは事案ごとに異なるため、判断に迷うときは弁護士に相談してから決めるのが無難です。詳しくは【刑事事件】スマホの解錠を求められた|生体認証と黙秘権の関係をご覧ください。

家族の物が持っていかれることもある

 令状が住居を捜索すべき場所としている場合、本人以外の家族が使っている物でも、事件との関係が疑われれば差し押さえられることがあります。家族共用のパソコンや、本人が借りて使っていた端末などがその例です。事件と関係がないと考える物については、押収品目録を確認したうえで、返還を求めることを検討します。

押収された物はその後どうなるか

 押収された物の行方は、事件の進み方と、その物が事件でどのような意味を持つかによって分かれます。

押収品目録交付書を手元に残す

 押収が行われると目録が作られ、所有者などに交付されます(同法222条1項、120条)。何がいくつ持っていかれたかを後から確かめる手がかりになりますので、捨てずに保管しておいてください。書面の読み方と還付請求の進め方は、押収品目録交付書から分かること|還付請求の手順で整理しています。

返ってくる時期は事件の進み方による

 留置の必要がなくなった押収物は、事件の終結を待たずに還付されることになっています(同法222条1項、123条1項)。請求によって一時的に返してもらう仮還付の制度もあります(同条2項)。ただ、解析に時間がかかる端末や、起訴された場合に証拠として使われる物は、返還まで長くかかる傾向があります。返ってくる時期を一律に示すことは難しく、事件の見通しとあわせて考える必要があります。

返ってこない可能性がある物

 有罪となった場合、犯罪の実行に使った物などは、判決で没収されることがあります(刑法19条1項)。位置情報の取得に使った機器などが、その例として考えられます。また、捜査の過程で所有権放棄書への署名を求められることもあります。放棄すると返還を求める前提がなくなりますので、品目ごとに内容を確かめてから判断してください。

捜索の当日と直後に気をつけたいこと

 捜索を受けた直後は動揺しやすく、そのときの行動がその後の手続に影響することがあります。次のような行動は避けるようにしてください。

  • 捜査員の作業を力ずくで止めようとすること。
  • 端末のデータを消したり、物を処分したりすること。
  • 被害を訴えている相手や共通の知人に連絡をとること。
  • 事実関係を確かめないまま、断定的な説明を重ねること。
  • 内容を読まずに書面へ署名すること。


 作業を妨げる行為は、公務執行妨害罪などに問われるおそれがあります(刑法95条1項)。どこまでが許される対応かは、令状の執行を拒んだ|捜索・差押えへの対応と妨害の線引きで扱っています。また、データの削除や相手への連絡は、証拠を隠したり被害者に働きかけたりするおそれがあるとみられ、逮捕や勾留の判断に影響することがあります(刑事訴訟法207条1項、60条1項2号)。相手への連絡は、それ自体が新たなつきまとい等と受け取られるおそれもあります。

捜索の後に逮捕されることも、在宅で進むこともある

 家宅捜索は、逮捕と同じ日に行われることもあれば、捜索だけが行われ、その後は呼び出しを受けながら捜査が進む在宅事件になることもあります。どちらになるかは、行為の内容や回数、相手との関係、証拠の残り方などによって変わります。ご家族が逮捕された場合の動き方は【刑事事件】身内がストーカー規制法違反で捕まった|身柄が長引く理由と、家族が用意できるもの、処分の見通しは【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合で解説しています。

弁護士に相談する意味

 捜索を受けた段階で弁護士に相談すると、令状の罪名や押収品目録の内容から、捜査機関が何を問題にしているかを一緒に読み解くことができます。そのうえで、取調べで何をどう話すかの準備、事件と関係のない物の返還を求める手続、被害を訴えている方との示談の検討などを、順序立てて進めていくことになります。

示談は本人が直接やり取りしないほうがよい

 ストーカー事件の示談では、今後接触しないことの約束や、その後の連絡方法などが条件になることが多く、本人が直接やり取りすると、かえって相手の不安を強めるおそれがあります。弁護士が窓口となることで、相手が話し合いに応じるかどうかを確かめるところから進めることができます。当事務所では24時間ご相談を受け付けており、初回のご相談は無料です。捜索の当日の立ち会いについては、家宅捜索(ガサ入れ)が来た|立ち会いでできること・できないこともあわせてご覧ください。

よくあるご質問


押収された携帯のうち、事件に関係のない1台だけ返してもらえますか

 事件と関係がないことを具体的に説明したうえで、還付や仮還付を求めることは考えられます(刑事訴訟法123条1項、2項)。ただ、どの端末に何が残っているかは解析してみないと分からないとされ、すぐには応じてもらえないこともあります。仕事で使っている端末であれば、その事情もあわせて伝えて相談するのがよいでしょう。

捜索の対象になった件とは別の件のデータが見つかったらどうなりますか

 押収した端末の解析の過程で、別の件をうかがわせるデータが見つかることはあります。その場合、改めて令状を得て捜査が進められたり、取調べで尋ねられたりする可能性があります。どう対応するかは事案によって大きく異なるため、早めに弁護士に相談して方針を整理しておくことをおすすめします。

捜索を受けた後、相手に謝罪の連絡をしてもよいですか

 謝罪のつもりでも、相手が拒んでいる中での連絡は、それ自体がつきまとい等と受け取られるおそれがあります。謝罪の気持ちを伝えたい場合は、弁護士を通じて、相手に受け取る意思があるかを確かめるところから始めるのが一般的です。

まとめ


  1. 家宅捜索で持っていかれる物は、令状に記載された差し押さえるべき物の範囲で決まります(刑事訴訟法218条1項、219条1項)。
  2. 差し押さえの対象は、証拠物または没収すべき物と思われる物です(同法222条1項、99条1項)。
  3. ストーカーの疑いでは、スマホやパソコンのほか、メモや日記、GPS機器や紛失防止タグなども対象になり得ます(ストーカー規制法2条)。
  4. 捜査機関は端末の操作への協力を求めることができますが、応じないことへの罰則は設けられていません(刑事訴訟法111条の2)。
  5. 押収品目録交付書は、押収された物を確かめる手がかりになるため、保管しておきます(同法120条)。
  6. 留置の必要がなくなった物は還付され、請求による仮還付の制度もあります(同法123条1項、2項)。
  7. データの削除や相手への連絡は、逮捕や勾留の判断に影響することがあるため避けます(同法60条1項2号)。


家宅捜索を受けてお困りの方へ

 家宅捜索で何が持っていかれたかは、捜査機関がどの行為を問題にしているかを知る手がかりにもなります。押収品目録交付書や令状の控えなど、手元に残った書面を整理するところから、今後の対応を一緒に考えていくことができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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