【刑事事件・ストーカー事件】警告を受けた相手と同じ学校や職場、通い続けて大丈夫?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設、被害者の勤務先・学校による援助の努力義務化など)を踏まえて執筆しています。実際の扱いは、警告の内容や個別の事情によって変わることがあります。


警察からストーカー規制法に基づく警告を受けた相手が、同じ学校の同級生や同じ職場の同僚だった場合、「明日からも普通に登校・出勤してよいのか」「顔を合わせただけで違反になるのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。弁護士ドットコムなどの法律相談サイトにも、同じ部署の相手から警告を求められた、同じ大学の相手に通報されたといった相談が寄せられています。

 結論からいえば、警告は通学や通勤そのものを禁じるものではありません。ただし、同じ場所にいる以上、何気ない振る舞いが「つきまとい等」と受け取られやすい状況にあることも確かです。この記事では、警告を受けた側の立場から、同じ学校や職場に通い続けるときに押さえておきたい考え方と、日々の具体的な整え方を解説します。

警告は「通うな」という命令ではない

ストーカー規制法の警告は、つきまとい等をした者に対して「更に反復して当該行為をしてはならない」と告げるものです(ストーカー規制法4条)。対象になるのは、警告書に記載された特定の行為の繰り返しであり、退職や退学、転居を命じる効力はありません。

 また、警告に違反したこと自体には罰則が設けられていません。もっとも、警告後も同様の行為が続くと、公安委員会による禁止命令に進むことがあり、禁止命令に違反した場合には刑事罰の対象になります。さらに、つきまとい等を反復する「ストーカー行為」は、警告や禁止命令を経ていなくても処罰の対象です。

段階内容違反した場合の扱い
警告同じ行為を繰り返さないよう警察が告げる警告違反そのものに罰則はない。ただし禁止命令に進むきっかけになり得る
禁止命令公安委員会が行為の禁止を命じる違反の内容に応じて拘禁刑または罰金の対象(禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金)
ストーカー行為つきまとい等の反復警告や命令がなくても1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法18条)


 なお、2025年の改正で、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告を出せるようになりました。警告を受けた経緯が「相手が申し出たから」とは限らない点も、頭に置いておくとよいでしょう。

「同じ場所にいること」と「そこでの振る舞い」を分けて考える

ストーカー規制法の「つきまとい等」は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる行為を指します。授業に出席する、担当業務をこなす、いつもの経路で通勤するといった行動は、通常は学業や仕事のためのものであり、それだけで直ちにつきまとい等と評価されることは考えにくいといえます。

 一方で、同法は「勤務先、学校その他その通常所在する場所」の付近での見張りや押し掛け、みだりにうろつくことを規制対象として挙げています。同じ学校や職場では、相手の通常所在する場所と自分の居場所が重なるため、行動の目的が外からは見えにくく、振る舞い次第で疑いを招きやすい構造にあります。法律相談サイトでも、住んでいる場所が相手の職場に近いだけで監視にあたるのかと不安を抱く相談が見られますが、判断の分かれ目は、所属や居住の事実よりも、そこでどう行動しているかにあります。

疑いを招きやすい振る舞い


  • 相手の教室・部署・席の近くに、用件のないまま立ち寄ること。
  • 相手の登下校・出退勤の時間に合わせて行動すること。
  • 相手が利用する食堂・休憩室・喫煙所などに時間を合わせて現れること。
  • 業務連絡や連絡事項に、私的な話題や気持ちを伝える言葉を混ぜること。
  • 共通の友人や同僚を通じて、相手の様子を尋ねたり伝言を頼んだりすること。
  • 相手の近況をSNSで繰り返し確認し、その内容に触れる発言をすること。


 これらは一つひとつは些細に見えても、警告を受けた後であれば、相手や周囲から「まだ続いている」と受け止められるおそれがあります。

偶然顔を合わせたとき

同じ建物にいる以上、廊下やエレベーターで顔を合わせることは避けきれません。その場合は、立ち止まらず、話しかけず、目で追わないことを基本にし、その場を離れることを優先してください。相手から話しかけられた場合も、短く応じて会話を広げないことが望ましいでしょう。相手から連絡や接触があったときの考え方は、【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのかでも解説しています。

業務や授業でどうしても関わる場面の整え方

同じ職場で業務上のやり取りが避けられない、同じゼミや実習班に所属しているといった場合には、接点をゼロにすることが難しいこともあります。そのようなときは、接点の「量」と「形」を、あらかじめ整えておくことが大切です。

  1. 業務連絡は会社や学校の公式な手段(業務用メール、チャット、連絡掲示など)に限り、私用の連絡先は使わない。
  2. 可能であれば上司や担当教員、別の同僚を宛先や同席者に加え、一対一のやり取りを避ける。
  3. 内容は業務・授業に必要な事項だけにとどめ、謝罪や関係修復を求める言葉は入れない。
  4. やむを得ず接触した日時、場所、内容、同席者を簡潔に記録しておく。


 特に注意したいのは、「誤解を解きたい」「一言謝りたい」という気持ちから、業務連絡の場を借りて個人的なメッセージを伝えてしまうことです。善意であっても、警告を受けた後の私的な働きかけは、相手にとって新たな負担となり、禁止命令の判断材料にされる可能性があります。この点は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由で詳しく取り上げています。

 取引先や同業者として仕事上のつながりが残る場合の考え方は、【ストーカートラブル】仕事上、相手と接点が残る|取引先・同じ業界の場合もあわせてご覧ください。

学校や会社が関わってくる場面

2025年12月30日施行の改正により、ストーカー被害者を雇用する者や、被害者が就学する学校の長が、被害者を援助する努力義務の主体に加えられました。警察庁は勤務先・学校向けの資料の中で、被害を知った場合の警察への通報、被害者の氏名等の情報管理への配慮のほか、勤務先については勤務店舗の異動など勤務形態への配慮、学校については警察官による警戒活動への協力を挙げています。

 そのため、相手が勤務先や学校に相談した場合、会社や学校が警察と連携し、警告を受けた側にも何らかの対応を求めてくることが考えられます。

  • 所属部署・勤務シフト・勤務地の変更の打診。
  • ゼミ・実習班・座席などの配置の見直し。
  • 相手への接触や連絡を控えるよう求める指導。
  • 事実関係を確認するための面談。


 こうした打診は懲戒処分とは別の、安全配慮のための調整として行われることが多いと考えられます。事実関係に争いがあっても、接点を減らす調整そのものに協力しておくことは、結果として自分を守ることにもつながります。勤務先側の対応の考え方については、【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更も参考になります。

自分から会社や学校に伝えるべきか

警告を受けたことを勤務先や学校に報告する一般的な法律上の義務はありません。ただし、就業規則や学則に届出や報告に関する定めがある場合や、業務・学業に具体的な支障が出ている場合には扱いが変わることがあります。

 自分から先に相談して、配置や時間帯の調整を申し出るという選択肢もあります。一方で、伝える範囲や言い方によっては、事実と異なる受け止め方をされたり、必要以上に情報が広がったりするおそれもあります。伝えるかどうか、伝えるならどの部署の誰に、何をどこまで話すかは、就業規則・学則の内容を確認したうえで、慎重に組み立てることをおすすめします。

 また、職場や学校の外での私生活上の行為であれば、それだけで直ちに懲戒の対象になるとは限りません。もっとも、行為が職場内で行われていた場合や、業務に支障を生じさせた場合には、就業規則に基づく処分が検討されることもあります。処分の打診を受けたときは、その場で応じる前に内容を確認する時間をもらうとよいでしょう。

退職や転校まで考えるべきか

警告を受けたからといって、退職や転校をしなければならないわけではありません。判断にあたっては、次のような事情を総合的に見ていくことになります。

  • 業務上・学業上の接点がどの程度あるか。
  • 配置換えや時間帯の調整で接点を減らせるか。
  • 相手が強い不安を訴えており、会社や学校が対応を検討しているか。
  • 自分自身が、相手を意識せずに日々を過ごせる状態にあるか。


 「辞めれば済む」と急いで結論を出すと、生活の基盤を失うことにもなりかねません。反対に、無理に同じ環境にとどまった結果、意図せず疑いを招く行動が重なってしまうこともあります。まずは配置や時間の調整で接点を減らせないかを検討し、そのうえで続けるか離れるかを考えるのが現実的な順序です。

 なお、警告後に相手が禁止命令を申し出た場合には、事前に聴聞の機会が設けられるのが原則です。聴聞で述べる内容については、【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べることで解説しています。

弁護士に相談することで整えられること

同じ学校や職場に通い続ける場合、問題は「警告を守るかどうか」だけでなく、日々の接点をどう管理するか、学校や会社にどう説明するかという実務の積み重ねになります。弁護士に相談することで、次のような点を整理しやすくなります。

  • 警告書に記載された対象行為の範囲と、日常のどの行動に注意が必要かの確認。
  • 会社や学校への説明内容と、伝える範囲の組み立て。
  • 相手方に代理人がいる場合の、業務連絡の方法など接触ルールについての協議。
  • 事実関係に争いがある場合の、記録の残し方と今後の見通し。


 警告を受けた後の刑事手続の見通しについては【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合を、相手方の弁護士から書面が届いた場合は【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方をご覧ください。

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まとめ

警告は、同じ学校や職場に通うこと自体を禁じるものではありません。問題になるのは、同じ場所にいる中での振る舞いであり、用件のない接近や私的な連絡を避け、やむを得ない接点は公式な手段と第三者の同席で形を整えることが、自分を守ることにつながります。会社や学校から配置の調整を打診された場合も、まずは落ち着いて内容を確認し、退職や転校といった大きな判断は急がずに検討してください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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