【刑事事件・ストーカー事件】警告を受けた相手が出るイベントに、客として行ってもいい?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

ストーカー規制法に基づく警告を受けた後、相手が出演するライブや舞台、握手会などのイベントが近づくと、「客として料金を払って見に行くだけなら問題ないのではないか」と考える方がいます。チケットは誰でも買えますし、会場には大勢の観客がいるため、自分一人が紛れていても目立たないと感じるかもしれません。

 しかし、警告を受けた相手が出演するイベントへの来場は、目的や行動の内容によっては「つきまとい等」と評価され、禁止命令や検挙につながるおそれがあります。この記事では、警告を受けた方の立場から、イベントへの来場がどう扱われうるのか、場面ごとに何が問題になりやすいのか、行くかどうか迷ったときにどう考えればよいのかを整理します。

この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設、被害者の勤務先・学校による援助など)と、2025年6月から懲役・禁錮が一本化された拘禁刑を反映しています。個別の事情によって評価は変わるため、具体的な判断は弁護士にご相談ください。


「客として行くだけ」でも問題になりうる理由

 ストーカー規制法の警告は、警察署長などが「これ以上つきまとい等をしてはならない」と伝える行政上の措置です。警告そのものに罰則はありませんが、警告の後も同じような行動が続けば、公安委員会による禁止命令や、ストーカー行為罪での検挙に進む可能性が高まります。警告は「次はない」という意味合いで受け止めておくのが現実的です。

イベント会場は相手の「勤務先」や「現に所在する場所」にあたりうる

 ストーカー規制法が定める「つきまとい等」には、相手の住居や勤務先、学校など「通常所在する場所」の付近での見張り、押しかけ、みだりなうろつきが含まれます。2021年の改正で、相手が「現に所在する場所」も対象に加えられました。

 出演者にとって、ライブハウスや劇場、イベントスペースは仕事をする場所です。公演の日に相手がそこにいることは事前に告知されているため、その会場に足を運ぶことは、相手の勤務先や現に所在する場所へ出向く行動として見られる余地があります。チケットを正規に購入していることは、この評価を直ちに否定する理由にはなりません。

問われるのは「何のために行ったか」

 つきまとい等にあたるかどうかは、行為の外形だけでなく、相手への好意の感情や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的があるかどうかで判断されます。作品や音楽を純粋に楽しみたいという気持ちがあったとしても、警告を受けた経緯がある以上、警察や相手からは「相手に会いたい、相手の姿を見たい」という目的が続いていると受け止められやすくなります。

 また、ストーカー行為として処罰の対象になるかどうかは、相手に身体の安全や行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法だったかどうかも関わります。警告を求めた相手にとって、客席に警告の対象者がいると分かれば、強い不安を感じることは想像しやすいはずです。

場面ごとに見たリスクの違い

 同じ「イベントに行く」でも、どこまで相手に近づくか、相手に存在を認識させるかによって、問題になりやすさは変わります。以下は一般的な傾向であり、行ってよいかどうかの基準を示すものではありません。

場面問題になりやすさ注意したい点
握手会・チェキ撮影・サイン会などの対面特典高い相手と直接向き合い、言葉を交わす場面で、面会の要求や接近と受け止められやすい
出待ち・入り待ち、会場周辺での待機高い相手の動線上で待つ行動は、待ち伏せや見張りに近い外形になる
小規模なライブハウスでの観覧比較的高い客席と舞台の距離が近く、相手が来場に気付きやすい
大規模会場での観覧のみ低いとは言い切れない気付かれにくくても、繰り返し来場すれば記録や目撃が積み重なる
配信の視聴のみ比較的低い視聴だけで相手に存在が伝わることは通常ない
配信へのコメントや投げ銭のメッセージ比較的高い拒まれているのに連続して送ると、SNSなどでの連続送信と評価されるおそれがある


対面の機会がある企画は特に慎重に

 握手会や撮影会は、相手に近づき、名前を告げたり話しかけたりすることが前提の企画です。警告の対象となった方が列に並んでいるだけで、相手や運営スタッフにとっては緊急の対応が必要な場面になりえます。来場の目的を説明する機会がないまま、その場で警察が呼ばれることも考えられます。

オンラインでの関わりも対象になりうる

 ストーカー規制法は、拒まれたにもかかわらず連続して電話をかけたり、メールやSNSのメッセージを送ったりする行為も「つきまとい等」に含めています。配信を見るだけであれば相手に伝わることは通常ありませんが、名前が表示されるコメントや投げ銭のメッセージを繰り返し送ることは、会場に行くのと同じように相手へ存在を伝える行動になりえます。

禁止命令が出ている場合は扱いが変わる

 警告の後に禁止命令が出ている場合、状況はより厳しくなります。禁止命令は公安委員会が出す行政処分で、つきまとい等を繰り返してはならないことなどが命じられます。命令の有効期間は1年で、必要があれば延長されることがあります。

 禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、ストーカー行為にあたらなくても禁止命令に違反した場合は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。禁止命令が出ている状態で相手の出演するイベントに行くことは、警告の段階と比べても明確に避けるべき行動といえます。命令書に記載された内容は、手元で改めて確認しておいてください。

会場や運営側のルールとの関係

 ストーカー規制法とは別に、イベントの主催者や会場の管理者が独自に対応することもあります。所属事務所や運営会社は、出演者を守るために特定の人物の入場を断ることがあり、チケットの利用規約にも、主催者が入場を拒否できる旨が定められていることが少なくありません。

 入場を断る旨を明確に伝えられているのに、別名義のチケットを使うなどして会場に入った場合は、ストーカー規制法とは別に、建造物侵入罪(刑法130条)が問題になる可能性があります。

 また、2025年12月30日に施行された改正法では、被害者の勤務先や学校も、被害者を援助するよう努める立場に位置付けられました。出演者の所属事務所や運営会社が警察と連携し、来場者の確認や会場周辺の警戒を強めることも考えられます。同じ改正で、警察は被害者からの申出がなくても職権で警告を出せるようになっており、周囲から見て危険と判断される行動には、警察が動きやすくなっています。

「偶然」「ファンとして」という説明はどう受け止められるか

 警察が判断の材料にするのは、その日の行動だけではありません。警告に至るまでの経緯、警告後の行動、来場の頻度、会場での振る舞いなどを全体として見たうえで、つきまとい等の目的があったかどうかが評価されます。

 交際していた相手や、個人的な連絡を断られた相手について警告を受けている場合、「一人のファンとして応援しているだけ」という説明は、警告の前後で行動が変わっていないと受け取られる可能性があります。相手が出演することを知らずに友人に誘われて行った場合でも、相手からは区別がつかないことがあります。

行くかどうか迷ったときに整理したいこと


  1. 手元にある警告書や禁止命令書を読み返し、何をしてはならないとされているかを確認する。
  2. 相手と自分の接点がどこに残っているか(イベント、配信、SNS、共通の知人など)を書き出す。
  3. 行きたいと思う理由が、作品そのものなのか、相手の姿を見たいという気持ちなのかを分けて考える。
  4. 迷いが残る場合は、行かないことを選ぶ。
  5. 判断がつかない場合や、仕事などで会場に出向かざるを得ない事情がある場合は、事前に弁護士に相談する。


 ご自身で相手や運営側に「行ってもよいか」と確認する連絡を入れることは、それ自体が面会の要求や連絡の継続と受け止められるおそれがあるため、控えたほうが安全です。仕事上どうしても同じ会場に入る必要があるといった事情がある場合は、弁護士を通じて進め方を検討することになります。

よくあるご質問


警告を受けてから何年も経っていれば、行ってもよいのでしょうか

 ストーカー規制法には、警告の効力が何年で切れるといった定めはありません。時間が経つにつれて評価が和らぐ面はありますが、相手が不安を抱き続けていれば、来場をきっかけに再び相談されることは十分ありえます。年数だけを基準に判断するのは避けたほうがよいでしょう。

チケットを買ってしまった後に警告を受けました。どうすればよいですか

 購入済みであることは、来場してよい理由にはなりません。払戻しや譲渡ができるかは主催者の規約によりますが、不正転売にあたる方法は避けたうえで、来場しない前提で手続を確認するのが無難です。

相手が出演していると知らずに会場に行った場合はどうなりますか

 出演を知らなかったこと自体は、目的を判断するうえで考慮されうる事情です。ただし、相手の存在に気付いた後も会場にとどまったり、近づいたりすれば評価は変わります。気付いた時点で会場を離れ、念のためその日の経緯をメモに残しておくと、後で説明が必要になったときの材料になります。

当事務所にご相談いただけること

 警告を受けた後の行動は、本人にとっては小さな一歩でも、相手や警察からは警告後の再接触として重く見られることがあります。当事務所では、警告書や禁止命令書の内容の確認、これまでの経緯の整理、警察から呼び出しがあった場合の対応などについてご相談をお受けしています。

 関連する解説記事は次のとおりです。


 イベントに行くかどうかは、一度の判断がその後の手続を大きく左右することがあります。少しでも迷いがあるときは、行動する前にご相談ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【刑事事件・ストーカー事件】警告を受けた相手が出るイベントに、客として行ってもいい?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼