【刑事事件】恋人が18歳未満だった場合、交際していても罪になる?
交際中に渡された合鍵が、別れた後も手元に残っていることは珍しくありません。置いてきた私物を取りに行きたかった、話をしたくて部屋で帰りを待っていた、鍵を返すついでに一度だけ入った。理由はさまざまでも、元恋人の部屋に合鍵で入った後になって「住居侵入にあたるのではないか」と不安を感じ、ご相談に来られる方がいます。
この記事では、合鍵を持っていることと立ち入りが認められていることの違い、住居侵入罪が問題になりやすい場面、すでに入ってしまった後やこれから私物を取りに行きたい場合に考えておきたいことを整理します。
本記事は2026年10月時点の法令に基づいています。2025年6月施行の改正刑法により懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されたため、法定刑は拘禁刑の表記で記載しています。
合鍵を持っていても、入ってよいとは限らない
住居侵入罪(刑法130条前段)は、正当な理由がないのに人の住居に侵入した場合に成立する罪です。法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金とされ、未遂も処罰の対象になります(刑法132条)。
ここでいう「侵入」は、判例上、住居に住んでいる人の意思に反して立ち入ることと理解されています。そのため、問題の中心は「鍵を持っていたか」「鍵を壊したか」ではなく、その時点で、住んでいる人が立ち入りを認めていたかどうかという点にあります。
交際中に合鍵を渡されたのは、通常、交際している間は出入りしてよいという趣旨と受け取られます。別れ話がまとまった後や、相手から連絡を断たれた後であれば、その承諾はもう続いていないと見られやすくなります。合鍵が手元に残っているという事実だけでは、立ち入りを認められていた根拠にはなりにくいと考えておく方が安全です。
鍵が開いていた・誰にも会わなかった場合
正規に渡された合鍵で静かに入った場合や、たまたま鍵が開いていた場合でも、住んでいる人の意思に反していれば侵入にあたる可能性があります。相手が不在で誰とも顔を合わせなかったとしても、それだけで罪にならないわけではありません。住居侵入罪は、住む人が誰を中に入れるかを決める自由や住まいの平穏を守るための罪であり、留守中の立ち入りも対象に含まれるためです。
合鍵を作っただけで罪になるか
交際中に相手に無断で合鍵を作った場合でも、合鍵を作る行為そのものを直接処罰する規定は原則としてありません。ただし、賃貸物件では鍵の複製に貸主の承諾が必要とされているのが一般的で、鍵やシリンダーの交換費用など民事上の負担を求められることがあります。また、無断で作った合鍵を使って入った場合は、立ち入りが認められていなかったことをうかがわせる事情として受け止められやすくなります。
住居侵入罪の成立範囲については、住居侵入・建造物侵入はどこから成立するのかでも解説しています。
場面別に見る、問題になりやすさ
| 場面 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 交際中、相手の了解のもとで合鍵を使って入った | 承諾の範囲内であれば、通常は住居侵入にはあたりません。 |
| 別れた後、私物を取りに無断で入った | 目的が自分の物の回収であっても、相手の意思に反する立ち入りと見られやすい場面です。 |
| 別れた後、部屋の中で相手の帰りを待っていた | 話し合いが目的でも承諾がなければ侵入と見られやすく、相手に強い不安を与えやすい場面です。 |
| 無断で作った合鍵で入った | 立ち入りが認められていなかったことがうかがわれ、不利な事情として扱われやすくなります。 |
| 相手が在宅していて、自ら招き入れた | 承諾があるため侵入にはあたりにくい一方、帰るよう求められた後も居続けると不退去罪が問題になります。 |
同棲していた部屋の場合
別れる直前まで自分もその部屋で暮らしていたのであれば、自分の住居でもあるため、立ち入りが直ちに住居侵入になるとは限りません。一方で、すでに荷物をまとめて転居し、生活の拠点を別の場所に移している場合には、その部屋は相手の住居と見られることが多くなります。
賃貸契約の名義が自分であっても、実際に相手が住んでいる部屋に無断で入れば問題になることがあります。契約上の名義と、いま誰がそこで暮らしているかは、分けて考える必要があります。名義をめぐる問題は、【男女トラブル】同棲していた部屋から相手が出ていかない|名義を貸した側にできることで取り上げています。
住居侵入とあわせて問われることがある罪
部屋に入った後の行動によっては、住居侵入とは別の罪が問題になることもあります。
- 窃盗罪(刑法235条)は、部屋にある物を持ち出した場合に問題になります。自分の物だと思っていても、相手の物が混ざっていたり、どちらの物かはっきりしない物だったりすると、争いになることがあります。
- 不退去罪(刑法130条後段)は、招き入れられた後に、帰るよう求められても部屋に居続けた場合に問題になります。
- ストーカー規制法は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情から、住居に押し掛けたり付近をうろついたりする行為を繰り返した場合に問題になります。
- 器物損壊罪(刑法261条)は、室内の物や鍵を壊した場合に問題になります。
一度の立ち入りでも、その前後に連絡を重ねていたり、家の前で待っていたりした経緯があると、全体として評価されることがあります。家の前で待つ行為との関係は、元交際相手の家の前で待っていた|住居侵入とつきまといの境界で、何も持ち出していない場合の扱いは、侵入したが何も盗っていない|住居侵入だけで終わるのかで解説しています。
すでに入ってしまった後に考えておきたいこと
相手への直接の連絡を重ねない
謝りたい、事情を説明したいという気持ちから、相手に何度も連絡をしてしまう方がいます。しかし、立ち入りの直後に連絡が続くと、相手の不安をかえって強め、つきまといとして受け止められるおそれがあります。伝えたいことがある場合でも、まずは連絡の方法を落ち着いて考えることが大切です。
合鍵の返し方を決める
手元の合鍵は、早めに返す方向で考えるのが一般的です。ただし、相手の部屋まで持って行ったり、郵便受けに入れに行ったりすると、再び家に近づいたと受け止められることがあります。郵送であれば記録が残る方法を選び、直接のやり取りが難しい場合は弁護士を通じて返す方法もあります。
持ち出した物があれば整理しておく
部屋から何かを持ち出した場合は、何を持ち出したのか、それが誰の物かを整理しておきます。相手の物が含まれていれば、返還の方法をあわせて考える必要があります。
警察から連絡が来たら
住居侵入罪は親告罪ではないため、告訴がなくても捜査が進むことがあります。警察から連絡が来た場合は、折り返す前に、何について話を聞きたいのかを確認し、弁護士に相談することも検討してください。
被害者との示談は、検察官が処分を決めるときに考慮される重要な事情の一つです。もっとも、示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではなく、本人が相手に直接示談を持ちかけると、それ自体が新たな接触として問題になるおそれもあります。示談の進め方は、被害届を出された|示談で何を取り決めるのか、警察からの連絡への向き合い方は、【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味で解説しています。
これから私物を取りに行きたい場合
まだ部屋に入っていない段階で、置いてきた物を取りに行きたいと考えている場合は、次のような順序で進めると、後から争いになりにくくなります。
- 相手に、取りに行きたい物と希望する日時を伝え、了承を得ます。
- 了承はメッセージなど、後から確認できる形で残します。
- 可能であれば第三者に立ち会ってもらうか、相手に送ってもらう方法を選びます。
- 当日は了承された範囲の物だけを持ち出し、合鍵もその場で返します。
- 直接のやり取りが難しい場合は、弁護士を通じて引き渡しの方法を決めます。
正当な用件であっても、連絡の仕方によってはつきまといと受け止められることがあります。注意点は、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面と、【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかでも取り上げています。
よくあるご質問
交際中に「いつでも来ていい」と言われていました。別れた後に入っても問題になりますか
交際中の「いつでも来ていい」という言葉は、交際が続いていることを前提にしたものと受け取られるのが通常です。別れた後もその承諾が続いていると認められる場面は限られると考えておく方がよいでしょう。別れた後に入る必要がある場合は、改めて了承を得ることが大切です。
玄関に少し入っただけで、すぐに出た場合はどうですか
短い時間の立ち入りであっても、住んでいる人の意思に反していれば住居侵入罪の対象になりえます。滞在時間の短さや室内で何もしていないことは、処分の判断で考慮される事情にはなりますが、それだけで問題がなくなるわけではありません。
合鍵を返していないことだけで、罪に問われますか
合鍵を返していないことだけで、直ちに罪に問われるわけではありません。ただし、返すよう求められても応じないままでいると、鍵の交換費用を求められるなど民事上の問題に発展したり、相手が強い不安を抱き続けたりすることがあります。返還を求められている場合は、記録の残る方法で早めに返すことを考えてください。合鍵を返してもらう側の対応については、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断で解説しています。
ご相談にあたって
合鍵で元恋人の部屋に入った件は、立ち入りの時期、別れの経緯、相手とのやり取り、部屋で何をしたかによって、見通しが大きく変わります。不安な気持ちのまま相手に連絡を重ねるより、まずは事実関係を整理し、相手との接点をどう持つか、あるいは持たないかを決めることが、事態を落ち着かせる近道になることがあります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


