【ストーカートラブル】オートロックのマンションに入り込まれたら?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を反映した内容です。個別の事情によって扱いが変わることがあるため、具体的な対応は専門家にご確認ください。


オートロックのマンションを選んだのは、知らない人が建物に入ってこないようにするためだったという方も多いと思います。それだけに、相手がエントランスの内側に入り込み、自分の部屋の前まで来ていたと分かったときの不安は大きいものです。
 オートロックは侵入を防ぐ有効な設備ですが、住人の後ろについて入る「共連れ」などで内側に入られることはあります。この記事では、入り込まれた場合に法律上どう扱われるのか、その場でできること、記録の残し方、管理会社や警察への相談の進め方を順に整理します。

オートロックの内側に入り込まれるのはどんな場面か

 相手がオートロックを通り抜ける経路は、鍵や暗証番号を破るといった特殊なものより、日常のすき間を突くものが中心です。

  • 住人がドアを開けた直後に、閉まる前に後ろから続いて入る(共連れ)。
  • 宅配業者や点検業者、住人の知人などを装って、別の住人に開けてもらう。
  • 通用口や駐車場側の出入口が開いたままになっているところから入る。
  • 暗証番号を入力するところを盗み見て、後日その番号で入る。
  • 相手が同じ建物の住人で、もともと内側に出入りできる。


 弁護士ドットコムにも、見知らぬ人物が住人と一緒にオートロックの内側へ入り、部屋のドアを叩いて大声を出し続けたため警察を呼んだところ、相手は相談者の名前を知っていて会って話したいと言っていた、という相談が寄せられています。オートロックがあっても、建物の内側に入られる可能性はゼロではないという前提で備えておくことが大切です。

建物に入り込む行為は法的にどう扱われるか


共用部分への立ち入りと住居侵入罪

 マンションのエントランスホールや廊下、階段などの共用部分も、刑法130条の「住居」や「人の看守する建造物」として保護される場所にあたると考えられています。最高裁平成21年11月30日判決は、分譲マンションの各住戸にビラを配る目的で、玄関ホールの奥のドアを開けて廊下などの共用部分に立ち入った行為について、管理組合の意思に反する立ち入りであるとして住居侵入罪の成立を認めました。
 この判断の枠組みからすると、住人に会う目的で、その住人や建物の管理者の意思に反してオートロックの内側に入り込む行為は、住居侵入罪(3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)として扱われる可能性があります。共連れのように、住人がドアを開けたすきに入った場合でも、それだけで立ち入りが許されたことにはなりません。

ストーカー規制法の「押し掛け」「見張り」

 恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情から、住居に押し掛けたり、住居の付近で見張りをしたりする行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたります(同法2条1項1号)。これを繰り返すと「ストーカー行為」となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と重くなります。
 住居侵入とストーカー規制法違反は別々の行為として評価されることがあり、一度の侵入が住居侵入罪にあたると同時に、それまでの押し掛けの繰り返しがストーカー行為として問われることもあります。

部屋の前で騒ぐ・居座る場合

 部屋の前に居座って退去を求めても立ち去らない場合は不退去罪、「出てこなければどうなるか分からない」といった言葉があれば脅迫罪、ドアや郵便受けを壊せば器物損壊罪が問題になることがあります。

相手の行為問題になりうる法律
オートロックの内側に入り込む住居侵入罪(刑法130条前段)
退去を求めても居座る不退去罪(刑法130条後段)
部屋の前やエントランスでの待ち伏せ・見張りの繰り返しストーカー規制法(つきまとい等・ストーカー行為)
ドアや設備を壊す器物損壊罪(刑法261条)
害を加えることを告げる脅迫罪(刑法222条)


入り込まれたと気づいたときにその場でできること

 相手が建物の中にいると分かったときは、事情を確かめることよりも、まず自分の安全を優先してください。

  1. インターホンやドアの呼びかけに応じず、ドアを開けない。
  2. 相手がドアの前にいる、ドアを叩くなどの状況であれば、ためらわずに110番通報する。
  3. 帰宅途中に建物内に相手がいると気づいた場合は、エントランスに入らず、人のいる場所に移動してから連絡する。
  4. 家族や信頼できる知人に状況を伝え、必要に応じて来てもらう。


 相手と直接話して帰ってもらおうとすると、言い合いになって事態が大きくなることがあります。「話せば分かってもらえるかもしれない」と感じても、その場での対応は警察に任せるほうが安全です。帰宅時に相手が待っていた場合の動き方は、【男女トラブル】別れ話の後に相手が自宅の前で待っている|その日の夜にできることでも解説しています。

その日のうちから残しておきたい記録

 入り込まれた事実を後から示すためには、記録が欠かせません。特に防犯カメラの映像は、一定期間で自動的に上書きされる設定になっていることが多いため、早めの対応が必要です。

  • 管理会社や管理人に、該当する日時の防犯カメラ映像の保存を依頼すること。
  • インターホンの録画機能があれば、来訪時の映像を消さずに残すこと。
  • 相手を見た日時・場所・服装・言動を、その日のうちにメモに書き出すこと。
  • ドアに残された物や傷、投函された手紙などを、触る前に写真に撮っておくこと。
  • 警察に通報した場合は、日時と対応した警察署・担当者の名前を控えること。


 映像の保存は、管理会社に頼んでも本人にはそのまま渡されないことがあります。その場合でも、保存だけはしておいてもらい、警察から提出を求めてもらうという流れが考えられます。自宅に防犯カメラを設置する場合の注意点は【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点をご覧ください。

管理会社・管理組合に伝えること

 共用部分を管理しているのは、賃貸であれば貸主や管理会社、分譲であれば管理組合とその委託を受けた管理会社です。共用部分への立ち入りが住居侵入にあたるかどうかには、こうした管理者の意思が関わるため、管理者側に事情を知ってもらうことは手続の面でも意味があります。
 伝える内容としては、入り込まれた日時と状況、相手について分かっていること、映像の保存の依頼、今後同じ人物を見かけた場合の対応のお願いなどが考えられます。管理側の判断で、暗証番号の変更や共用部分への掲示、管理人による巡回などが行われることもあります。
 一方で、ほかの住人に詳しい事情が知られることに抵抗がある方もいると思います。どこまで共有してよいかは、最初に管理会社に伝えておくとよいでしょう。管理会社への伝え方や防犯設備でできることは、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで詳しく解説しています。相手が同じ建物の住人である場合は、【ストーカートラブル】同じマンションの住人につきまとわれている|相手も住み続ける建物で、行動の記録と手続をどう組み立てるかもあわせてご確認ください。

警察への相談と、その先の手続

 建物への侵入は、ストーカー被害の中でも生活の場に直接かかわるものです。110番で対応してもらった後も、最寄りの警察署の生活安全課などに改めて相談し、これまでの経緯をまとめて伝えておくことが考えられます。
 ストーカー規制法では、警察による警告や公安委員会による禁止命令の制度があります。2025年12月30日の改正法施行により、警告は被害者からの申出がなくても警察の職権で出せるようになりました。禁止命令の手続については【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間、緊急性が高い場合の手続については【ストーカートラブル】緊急の禁止命令とは|聴聞を経ずに出る場面で解説しています。相談しても警告に進まない場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段をご覧ください。
 刑事手続とは別に、民事の手段として、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てることや、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することも考えられます。仮処分の流れは【ストーカートラブル】接近禁止の仮処分にかかる費用と期間の目安|担保・審尋・決定後の手続まで、慰謝料の考え方は【ストーカートラブル】ストーカー被害の慰謝料|請求できる項目と組み立てで整理しています。

住まいについて考えておきたいこと

 建物の内側まで入られたことで、今の住まいに住み続けてよいのか迷う方もいます。転居はすぐに決めなければならないものではありませんが、相手の行動が続いているか、相手が近くに住んでいるか、職場や通勤経路も知られているかといった事情によって判断は変わります。
 転居を選ぶ場合は、新しい住所を相手に知られないための手続をあわせて進めることが大切です。判断の目安は【ストーカートラブル】相手の家の近くに住んでいる|引っ越すべきかの判断、転居先を守る手続は【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で解説しています。

よくあるご質問


住人が開けたドアから一緒に入っただけでも、住居侵入になりますか

 住人がドアを開けたからといって、その後ろから入る人の立ち入りまで建物の管理者や住人が認めたことにはなりません。目的や建物の管理状況などによって判断されますが、特定の住人につきまとう目的で入り込んだ場合は、住居侵入罪が問題になる可能性があります。

相手が同じマンションの住人の場合、建物に入ること自体は問題になりませんか

 住人が共用部分を通ること自体は通常の利用です。ただし、部屋の前で待ち伏せする、見張りを続けるといった行為は、ストーカー規制法の「つきまとい等」にあたることがあります。建物に入る権利があるかどうかと、その中での行動が許されるかどうかは分けて考える必要があります。

管理会社が防犯カメラの映像を見せてくれません

 映像にはほかの住人も映っているため、個人情報への配慮から本人にそのまま開示されないことがあります。その場合でも、上書きされないよう保存だけは依頼しておき、警察や弁護士を通じて提出を求める方法が考えられます。

まとめ


  • オートロックがあっても、共連れなどで建物の内側に入られることがあります。
  • 特定の人につきまとう目的でオートロックの内側に入り込む行為は、住居侵入罪やストーカー規制法違反として扱われる可能性があります。
  • その場では相手と話そうとせず、ドアを開けずに警察へ通報することを優先してください。
  • 防犯カメラの映像は上書きされることがあるため、早めに管理会社へ保存を依頼することが大切です。
  • 警告・禁止命令や接近禁止の仮処分など、状況に応じて複数の手段を組み合わせることが考えられます。


 オートロックの内側まで入られた後は、「次は部屋の中まで来るのではないか」という不安が続きやすいものです。当事務所では、警察への相談の進め方や管理会社とのやり取り、相手への通知、仮処分などの手続について、ご事情に合わせてご一緒に検討します。被害の経緯がまだ整理できていない段階でもご相談いただけます。弁護士に依頼することで変わる点については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味もご覧ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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