【ストーカートラブル】未成年の子どもがつきまといに遭っている|親ができること
本記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて記載しています。ストーカー規制法は令和7年12月30日施行の改正(警察の職権による警告の新設など)を、建物の区分所有等に関する法律は令和8年4月1日施行の改正後の条文を前提としています。迷惑防止条例は東京都の条例を例にしており、ほかの道府県では内容が異なる場合があります。
「エレベーターで一緒になる回数が増え、ある時期から自分の帰宅時間に合わせてエントランスにいるようになった」「上の階の住人と生活音をめぐって行き違いがあってから、部屋の前に立たれたり、後をつけられたりするようになった」。同じマンションの住人からのつきまといは、ご相談の中でも、ご本人が「どこまでを被害と言ってよいのか」を迷われやすい類型です。
つきまといへの対策としては、オートロックや防犯カメラの活用、管理会社への相談がよく挙げられます。それ自体は誤りではありません。ただ、こうした説明の多くは、相手が建物の外から来ることを前提にしています。相手が同じ建物の住人である場合、オートロックの内側にいることは当然で、共用部を歩くことにも正当な理由があります。外から来る相手を想定した対策だけでは、手が届かない部分が残ります。
この記事では、相手が同じマンションに住んでいる場合に絞って、どの法律で扱えるのかの分かれ目、記録の残し方、管理会社や管理組合に頼めること、警察と裁判所の手続を組み立てるときの注意点、住み続けるか離れるかの判断を整理します。相手が建物の外から来ている場合の対策は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで、接近を禁じる手続の全体像は接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで扱っています。
同じ建物に住む相手だからこそ難しくなる点
共用部にいること自体は止められない
エントランス、エレベーター、廊下、ごみ置き場、駐輪場は、住人であれば誰もが使う場所です。相手がそこにいるというだけでは、法的に問題のある行為とはいえません。外から来る相手であれば「建物に入ってくること」を問題にできますが、住人の場合は、その場所にいる理由が常にあります。
そのため、問題にできるのは「いること」ではなく、「どのようにいるか」になります。自分の外出や帰宅に合わせて同じ場所に現れる、自分の住戸の前で立ち止まる、後ろをついて歩く、声をかけ続けるといった、行動の向きと繰り返しが評価の中心です。住人どうしの事案では、場所ではなく行動の型を記録し、説明できるかどうかが出発点になります。
部屋番号や生活の時間帯がすでに知られている
同じ建物に住んでいれば、相手はこちらの部屋番号、郵便受けの位置、ごみ出しや通勤の時間帯を、意図せずとも知り得る立場にあります。住所を突き止められないようにするという、つきまとい対策の基本が最初から使えない状態です。
このため、対策は「知られないようにする」よりも、「知られている前提で接点を減らす」ことに重心が移ります。外出の時間帯や経路をずらす、郵便受けや宅配ボックスの表示を見直す、エレベーターに二人きりで乗らないようにするといった工夫は、地味ですが現実的な手段です。
「住民どうしの問題」として扱われやすい
管理会社や管理組合、ときには警察からも、住人どうしのことは当事者で話し合ってほしいという反応が返ってくることがあります。騒音やごみの問題と同じ枠で受け止められやすいためです。
この反応を受けて、ご本人が直接相手と話し合おうとするのは、おすすめできません。相手がこちらに強い関心を向けている場合、直接の話し合いはかえって接点を増やすことになりかねません。相談先が動きにくいと感じたときは、次の章で述べる「どの法律で扱えるか」の整理をもって、改めて相談することが有効です。
どの法律で扱えるかは、相手の動機で分かれる
好意や交際を求める気持ちが背景にある場合
ストーカー規制法が対象とする「つきまとい等」は、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるものに限られています(ストーカー規制法2条1項)。つきまといや待ち伏せ、住居等の付近での見張り、住居等への押し掛け、住居等の付近をみだりにうろつくことなどが類型として定められています。
挨拶の範囲を超えて話しかけてくる、連絡先を聞かれて断ったのちに態度が変わった、手紙や贈り物が届くといった事情があれば、好意の感情が背景にあると説明しやすくなります。なお、同法は性別を問いませんので、相手が同性であっても対象になり得ます。
生活上の対立が背景にある場合
同じマンションでは、生活音、ごみの出し方、駐車や駐輪をめぐる対立がきっかけになることも少なくありません。この場合、恋愛感情等の目的がないため、ストーカー規制法の対象にはなりにくいのが通常です。
東京都の迷惑防止条例は、正当な理由なく、専ら、妬み、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、つきまといや押し掛け、うろつき、見張りなどを反復することを禁じています(東京都迷惑防止条例5条の2)。警視庁も、ストーカー規制法と迷惑防止条例の違いを、行為の背景にある感情が好意か悪意かという点で説明しています。「恋愛感情がないからストーカーには当たらない」と言われた場合でも、それで法的な手段がなくなるわけではありません。もっとも、迷惑防止条例には、ストーカー規制法の警告や禁止命令のような行政上の手続は定められておらず、条例違反として捜査の対象になるかどうかが中心になります。
背景の違いによって検討する決まりを整理すると、次のとおりです。
| 背景にあるもの | 主に検討する決まり | 警察の対応として考えられるもの |
|---|---|---|
| 好意や交際を求める気持ち、それが受け入れられなかったことへの恨み | ストーカー規制法 | 警告、禁止命令、ストーカー行為罪としての捜査 |
| 生活音・ごみ・駐車などをめぐる対立から生じた恨みや妬み | 東京都迷惑防止条例5条の2(ほかの道府県にも同様の条例があります) | 条例違反としての捜査 |
| 動機にかかわらず、侵入・損壊・脅しなどがある場合 | 刑法(住居侵入罪、器物損壊罪、脅迫罪など) | 個別の犯罪としての捜査 |
動機が分からなくても、相談はできる
相手の動機は、被害を受けている側からは分からないことのほうが多いものです。動機を自分で見極めてから相談する必要はありません。警察には、いつから、どのような行為が、どの程度の頻度で続いているかを伝え、きっかけとして思い当たること(声をかけられた、苦情を言われたなど)があれば、それも事実として伝えれば足ります。
また、共用部を歩くこと自体は住人として当然でも、自分の住戸のベランダや玄関の内側に入ってくる、ドアや郵便受けを傷つける、危害を加えるような言葉を告げるといった行為は、動機にかかわらず別の犯罪として扱われる可能性があります。共用部のどこからが問題になるのかの考え方はマンションの共用部に入った|どこからが住居侵入になるのかもあわせてご覧ください。
記録は「建物の中で起きたこと」として残す
偶然と区別できる形で書き留める
住人どうしの事案で、相手から最も出やすい説明は「同じ建物に住んでいるのだから、たまたま会っただけだ」というものです。この説明と区別するには、一回ごとの出来事よりも、積み重なった傾向が見える記録が役に立ちます。
書き留めておきたいのは、次のような点です。
- 日時と場所(エントランス、エレベーター、自分の住戸の階の廊下など)。
- 自分がその直前に何をしていたか(帰宅した、ごみを出しに出た、外出しようとした)。
- 相手がそこにいた理由として通常考えられるものがあったかどうか。
- 相手の行動(立ち止まっていた、ついてきた、話しかけてきた、見ていた)。
- 自分の外出時間を変えたあと、相手の現れ方が変わったかどうか。
とくに最後の点は、相手がこちらの行動に合わせているかどうかを示す手がかりになります。記録の整理の仕方はA4一枚の時系列メモの作り方|相談の質を決める1枚が参考になります。「同じ建物だから会うのは当然」という説明に対しては、偶然では説明しにくい規則性を示すことが、記録の役割です。
防犯カメラの映像は、早めに保存を依頼する
共用部の防犯カメラは、住人どうしの事案でも有力な手がかりになります。ただ、多くの設備では一定期間で上書きされるため、気づいた時点で管理会社に日時を特定して保存を依頼しておくことが大切です。映像の提供を受けるときの手順や、断られた場合の代わりの方法は、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで詳しく扱っています。
相手を撮影したり、住人に知らせたりする前に
証拠を残そうとして相手を正面から撮影したり、掲示板や住人向けの連絡に相手のことを書いたりすることは、慎重に考える必要があります。相手を刺激して行動が強まることがあるほか、内容によっては、こちらが名誉毀損などの責任を問われるおそれもあります。
自分の住戸の玄関前を映すカメラを設置する場合も、共用部に向けたカメラの設置は管理規約や管理組合の判断に関わることがあるため、事前に管理会社へ確認しておくと安心です。相手との接触を断ちながら記録を残す考え方は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方もあわせてご覧ください。
管理会社・貸主・管理組合に頼めること
賃貸マンションの場合
賃貸の場合、相手と契約関係にあるのは貸主(大家)です。貸主や管理会社は、相手の入居者に対して、契約や使用細則にもとづき迷惑行為をやめるよう注意することができます。
一方で、貸主が相手との賃貸借契約を解除して退去を求めるには、契約上の義務違反があるだけでなく、当事者間の信頼関係が壊れたといえる程度の事情が必要とされるのが一般的です。注意や警告を重ねても行為が続いていることの記録が、その判断材料になります。すぐに相手の退去につながるとは限らないことを前提に、自分の住戸の変更や、契約期間の途中での解約について相談しておくことも選択肢です。
分譲マンションの場合
分譲の場合、相談先は管理組合(実務上は管理会社が窓口になることが多いでしょう)です。区分所有者や賃借人などの占有者は、建物の管理や使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないとされています(区分所有法6条1項・3項)。これに違反する場合、管理組合として行為の停止を求めたり、要件を満たせば、占有者に対する契約の解除と専有部分の引渡しを求めたりする仕組みがあります(同法57条、60条)。
ただし、これらの手続は集会の決議を経たうえで行うものであり、時間がかかります。また、特定の住人に向けられた行為が、建物全体の「共同の利益」に反するといえるかは個別に判断されます。分譲では、管理組合の手続は長い時間軸での選択肢と位置づけ、身の安全は警察や裁判所の手続で先に確保することが現実的です。
伝える範囲を絞っておく
管理会社に相談した内容が、理事会や他の住人の間で話題になり、相手の耳に入ることがあります。同じ建物の中では、誰が苦情を申し出たのかが推測されやすいためです。相談の際は、自分の名前や部屋番号を相手に伝えないよう依頼すること、注意文を出す場合にも、個人が特定されにくい書き方を求めることを、はじめに伝えておくとよいでしょう。
警察と裁判所の手続を、同じ建物という前提で組み立てる
警告・禁止命令が止めるのは「行為」
ストーカー規制法の対象となる場合、警察による警告(同法4条)や、公安委員会による禁止命令(同法5条)が考えられます。令和7年12月30日施行の改正により、警告は、被害者からの申出がなくても警察が必要と判断すれば職権で行えるようになりました。相手に知られることへの不安から申出をためらう場合でも、まずは相談しておく意味があります。
ここで押さえておきたいのは、警告や禁止命令が止めるのは、つきまとい等の「行為」であって、相手が同じ建物に住むこと自体を禁じるものではないという点です。禁止命令に違反した場合の扱いは、禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新で解説しています。警察の対応が進まないと感じるときは、警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることもご覧ください。
民事の接近禁止は「範囲の決め方」が要になる
裁判所に対して、人格権にもとづき接近やつきまといの禁止を求める仮処分を申し立てる方法もあります。外から来る相手であれば、自宅や勤務先の周辺への接近を広く禁じる形が考えられますが、同じ建物に住む相手の場合、「自宅から何メートル以内に近づいてはならない」という定め方は、相手の生活そのものと衝突してしまいます。
そのため、同じ建物の事案では、自分の住戸の前で待つこと、後をついて歩くこと、話しかけることなど、禁じる行為を具体的に特定する形を検討することになります。申立ての内容は、記録から見えてきた相手の行動の型に合わせて組み立てる必要があり、記録が細かいほど、生活の実態に合った範囲を求めやすくなります。
直接の話し合いを避けるために、窓口を移す
同じ建物に住んでいると、顔を合わせたときに直接話をつけたくなる場面もあると思います。しかし、こちらから相手に話しかけることは、相手にとって接点が生まれることを意味します。
弁護士が代理人となって相手に書面を送り、以後の連絡を代理人に集約することで、建物の中で直接やり取りをする必要をなくすことができます。代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で、書面を送ったあとの関係の変化については受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。
住み続けるか、離れるかの判断
「どちらが出ていくべきか」で考えない
被害を受けている側が引っ越さなければならないのは納得できない、というお気持ちは当然のものです。ただ、ここまで見てきたとおり、相手を建物から退去させる手続は、賃貸でも分譲でも時間がかかり、確実とはいえません。
判断の軸は「どちらに非があるか」ではなく、「自分の安全をどの方法で、いつまでに確保できるか」に置くことをおすすめします。手続を進めながら、一時的に実家や知人宅に身を寄せる、短期の住まいを確保するといった中間の選択肢もあります。危険を感じる場面では、ためらわず110番通報をしてください。
転居する場合に先にしておくこと
転居する場合、相手は旧住所を知っているため、転居先を知られない工夫が重要になります。ストーカー被害を受けている方は、警察などに相談したうえで、市区町村に住民票の写し等の交付を制限する支援措置を申し出ることができます。転居の届出より前に手続の流れを確認しておくと、空白の期間を作らずに済みます。具体的な対策は引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策で扱っています。
転居にかかった費用を相手に求められるか
つきまといが不法行為にあたる場合、転居費用などを損害として相手に賠償を求めることが考えられます。もっとも、転居がつきまといによってやむを得ず生じたといえるか、費用の額が相当といえるかが問われるため、転居を決めた理由や時期、見積もりや領収書を残しておくことが大切です。請求するかどうかは、相手との接点がさらに生まれることも含めて判断する必要があります。
よくあるご質問
相手は「同じ建物だから会うのは当然」と言いそうです。偶然と区別できますか。
一回ごとの出来事だけでは区別が難しくても、日時、場所、自分の行動との関係を記録していくと、偶然では説明しにくい規則性が見えてくることがあります。とくに、自分が外出時間を変えたあとに相手の現れ方も変わった、という記録は有力な手がかりになります。
相手に恋愛感情があるのか分かりません。警察にはどう伝えればよいですか。
動機をこちらで判断する必要はありません。行為の内容、頻度、続いている期間と、きっかけとして思い当たる出来事を事実として伝えてください。好意の感情が背景にあればストーカー規制法、生活上の対立から生じた恨みが背景にあれば迷惑防止条例というように、警察の側で検討する枠組みが変わります。
管理会社に相談したことが、相手に伝わってしまわないか心配です。
同じ建物の中では、誰が申し出たかが推測されやすいのは事実です。相談の際に、名前や部屋番号を相手に伝えないこと、注意文の書き方に配慮することを最初に依頼しておきましょう。それでも不安が大きい場合は、弁護士が窓口となって管理会社とやり取りする方法もあります。
まとめ
- 相手が同じ建物の住人である場合、共用部にいること自体は止められないため、場所ではなく行動の型と繰り返しを問題にする。
- 好意や交際を求める気持ちが背景にあればストーカー規制法(ストーカー規制法2条1項)、生活上の対立から生じた恨みなどが背景にあれば東京都迷惑防止条例(東京都迷惑防止条例5条の2)が検討の対象になる。
- 記録は、日時・場所・自分の直前の行動・相手の行動を残し、偶然では説明しにくい規則性を示せる形にする。
- 賃貸では貸主・管理会社、分譲では管理組合が相談先となるが、相手の退去につながる手続(区分所有法57条、60条)は時間がかかる前提で考える。
- 警告や禁止命令(ストーカー規制法4条、5条)は行為を止めるものであり、令和7年12月30日からは警告を職権で行うこともできる。
- 民事の接近禁止では、同じ建物で暮らす前提に合わせて、禁じる行為を具体的に特定する必要がある。
- 住み続けるか離れるかは、どちらに非があるかではなく、自分の安全を確保できる方法と時期で判断する。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー・つきまといに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手が同じマンションの住人である場合も、記録の整理から、管理会社とのやり取り、警察への相談、裁判所の手続、相手への書面の送付まで、状況に応じて進め方をご一緒に考えます。
「これくらいで相談してよいのか」と迷われている段階でも構いません。同じ建物の中で直接やり取りを続ける前に、一度ご相談ください。


