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引っ越しをしたり、相手との連絡を断ったりしても、郵便物や宅配便のやり取りから住所の手がかりが伝わってしまうことがあります。宛名ラベルや伝票には氏名と住所が並んで書かれているため、日常の何気ない扱い方が、相手に居場所を知らせる入口になるおそれがあるのです。この記事では、ストーカー被害に悩む方が、郵便物や宅配便を通じて住所を知られないためにできる工夫を、受け取る場面・送る場面・公的な手続に分けて整理します。
この記事は、2025年12月30日および2026年3月10日に施行された改正ストーカー規制法の内容と、2026年10月時点の日本郵便の案内を前提にしています。各事業者のサービス内容は変わることがあるため、利用前に最新の案内をご確認ください。
郵便物や宅配便から住所が伝わる主な経路
相手が住所を割り出す方法は一つではありません。郵便や宅配に関わる場面だけを見ても、次のような経路が考えられます。
- 受け取った荷物の伝票や郵便物の宛名を、そのままごみに出す。
- 相手の私物を返すときに、伝票の依頼主欄へ自分の住所を書く。
- 郵便受けから郵便物を抜き取られる、のぞかれる。
- フリマアプリや通販の取引で、相手と住所を直接やり取りする。
- 転居届による転送や、荷物の追跡情報から地域の手がかりを与える。
- 宅配業者を装った訪問や偽の不在連絡で、在宅や住所を確かめられる。
どの経路が当てはまるかは、相手との関係やこれまでの経緯によって変わります。すでに住所を知られているのか、引っ越した後の新しい住所を守りたいのかによっても、優先して取り組むことは異なります。
受け取る場面でできる工夫
郵便局留めを使う
郵便物を自宅ではなく、指定した郵便局の窓口で受け取る「郵便局留」という方法があります。日本郵便の案内では、局留の期間は郵便局に到着した日の翌日から10日間で、受け取りには免許証などの本人確認書類が必要とされています。
あわせて、郵便局から到着の連絡はなく、到着状況は追跡サービスで確認する仕組みである点には注意が必要です。期間内に受け取らないと差出人に返送されるため、こまめに確認できる郵便局を選ぶと安心です。なお、クレジットカードや金融機関の書類など、本人確認を兼ねて自宅へ届ける郵便物は、局留めにできない場合があります。
宅配便は営業所やコンビニなどでの受け取りを選ぶ
宅配便の多くは、事業者の営業所やコンビニ、宅配ロッカーなどで受け取る方法を選べます。通販サイトでも、注文時に受取場所を指定できることがあります。自宅の前に荷物が置かれる時間を減らせるため、置き配を控えたい方にとっても選択肢になります。
転居届を出すかどうかは慎重に考える
郵便の転居届は便利な仕組みですが、ストーカー被害との関係では検討しておきたい点があります。2023年6月から、弁護士会が弁護士法23条の2に基づき、住民票を移さずに転出した訴訟等の相手方の転居届上の新住所を照会した場合に、日本郵便が情報を提供する運用が始まりました。
この運用は、弁護士会が審査してDV・ストーカー・児童虐待の事案との関連がうかがわれないと判断した照会に限られます。被害者の保護に配慮した仕組みではあるものの、相手が別の名目で手続を進める可能性がまったくないとは言い切れません。転居届を出すかどうかは、ほかの受け取り方と組み合わせながら判断するとよいでしょう。
また、転居届を提出すると、日本郵便の社員による現地訪問や、旧住所あての確認書の送付が行われる場合があり、窓口で本人確認と旧住所の確認ができたときは確認書を送らないとされています。旧住所の郵便受けを相手が見ているおそれがあるときは、窓口で手続をするほうが落ち着いて進められます。e転居については、過去にストーカーが被害者になりすまして申請し、転送された郵便物を受け取る事件も起きたと報じられ、現在はオンラインでの本人確認が導入されています。
住所変更の届出先を絞る
引っ越しの後は、銀行やクレジットカード、通販サイトなど多くの登録先で住所変更が必要になります。届出先が増えるほど情報が広がる範囲も大きくなるため、本当に必要な先から順に手続をし、使わなくなったサービスは退会を検討すると安心です。引っ越しに伴う手続の全体像は、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で解説しています。
送る場面で気をつけること
見落としやすいのが、こちらから荷物や手紙を送る場面です。相手の私物を返したいときや、交際中に借りていた物を送り返すときに、伝票の依頼主欄へ現在の住所を書いてしまうと、それだけで住所が伝わります。
相手に物を返す必要がある場合は、弁護士を窓口にして、事務所から相手に送る形を取ることができます。手紙を出す場面でも、差出人欄に自宅の住所を書かずに済む方法を、送る前に確認しておくとよいでしょう。フリマアプリを使う場合は、氏名や住所を互いに伝えずに発送できる仕組みがあるかどうかを確かめておくと安心です。
共通の知人や家族を経由して荷物や年賀状が届く場合も、そこから住所が広まることがあります。周囲の方には、事情を伝えたうえで、住所を第三者に教えないよう頼んでおくことが考えられます。
郵便受け・伝票・訪問への備え
滋賀県の防犯の案内でも、郵便受けの口を狭くして鍵を取り付け、郵便物を取り出せないように工夫することが挙げられています。届いた荷物の伝票や宛名ラベルは、はがして細かく裁断してから処分すると、ごみから住所を読み取られる危険を減らせます。
郵便物が開けられた形跡がある場合は、【ストーカートラブル】郵便物が開けられている形跡がある|確かめ方・記録・情報が漏れる経路の止め方を、ごみをあさられている気配があるときは【ストーカートラブル】自宅のゴミをあさられている|その日の安全確保と、記録・出し方の見直しもあわせてご覧ください。
宅配業者を名乗る訪問があったときは、ドアを開ける前に、身に覚えのある荷物かどうかを確かめることが大切です。不在連絡のメールやショートメッセージに記載されたリンクではなく、事業者の公式サイトやアプリから追跡番号を照会すると、偽の連絡に応じてしまう危険を抑えられます。
公的な手続を組み合わせる
郵便や宅配の工夫と並行して、住民票や戸籍の附票から住所をたどられないようにする手続も検討しておきたいところです。市区町村の支援措置は、ストーカー規制法に規定するストーカー行為等の被害者で、さらに反復してつきまとい等をされるおそれがある方などを対象に、相手からの住民票の写しなどの交付請求を制限する仕組みです。自治体によっては、支援措置の期間は支援開始日から1年間で、延長を希望する場合は1年ごとの申請が必要とされています。
また、ストーカー規制法では、ストーカー行為等をするおそれがある者に被害者の情報を提供することが禁じられています。2026年3月10日からは、警察本部長等が、情報を提供するおそれがある者に対し、提供先がストーカー行為等をするおそれのある者であることを通知して、情報提供を行わないよう求めることができるようになりました。相手が人を雇って調べさせている疑いがある場合は、【ストーカートラブル】相手が人を雇って見張らせている|探偵を使ったつきまといも参考になります。転居先の地域で警察に相談し直すときの流れは、【ストーカートラブル】別の都道府県に引っ越した場合、警察の対応は引き継がれる?で解説しています。
弁護士が窓口になることでできること
弁護士にご依頼いただくと、相手とのやり取りや書類の送付を弁護士が引き受けるため、ご本人の住所を相手に示さずに話を進めやすくなります。荷物の返還や金銭の清算が残っている場合も、受け渡しの方法を弁護士が調整します。
相手に接触しないことを約束させる誓約書を取り交わす場面でも、ご本人の住所を書かずに作成する方法があります。詳しくは【ストーカートラブル】加害者に誓約書を書かせたいが、自分の住所を書く必要はある?をご覧ください。損害賠償を求めて訴訟を起こす場合も、住所・氏名等の秘匿制度(民事訴訟法133条)を利用できる場合があります。
よくあるご質問
郵便局留めを使えば、住所を知られることはなくなりますか
郵便局留めは、自宅の住所を差出人に伝えずに郵便物を受け取るための方法の一つですが、それだけで住所が守られるとは限りません。受け取りに出向く郵便局が分かれば、その周辺で待ち伏せをされるおそれもあります。普段の生活圏から少し離れた郵便局を選ぶ、受け取りの曜日や時間を固定しないなど、行動面の工夫と組み合わせることが大切です。
転居届を出さないと、大切な書類が届かなくなりませんか
転居届を出さない場合は、重要な書類の送り先を一つずつ変更する必要があります。手間はかかりますが、どの送り主に新しい住所を伝えたかを自分で把握できる面もあります。どこまでを変更し、どこを局留めや勤務先での受け取りにするかは、生活の状況に応じて整理するとよいでしょう。
相手から荷物が届いたときは、受け取ってもよいですか
受け取るかどうかに迷ったときは、無理に開封せず、外装や伝票の写真を撮っておくと後の記録になります。中身に危険がうかがわれる場合や、繰り返し届く場合は、警察に相談して対応を決めることをおすすめします。
まとめ
- 郵便物や宅配便の宛名・伝票には住所が書かれているため、受け取りと処分の仕方を見直すことが出発点になります。
- 郵便局留めや営業所・コンビニでの受け取りを使うと、自宅の住所を伝える場面を減らせます。
- 転居届は便利な一方、旧住所あての確認書や照会の仕組みも踏まえて、出すかどうかを判断することが大切です。
- 相手に物を送り返すときは、伝票の依頼主欄から住所が伝わらないよう、弁護士を窓口にする方法もあります。
- 住民票の支援措置や警察への相談を組み合わせることで、郵便以外の経路からも住所を守りやすくなります。
郵便や宅配の扱いを少し変えるだけでも、住所が伝わる経路を一つずつ減らしていくことができます。すでに住所を知られているのか、これから知られないようにしたいのかによって取るべき手段は変わるため、状況を整理するところから始めることが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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