【ストーカートラブル】相手の家族に止めてもらうよう頼めるか|頼む前に確かめることと、警察・弁護士を通す道
SNSで匿名のアカウントから毎日のようにリプライやDMが届く、ブロックしても別のアカウントで現れる、投稿のたびに絡まれる。相手の名前も顔も分からないと、「誰なのか分からない相手を警察や弁護士に相談してよいのか」「ストーカーと言えるほどのことなのか」と迷う方は少なくありません。この記事では、匿名アカウントによる粘着がストーカー規制法の対象になるかを分ける点と、対象にならない場合に使える手段、相談の前に残しておきたい記録を整理します。
この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて書いています。ストーカー規制法は令和7年12月に改正され、警察が被害者の申出がなくても職権で警告できる制度などが加わりました。
相手が誰か分からなくても、相談の妨げにはならない
匿名アカウントからの粘着について最初にお伝えしたいのは、相手の身元が分からないことは、警察や弁護士に相談しない理由にはならないという点です。ストーカー規制法上の警告や禁止命令、刑事手続は、最終的には相手を特定したうえで進みますが、特定は相談を受けた側が手続のなかで進めることが想定されています。
警察に相談した場合、事案によっては警察がSNSの運営事業者に照会し、アカウントの利用者をたどることがあります。弁護士に依頼した場合は、発信者情報開示の手続を使って投稿者の氏名や住所の開示を求めることが考えられます。いずれも、被害を受けている方が自分で相手を突き止めてから相談する必要はありません。
一方で、どの法律で対応できるかは、絡み方の中身によって変わります。次の章で、ストーカー規制法の対象になるかを分ける点を見ていきます。
ストーカー規制法の対象になるかを分ける3つの点
ストーカー規制法は、平成28年の改正(平成29年施行)でSNSのメッセージ送信やブログ・SNSの個人ページへの書き込みも規制の対象に加えています。ただし、ネット上でしつこくされている行為がすべて対象になるわけではなく、主に次の3つの点で判断されます。
恋愛感情や好意、またはそれが満たされないことへの恨みがあるか
ストーカー規制法は、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われる行為を対象としています(同法2条1項)。好意を伝える内容、交際や面会を求める内容、振り向いてもらえないことへの不満をぶつける内容などが続いている場合は、この要件に当たる可能性があります。
反対に、意見の対立から絡まれている、特定のファンコミュニティ内の争いで攻撃されているといった場合は、好意や恋愛感情に由来しないと判断され、同法の対象外とされることがあります。報道でも、ネット上のつきまといが恋愛感情に由来しないとされてストーカー規制法が適用されず、名誉毀損罪で処罰された例が紹介されています。
拒んだのに、連続して送ってきているか
SNSでのメッセージ送信やコメントは、拒まれたにもかかわらず連続して行われた場合に、規制の対象となる「つきまとい等」に当たります(同法2条1項5号)。そのため、一度でも「連絡しないでください」とはっきり伝えたか、ブロックした後に別のアカウントで再び送ってきているかといった経緯が重要になります。
ブロック後に新しいアカウントを作って同じような内容を送ってくる場合は、拒否の意思が示されたうえでの連続した送信と評価されやすくなります。
相手のページやDMに直接届いているか
規制の対象となるのは、DMなどのメッセージ送信と、被害を受けている方のSNSのページやブログへのコメント・リプライなど、本人に向けて届く形の行為が中心です。相手が自分のアカウントで一方的に投稿しているだけの場合は、内容によって「名誉を害する事項を知り得る状態に置く」行為(同法2条1項8号)などに当たるかを個別に検討することになります。
| 絡まれ方の例 | ストーカー規制法での見え方 | ほかに検討される法律・手段 |
|---|---|---|
| 好意を伝えるDMが、拒否した後も届き続ける | つきまとい等に当たる可能性がある | 迷惑防止条例、プラットフォームへの通報 |
| ブロックするたびに別アカウントでリプライが来る | 拒否後の連続した送信として評価されやすい | 発信者情報開示、損害賠償請求 |
| 意見の対立から悪口のリプライが続く | 好意・怨恨の要件を満たさないことがある | 侮辱罪・名誉毀損罪、削除請求 |
| 「家を知っている」などと告げられる | 監視していると告げる行為に当たる可能性がある | 脅迫罪、警察への早めの相談 |
表は一般的な見え方を示したもので、実際には投稿の内容や回数、それまでの経緯を合わせて判断されます。
好意や恨みが読み取れない粘着でも、使える手段はある
ストーカー規制法の対象にならないからといって、何もできないわけではありません。投稿の中身によっては、次のような法律や手続で対応できることがあります。
- 人格を否定するような悪口が続く場合は、侮辱罪や不法行為(民法709条)としての損害賠償が考えられます。
- 事実を挙げて社会的な評価を下げる投稿であれば、名誉毀損罪や名誉毀損による損害賠償の対象になり得ます。
- 危害を加えることをほのめかす投稿は、脅迫罪に当たる可能性があります。
- 住所や勤務先などを書き込まれた場合は、プライバシー侵害として削除を求めることができる場合があります。
投稿の削除については、まずSNSの運営事業者に対して通報や削除の申請をする方法があります。2025年4月からは、いわゆるプロバイダ責任制限法が「情報流通プラットフォーム対処法」に改められ、大規模なプラットフォーム事業者には削除の申出への迅速な対応が求められるようになりました。
投稿者を特定して損害賠償を求めたい場合は、裁判所の手続を使って事業者に発信者情報の開示を求めることになります。ただし、事業者が保存している接続記録には保存期間があり、時間が経つと特定が難しくなることがあります。粘着が続いている場合は、早めに方針を決めておくことが大切です。
相談の前に残しておきたい記録
匿名アカウントの投稿は、相手が削除したりアカウントを消したりすると、後から確認できなくなることがあります。警察や弁護士に相談する前に、次のような記録を手元に残しておくと、状況を正確に伝えやすくなります。
- アカウントのユーザー名(表示名ではなく、@から始まる部分)。
- 投稿やメッセージのURLと、投稿日時が分かるスクリーンショット。
- 「連絡しないでください」と伝えたメッセージや、ブロックした日付の記録。
- ブロックした後に現れた別アカウントのIDと、最初に届いた日時。
- 相手に心当たりがある場合は、そう考える理由(文体、知っている情報など)のメモ。
- 住所や勤務先に触れる投稿など、実生活への不安につながった内容。
スクリーンショットは、画面の上部にURLや日時が写る形で保存しておくと、どの投稿かを後から特定しやすくなります。記録は時系列に並べた一覧にしておくと、相談の場で経緯を短時間で共有できます。
やりとりの中で避けておきたいこと
しつこく絡まれていると、言い返したくなったり、自分で相手を突き止めたくなったりすることがあります。しかし、次のような対応は、かえって状況を長引かせるおそれがあります。
まず、反論や挑発に応じる返信を続けることです。返信があることで相手のやりとりが続き、「お互いに言い合っていた」という見え方になってしまうこともあります。拒否の意思は、一度だけ短く伝えるか、ブロックやミュートで示す形にとどめておく方が無難です。
次に、心当たりのある人物を自分で問い詰めたり、相手と思われる人の情報を公開したりすることです。推測が外れていた場合は自分が名誉毀損などの責任を問われるおそれがあり、当たっていた場合でも相手を刺激して行為がエスカレートすることがあります。相手の特定は、警察や弁護士を通じた手続に任せることをおすすめします。
相談先ごとにできること
匿名アカウントによる粘着では、相談先によって取れる手段が異なります。状況に応じて組み合わせて使うことになります。
| 相談先 | 主にできること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 警察 | ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令、刑事事件としての捜査 | 好意や執着が読み取れる場合、危害をほのめかされている場合 |
| SNSの運営事業者 | 投稿の削除、アカウントの凍結、通報への対応 | まず投稿を見えなくしたい場合 |
| 弁護士 | 削除請求、発信者情報開示、相手が分かった後の書面での警告、損害賠償請求、告訴の準備 | 相手を特定して行為を止めたい場合、警察の対応だけでは止まらない場合 |
令和7年の改正により、警察は被害を受けている方からの申出がなくても、職権で警告を出せるようになりました。報復が心配で警告を求めることをためらっていた方も、まずは状況を伝えるところから相談できます。
弁護士に依頼した場合は、相手が特定された後に、代理人として書面で行為をやめるよう求めたり、接触しない約束を合意書にまとめたりすることも考えられます。警察での手続と弁護士による民事の手続は、並行して進めることもできます。
よくあるご質問
相手が誰か分からないままでも、警察に相談できますか
相談できます。相手の身元が分からないことは、相談を受け付けてもらえない理由にはなりません。届いているメッセージや投稿の記録を持参し、いつから、どのくらいの頻度で、どのような内容が届いているかを伝えると、状況を把握してもらいやすくなります。
自分宛てではなく、相手のアカウントで自分のことを書かれているだけでも対象になりますか
自分宛てのDMやリプライに比べると、ストーカー規制法の対象になるかの判断は難しくなります。ただし、内容が名誉を害するものであれば規制法の別の類型や、名誉毀損・侮辱としての対応が考えられます。投稿のURLと日時を残したうえで、どの手段が使えるかを相談の場で確認するとよいでしょう。
投稿者の特定には、どのくらいの時間がかかりますか
発信者情報開示の手続にかかる期間は、運営事業者の所在地や対応、投稿の内容によって大きく変わります。また、接続記録の保存期間との関係で、投稿から時間が経つほど特定が難しくなることがあります。見通しは事案ごとに異なるため、早めに弁護士に相談して方針を立てることをおすすめします。
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まとめ
匿名アカウントからの粘着は、好意や執着が読み取れ、拒否した後も連続して届いている場合には、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令の対象になる可能性があります。好意や恨みが読み取れない場合でも、侮辱・名誉毀損・脅迫などの法律や、削除請求・発信者情報開示の手続で対応できることがあります。相手が誰か分からない段階でも、記録を残したうえで相談することで、取れる手段の見通しを立てることができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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