【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止める
つきまといや待ち伏せが続いていると、「次に何かあったとき、110番でうまく説明できるだろうか」という不安を抱える方は少なくありません。警察に相談した際に「緊急時のために電話番号を登録しておきましょう」と案内され、どのような仕組みなのか分からないまま手続を終えた方もいるかもしれません。この記事では、警察が運用している「110番緊急通報登録システム」の仕組みと法律上の位置づけ、登録までの流れ、登録だけでは足りない部分と、あわせて検討したい手段を整理します。
この記事は、令和7年12月30日に施行された改正ストーカー規制法の内容を踏まえて作成しています。登録の手続や運用の細部は都道府県警察ごとに異なるため、実際の手続はお住まいを管轄する警察署でご確認ください。
「緊急時の連絡先登録」とは何か|110番緊急通報登録システムの仕組み
警察でいう「緊急時の連絡先登録」は、一般に110番緊急通報登録システムと呼ばれる仕組みを指します。被害を受けている方の電話番号を、あらかじめ警察に登録しておく制度です。
登録した電話番号から110番通報があると、通報を受けた警察官の側で、その電話がシステムの登録者からのものであることや、以前に相談を受けていた経緯が共有されます。ストーカー行為やDV(配偶者や交際相手からの暴力)の被害者が利用することを想定した仕組みとされており、各都道府県警察で運用されています。
つきまといの被害に遭っている最中は、気が動転していたり、相手がすぐ近くにいて大きな声を出せなかったりすることがあります。そのような場面で、相手の氏名やこれまでの経緯を一から説明しなくても、警察側が状況をつかんだうえで対応に入りやすくなる点に、この登録の意味があります。
| 比較する点 | 登録していない場合の110番 | 登録している場合の110番 |
|---|---|---|
| 通報を受けた側が分かること | 通報の中で伝えた内容が中心 | 登録者からの通報であること、過去の相談の内容 |
| 通報者が説明すること | 氏名、場所、相手方、これまでの経緯など | 今の場所と状況が中心 |
| 話せない状況での通報 | 状況の把握に時間がかかることがある | 事前の登録内容を手がかりに対応しやすい |
法律上の位置づけ|ストーカー規制法の「援助」の一つ
ストーカー規制法では、被害を受けている方が警察本部長や警察署長に「援助を受けたい」と申し出た場合に、被害を防ぐための援助を行う仕組みが設けられています。110番緊急通報登録システムへの登録は、この援助として行われる措置の一つです。
警察庁が公表している統計でも、ストーカー事案での「その他被害防止のために適切な援助」の例として、110番緊急通報登録システムへの登録が、住民票の閲覧等に関する支援措置と並んで挙げられています。DV事案についても、同じように登録が行われています。
警告・禁止命令とは別の手続
登録は、相手方に対して行為をやめるよう求める警告や禁止命令とは別の手続です。警告や禁止命令は相手方に働きかけるものですが、登録は被害を受けている方の安全を確保するための備えであり、相手方への通知を前提とした手続ではありません。
そのため、「相手を刺激したくないので、警告はまだ考えていない」という段階でも、登録だけを先に検討することはできます。警告をめぐって迷っている場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段でも取り上げています。
被害届を出していなくても検討できる
援助の申出は、被害届や告訴とは別の手続です。刑事手続を望むかどうかがまだ決まっていない段階でも、相談の内容によっては登録を案内されることがあります。どの措置をとるかは警察が事案ごとに判断するため、まずは相談の場で「緊急時の通報に備えたい」と伝えておくとよいでしょう。
登録の申出から利用までの流れ
登録の手続は都道府県警察ごとに異なりますが、おおむね次のような流れで進みます。
- お住まいを管轄する警察署(生活安全課など)でストーカー被害を相談します。
- 援助の申出を行い、申出書などの書類を作成します。
- 登録する電話番号、住所、相手方の情報、これまでの被害の状況などを聞き取ってもらいます。
- 警察で登録が行われ、緊急時は登録した番号から110番通報するよう案内を受けます。
- 電話番号や住所、勤務先が変わったときは、警察署に連絡して登録内容を改めます。
登録される情報の例
登録の際には、通報時に警察が状況をつかむために必要な情報を伝えることになります。一般的には、次のような情報が対象になります。
- 登録する電話番号(携帯電話・自宅の固定電話)。
- 住所や勤務先など、被害に遭うおそれのある場所。
- 相手方の氏名、住所、勤務先、車両、外見の特徴。
- これまでの被害の経過と、警察に相談した日付。
相手方の情報が少ない場合でも、分かる範囲で伝えておくことに意味があります。相手が誰か分からない場合の進め方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で整理しています。
登録しただけでは補えない部分
110番緊急通報登録システムは、緊急時の対応を早めるための仕組みであり、登録によって被害そのものが止まるわけではありません。登録後も、次のような点には注意が必要です。
登録した番号から通報する必要がある
登録の効果は、登録した電話番号から110番通報したときに働きます。家族の携帯電話や職場の電話から通報した場合には、通報を受けた側で登録者からの通報だと分からないことがあります。家族と同居している場合や、勤務先でも被害が起きている場合は、どの番号を登録するかを警察とよく相談しておくことが大切です。
番号や住所が変わったときは登録の見直しが必要
転居や機種変更で電話番号が変わると、以前の登録が役に立たなくなることがあります。相手方に住所を知られないよう転居を考えている場合は、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序もあわせてご覧ください。転居先を管轄する警察署が変わる場合には、新しい管轄の警察署にも相談の経緯を伝えておくと、対応が途切れにくくなります。
位置や状況がいつも正確に伝わるとは限らない
携帯電話からの110番では、端末の設定や電波の状況によって発信場所の情報が警察に伝わる仕組みもあります。ただし、常に正確な位置が分かるとは限りません。話せる状況であれば、今いる場所と、相手がどこにいるのかを短く伝えることが、引き続き重要です。
登録とあわせて検討したい手段
登録は「何かあったときに早く対応してもらうための備え」です。被害の内容によっては、相手方の行為そのものを止める手段や、住所を知られないための手段を並行して進めることが考えられます。
- 警告や禁止命令の申出によって、相手方に行為をやめるよう求めます。
- 差し迫った危険がある場合に、聴聞を経ずに出される緊急の禁止命令を求めます。
- 住民票や戸籍の附票の閲覧を制限する支援措置を、市区町村に申し出ます。
- 警察による自宅周辺のパトロールや、緊急通報装置の貸出しについて相談します。
- 勤務先や学校に事情を伝え、警察と連携した援助を求めます。
緊急の禁止命令については、【ストーカートラブル】緊急の禁止命令とは|聴聞を経ずに出る場面で詳しく解説しています。また、令和7年の法改正で、被害者に対する援助の担い手に被害者の勤務先や学校が加わりました。職場での配慮の求め方は、【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更をご参照ください。
登録を申し出る前に整理しておきたいこと
警察署で相談するときには、口頭の説明だけでなく、被害の経過が分かる資料があると話が進みやすくなります。日時・場所・相手の行動を時系列でまとめたメモ、受け取ったメッセージの画面の保存、着信履歴、防犯カメラの映像などを持参するとよいでしょう。
相談した日付や担当した警察官の所属を控えておくと、後日の手続や、管轄が変わったときの引継ぎにも役立ちます。過去の相談内容を確認したい場合は、【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方で手順を紹介しています。
よくあるご質問
登録に費用はかかりますか
110番緊急通報登録システムへの登録は、警察が行う援助の一つとして案内されるもので、相談や援助の申出について手数料を納めるよう求められることは通常ありません。運用の詳細は、お住まいを管轄する警察署で確認してください。
家族が代わりに登録を申し出ることはできますか
登録には被害の状況や登録する番号の確認が必要になるため、基本的には被害を受けているご本人が警察署で相談することになります。ご家族が先に相談の窓口に行くことは可能ですので、その場合の進め方は【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するときをご覧ください。
夜道でつけられている気がする程度でも、相談してよいのでしょうか
相手の行為がストーカー規制法の対象にあたるかどうかがはっきりしない段階でも、警察に相談すること自体はできます。相談の記録が残ることで、その後に被害が続いた場合の対応につながりやすくなります。判断の目安は【ストーカートラブル】夜道でつけられている気がする|警察に相談してよい段階かで整理しています。
弁護士に相談する意味
110番緊急通報登録システムへの登録は警察が行う措置ですので、弁護士が登録そのものを代わりに行うわけではありません。弁護士は、警察への相談に向けた資料の整理や相談への同行、相手方への通知による接触の停止、裁判所への接近禁止の仮処分の申立て、示談交渉など、警察の手続と並行して進められる部分を担います。
警察と弁護士のどちらに先に相談するか迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序を、代理人を立てた場合に何が変わるのかは、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご参照ください。
緊急時の連絡先登録は、被害に遭っている方が自分の身を守るための大切な備えの一つです。ただ、登録だけで被害が収まるとは限らないため、警察での手続と、相手方との関係を断つための手段を組み合わせて考えていくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


