【ストーカートラブル】交際相手の元恋人からつきまとわれている|ストーカー規制法と迷惑防止条例の分かれ目
警察からストーカー規制法の警告を出してもらい、相手からの連絡が止まった。ほっとする一方で、「この警告はいつまで効いているのか」「数年たったら時効のようなもので消えてしまうのではないか」と不安を感じる方は少なくありません。この記事では、警告に期限があるのかどうか、「時効」と混同されやすい期間の整理、数年後の再開に備えて今からできることを順に解説します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を踏まえた内容です。個別の事案での扱いは、警察や弁護士にご確認ください。
警告そのものに「有効期限」は定められていない
ストーカー規制法の警告(法4条)は、つきまとい等をやめるよう警察が相手に求める行政指導です。法律には、警告について「何年で効力がなくなる」といった有効期間の定めは置かれていません。そのため、一定の年数がたったから警告が自動的に消える、という仕組みにはなっていません。
一方で、警告は行政指導であるため、警告に従わなかったこと自体に罰則が科されるわけではありません。警告の役割は、相手に「その行為は法律で禁止されている」と正式に伝え、行為をやめさせることにあります。警告の後も行為が続く場合には、より強い手続である禁止命令や検挙へ進むことが想定されています。
これに対して、公安委員会が出す禁止命令(法5条)には有効期間があります。禁止命令の有効期間は1年で、必要があると認められる場合には、聴聞などの手続を経て1年ごとに延長されることがあります。
| 項目 | 警告 | 禁止命令 |
|---|---|---|
| 性質 | 行政指導 | 行政処分 |
| 出す機関 | 警察本部長・警察署長 | 都道府県公安委員会 |
| 有効期間 | 法律上の定めなし | 1年(延長されることがある) |
| 違反した場合 | 警告違反そのものへの罰則はない | 罰則の対象になる |
| 被害者の申出 | 2025年12月30日以降は職権でも出せる | 申出または職権 |
警察庁の公表資料によると、2025年の警告は1,577件、禁止命令は3,037件でした。禁止命令は警告を経ずに出すこともできるため、近年は禁止命令が使われる場面が増えています。
「時効」という言葉で混同されやすい3つの期間
インターネット上の相談では、「ストーカーの時効は6か月」「3年」など、さまざまな数字が出てきます。これらは警告の期限ではなく、別の手続に関する期間です。整理すると次のとおりです。
| 期間 | 何についての期間か | 現在の扱い |
|---|---|---|
| 6か月 | 告訴できる期間(親告罪の告訴期間) | ストーカー行為罪は2017年の改正法施行で非親告罪となり、現在は告訴がなくても起訴できる |
| 3年 | 公訴時効(起訴できる期間) | ストーカー行為罪・禁止命令違反の罪は、刑事訴訟法の定めにより3年とされる |
| 3年・20年など | 損害賠償を請求できる期間(民事の消滅時効) | 損害と加害者を知った時から3年(生命・身体の侵害は5年)、行為の時から20年 |
「告訴期間6か月」は古い情報であることが多い
以前のストーカー規制法では、ストーカー行為罪は被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪でした。親告罪には「犯人を知った日から6か月」という告訴期間があるため、古い解説や相談の回答には、この6か月の話が出てきます。現在は非親告罪になっているため、6か月を過ぎたことだけを理由に刑事手続の道が閉ざされるわけではありません。
公訴時効は「最後の行為」から数えるのが基本
公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進むとされています。ストーカー行為は、つきまとい等を反復することで成立するため、一連の行為の最後の時点から数えるのが基本的な考え方です。ただし、どこまでを一連の行為とみるかは事案ごとの判断になります。
数年後に新たな行為があれば、改めて対象になる
ここで大切なのは、時効が問題になるのは「過去の行為」についてだという点です。何年か空いた後に相手が新たにつきまとい等を始めた場合、その新しい行為は、警告・禁止命令・検挙のいずれの対象にもなり得ます。過去の警告から時間がたっていても、新しい行為への対応がとれなくなるわけではありません。
数年後に不安が残りやすい場面
警告の後しばらく落ち着いていても、生活の変化をきっかけに不安が強まることがあります。ご相談の中でよく聞かれるのは、次のような場面です。
- 相手の転居・転職・結婚・離婚など、相手の生活が大きく変わった。
- 自分の引越し・結婚・出産など、相手に知られたくない出来事があった。
- 相手が刑事手続で身体拘束されていたが、釈放・出所の時期が近づいている。
- 共通の知人を通じて、相手が自分のことを話していると耳にした。
- 何年かぶりに、相手と思われる人物からの連絡や来訪があった。
こうした場面では、「警告はもう昔のことだから、警察に相談しても取り合ってもらえないのではないか」とためらう方もいます。警察は、過去の相談や警告の経緯も踏まえて対応を検討するのが通常です。以前の経緯があること自体が、相談をためらう理由にはなりません。
数年後に備えて、今のうちにしておきたいこと
警告によって連絡が止まっている時期は、記録を整える時間に充てることができます。将来再開したときに、以前の経緯を短時間で正確に伝えられるかどうかが、その後の対応の早さに関わります。
- 警告が出た日付と、相談した警察署名・担当部署を控えておくこと。
- 警告書の写しや警察から受け取った書面があれば、保管しておくこと。
- 当時のメッセージ・着信履歴・写真などを、端末以外の場所にもバックアップしておくこと。
- 被害の経過を、日付順の簡単なメモにまとめておくこと。
- 110番通報の際に登録情報を参照してもらえるよう、警察に援助(緊急時の通報登録など)を求めておくこと。
- 相手が刑事手続を受けた場合は、被害者等通知制度の利用を検討すること。
警察に相談した記録は、個人情報の開示請求によって手元に取り寄せられる場合があります。どの程度開示されるかは事案によりますが、数年後に経緯を説明するときの手がかりになります。なお、警察内部で記録がどのくらいの期間保存されるかは一般に公表されていないため、ご自身の手元にも記録を残しておくと安心です。
また、スマートフォンの機種変更やアカウントの削除で、当時のやり取りが失われることがあります。機種変更の前には、必要な画面を保存しておくことをおすすめします。
つきまといが再開したときの動き方
数年後に再開した場合は、次の順序で考えると整理しやすくなります。
- 危険を感じるときは、まず身の安全を確保し、迷わず110番通報をする。
- 以前に警告を出してもらった警察署に連絡し、警告の時期と今回の行為を伝える。
- 新しい行為の記録(日時・内容・画面の保存など)を残し始める。
- 禁止命令の申出や、被害届・告訴など、刑事手続を求めるかを警察と相談する。
- 必要に応じて、接近禁止の仮処分や損害賠償の請求など、民事の手続を検討する。
2017年の改正法施行以降、禁止命令は警告を経なくても出せるようになり、緊急性が高い場合には聴聞を経ずに出される緊急の禁止命令の仕組みもあります。過去に警告を受けたことがある相手が再び同じような行為をした場合、警告を繰り返すのではなく、禁止命令や検挙が検討されることもあります。どの手続が適しているかは、行為の内容や頻度、危険の程度によって変わります。
なお、引っ越していた場合でも、2025年12月30日施行の改正により、違反行為が行われた時の住所地を管轄する公安委員会も禁止命令を出せるようになりました。以前とは別の都道府県に住んでいても、現在の住所地の警察に相談することができます。
よくあるご質問
警告を受けた相手は、何年たてば連絡してよいことになるのですか
警告には有効期間の定めがないため、「何年たてば連絡してよい」という線は法律上ありません。年数にかかわらず、相手が拒んでいるのに連絡を繰り返すなどの行為があれば、改めて規制の対象になり得ます。
禁止命令の延長は、こちらから求めることができますか
禁止命令の有効期間が近づいても相手の行為が続くおそれがある場合には、延長が検討されます。延長を希望する事情があるときは、有効期間が切れる前に、禁止命令を出した公安委員会の窓口である警察に早めに相談しておくとよいでしょう。
時効が過ぎた昔の行為は、まったく考慮されないのですか
公訴時効が過ぎた行為について起訴することはできません。もっとも、警察が今後の危険の程度を判断するときには、これまでの経緯全体が参考にされることがあります。昔の記録も捨てずに保管しておくことには意味があります。
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ストーカー規制法の警告には有効期限の定めがなく、数年がたったことで効力が消えるという仕組みではありません。一方で、「時効」と呼ばれる期間は告訴・起訴・損害賠償それぞれに別のものがあり、混同すると不安が大きくなりがちです。落ち着いている今のうちに記録を整え、再開したときに誰へ何を伝えるかを決めておくことが、数年後の備えになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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